学パロ信号機トリオでのお話です。
ふと、アネットと一緒に居ることを正解かと悩むライニさんを書きたくなって…
そして学パロサイドでのカナリスさんとライニさんを書きたくなったのでした…暴走しててすみません←おい
*attention*
信号機トリオでのお話です
学パロ(本家Laurentia!)設定での話です
ほのぼの?ときどき少し切なめ?なお話です
カナリスさんとライニさんの絡みを書きたくて…
ライニさんのことを大切に思うカナリスさんを書きたくて…
でもなんだかんだでアネットと一緒に居たがるライニさんを書きたくて…←
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
穏やかな、放課後の帰り道……
美しい金髪の少年は、夕闇に染まる中を歩いていた。
その隣を歩くのは鮮やかな赤色の髪の少年。
すっかり陽は長くなって、赤髪の彼……
アネットが部活を終えて帰る頃でも薄ら日は残っていて、
二人で歩いて帰る頃に、鮮やかな夕焼けが空や街を染め上げているのだった。
金髪の彼……ハイドリヒはふと隣を歩いているアネットの方を見る。
いつも通りの、明るい笑顔を浮かべている少年。
彼はいつも通り、とりとめもない話をしている。
部活の話、学校の話、今度何処かに出掛けようか、というような話……
しかしハイドリヒが一向に応えないために不思議に思ったのだろう。
途中で言葉を切って、ハイドリヒの方を見た。
目が合って、ハイドリヒは青い瞳を瞬かせる。
「?どうかしたのか、ラインハルト……黙り込んで」
「いえ、なんでもありませんよ……」
ゆっくりと首を振りながら、ハイドリヒはそう答える。
アネットはそんな彼の言葉に眉を寄せる。
本当か?というように。
そして……
そっと手を伸ばして、ハイドリヒの額に触れた。
そんな彼の挙動にハイドリヒは大きく目を見開く。
アネットはそんな彼の様子をじっと見つめつつ、ふっと息を吐き出した。
「熱はない、みたいなんだけどな……大丈夫か?」
「……体調が悪いわけではありませんよ、大丈夫です」
ハイドリヒは静かな声でそう答える。
アネットはそんな彼をじっと見つめる。
そして真剣な顔をすると、低い声で問いかけた。
「また、何か……されたり、したのか?」
ハイドリヒはそんな彼の言葉にゆっくりと首を振る。
そういうわけでもない。
ただ……
こうして、アネットと一緒に居る時にふと感じることがある。
―― 私は彼の傍に居て良いのでしょうか。
ふと、抱く思い。
明るく社交的で優しい彼。
いつもこうして自分のことを見てくれる彼……
そのやさしさが、温かさが、ハイドリヒは好きなのだけれど……
それと同時に思う。
彼がこうして自分と一緒にいるのは……果たして正解なのだろうか、と。
オリジナルの時代から、あまり周囲に迎合することなく、一人で生きてきた彼。
でも、その実……今の、フラグメントのハイドリヒは内心は傷つきやすく一人を恐れる気質。
こうして一緒に居てくれるアネットのことを大切に思う一方で、
こんな自分の傍に居てもらって良いのか、と思ってしまう。
一緒に居たい、大好きだ、といってくれるアネットだけれど……
自分は、二年後には外国に留学してしまう。
その時にはもう、一緒に居ることは出来ない……
アネットもそれを知っている。
それを知ったうえで、二年間……
ずっと一緒に居よう、とアネットは言うのだ。
その割、進路の話をふとした時にすると、アネットはさり気なく話を逸らす。
その話をするのを、拒むように。
少しずつ減っていく、ハイドリヒと一緒に過ごす時間を……
そのタイムリミットが存在していることを忘れたがっているように。
そんな彼の様子を見て、ハイドリヒはいつも思っていた。
それほど自分を思ってくれている彼を傷つけているのは、
ほかでもない自分であるような気がした……――
その度、苦しいと思う。
アネットを傷つけ、苦しめてしまうことを……
「……アネットさん」
「ん?何だ?」
きょとんとしたように首を傾げるアネット。
それを見て、ハイドリヒは青い瞳を細めた。
まぶしいものでも見たかのように……
そして、ハイドリヒはアネットに言った。
「今日は、家まで送らなくて良いですよ……」
「え?」
ハイドリヒの言葉にアネットは驚いたように目を見開く。
ここ最近、アネットはハイドリヒを彼の家まで送っていた。
彼が、変な人間に絡まれないように。
でも、今日はそうしなくて良いとハイドリヒはアネットに言う。
「何で?」
「アネットさんも、部活で疲れているでしょうし……」
良いんですよ、とハイドリヒはアネットに言う。
アネットはそれを聞いて、幾度か瞬きをした後……小さく頷いた。
きっと、ハイドリヒが気まぐれにそう言ったのではないと感じたのだろう。
わかった、といって小さく頷きながら、軽くハイドリヒの額にキスを落としたのだった。
***
そうしてハイドリヒはアネットと別れて一人で自分の家へと帰る。
家の前までたどり着いて鞄に入れた鍵を探していた時。
「……ライニ、どうかしたのですか?」
不意に声をかけられて、驚いたように振り向いた。
「え……」
そこに居たのは黒髪に金の瞳の青年。
ハイドリヒが中学生だった頃、教育実習生として彼の学校に来たことがある、昔馴染のカナリスだった。
彼は金色の瞳を細めて、ハイドリヒに言う。
「元気ないように見えましたから」
元気がない。
それを見抜かれたことに内心驚きつつ、ハイドリヒはゆっくりと首を振って、その言葉を否定した。
「……何でもありませんよ」
言えるはずがない。
漠然とした不安とか、戸惑いとか、そういったものでこんな沈んだ顔をしているなんて。
子供じゃあるまいし、とハイドリヒは思う。
しかしカナリスはそんな彼の言葉に溜め息を一つ吐き出して、そっとハイドリヒに歩み寄った。
そして、そのまま軽く彼の額を小突く。
「昔から、僕にその言葉で誤魔化せたことがありましたか?」
ねぇライニ、と問いかけるカナリスの声に、ハイドリヒは俯いた。
そうだ。今まで彼の目を欺けたためしはない。
自分が落ち込んでいるとき、苦しいとき、気づいてくれたのは彼だった。
少なくとも、アネットと出会うまで……一番そばに居てくれたのは、彼だから。
ハイドリヒはぎゅっと拳を握りつつ、吐き出すように言った。
「アネットさんに、無理をさせている気がするんです……ふとした、時に」
そんなハイドリヒの言葉にカナリスは口を突っ込まなかった。
ただ静かに、彼を見つめる。
ハイドリヒはそんな彼に、或いは別に誰にというわけではなく、吐き出すように言った。
「いっそ、好きにならなければよかった……」
傷つけることを恐れてしまうくらいなら。
本気で好きになって手放したくない傷つけたくないと願うなら。
その感情が苦しいから、それならいっそ……ハイドリヒは言う。
カナリスはそんな彼を見つめ、すっと目を細めた。そして、口を開く。
「……僕、ならば」
気遣わせることはしない。
昔から全てを知っているのだし貴方もそんなに負担をかけているとか感じる必要がないことは知っているでしょう。
カナリスは、心の中でそんなことを考える。
けれど、それを口に出すことはしなかった。
―― なんて。
言ったところで仕方ない。
そう思いつつカナリスは口を噤む。
それと同時、ハイドリヒのポケットの中の携帯が震えた。
何となくかけてきた相手は想像できた。
カナリスはふっと溜め息を吐き出して、言う。
「……電話ですよ、ライニ」
そんなカナリスの言葉にハイドリヒは電話に出る。
「……もしもし」
『もしもし、ラインハルト?』
相手の声にハイドリヒは大きく目を見開いた。
涙が零れそうになっていて、表示された名前なんて見ないで電話に出てしまったから……
ハイドリヒは震える声で、彼の名前を呼んだ。
「!アネット、さん……?」
『……ちゃんと、家帰って飯食った?
抜いたりしたら、倒れるからな?』
そうして気遣う彼の言葉。
それを聞いて、ハイドリヒは大きく目を見開く。
鮮やかな青色の瞳が、小さく揺れた。
きゅ、と携帯を握る手に力がこもる。
―― これだから、手放せない。
嫌いになんてなれるはずがない。
好きにならなければよかったなんて思えない。
ハイドリヒはそう思いながら、涙を殺して"大丈夫ですよ"という。
カナリスはそんな彼の様子を見ながら小さく溜め息を吐き出した。
―― まったく。
彼の傍に居る、恋人。
彼がハイドリヒを傷つけるとしたら……その時は許さないと、カナリスは思う。
カナリスにとって愛しい、大切な旧友だから。
守ってやってくれと思うのだ、切実に。
彼がこれ以上傷つかないないように、と……
でも、電話に応じるハイドリヒの表情は柔らかく、
先程まで泣き出しそうになっていたのが嘘のようだ。
そうして、大切に思うからこそ苦しむこともあるのだろうな……
カナリスはそう思いつつ、隣に居るハイドリヒの頭をそっと撫でてやったのだった。
―― 彼の、隣 ――
(昔はそこに僕がいた。
今は、"彼"がそこに居る……)
(それを別に不満とは思わないけれど…
ただただ願う。あの子を傷つけることなくちゃんと傍に居てやって、と…)
2014-6-9 21:01