赤髪金髪コラボ&ちょっぴりカルテンブルンナーさんでのSSです。
どうにもアネットはカルテンブルンナーさんに突っかかっていってしまいますね…すみません←本当にね
*attention*
赤髪金髪コラボ&カルテンブルンナーさんのSSです
シリアスちっくなお話?です
タイトルは「貴方の所為ですよ」的なニュアンス(ぇ)
アネットに振り回されつつ何だかんだ彼を思ってるようなライニさんを書きたくて…(おい)
アネットはライニさんの後任になるカルテンブルンナーさんにやたら突っかかっていきます
カルテンブルンナーさん本当にすみません…←本当にな
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKというかたは追記からどうぞ!
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廊下を駆け抜ける、赤髪の少年。
昼間の明るい日差しのなかを走っていく彼の赤髪はきらきらと輝いていて。
彼が一直線に向かうのは、愛しい金髪の彼の部屋。
任務を終えた赤髪の彼、アネットはいつもこうして愛しい彼……
ハイドリヒの部屋にいくのである。
一緒に過ごせる時間は決して長くない。
ハイドリヒが午後、もっと言うなら夜の任務が多いため、
昼間に一緒にいられる時間は貴重なのだ。
そんなこんなで辿り着いた、ハイドリヒの部屋。
いつも通りに、ノックなしでドアを開ける。
"ノック位しなさい"と呆れたように言われるのさえ、嬉しかった。
「ラインハルトー!任務終わっ……」
終わったぞ、と最後まで言葉を続けるより先。
アネットは口をつぐんだ。
というのも、この部屋の主……
ハイドリヒの隣に、アネットもよく知った顔があったからで。
黒髪の男性。
急に開いたドアに驚いたように振り向いている彼は、ハイドリヒの部下だ。
アネットが露骨に顔をしかめたのがわかった。
ハイドリヒはアネットをたしなめるように"アネットさん"と彼の名前を呼ぶ。
しかしアネットの表情が緩むことはなくて。
「……後でまた来る!」
そういうと、アネットは踵を返して部屋を去った。
当て付けのように、強い音でドアを閉めながら。
***
そうして、アネットがいなくなったあと。
小さく溜め息を吐き出したのは、金髪の少年……ハイドリヒの方だった。
「まったくあの人は……」
相変わらずなんですから、とハイドリヒは呟く。
そんな彼を見て、カルテンブルンナーも苦笑する。
「ここまで嫌われることをした記憶はないのですけどね」
カルテンブルンナーは呆れた顔をしてアネットが出ていったドアを見つめる。
確かに、一度要らないイタズラをしたのは事実。
しかしあの行動にはちゃんと理由があった。
そもそも事の発端はといえば赤髪の少年が愛しいと思っている金髪の上官が原因。
……まぁ、彼の性格的にそれを話したとは、
カルテンブルンナーもおもっていないのだけれど。
ハイドリヒは"彼は良くも悪くもまっすぐですからね"といった。
アネットがカルテンブルンナーを嫌う理由は複雑なようで単純だ。
彼、カルテンブルンナーがハイドリヒの後任となった人物のフラグメントだから。
後任、というのはつまり……
ハイドリヒが死んだあとの、職務を務めた人間と言うことで。
その事が、アネットにとっては不快で、或いは恐怖でしかないのだろう。
ハイドリヒはそんな彼の心情も思いつつ、カルテンブルンナーにいった。
「貴方自身を嫌っているというわけではないと思いますよ。カルテンブルンナー」
「……やたら彼を庇うような発言をするのですね、長官」
少しからかうようなその声色に、今度はハイドリヒが露骨に顔をしかめた。
からかわれるのは快くない。
否定はしたくないが肯定も出来ないし。
不機嫌そうな碧眼でカルテンブルンナーを見つめつつ、
ハイドリヒはそっけなくいった。
「馬鹿なことを言っていないで部屋にもどって仕事をなさい」
「はいはい……」
肩を竦めて、カルテンブルンナーは書類を持ち直す。
そのまま、歩いて部屋を出ていった。
ハイドリヒはその姿を見送ってから小さく息を吐き出した。
我儘で寂しがりやで身勝手な彼を探しにいかなければな、と思いながら。
***
ハイドリヒはアネットを探し回った。
よく凹んでいる彼がいる中庭、気分転換にいくであろう闘技場や訓練所、
他の騎士と話が出来る休憩室兼食堂……
それらの何処にも、アネットの姿はなかった。
おかしいな、と思った。
ハイドリヒはアネットの魔力をよく知っている。
加えて、アネットは魔力を隠すのが下手だ。
少しでも近くにいけば彼の魔力を探し当てる事くらい余裕なはずなのだが。
朝方話していた限り、彼は今日午前中の任務しかなかったはず。
何よりさっき、カルテンブルンナーから任務報告を受けている時、
部屋に飛び込んできたアネットは"任務が終わった"と叫んでいた。
彼と親しい騎士に姿を見かけなかったかとそれとはなしに訊ねたのだが、
誰一人として彼の居場所を知っている者はいなくて。
きちんと姿を見たい。
いい加減になさいと軽く叱って、余計なことは考えなくていいからといってやれば、
少しでも彼の気持ちも癒えるだろうに……
姿を見つけないことには、どうにもならない。
とはいえ、ずっと探し回っている訳にはいかない。
今日は夜から任務がある。
普通のパーティへの潜入が仕事だが……
彼の事を気にかけたままに任務に赴けば失敗の恐れが高くなること位わかっている。
だから、感情のスイッチを切ろうとした。
昔、昔に身に付けた、仕事をこなす上での必須の技能……
けれど、上手くいかなくて。
「アネットさんの、所為ですよ……」
ハイドリヒはぼそり、とそう呟いた。
貴方のせいだ、と。
上手く感情のスイッチを切れなくなったのは、アネットの所為だ。
彼の事となると、少し冷静さを失う自分にも気付いていた。
泣きたいときに泣けばいい。
怒りたいときに怒ればいい。
感情を殺し続けてきたハイドリヒにそういったのは、アネットで。
お陰で、感情が上手く切れなくなってしまったのだ。
とはいえ、仕事をさぼるわけにはいかない。
アネットのことが気にかかるのは事実だが……
どうしたものか、そう思いつつハイドリヒは自室に戻る。
―― そして……気づいた。
感じたのは、慣れた彼の魔力。
まさか、と思った。けれどそのまさかで……
ゆっくりと、ベッドに歩み寄る。
そして、呆れたように溜め息を吐き出した。
「何で此処にいるんですか……」
ハイドリヒはそう呟いて、呆れと安堵の入り交じったような溜め息を吐いた。
ハイドリヒのベッドの上で丸くなっている、赤髪の少年。
ハイドリヒがいつも使っているベッドの上で、
しっかりと布団を抱き込んだまま、ぐっすりと寝入っている。
探しても見つからないわけだ。
ハイドリヒがカルテンブルンナーを部屋に返し、アネットを探しに出たあとで、
彼は此処に来たのだろう。
そしてそのまま寝入ってしまったらしい。
呆れたような、ほっとしたような。
そんな思いで、ハイドリヒはアネットの寝顔を見つめる。
「ん……」
小さく呻いて、アネットが目を開けた。
ぼんやりとしたガーネットの瞳が覗く。
ハイドリヒは溜め息を吐きながら、アネットにいった。
軽い、説教口調で。
「アネットさん、どうして貴方は他人の部屋で……っ」
そういうと同時、ぐいっと強く腕を引っ張られた。
無論その犯人は、ベッドの上の赤髪の彼。
ベッドに倒れ込んだハイドリヒは"アネットさん!"と声をあげる。
「……あとでまたくるって、いっただろ」
拗ねたような声でアネットは言う。
確かに、来るとはいっていた。
しかし、まさか自分がいない間に部屋に来るとは思っていなくて。
まぁ、それはいい。
アネットが此処にいたのは、恐らくハイドリヒの帰りを待っていたからだろう。
そう思いつつ、ハイドリヒはアネットを見つめていった。
「本当に、アネットさんは……
カルテンブルンナーへの態度、もう少しどうにかならないのですか」
ハイドリヒはアネットにそういう。
彼の気持ちはわからないではないし、嬉しいには嬉しいけれど……
流石に、カルテンブルンナーへのあの当たり方は理不尽だ。
そんなハイドリヒの言葉に、アネットは少し顔をあげる。
不服そうな顔ではあるが、一応反省はしているらしい。
「……わかってるけどさ」
「仲良くしろとまではいいませんから……
いちいち突っかかっていくのはお止めなさい」
気まずくなるだけでしょう、とハイドリヒが言う。
アネットは視線をさまよわせてから、"そうだな"といった。
「でも……気まずくなっても、いい」
「はぁ?」
「……あの部屋にいるのは、ラインハルトだけでいいから」
アネットはそういうと、ぎゅっとハイドリヒの体を抱き締めた。
ハイドリヒはそんな彼の言葉を聞いて、ふっと表情を緩める。
後任と仲良くなれなくたっていい。
お前がずっとそこにいてくれればいいのだから、と。
アネットはそういいたいらしい。
そんな彼の言葉から、彼がどれ程自分を思ってくれているかがわかる。
以前、はじめてアネットとカルテンブルンナーが顔をあわせたときの、
あの"事件"の原因であるハイドリヒの純粋な疑問……
自分がいなくなったら彼が心配してくれるかと言う疑問にあっさり答えが出た通り、
彼は驚くほど純粋に、ひたむきに、自分を愛してくれている。
逆に、怖いくらいだった。
その愛情が。
そのまっすぐさが……
自分が突然姿を消したら、ではなく……
もう二度と彼の前に戻れなくなったとしたら。
彼は、どう思うだろう。
彼はどうするだろう……
そう思いつつ、ハイドリヒはその思考を頭から振り払う。
そしてそのまま、アネットの体を強く押した。
「とりあえず……今から、任務なんですけど」
離してくれませんか、とアネットに言う。
これ以上任務前に"余計なこと"を考えないための口実ではあったけれど、
アネットは渋々、といった様子でハイドリヒの体を離した。
「気を付けて、いけよ?」
その言葉を胸に、ハイドリヒは外に出る。
彼も、適当なタイミングで自室に帰るだろう。
或いは、ハイドリヒが部屋に帰るまで待っているか。
冷たい夜風がやたら体にしみた気がしたのは、
部屋を出る直前まで彼に抱き締められていたからだろうか。
そんなことを思いながら、ハイドリヒは小さく甘い溜め息を吐き出した。
―― It was caused by you ――
(すべてすべて貴方の所為です。
私が弱くなったのも、温もりを手放したくないと思ったのも)
(いつもは鈍いくせにこういう時ばかりそういう顔をしないで。
嫌でも、終わりの時を考えて憂鬱になってしまうから……)