学パロ合宿ネタでお医者様コンビでのお話です。
このシチュでやってみたいお話でして…
家庭教師と生徒というこの設定での二人も大好きです←おい
*attention*
お医者様コンビのお話です。
学パロ(本家Laurentia!)の設定のお話です。
ほのぼのなお話です。
みんなで泊まり合宿中でのお話です。
ジェイドはあくまで大学生で一緒に来ることは出来ないので…←
こうして会えないけれど思いあっている雰囲気が大好きです(笑)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKというかたは追記からどうぞ!
ーー 校外学習の、静かな夜。
黒髪の少年は宛がわれている自室のベッドの上にいた。
ぱらぱらと本を捲っているが、その深緑の瞳は集中して文字を追ってはいなくて。
彼……メンゲレは小さく息を吐いて、ぱたりと本を閉じた。
そして窓の外をみて、溜め息を吐き出す。
「はぁ……」
「メンゲレさん?」
不意に聞こえた声に、メンゲレは驚いた顔をして振り向く。
肩に柔らかな白いタオルをのせた白髪の少年が、
不思議そうな顔をしてメンゲレを見つめている。
「アルさん……」
メンゲレと同室の少年……アルだった。
先程まで一緒に風呂に入りにいったため、彼の髪は濡れている。
今は歯を磨くために洗面所にいっていたのだった。
戻ってきたらメンゲレが本を読みながら溜め息等吐いているから、
心配になったのだろう。
アルは小さく首をかしげつつ、メンゲレに問いかける。
「どうかしたのですか……?元気、ないですね」
「え?あ、いえ、大丈夫ですよ……」
メンゲレは小さく微笑んで、首を振った。
そんな彼の反応にアルはやや心配そうな顔を崩して、"そうですか?"といった。
メンゲレが微笑んで頷くと、アルはすこしほっとした顔をした後、
何かを思い出したような顔をする。
「あ、僕ちょっとフィアのところにいってきますね。
お昼に一緒にいたとき、フィアのお部屋に校章を落としてきちゃったみたいで……
明日、受け取れるかもよくわからないので今のうちに引き取ってきます」
さっき連絡があったんです、といいながらアルは軽く携帯を揺らした。
メンゲレはそれをみて、穏やかに微笑みつつ頷く。
「おや、そうなのですか。いってらっしゃい」
「ふふ、いってきますね!」
アルはそういうと、携帯を持って部屋を出ていった。
メンゲレはそんな彼に微笑んで手を振った。
ドアがしまると、メンゲレはふぅとひとつ息を吐き出す。
そして、再び窓の外に視線を移した。
美しい、月が輝いている。
まだ冷たい冬の空気に磨かれた小さな星がきらきらと瞬く。
それを見つめるメンゲレの瞳は、何処か寂しげだった。
「……つまらない、という訳ではないのですけれど……」
メンゲレはぽつり、とそう呟いた。
この校外合宿が楽しくないわけではない。
普段交流することが出来ないアルたち……
他校の少年たちと交流することが出来る機会は貴重だったし、
そうして一緒に過ごす時間はかけがえのない、楽しいもので。
しかし、必然こうして泊まりがけで学校行事となってしまえば、
いつものように家庭教師の講義を受けることは出来ない。
メンゲレはいつも自分に勉強を教えに来てくれる翡翠の瞳の彼が好きだった。
だから、ほんの数回彼に会えないだけだと言われてしまえばそれまでなのだが……
それがメンゲレにはすこし、寂しいのだった。
しかし、落ち込んだ顔をしていてはアルを心配させる。
そう思って微笑んでみせたのだった。
アルはどれくらいしたら戻ってくるだろうか。
もう少ししたら就寝時間になってしまうし……
先にベッドに入っていようか……そう思ったとき。
「……ん?」
不意に鳴った、携帯電話。
それは、メンゲレのもので。
唐突な電話に、メンゲレは、驚いてその画面を見た。
「あれ……?」
画面に表示されたのは、数字だけ。
登録外の番号だ。
今回の合宿で交流することになっている友人たちの番号は念のため登録してあるから、
そういう者たちからの連絡ならば名前が表示されるはずなのだが……
誰、だろう。
もし間違い電話だったそう伝えてやれば良い。
そう思いつつ、メンゲレは通話状態にして携帯を耳に当てた。
「もしもし……」
『…………』
返事は、ない。
あれ?とメンゲレは疑問の声をあげた。
いったい、誰だろう。
間違い電話だろうか。
「あの……」
『不思議、ですねぇ。
一週間前には会っているのに随分久しぶりに貴方の声を聞いた気がします』
電話から聞こえてきたその声に、メンゲレは深緑の瞳を大きく見開いた。
聞こえたその声は、メンゲレにとって聞き覚えがありすぎるもの。
そして何より……
たった今、空を見ながら想っていた人の声……
ずっと、聞きたかった、愛しい翡翠の瞳の彼の声。
『おや?メンゲレ?』
メンゲレが返事をしないからだろう。
電話口の向こうで、彼が不思議そうな声をあげる。
しかしその声には微かに面白がるような色が滲んでいた。
メンゲレは携帯を握り直して、掠れた声をあげた。
「ジェイド、さん……?」
『ふふ、正解ですよ』
メンゲレの問いかけに相手……ジェイドは笑ながら答えた。
ーー そう。
電話を掛けてきたのは、メンゲレの家庭教師を務めている青年、ジェイドで。
メンゲレは彼が電話を掛けてきたという予想外の事態に対する動揺がすこしおさまると、
すこし速くなった呼吸を整えて、ジェイドに問いかけた。
「ど、うして……?」
『ふふ、貴方の番号は聞いていましたからねぇ……
いつも聞く貴方の声が聞けないのが、何だか物足りなくて……』
つい電話をしてしまいました、と彼は笑いながらいった。
メンゲレはその言葉に緑の瞳を幾度も瞬かせる。
「物足りな……」
『貴方には迷惑でしたかね、メンゲレ……?』
すこしすまなそうな声色になったジェイドに、メンゲレははっとする。
そして、見えないとわかりつつぶんぶんと首を振って、彼にいった。
「い、いえ!
……僕も、僕も……ジェイドさんの声が、聞きたくて……」
それで、と呟くメンゲレの声はすこし涙で滲んだ。
思わぬ彼からの連絡が、あまりに嬉しくて。
ジェイドにも、彼がすこし涙ぐんでいるのがわかったのだろう。
彼はくすくすと笑っていた。
『どうしたのですか、メンゲレ……泣かないでくださいな』
「っ、泣いて、ません……!」
『ふふ、そうですか……ならば、良かった』
いつも通りの穏やかな彼の声。
メンゲレはそれを聞きながら目を細める。
『元気にやってますか?怪我などしてません?』
「えぇ、元気ですよ。そんなに危ない実習もありませんから」
メンゲレは微笑みながらそういった。
ジェイドはそれを聞いて、穏やかな声で言う。
『そうですか。それならば良かったです。
次の授業の時に、土産話を聞かせてくださいな』
「……ふふ、勿論です……
今からその時が、とても楽しみです」
メンゲレはそういって、窓の外に視線を投げた。
相変わらず、美しい月が見える。
と、それを見た彼はなにかを思い付いた顔をした。
「ジェイドさん」
『?なんですか?』
「今、空見れますか?」
メンゲレの問いかけに、ジェイドは暫し黙り込んだ。
電話越しにカーテンを開けるような音がはいってきたから、外を見たのだろう。
驚いたような彼の声が聞こえてきた。
『おや……綺麗な月ですね』
「ふふ……僕も、そう思って見ていたんですよ」
『なるほど……今、同じ空を見ているわけですねぇ……なんて』
"クサい台詞でしたかね"といって、ジェイドは笑ったようだった。
メンゲレも微笑んで、"そうですね"なんていってみる。
くすくす、と二人の笑い声。
ひとしきり笑った後、ジェイドはふうっと息を吐いて、いった。
『さて……明日も貴方は活動があるでしょうし、
そろそろお喋りも終わりにしましょうか』
「え?あ、そうですね……」
メンゲレは時計を一瞥してからそう呟いた。
確かに、もうすぐ就寝時間だ。アルも戻ってくることだろう。
ほんのすこしの時間ではあるが彼と……ジェイドと話ができて、
メンゲレは穏やかな表情を浮かべていた。
「じゃあ、お休みなさい、ジェイドさん……」
『えぇ、お休みなさい。メンゲレ……
ああ、この番号を登録してくださいね?』
また電話をするかもしれませんから、とジェイドは言う。
メンゲレが"え!?"と驚いた声をあげると同時、
小さく笑って彼は電話を切ったようで。
「……もう、ジェイドさんは」
相変わらず、あの人には勝てない。
そう思いつつ、メンゲレは目を細めて微笑んでいた。
先程までの寂しさは、すっかり消えてなくなっていた。
ーー 貴方の声が聞きたくて… ーー
(ほんの僅かな間だったけれど
聞きたかった貴方の声が聞こえて良かった)
(声が聞けない時間は永遠にも感じる。
愛しい、愛しい貴方の声が聞けないのは寂しいから……)