フォルスタでのお話です。
先日やった衣装交換タグから派生させて…
フォルはスターリンさんの前だとある意味で堕天使らしくないな、と思いまして…←おい
*attention*
フォルスタのお話です。
ほのぼのなお話です。
衣装交換ネタ?です。
スターリンさんには甘くて優しい性格のフォル…のはず(ぇ)
つまり子供っぽくて甘えん坊です(笑)
スターリンさんはそんなフォルをどんな風に思うかな、と妄想した結果です…←
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKというかたは追記からどうぞ!
「ほらぁ、じっとしてよ、書記長様!」
「あっついのだよ……って言うか大声あげんなフォル!」
騎士の棟の一室からそんな声が洩れる。
幸い、周囲に人はいないようだからと、
なかにいる"イレギュラー"の存在も、わいわいと騒いでいた。
彼ら……スターリンとフォルがいるのは、スターリンの自室。
そしてスターリンのベッドの上である。
スターリンは普段の白を基調とした騎士服を脱がされ、
フォルのコートに袖を通していた。
着せられた彼の服が思いの外暑く、騒いでいるところである。
そんな格好をさせられている理由は単純"フォルの好奇心"。
仕事を終えて帰ってきてみるなりフォルに"着てみて!"と唐突なお願いをされ、
スターリンは訳もわからぬうちに着替えさせられていたわけで。
半ば強引にスターリンに自分の服を着せたフォルは彼の姿を見て、
満足そうな顔をしながら、何度も頷いた。
「うん、書記長様は黒い服も似合うね!
神父様の服も似合ってたしね!」
「……何がしたいのか俺にはさっぱりわからないのだよ」
はぁ、と溜め息を吐くスターリン。
やはり暑いのか、コートの襟元を引っ張っている。
フォルはそんな彼の様子を見て、あ!と声をあげた。
そして、自分の首筋に手をやって、いつも身に付けているチョーカーをはずす。
スターリンはそれを見て、琥珀の瞳を丸く見開いた。
「フォル、それお前の抑制機じゃ……」
「ちょっとの間なら平気だよ!ほら、じっとして……」
フォルはそういいながら外した自分のチョーカーをスターリンにつける。
首筋に触れるフォルの冷たい手に、スターリンは思わず首を竦めた。
その度フォルがむくれた顔をして"じっとして!"という。
「っ、くすぐったいのだよ……!」
「くすぐったがりだなぁ書記長様は……」
フォルはそういうと、悪戯っぽい表情を浮かべた。
こうしてスターリンの首筋に触れることが出来る人間なんてそうそういないだろうな、と、
ある種の優越感をおぼえながら。
「お前のさわりかたがおかしい……っ」
わざと首筋を擽り始めたフォルに、スターリンは怒った声をあげる。
顔を真っ赤にして抗議する彼を見てクスクスと笑うと、
フォルはスターリンの首に巻いたチョーカーの留め具を留めた。
「はい、これでOK!僕の格好の書記長様ー」
そういうフォルはコートの下に着ているシャツとズボン姿。
スターリンは"自分がそんな格好になってまで何がしたいのやら"と溜め息。
そして、まだフォルの温もりが残っているコートを軽く引っ張った。
素材の違いなのだろうが、とても暖かい。
寒い国の出身であるスターリンにとっては、少し暑いほどに。
スターリンはフォルを見て、苦笑気味にいった。
「よくこんな暑い服着ていられるな……蒸されそうなのだよ」
「それは書記長様が寒いのに強いからでしょ。
冬場はこれくらい暖かくないと、僕死んじゃうよ」
フォルはそういって軽く身を震わせた。
寒がりなフォルがこんな格好でいるのは辛いだろう、と、
スターリンはさっさとコートをフォルに返す。
それに袖を通すフォルを見て、スターリンはいった。
「でももう春先だろ。少し暑くないか?」
「んー……今のところは平気だけど、もう少ししたら暑くなるかもねえ」
そういいながらフォルはコートのボタンを止めて、窓の外を見る。
そんな窓枠に吹き込んできた風が淡い色の花びらをおいていく。
フォルはそれを指先でつまみ上げた。
「あ……花びら。桜、かな?」
そういいながらフォルは窓の外に乗り出す。
どこに咲いてるんだろー。と呑気な声をあげている。
自分の服を着直していたスターリンはそんな彼に気づくと、
慌てて部屋に引っ張り戻した。
フォルはあくまでも他人にバレてはいけない存在。
それなのに危機感が薄すぎる、とスターリンはいつも思っている。
そんな心配は他所に"もっと探したかったのにー"とむくれるフォルを見て、
スターリンは彼の額を軽く小突いた。
「中庭にも幾らかあるって聞いてるのだよ」
「ふぅん、そうなんだ……」
そういいながらもう一度フォルは窓の外に視線を投げる。
今度身を乗り出したら蹴ってやろう、とスターリンが密かに思っていれば、
フォルはパッと顔を輝かせて振り向いた。
無邪気で明るい笑顔を浮かべている彼を見て、
スターリンは驚いたように瞬きを繰り返す。
フォルは彼を見つめたまま、笑顔でいった。
「桜が咲いたらさ、異国の騎士様もつれてきて、一緒におはなみ?しようよ!
ちょっとお菓子とか、お酒とか、ジュースとか買ってきて、
三人でお花見ながらお話してさ……
異国の騎士様の国の文化なんだって!」
春の計画を嬉しそうに語るフォル。
スターリンはそれをまじまじと見つめた。
答えない彼にフォルは一度口をつぐむ。
そして不思議そうな顔をして首をかしげて、訊ねた。
「……?書記長様?」
どうしたの、と少し心配そうな彼を見て、スターリンはふっと表情を和らげる。
そして、フォルの青い瞳を見つめながら、いった。
「そうやってるの見てると、お前が堕天使だってのを忘れるのだよ」
「え?」
スターリンの言葉に面食らったように、ぱちぱち、と瞬くフォルの瞳。
猫のような、アーモンドアイ。
相変わらず子供っぽいな、と思いながらスターリンは言葉を続けた。
「見えない、堕天使に。らしくない……」
堕天使らしくない。
そう思うことが増えてきた。
確かに、他人をからかったりすることが多く、悪戯好きで、嗜虐的ではある。
でも、少なくともスターリンにたいしては優しく、甘く、穏やかな性格なのだ。
時には子供っぽく甘えて見せたりもする。
堕天使というよりは小悪魔、といった方が正解のような……
人が苦しむ顔を見るのが好き、なんていっていた彼だけど、
スターリンが悲しい顔をしていると一生懸命慰めようとするし……
ディアロ城の騎士がいうような、"冷酷非道の堕天使"という言葉は、
あまりに似合わないと思う。
そこまでいって、スターリンははっとした。
もしかして、彼の機嫌を損ねただろうか、と。
フォルは自分が堕天使であることに誇りを持っているといっていた。
事実、堕天使であることを侮辱すれば何者であっても容赦なく叩き潰す面があった。
そんな彼に"らしくない"等というのは駄目だっただろうか、と……
しかし、フォルの反応は予想と違っていた。
スターリンの言葉に一瞬驚いたようだったが、すぐに嬉しそうに笑ったのだ。
「そっか。書記長様には、そういってもらえて、嬉しいや」
「俺には、なのか?」
不思議そうにスターリンはいう。
フォルはこっくりと頷いた。
そして、そっとスターリンの浅緑の髪を撫で付ける。
「うん。書記長様に言われるから、嬉しい……
だって、書記長様に近づけてるってことでしょ?」
「俺に?」
「うん……僕じゃ、全部はわかってあげられないかもしれないけどさ」
堕天使である自分には、人間の心理をすべて理解することは出来ないかもしれない。
フォルは感情が壊れている所為で泣くことが出来ないし、
あらゆる負の感情を一度"捨てて"或いは"なくして"しまったから。
でも、少しでも堕天使らしくないと感じてもらえているのなら……とフォルはいう。
「僕はね、ちょっとでも、書記長様の"近く"でありたいんだよ」
そういいながら、フォルはふわりと笑った。
やはり堕天使らしくない、柔らかな笑みで。
そのまま甘えるように抱きついてきた彼を抱き止めて、スターリンはいった。
「……そうかよ」
「あー、鼻で笑ったでしょ!僕、これでも真剣だったのにー!」
むう、とむくれるフォル。
スターリンは照れ隠しに軽く鼻を鳴らす。
そんな彼を見て少し拗ねた顔をしていたフォルだったが、"まぁイイか"と呟いた。
そして、スターリンを抱き締める腕に力を込める。
そのままスターリンの耳元に口を寄せて、低い声でささやいた。
「別に、いいんだよ?
違う面で"堕天使らしく"振る舞ってあげても?」
書記長様がそう望むなら、といってフォルはすぅっとスターリンの首筋を撫でた。
びくっと跳ねる彼の体を緩く掌で撫でるフォル。
スターリンは少し身を捩ると、キッとフォルを睨んだ。
「っ、遠慮しとくのだよ!」
「あはは、本当に書記長様は可愛いな」
顔真っ赤だよ、といってフォルはその頬をつつく。
けれどその表情は本当に幸せそうで……
堕天使らしくない堕天使を見て、スターリンは呆れたように溜め息を吐き出しつつ、
その腕におとなしく身を委ねた。
―― きみ、らしさ。 ――
(堕天使らしくはないけれど
確かに、お前らしいとは思うから…)
(君が受け入れてくれるなら僕は僕のままでいたいよ
ねぇ、少しは君に近い存在になれたかな?君は僕を愛し続けてくれる?)