本日二月二十日は我が家のショタ担当アルの誕生日、ということで…お祝いSSを。
いつもお世話になっているナハトさんのお宅のお子さまをお借りしてしまいました…←
*attention*
アル&双子さん(アントレ君ソルティちゃん)&お医者様コンビなSSです
ほのぼのバースデー小説
基本人懐っこくて友達大好きなアル
悪戯っ子なソルティちゃんを書きたかったというのが本音です(おい)
十七才というのが信じられない幼さのアルと双子さんの絡みがやりたくて…←
そしてそれを見守るお医者様コンビの保護しゃぶり(ぇ)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がokというかたは追記からどうぞ!
とある穏やかな、冬の朝……ーー
鮮やかな金髪の少年と少女は、医療棟の一室のドアの前に立っていた。
少女はわくわくとした表情で。少年は若干心配そうな表情で。
すぐ隣にいる少女を見て、少年はいう。
「ソルティ……本当にやるの?」
「しっ、静かにしてないとばれちゃうでしょー……
あ、今なら行けるかも……大丈夫、かな!」
人差し指を口の前に当てて、金髪の少女……ソルティはいう。
悪戯な笑みを浮かべた彼女を見て、双子の兄であるアントレは溜め息を洩らした。
二人は今、ある"作戦"を実行に移そうとしているところだった。
前から計画していた、とはお世辞にも言えない……
"彼"の誕生日が今日だと聞いて、即興で思い付いた悪戯、かつサプライズである。
この計画を実行することに対して心配そうなアントレを見て、ソルティはいう。
「アルさんはあんまり気配察知が得意じゃないっていうから大丈夫!」
「いや、大丈夫ってそこじゃ……」
「せーのでいくよ?せーの!」
ソルティは兄の言葉を途中で遮り、せーの、の合図でドアを開けた。
そのまま、猫のようにするりとドアのなかに入っていく。
アントレは慌てて口をつぐみ、先に部屋に入っていった片割れを追いかけた。
部屋に入ると、すぐに机の下に入り込む。
音をたてないように気を付けながら潜り込んで、二人はほっと息を吐く。
部屋の主である白髪の少年はドアに背を向けて、本を選んでいる様子だった。
ぱらり、ぱらり、とページを捲っていく乾いた紙の擦れる音が響く。
アントレとソルティはどうにか気配を消して、彼のすぐ後ろまで歩み寄っていく……
あと少しでソルティの手が彼に届く、というところで。
白髪の少年……アルが不意に振り返った。
「えっ!?」
「わぁっ!?」
「きゃあっ」
三者三様の悲鳴が上がる。
アルは反射的に後ずさりをした。
無論、その背にあるのは大量の本が詰め込まれた本棚で……
思いの外強い勢いでぶつかったらしく、本棚ががたがたと揺れた。
そして、安定悪く積んであったらしい本がどさどさと落ちてきた。
「危ないっ!」
アルは二人を抱き寄せた。
そして反射的に障壁を張る。
落ちてきた大量の本がどさどさっと三人の回りに積み重なった。
「……ふぅ」
アルは小さく溜め息を吐き出した。
そして自分の腕のなかに抱き込んでいるアントレとソルティを見る。
「大丈夫ですか、二人とも」
「え、えぇ……」
「あたしは、大丈夫!」
アントレとソルティはアルの言葉に頷く。
アルはそんな二人の反応にほっとしたように頷いた。
怪我をしていないなら何よりだ。
彼らが無事なことを確認して少し落ち着くと、
"そういえば"と呟いて、アルは不思議そうな顔をした。
「でも、二人ともどうしたのですか?
ノックもしないで入ってくるの、珍しいですねぇ……」
アルはそういいながら二人に問いかける。
普段アントレやソルティが部屋に来るときにはきちんとノックをする。
そうするように彼らの父親、或いはアルにとっても師であるジェイドに、
他人の部屋に入るときにはノックをするように言われているのだろう。
そんなアルの言葉に、アントレとソルティは顔を見合わせて、笑った。
そして、アルの方を見ると笑顔のままに、ソルティがいう。
「あのね、あたしたち言いたいことがあって……」
「?言いたいこと?」
ソルティの言葉にアルはきょとんとして首をかしげる。
こっそりと部屋に入って、その状況で彼らが言いたかったこととは……?と。
アントレとソルティは顔を見合わせて、口の動きで"せぇの"と声をあわせる。
そしてアルの方を向いて、笑顔を浮かべた。
「お誕生日おめでとーございますっ!」
二人は声をあわせていう。
アルは二人の言葉に目を丸くした。
反応しない彼。
アントレとソルティはやや不安になって、先ほどとは違う意味で顔を見合わせた。
「あ、あれ?」
「間違って、ましたか……?」
日付を間違ってた?
今日だと思ったのだけれど……
アントレとソルティがそういうと、アルははっとした顔をした。
そして、笑顔を浮かべて"あってますよぉ"という。
「ちょっとビックリしちゃって。ごめんなさい。
ふふ、ありがとうございますー、すごく嬉しいですよ」
アルはそういってもう一度二人を抱き絞めた。
双子は顔を見合わせて、微笑む。
"成功だね"というように笑った後、アントレはアルにいった。
「お父様とジェイド様がおよびでしたので、僕たちが呼びに来たんです」
「その時にせっかくだからちょっとサプライズしようかなぁ、って」
あたしが提案したんだよ、とソルティはいう。
アントレはそんな彼女を見て苦笑を浮かべた。
「アルさんのご迷惑になるかな、って止めようとも思ったんですけれど……」
アントレの言葉にアルは笑顔のままに首を振る。
そして、二人の目を見ると嬉しそうにいった。
「ふふ、ビックリはしましたけど嬉しかったですよ。
迷惑なんてことはありませんから……
じゃあ、メンゲレさんやジェイド様たちのところに行きましょう」
アルはそういいながら本の山をまとめ直して立ち上がる。
差しだされた手を握って、アントレとソルティも立ち上がる。
行きましょう、と促した彼に頷いて、一緒に部屋を出ていった。
***
アルはアントレとソルティと一緒にジェイドの部屋に向かう。
長い廊下を歩く間にも彼が誕生日だと知っている仲間たちから祝福の言葉を受け、
アルは照れ臭そうに、でも本当に嬉しそうに微笑んでいた。
そうしてたどり着いた、彼の統率官の部屋。
アルは少し服装を整えてから、ドアを軽くノックした。
「ジェイド様、アルです。入ってよろしいですか?」
「どうぞ。アントレとソルティも一緒ですね?」
中から聞きなれた彼の声が返ってくる。
恐らく、双子の気配も感じていたのだろう。
メンゲレも一緒にいるといっていたし、恐らく彼もいるはずだ。
アルは失礼いたします、と室内に声をかけてドアを開けた。
そして驚いたように黄色の瞳を大きく見開く。
「あ、あれ?」
声は聞こえたのに、室内は無人。
アルが、そして一緒に部屋に来たアントレとソルティも"あれれ?"と声をあげたとき。
ぽんっと軽い音が室内に響き渡り、ひらひらと何かが降ってきた。
柔らかく、暖かい色をしたそれは……色とりどりの花びらで。
アルはただでさえ大きく見開いていた瞳を更に大きく見開いて、声をあげた。
「わ……」
「ふふ、アントレたちのサプライズに負けてはいられませんからね」
そう笑う声が聞こえて、アルたちはそちらを見る。
先ほどまで姿が見えなかったジェイドとメンゲレが机の傍にたっていた。
恐らく、ジェイドかメンゲレの魔術で姿が見えないように隠していたのだろう。
ソルティはメンゲレにかけよってぎゅっと抱きつく。
そして、嬉しそうに話した。
「父上様、アルさん呼んできたよっ!あたしのサプライズも成功したんだ!」
「ちょっと失敗だった気もするけどね……」
「いいの!ビックリさせられたから成功!」
やや強引な妹に苦笑しつつ"まぁビックリはさせられましたよね"というアントレ。
メンゲレはそんな彼らの言葉に微笑みながらうなずく。
そしてアルの方を見て、いった。
「お誕生日、おめでとうございます」
「えへへ、ありがとうございます。嬉しいなぁ……」
幸せそうにアルは笑う。
ジェイドはそんな彼に歩み寄って、優しく白髪を撫でた。
「お誕生日おめでとう。本当に嬉しそうですね、アル」
ありがとう、というアルの表情は本当に幸せそうだ。
ジェイドのそんな言葉にアルはこくこくと何度も頷く。
「僕、一人っ子ですから。
家にいたときには父さんや母さんがお祝いしてくれましたけれど……
こうして誰か、友達とか、仕事仲間とかがお祝いしてくれるようになった、
騎士団入ってからの方が、お誕生日が楽しくて嬉しいんですよ」
無論、親に祝ってもらうのも嬉しかった。
街にいた頃も幼馴染みが遊びに来てくれたりはしたし、
それはそれでとても楽しい誕生日ではあったけれど、
こうして騎士団に入って、たくさんの仲間が、友人が、上官が出来て……
そんな人たちに祝ってもらうのは、一際嬉しいのだ、と。
そういって、アルは無邪気に笑う。
そうでしたか、とジェイドはそんな彼の頭を撫でた。
翡翠の瞳を細めつつ、彼はメンゲレとその子供たちの方を見る。
「最初から僕もお祝いするつもりではいたのですけれどね、
こうして、ちょっとしたサプライズをしようかと、
そう提案してくれたのはメンゲレたちなのですよ」
ジェイドの言葉に、アルはそちらへ顔を向けた。
メンゲレの深緑の瞳と視線が絡むと、アルは微笑んで礼をいう。
「えへへ、メンゲレさんもありがとうございます」
「いえいえ……いつもアントレたちと仲良くしていただいてますし……
喜んでいただけたのならば、僕たちも嬉しいですよ」
メンゲレははにかみながらそういうと、アントレとソルティを離した。
そして、キッチンの方へ向かいながら"お茶にしましょう"という。
「ちょっとしたものですけれど、ケーキを焼いたんです。
ここで、ミニパーティでもどうかなと」
「わぁっ、本当ですか!メンゲレさんのお菓子大好きですー」
アルはそういって嬉しそうに笑う。
よかったね、というソルティとアントレにも笑顔で頷き返していた。
ジェイドは紅茶をいれるのを手伝う、といってメンゲレの傍にいった。
楽しそうにミニパーティの準備をする"子供たち"を見て、メンゲレは微笑んだ。
「ふふ、本当に楽しそうですね」
「アルは勿論、アントレとソルティもね。
彼らがああして楽しそうにしているのを見るのは、僕としても嬉しいです」
メンゲレはそうですね、とジェイドの言葉にうなずいて微笑んだ。
ーー 祝福の言葉を。 ーー
(寒い寒い冬に生まれた君に
暖かく優しい、祝福の言葉を)
(楽しそうに笑う子供たちの顔。
それを見ているのが僕らにとっても幸福なことだから)
2014 2.20 Happy Birthday Al!