リスタとジェイドのSSです。
この二人はセラとしての任期も被っているので一応絡ませられます…←
夕方にアップしたナハトさんのお子さまルーデルさんとのお話の続き的な…
あとから間違いなくジェイドに説教食らうだろうな、と(笑)
基本的に大人っぽくておとなしいジェイドに
「馬鹿リスタ」とか「もう知らない」とか言わせてみたかっただけというのは内緒です←ぇ
ともあれ、追記からお話です!
消毒の匂いが満ちる、真っ白な部屋。
清潔感に満ちたその空間のベッドの上に座らされた銀髪の男性…リスタは、
白衣姿の緑髪の男性に見下ろされていた。
銀髪の彼の方が年上なのだが、この場で立場が上なのは白衣姿の彼の方。
両腕を組んで溜め息を吐き出す彼……ジェイドを、リスタはおずおずと見上げた。
「馬鹿ですか、本当に貴方という人は……」
ジェイドは呆れ果てた顔をして、リスタを睨む。
彼が此処にいるのは以前彼が負った傷が痛んで動けなくなるという事態が発生したから。
おとなしく事情を説明したはいいのだが、案の定こうして怒られているわけである。
「その傷を負った足で一、二週間で何十件もの案件こなす馬鹿が何処にいるのですか」
主治医に睨まれ、リスタは首を竦めた。
そして、弁解するようにいう。
「無茶ってほどの無茶じゃないよ……
ちょっと仕事が立て込んでただけで」
「それが無茶だといっているのに気づきませんか貴方は」
そういいながらジェイドは軽くクリップボードでリスタの頭をはたいた。
痛、と呟く彼に、ジェイドはもう一度溜め息。
「無茶をするな、といっているのです。
はしるなという言いつけは流石に守っていると思いますが……
長距離の移動も不可能事項だとそろそろ頭にいれていただけませんかね?」
「わかってるって……」
リスタは苦笑気味にそういった。
ジェイドはそれを聞いて軽く眼鏡をあげて、いう。
「わかってるなら急に歩けなくなるほどの痛みが出るような事態にはなりません」
もう一度クリップボードではたかれる。
痛いってば、と抗議の声をあげたリスタは……
ジェイドの顔を見て、黙り込んだ。
冗談で叱っているわけではないことくらい、彼だって理解している。
「患者だからいっている、というのも事実ですが……
それ以上に、貴方は僕の大切な友人です。
だから、痛い想いはしてほしくないし、ましてや……
自由を奪われるような事態になってほしく等ないのですよ」
そういいながら、ジェイドは屈み、深い傷跡の残るリスタの足にそっと触れた。
もう、彼がこの右足に怪我をしてからかなり経つが、
負ってしまったダメージが消えるわけではない。
傷跡も、塞ぎはしたが薄れることはないだろう。
ジェイドはそっとその傷を指先でなぞりながら、リスタにいった。
「貴方のお仲間だって心配するでしょうに。
つたえてあるのでしょう?足のこと」
「あぁ。万が一の時に迷惑かけたら洒落にならないからな……」
現在は魔獣調査局に所属しているリスタ。
そこの仲間にも、自分の過去や経歴、足に抱えているハンディのことは話してある。
ジェイドはそれを聞いて、一層怪訝そうな顔をした。
「ならば、どうして。
仕事が詰まっていて厳しいのなら、他の人に回すことも出来るでしょう」
ジェイドのつっこみに、リスタは顔をしかめた。
そして、小さく溜め息を漏らすと"だからだよ"といった。
ジェイドはなおも食い下がる。
「だから、とは……?」
「……この足じゃ、いけない任務だってたくさんある。
素早さを要求されるような場にいけば足手まといになるのは目に見えてるからな。
だから、俺でも出来る仕事は、俺がこなしたいんだ。
他の人間が、他の……俺がいけないような任務に、専念できるように」
それは、リスタなりの仲間への気遣い。
せめて、重荷にならないようにとの気遣い。
それは、ジェイドにもよくわかる。
何より彼も、どちらかと言えば無茶をするたちだから。
でも……と、ジェイドはいった。
「あのねぇ、リスタ。その気持ちはよくわかりますが……
貴方を診察し、治療した僕のいうことを少しで良いから、聞いてください。
脅すようで何ですが一歩違っていたら片足なくしていたかもしれないのですよ?」
「わかってるって、お前の指示も聞くよ……少しは」
「少しじゃ困るのですけれど……もう、知りません」
そういってジェイドはぷいとそっぽを向く。
"勝手になさいな"と呟くようにいった。
少し拗ねたようなその挙動に、リスタは笑う。
今彼は、怒っているわけではない、
本当に拗ねているだけだ。
"もう知らない"等と言いつつも、結局は世話を焼いてくれるのを知っている。
リスタはにっと笑うと、そっぽを向いてしまった彼の頭をそっと撫でた。
「ほらほら、そんな拗ねるなよ、ジェイド。ちゃんということ聞くから」
「拗ねてません。お馬鹿な患者にほとほと呆れているだけです」
そういいながら、ジェイドは彼の方へ小さな瓶を放った。
それをキャッチして、リスタは不思議そうな顔をする。
ジェイドはややジト目をリスタに向けて、いった。
「……痛み止めです。
でもそれもあくまで感覚鈍らせるだけなのですから、
痛みがあるようならおとなしく来なさい馬鹿リスタ」
「わかったわかった」
ごめんったら、といって微笑むリスタ。
ジェイドはその気配に振り向いて、優しく微笑む。
「心配する人間が、まだ此処にもいることをどうか忘れないでください。
所属する組織は違えども、友人であるということに違いはないのですから」
「あぁ、わかった」
わかったよ、と微笑むリスタに"約束ですからね"と念を押して、
ジェイドはリスタのズボンの裾を元通りに戻す。
そしてその布地の上からそっと撫でて、少しでも彼の苦痛が和らぐようにと祈った。
―― 遠く離れても ――
(属す組織が違えどもかつては共に戦った仲間
そして今も、かけがえのない友人なのですから…)
(ちゃんと此処で貴方の無事を願っている人間がいる
どうか、その事を忘れないでください)