無彩色極彩色コラボ&フォルでシリアスちっくなお話です。
全ての原因は阿呆堕天使ですごめんなさいフランコさん…←
*attention*
無彩色極彩色コラボ&フォルのお話です。
シリアスめなお話です。
首絞めネタ入ります。
主人をとるか、恋人をとるか…の選択に迫られるノアを書きたくて…←
訳がわからなくともノアをフォローしようとする献身的なフランコさんを書きたかったのです←こら
すべての原因は馬鹿フォルの好奇心です…
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、ほんとうにすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
穏やかな春の、夕方……
まだ遠くでは少し、騎士たちが騒いでいる声が聞こえる。
そんな時間……
黒髪の青年はよく遊びに来ている"彼"の部屋に来ていた。
静かに眠っている、赤髪の少年。
黒髪の青年は気配を殺して、そのベッドに歩み寄る。
獲物を追い詰める黒豹のように、静かに、着実に近づいていく。
……殺気を灯して。
しかしその黒の瞳にはありありと、迷いの色が滲んでいた。
***
―― 彼の行動の原因は、数時間前にあった。
いつものように、彼は普段自分が過ごしている廃墟のなかにいた。
最近はディアロ城の"彼"の部屋に留まることが増えてきたとはいえ、
一応彼……ノアールの家は此処。
時折主であるフォルも訪ねてきて何か用事を言いつけたりもするから、
ずっと"彼"……基、フランコのところにいるわけにもいかないのだった。
そして、今日もフォルが廃墟に遊びに来ていた。
自分の恋人であるスターリンがいなくて、暇をもて余しているという。
そういう時決まって彼は此処に来て、読書をしたり、
ノアールにチェスの相手を頼んだりしているのだった。
ノアールはそんなフォルのために紅茶をいれてテーブルに運んできた。
チェスの試合の途中だったのだが、フォルが"喉が乾いた"と言い出したからである。
フォルもノアールもそこそこ強いチェスプレーヤーであるため、試合は長引く。
喉が乾くのももっともか、とノアールは支度をしにいったのだった。
「主」
どうぞ、といいながらノアールはテーブルの上にティーカップをおいた。
フォルはそれを見て"ありがとう"と微笑むと、チェス盤に視線を向ける。
試合は大分進んでいた。
フォルの方が少し優勢で、ノアールは既にルークとビショップを一つずつ、
ポーンを数個取られている。
そして何度目かのチェックを躱したところだった。
フォルは暫しそうして盤に視線を向けていたが、やがてふっと溜め息を吐き出した。
「弱くなったね」
「えぇ……あまり、やる機会もなくなりましたから」
「そうじゃなくて」
「え?」
チェスのことだと思って返答したノアールの言葉をフォルは否定する。
きょとんとした彼の方を見て、フォルは笑うと細い指先でノアールの胸をつついた。
「君が。弱くなった」
「は……?」
戸惑った表情を浮かべるノアールを見て、
フォルはその胸を軽くこづいてから自分がとったノアールの駒を指先で玩ぶ。
「僕のこと、言えないよ。君は、弱くなった」
「……私は何も、変わっていません」
ノアールはむきになったように、そういった。
何となく……何となく、焦りを感じた。
弱くなった、だから要らない……
そう宣告されるのを恐れているかのように。
フォルもそんな彼の心理は感じているのだろう。
ふぅん、と少し面白がるような声をあげると、
玩んでいた駒をテーブルに転がして、それから自分の駒を動かした。
ノアールはそれを見て、声を漏らす。
「あ……っ」
フォルの駒はノアールのクイーンを狙える位置に立っている。
狙われているクイーンは逃がすことが出来るが、
それを逃がしてしまえば今度はキングが危なくなる……
フォルはそんなノアールを見て、目を細めた。
「どうする?」
キングを守るためにクイーンを捨てるか。
クイーンを助けてキングを危険に晒すか。
ノアールは選択を迫られて、固まっていた。
ふぅ、と息を吐き出した後、フォルは"ねぇノアール"と彼を呼ぶ。
ノアールは思考を止めて、フォルの方を見た。
フォルはサファイアの瞳でノアールを見据えている。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「君は僕の命令なら何でも聞ける、っていったよね」
「え?えぇ……」
それは、当然。とノアールは頷く。
ノアールにとって、フォルは恩人であり、唯一無二の尊敬対象。
その相手……フォルのためならば何でもする、というのがノアールの信念だった。
フォルはノアールの言葉を聞くと、そっか、と呟いて、
もう一度ノアールを見据える。
「なら……」
ノアールはフォルを見た。
彼のサファイアの瞳は冷たく光っていた。
ノアールがそれに思わず息を飲むと同時……
フォルはノアールを見据えたままに、静かな声でいった。
「あの子を、殺せる?」
***
その時のことを思い出していたノアールは小さく息を吐き出して、目を開けた。
目の前には眠っている赤髪の彼……フランコの姿。
ノアールはフォルの問いかけに答えなかった。
返事が、出来なかった。
出来るとも言わなかったし、出来ないとも言わなかった。
フォルも、答えないノアールに怒った様子はなく、
ただ"君の番だよ"とゲーム再開を促しただけだった。
あのあと結局普通に負けて、こうして子の部屋に戻ってきたノアールは……
静かに、フランコに歩み寄っていた。
無防備な寝顔。
いつもこの時間ならば彼が眠っていることは、ノアールもよく知っていた。
彼の国の文化だという。
よく寝るくせに背が低い、夜に寝ないから悪いんだといって、
彼をからかったことがあったっけ……
そんな思いを振り払うように、ノアールは頭を振った。
そして、すぐ傍まで歩み寄っているフランコを見下ろし、
その細い首筋に手を伸ばした……
その時。
「んんぅ……」
「……!」
フランコが小さく声を漏らした。
ゆっくりと瞼が上がって、ノアールの方を見る。
揺らいだ金色の瞳と視線が絡むと、彼はどこかほっとしたように微笑んだ。
「ん……何や、ノアール……帰ってきてたんか」
「……あぁ」
掠れた声でノアールは答える。
フランコは悲しげに眉を下げて、呟くように言う。
「……遅いで。何処いってしもたんやろ、って……心配してた」
その言葉にノアールは目を伏せる。
確かに今日は、少し帰りが遅くなった。
フォルとのチェスの試合が終わってからも暫くは一人、
廃墟の自室で考え込んでいたから。
ノアールがそんな思考に沈んでいると。
フランコがぎゅっとノアールの服の袖を握った。
驚いた顔をするノアールを見上げたフランコは、目を細めていった。
「一緒に、寝よ……?」
いつものように、彼は言う。
甘えたような、声で。
ノアールはそれを聞くと、ぐっと唇を噛み締めた。
そして……フランコが寝ているベッドの上に乗る。
ぎしっとスプリングが軋む音がした。
ベッドに横たわるのではなくて、自分に馬乗りになるノアールに、
フランコは驚いたように目を見開く。
「ノア……っ」
フランコがノアールを呼び掛けるのと同時。
ノアールはフランコの首に手をかけた。
そのまま、手に力を込める。フランコは大きく目を見開いた。
「ん、ぐ……ぅっ」
苦しげに呻く声。
それに怯みかけるが、ノアールは手を緩めない。
視線を落とせば、驚いたように自分を見上げているフランコと目があった。
彼は悲しげに眉を下げると、唇の動きで訴えた。
―― くるしい。
「……っ」
「の、あ……っ」
掠れた声で名前を呼ばれて、ノアールは顔を歪めた。
そして、フランコの首にかけていた手を外す。
不意に流れ込んできた空気にフランコは苦しげに噎せた。
「けほ、っ……う、ぅ……」
苦しそうに喘いでいるフランコを見て、ノアールは顔を歪めた。
そして、顔を片手で覆って、呟く。
「出来ない……」
出来なかった。
フォルの命令に従おうとしたけれど、出来なかった。
彼を……フランコを殺すことなど、出来なかった。
幾ら、フォルの命令でも。
ノアールに首を閉められていたフランコは暫し噎せていたが、
顔を覆ったまま俯くノアールを見て、幾度もまばたきをした。
そして、呼吸を整えつつ、いった。
「はぁっ、はぁ……っ、ノアール……?」
「……すまない」
ノアールはそう呟くと、ベッドからおりた。
そして、そのままベッドに寝転んでいるフランコを見る。
彼の金色の瞳は涙で潤んでいた。
少し呼吸が整うと、フランコは立ち尽くすノアールに手を伸ばして、彼の手に触れた。
びくっと強張る彼の体。
彼を安心させようとするかのように微笑みつつ、
フランコはそっとノアールの手を撫でる。
「……何があったんか、知らんけど……
理由なくこんなことしたわけとちゃうやろ?」
ノアールは答えない。
けれど、フランコは微笑んだままにノアールにいった。
「なら、大丈夫や。いつも、俺言うとるやろ?」
ぎゅ、とノアールの手を握る。
先程まで彼の首を絞めていた、細い指。
男のそれにしては細く柔らかな、でも大きな手を握って、フランコは言う。
「俺以外に当たったら、アカン。
その約束だけ守ってくれたら……俺は、何されてもええよ。大丈夫」
ちゃんと受け止めるから。
そういってフランコはベッドに体を起こした。
そして優しくノアールの抱く。
本当は頭を撫でたかったのだろうが、長身のノアールが立ちっぱなしでは背が低い、
挙げ句ベッドに座った状態のフランコでは届かないらしい。
まだノアールに首を絞められた所為で呼吸が整っていないのか、
或いは少なからず恐怖心があったのか……少し腕が震えていた。
ノアールはそのままベッドに座って、フランコを抱き締めた。
すまない、と呟く彼の声にフランコは首を振って、ノアールの肩に顎をのせる。
「……大丈夫」
ノアールを宥めるようにフランコは言う。
フランコの体を抱きながら、ノアールは小さく息を吐き出した。
優しく彼の体を抱き締めるフランコと、
彼に抱き締められたままで表情を歪めているノアールを外から見つめるのは……
―― 亜麻色の髪の青年。
「ほら、いっただろう?……君は弱くなった、って」
小さく呟くその声は、誰にも聞かれることはなくて……
亜麻色の髪の彼……フォルは小さく笑って、呟く。
「本当に殺しちゃったらどうしよう、と思ったけどね……
試してみたかったんだ、ごめんねノア」
僕への忠誠か、大切な人への愛情か。
どちらをとるのか見てみたかった。
そんなことを呟いて、堕天使は微笑む。
―― 選べなかった結末。 ――
(さながら人魚姫の結末。
俺は人魚姫ではないしコイツは王子ではないけれど
"そうしなければならないこと"に従えなかったという点できっと俺は同じで)
(永遠の忠誠…別に僕はそんなものを望んでなどいない。
大切なものはひとつだけ、何て言うつもりはないよ。
君は僕の大切な部下だし、僕のことしか見ていなかった君がどう変わるかも興味深いしね)