主人公コラボのSSです。
ナハトさんに描いていただいたフィアのイラストの表情がツボで…
こういうやり取りする主人公コラボが書きたくなりました←
*attention*
主人公コラボのSSです
ちょっとシリアスちっくなお話、です
自分を省みない自己犠牲的なヒトラーさんとそれを心配するフィア
腕掴んだままで会話してるのとか好きなのです←ぇ
基本的にやたら男らしい思想なフィア嬢です(笑)
フィアの発言にヒトラーさんはちょっと苦笑だったらいいな、という妄想(こら)
ちょっと男女逆転気味な感じのこの二人が好きです←おい
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKというかたは追記からどうぞ!
弾ける炎。
飛び散る閃光。
獣の唸る声と、飛び交う指示の声。
ディアロ城の騎士たちは城の周囲を囲うように現れた魔獣の討伐を行っていた。
何者かが送り込んだのか、魔獣が偶然大量発生したかは、不明。
それは後々風隼の騎士等が調べる所だ。
暫し、魔獣と騎士たちとの戦闘が続いていたが、所詮相手は魔獣。
数十分で騒ぎは鎮圧されて、夜の城周りには静寂が戻り始めていた。
討伐に参加していた騎士たちも、各々部屋へ引き上げ始めている。
そんな城の周囲の一角。
「どうにか、なりましたね……」
ほっと息を吐いて、亜麻色の髪の少年は隣にいる黒髪の少年にいった。
長い黒髪の彼は小さく息を吐いて、周囲を確認する。
「でも少し、被害は受けたようだな……」
黒髪の彼……基ヒトラーがそういうと、隣の少年、フィアは頷く。
彼らの視線の先にあるディアロ城の城壁には少し亀裂が入っていた。
思いの外強い魔獣で、騎士たちも本気で魔術を使ったために、
それの反動もあいまってああして亀裂が入ったのだろう。
ヒトラーはその亀裂をそっとなぞると、溜め息をひとつ。
そして、緩く魔力を放出した。
みるみるうちに城壁が修復されていく。
ヒトラーは珍しく、こうして物質を修復する魔術を使える騎士だった。
人間ではこうはいかないらしいが、城壁くらいならばなんとか直せるという。
「…………」
フィアが壊れかけた城を直すヒトラーを見るのは初めてではない。
しかし彼は隣で修復作業を行っている彼をじっと見つめたかと思えば、
緩く、彼の黒い制服の祖での辺りをつかんだ。
「!フィア?」
唐突な彼の行動にヒトラーは驚いて目を見開く。
放出していた魔力も、フィアを気遣ってか止まった。
魔力……悪魔の魔力を使っているために赤色に変わった、彼の瞳。
フィアはそれをじっと見つめ返すと、先程壁をなぞった方の腕をつかんだ。
「っ、!」
ヒトラーの口から小さく、声にならない悲鳴が漏れた。
痛そうに顔を歪めている。
フィアはそれでも彼の腕を離すことなく、そっと気遣いつつその袖を捲る。
黒い制服だからわかりづらかったが、彼の腕には傷があって、
なかに着ているシャツを赤黒く汚していた。
それを見て、フィアはすっと青い瞳を細める。
そして、まっすぐにヒトラーをみつめた。
「やはり……怪我を」
フィアは静かに呟く。
ヒトラーは決まり悪そうに視線を逃がした。
先程の任務中に負った傷だった。
確かに痛みはあったが、それどころではないために誤魔化して、隠していた。
幸か不幸か、その時傍にいた仲間からは死角になっていたらしく、
ヒトラーが怪我をしたのには気づかなかったらしいのだが……
フィアは、勘づいていたらしい。
ヒトラーは小さく溜め息を吐き出すと、いった。
「よく、気づいたな」
「俺の周りには放っておくと無理する奴しかいないので、
そういうのを見破るのにはいい加減になれてきました」
フィアはそういいつつ、ヒトラーの袖をもう少し上まで捲り上げた。
そして、どうやらポケットにいれていたらしい消毒液の小瓶を取り出した。
ヒトラーを見て"少ししみるとおもいます"と宣言をする。
ヒトラーが小さく頷くと、彼の腕の傷の上に垂らした。
結構しみて、ヒトラーはぐっと唇を噛み締める。
フィアはそんな彼を見ると、溜め息混じりにいった。
「怪我をしたのならば先に医療部隊に治療を頼むべきです。
壁なんていつでも直せる、もっというならヒトラー様の魔力に頼らずとも……
もう少し、ご自分のことを大切になさってください」
フィアはヒトラーを見つめつつ、そういう。
そして、消毒液の瓶をしまうと、取り出したハンカチで彼の傷を縛った。
"これでよし"と呟くフィア。
ヒトラーは暫し彼を見つめていたが、やがてふっと笑って首を振った。
「私は……良いんだ。
自分を大切にする必要なんて、ない」
そういいつつ、ヒトラーは再び壁のひび割れに手を当てた。
作業再開、と言わんばかりの彼の表情。
小さく溜め息を吐いてその手を掴み直しつつ、フィアは彼にいう。
「……それは、何故ですか」
ヒトラーは答えない。
わかっているだろう?というように微笑んだまま、フィアを見つめていた。
フィアはそれを見つめ返して、目を伏せる。
そう。気づいている。
ヒトラーが自分を気遣わない理由。
もちろん、彼の元々の気質でもある。
自己犠牲的で仲間思いで、優しい彼。
自分の身を擲ってでも、仲間を、部下を、友人を守ろうとすることだろう。
そして、それと同時。
彼は、"自分"という存在を決して肯定的に捉えていない、のだと思う。
大罪のフラグメント。
そう呼ばれる、彼。
悪魔の魔力を有していて、一歩間違えば世界を破壊に導きうる彼。
そんな自分自身を気遣う必要などない。
そう、彼は言いたいのだろう。
わかっている。
わかっていた。
決して付き合いは長くない。
けれど……ーーわかっていた。
そんなフィアの感情がヒトラーにもわかったのだろう。
彼は微笑んだままに"離してくれないか、フィア"という。
フィアに……天使の魔力を、自分とは真逆の魔力を持つフィアに触れられていては、
悪魔の魔力を放出することは危険すぎて、できないから、と。
しかし、フィアは手を離そうとしなかった。
ヒトラーが困ったような表情で見ると同時。
フィアも、顔をあげる。
まっすぐな青い瞳は、強い光を湛えていた。
「……それならば」
静かな、声で彼は呟く。
その声に、ヒトラーは小さく首をかしげた。
彼の瞳を見据え、フィアはいった。
「俺が、貴方自身が出来ない分まで貴方を大切にしましょう」
「え……」
驚いたように固まるヒトラー。
フィアは、彼から視線を外さない。
ゆっくりと、でもしっかりした声でフィアは言い切った。
「ヒトラー様自身がご自分を大切になさらないのならば俺がその分を補いましょう。
貴方を守り、支えます。
貴方が、ヒトラー様が無理をすることがないように」
そんな必要がないように、といってフィアはヒトラーの腕を掴んだまま下ろす。
もう直さなくていい、というように。
そして、ふっとやや自嘲気味にも見える笑みを浮かべて、いった。
「もっとも……
俺等いなくても、貴方を気遣う人は多くいると思いますが」
それは貴方もわかっているでしょう?とフィアはいう。
その言葉に今度はヒトラーが目を伏せる番だった。
知っている。
自分を慕ってくれる部下たち。
自分を大切だといってくれる友人。
確かに、確かに……少なくは、ない。
フィアはヒトラーをまっすぐに見つめた。
そして、彼にしては珍しい笑顔を浮かべて、いう。
「俺が邪魔にならないのならば、俺も貴方を守ります」
きっぱりとした、宣言。
貴方を私が守りましょう、と彼はいう。
ヒトラーはそんなフィアの宣言に暫し固まっていたが、
やがて、おかしそうに笑っていった。
「ダメだな、私は……
仮にも女性であるフィアにそんな台詞を言わせてしまっては」
守る立場にあるべき男性の自分が女性であるフィアに"守る"と宣言された。
それではダメだな、とヒトラーは苦笑を浮かべる。
フィアはそんな彼にゆっくりと首を振って見せた。
そして、微笑みながらいう。
「俺を女性と思わなくて結構です。
俺は一人の騎士であり、騎士として此処に存在する以上は男です」
きっぱりとそういいきるフィアに、ヒトラーは苦笑する。
「……フィアは、本当に強いな」
「強くなんてない。
貴方に比べたら、ずっと弱いですよ」
仲間を思いやり、自分を省みないほどに優しい貴方には勝てない、とフィアはいう。
そして、もう一度ヒトラーの腕を引っ張った。
「とりあえず、傷を診てもらってください。
俺のは、あくまで応急処置ですから……
もしも、この亀裂を直すというのなら、
きちんとヒトラー様自身の傷を治してからになさってください」
いいですか、とフィアはいう。
腕は、相変わらず外さない。
やや、強引な態度だ。
頷く他ないな、とヒトラーは苦笑してうなずいた。
それを見て、フィアは満足そうな表情を浮かべる。
「では、いきましょうか。
アルたちももう、城に戻っているでしょうし」
フィアはそういって、城のなかに向かって歩き出す。
ヒトラーはその後ろ姿を見つめてから、声をかけた。
「……フィア」
「?なんでしょう」
くるり、と振り向くフィア。
ヒトラーはそれを見て、微笑みながらいう。
「ありがとう」
「……礼を言われることをした記憶はありませんよ」
"ただのお節介です"といって、フィアはぷいと後ろを向いてしまった。
恐らく照れているのだろうな、と思いつつ小さく笑うと、
ヒトラーは再び歩き出したフィアの小さな背中を追いかけた。
ーー 儚くも、頼もしく ーー
(頼もしく、強い背中。
でもそれにすがるばかりでは駄目だから)
(ともすればその身をすり減らしてでも誰かのためと動こうとする貴方
俺なんかが守りたいというのは烏滸がましいかもしれないけれど)