先程の赤髪金髪コラボの小説「Broken Heart」にリンクさせた感じで、
部下の(中略)コラボの小説を書いてきてしまいました…!
相変わらず勝手にすみません;;
*attention*
部下の(中略)コラボのSSです
シリアスです
赤髪金髪コラボのSS「Broken Heart」の続き的な小説です
ライニさんの上官であるヒムラーさんも傷つくだろうな、という妄想を形にしてしまいました…
ルカは基本他人の気持ちはわかっても慰め下手です
救いはないのですか、な感じになってしまいました…(おい)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKというかたは追記からどうぞ!
―― 静かな、静かな、ある夜……
黒髪の少年は仕事が一段落したところで、自身のパートナーの元に赴いた。
ここ最近姿を見なくなった、赤紫の髪の彼の元へ。
彼の部屋のそばも、すっかり静まり返っている。
黒髪の彼は小さく溜め息を吐き出すと、ドアの前にたち、ドアをノックした。
「ハインリヒ」
いるか、と声をかけるが、返事はない。
けれど中から気配は感じるため、黒髪の彼……ルカはドアを開けた。
すでに日は落ちて真っ暗だというのに、部屋の明かりはついていない。
ルカはその様子にもうひとつ溜め息を吐き出した。
ぱちん、と明かりをつければ、机に突っ伏している赤紫の髪の青年の姿が見えた。
明かりをつけてもなお、彼が動く様子はない。
「いるなら電気位つけろよ……ハインリヒ」
そういいつつ、ルカは彼……ヒムラーに歩み寄る。
苦笑のような笑みを浮かべていた彼だが、
ヒムラーが顔をあげないのを見ると、表情を引き締めた。
「……ハイドリヒのことか」
ルカの言葉にヒムラーの肩が一度大きく跳ねる。
そして、そのまま小さく震えた。
ルカはそれを見て、小さく息を吐き出す。
彼の、リアクション……
それが、すべての答えだった。
―― そう。
赤紫の髪の彼……ヒムラーがこうして塞ぎこんでいるのは、ついこの間からのこと。
彼の部下である金髪の少年に起きた異変故、である。
他人より少しきつい任務をこなしていた彼。
精神的に辛いものがあったのだろう。
彼の心は傷つき、壊れ……
周囲への反応を、感情の表現を、一切しなくなってしまった。
無論その異変に、誰もが気づいた。
元々比較的無表情で無口なタイプの彼だったが、
明らかに雰囲気が変わっていたから。
拒絶というのとはまた違う……虚無に近い、彼の反応。
それは傍から見ていて、異様に映っていた。
それ以来、そんな少年……ハイドリヒの上官であるヒムラーも塞ぎ込んでいた。
元々活発というタイプではなかったが、部屋に籠ることが増えたし、
食堂等に出てきても笑顔を見せることはほとんどなくなった。
憔悴……といった言葉が合うだろうか。
それに、ルカも気づいていた。
組んだ期間はまだ短いとはいえパートナー同士だ。
心配になって訪ねてきたのである。
ルカは未だ顔をあげないパートナーを見ながら短い黒髪をかきあげた。
そして少し言葉に迷いながら、いう。
「……ハインリヒ、お前が塞ぎ込むことじゃあないだろう」
ルカはそういう。
ハイドリヒが悪いと言いたいのではないし、この一件を軽んじるつもりもないが、
ヒムラーが悪いわけでもないだろう、と伝えてやりたいのだ。
事実、ヒムラーの所為ではないとルカは思っていた。
周囲から彼の所為だと非難するような声も上がってはいない。
彼のその言葉でヒムラーは漸く顔をあげた。
彼の青い瞳は涙で濡れ、どれ程の間泣いていたのか、
彼の頬には無数の涙の跡があった。
彼は唇を戦慄かせると震える声で、いった。
「でも……!
あの子がああなってしまったのは、僕の所為です……!」
ヒムラーはそう叫んで、頭を抱えた。
大きく震える、彼の肩。
激しく泣いているのが、うかがえた。
ルカはそれを見て顔を歪める。
彼の思いは、痛いほどわかる。
そして、そっと彼の肩を抱いた。
「お前の所為じゃないよ、ハインリヒ……」
ルカはヒムラーにそういった。
お前のせいではない、と。
今度は一般論ではなく自分の意見として、ルカは彼にいった。
けれど、ヒムラーは首を振る。
激しく泣きながら、いうのだ。
「だ、って……
僕が、もっと早く止めていたら……ッ、
気づいて、止めてあげられたのは、僕だけだったのに……!」
ヒムラーは半ば叫ぶようにそういった。
上官命令だといって彼の任務を制限すれば良かった。
幾らヒムラーを軽んじていた彼でも、
止められた任務に赴くほど愚かではないだろう。
辛い任務が多いのはわかりきっていた。
彼が少々無茶をする気質であることも知っていた。
優秀であるがゆえに、そつなくそういう任務をこなせてしまうことも。
昔から、知っているのだ。
彼が就いていた任務も、職種も。
だから止めてやれば良かったのに、とヒムラーはいうのだ。
自分が止めてやればよかったのに、と。
自分にしかできなかったのに、と。
苦しそうに泣きながら彼はそういう。
自分を責める。
部下の心が壊れるのを止められなかった自分を、責める。
僕の所為です、と繰り返すその声は切実で、痛々しくて……
ルカは泣いているヒムラーの頭を抱き寄せながら、いった。
「落ち着け……ハインリヒ」
落ち着け、落ち着け……
そう繰り返しながら、ルカはヒムラーの赤紫の髪を撫でた。
嗚咽が絡んで苦しそうな呼吸をなだめるように、背をさする。
ヒムラーが自分を責めたくなる気持ちは、わかる。
自分が同じ立場だったら、同じような反応をしたかもしれないと、思う。
だけど……
そうしていたら、彼までも壊れてしまう気がして。
それが、ルカにとっては怖かった。
―― けれど。
ルカは大丈夫だ、といってやることもできなかった。
それはあまりに無責任な言葉だから。
一度、部下を失ったことがあるルカにはわかる。
たった一人でも、かけがえのない部下なのだ。
愛しい仲間なのだ。
それがいなくなったら、あるいは……今のハイドリヒの状況になったら。
悲しまない上官はいない。
平気だなんて口が裂けても言えない。
だから、安易に大丈夫だ、ともいってやれなかった。
「……気持ちはわかる。でも、少し落ち着け……」
それくらいしかいうことが出来ない自分が歯痒い。
もう少し言葉が上手ければ、彼をもう少し上手に励ますことが出来るだろうか。
ヒムラーはルカに抱かれたままに嗚咽を漏らしていた。
自分が泣いている場合ではない、と思っているのか、
必死に涙を止めようとはしているようだが、元々の性格も性格だ。
感情を圧し殺すのは上手い方ではないだろう。
ルカは彼を抱き締めて、なだめるように頭を撫でながらいう。
「……ほら、ちょっと落ち着いたら飯食いにいこう。
お前まで倒れたら大変だろう」
ルカはそういいながら、ヒムラーの頭を撫で続けた。
いつも、泣いている従弟にそうしてやったように。
「ルカ、さ……っ、僕は……上官、失格です……!」
部下一人守れない自分なんて、と。
彼はそう言って涙をこぼす。
どうして守ってあげられなかったんだ、と繰り返して。
「……ハインリヒ」
ルカはただただ、彼の名を呼ぶことしか出来なかった。
慰めの言葉なんて、ひとつも浮かばなかった。
浮かんだとしても、安っぽくてちゃちな言葉だけで……
ルカは、小さく息を吐く。
そして、切なげな表情をしつつ、心のなかで呟いた。
―― お前が上官失格なら俺はお前の相棒失格だよ……
そう思いながら、ルカはただただヒムラー
の頭を撫でる。
静かな夜に響く嗚咽は、止まるところをしらなかった……――
―― 自責の念と… ――
(僕の所為だ、と。そう繰り返す彼。
俺は何をいってやれば彼を慰められるのだろう)
(分岐点はきっと幾らでもあったのに。
どうして僕は何もしてあげられなかったのだろう?)