主人公コラボ&クビツェクさんでのお話です。
このメンバーでの音楽ネタがふとやりたくなってしまって…←
*attention*
主人公コラボ&クビツェクさんなお話です。
ほのぼのなお話です。
音楽ネタです。
ピアノを弾くヒトラーさんとチェロを弾くクビツェクさんの図が書きたくて…←
フィアは音楽好きなので、聴いているといつもより少し自然体になるだろうな、と…
仲良しな相手都の演奏、って素敵だと思います…!
相変わらずの妄想クオリティナハトさん、
本当にすみませんでした…!
以上がOKというかたは追記からどうぞ!
静かな夜の音楽室。
亜麻色の髪の少年はそこに佇んでいた。
ダンスや音楽の練習室として使われているその部屋。
フィアも時々、気が向いた時に訪ねてきていた。
綺麗な月明かりが差し込む部屋。
そのなかにある大きな黒いピアノ。
フィアの青色の瞳は、まっすぐにそれを捉えていた。
「ピアノ……」
それに歩みよりつつフィアは小さく呟いて、そっと鍵盤の蓋を開けた。
そして、そっとその白鍵に触れる。
澄んだ音が部屋に響いた。
調律が行き届いた大きなグランドピアノ。
フィアはあまり楽器に触ったことがない。
けれど、このピアノの音は好きだった。
パートナーであるシストが此処で弾いていたのを何度も聴いている。
それとはなしにフィアは椅子を引いて、そこに座った。
そのまま、うろ覚えの曲を紡いで、鍵盤に触れていく。
拙い、子供のような演奏。
けれど弾いている本人は心地よくて……
―― と、そのとき。
ガチャ、とドアが開く音がした。
こんな時間帯に此処を訪ねてくる者はあまりいない。
驚いてフィアが振り向いてみれば……そこには二人の少年がたっていた。
黒髪の少年と、亜麻色の髪の少年……ヒトラーとクビツェク。
ヒトラーは何度も瞬きをして、フィアをみる。
そして、口を開いた。
「フィア?」
「あ……」
小さく声をあげるや否や、フィアは席を立った。
そして、ヒトラーとクビツェクの方をみて、首をかしげる。
「どうかしたのですか?二人とも」
「グストルが曲を作ってくれてな……」
「せっかくだから、一回あわせてみようかと思ってね。
あ、でもフィアさん使ってたかな?」
すまなそうな顔をしつつ、ごめんね、とクビツェクは言う。
フィアは大きく目を見開いて、ぶんぶんと首を振った。
「い、いや!
……俺は少し、遊びに来ていただけなんだ。
ピアノは、習っていたこともないからちゃんとは弾けないし」
ボソボソとそう弁解した後、だからどうぞ、と、
フィアはクビツェクとヒトラーに場所を譲る。
ピアノを弾くのであろうヒトラーはありがとう、とフィアに礼を言うと椅子に座る。
クビツェクも大きな楽器……チェロを用意して、椅子に腰かけた。
楽譜を開きながら用意を始めるヒトラーとクビツェク。
フィアは二人の姿をみて、小さく呟いた。
「チェロとピアノ、か……」
楽器はあまり、弾かないフィア。
でも、音楽は全体的に好きで。
邪魔をしないように部屋を出ていこうかと思ったフィアだったが……
思い止まったように、足を止める。
そして、フィアはヒトラーの方をみて、訊ねた。
「聴いていっても良いですか?ヒトラー様とクビツェクの演奏を」
「え?」
フィアの問いかけにヒトラーとクビツェクは驚いたように目を見開く。
そして二人で顔を見あわせた。
そのまま、クビツェクはヒトラーの方をみる。
「僕は構わないけど……アドルフは?」
首をかしげたクビツェクに、ヒトラーは微笑み返して、頷く。
そして、フィアの方をみると、いった。
「……私も、構わない」
「ありがとうございます」
フィアは微笑んで頷くと、二人が見える場所に椅子を引いていって、座った。
ヒトラーとクビツェクは一度顔を見合わせると、軽く頷きあって、
各々楽器に触れると、二人で演奏を始めた。
クビツェクが作った曲だといっていたから、聞いたことがない曲ではあったが……
その旋律ははっとするほど美しかった。
ヒトラーの繊細なピアノの演奏。
クビツェクの滑らかなチェロの音。
二つのおとは、綺麗に重なりあって響いていた。
フィアは椅子に座ったまま、そっと目を閉じる。
そして流れる旋律を追うように、そっとその音を口遊んでいた。
暫しそうして演奏は続いたが、あまり長い曲ではなく、ほどなくして終わった。
その余韻に浸った後、フィアはふぅっと息を吐き出した。
そして、二人にぱちぱちと拍手を送った。
「……とても綺麗でした」
そう一言言うのがやっとだった。
綺麗、何て言葉一言では表せない、美しさ……――
フィアは子供のように青い瞳を輝かせて、二人に言う。
いつもより少し興奮した様子の、声で。
「二人とも、とても綺麗な演奏で……聞き惚れましたよ」
そういって微笑むフィアをみて、ヒトラーもふっと笑った。
そしてピアノの鍵盤から手を下ろす。
フィアの方をみながら、小さく首をかしげて、ヒトラーはいった。
「途中から、フィアもメロディを口遊んでいただろう?」
ヒトラーがそう指摘を入れると、フィアは大きく目を見開いた。
確かに、口が自然とその旋律を追っていた。
まさか、聴かれているとは思っていなかったけれど……――
そう思いつつ、少し照れたように視線を彷徨わせる。
「え……あ……」
暫し返答に困ったように視線を泳がせていたフィアだったが、
やがて小さく息を吐き出す。
そして、ヒトラーの方をみて、決まり悪そうに呟いた。
「……聴こえていましたか」
「僕にも聴こえてたよ」
クビツェクにもそういわれて、フィアはもう一度溜め息を吐き出す。
そして、ふっと笑うと、すまなそうに二人にいった。
「すみません。メロディラインがとても好きだったので……」
「ふふ、そういってもらえると嬉しいな」
曲を作った本人であるクビツェクは本当に嬉しそうにそういった。
フィアは彼の方をみてこくりと頷くと、すまなそうにいった。
「邪魔を、してしまったかな……すまない」
「ううん、そんなことないよ。
今度は歌も入ったのを考えてみようかな。
そうしたらフィアさんも一緒に出来るでしょう?」
「それもいいかもしれないな」
クビツェクの言葉にヒトラーも頷く。
そうだよね、といって微笑んだクビツェクはまだまっさらな五線紙を引っ張り出す。
どんな雰囲気がいいだろう、と話し始める二人の表情は楽しそうだ。
二人の邪魔になるだろうからいいよ、と止めようとしていたフィアだったが、
そんな彼らの表情をみて、口をつぐむ。
そして楽しそうに話を続けている二人を見つめて、笑った。
くすり、と小さく漏れた笑い声に、ヒトラーとクビツェクはフィアの方をみる。
フィアはくすくすと笑いながら、いった。
「いえ……本当に、たのしそうだな、と」
「元々、こういった話をしている方が好きだからな」
「そうだね」
ヒトラーとクビツェクはそういって、顔を見合わせる。
ふわりと微笑む二人の表情は優しく、穏やかで……
「いいな……」
こういう二人の関係は、と呟いてフィアは目を閉じる。
そんな二人が紡ぐ音楽だったから。
信頼しあい、大切だと思いあう二人だから……
だから、さっきのような美しい音楽が作れるのだろうか……
そう思いつつ、フィアは再び相談を始めたヒトラーとクビツェクの様子を見つめ、
穏やかな表情を浮かべた。
―― melody ――
(響く旋律。綻ぶ笑顔。
その空間に満ちるは、穏やかな空気)
(貴方たちは本当に本当に楽しそうに演奏をするから
その美しさに、俺は魅せられてしまうんだ)