部下の(中略)コラボでのSSです。
ヒムラーさんに関わるお話をツイッターで聞いてて書きたくなりまして……←おい
相変わらず勝手にすみませんでした;;
*attention*
部下の(中略)コラボのSSです
ほのぼのなお話です
ヒムラーさんはハーブがお好き、ということで…
楽しそうにガーデニングをしている姿、素敵だと思います
色々書きたいシーンを詰め込んでしまいました←おい
色々妄想全開ですみませんでした…!
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKというかたは追記からどうぞ!
冷たい風が吹き抜けていく、ディアロ城の周辺。
冷たい木立を震わせる北風は日に日に冷たく、強くなりつつあった。
そんな、中庭。
小さな蛇口のついた水道の前に、一人の少年がいた。
「んー……大体これくらいでいいですかね……」
外の水道で水を汲む、赤紫の髪の少年。
手にした如雨露に水を溜めていき、様子を見る。
"これくらいですかね"と小さく呟くと、蛇口を捻って水を止めた。
と、その時。
少し強い風が吹いて、驚いたように彼……ヒムラーは肩を竦めた。
その拍子にぱしゃりと水が跳ねる。
「わ、冷た……っ」
跳ねた水が手にかかって、彼は小さく悲鳴をあげた。
流石に冬。
空気はすっかり冷えきっていて、当然外の蛇口からでる水は冷たい。
こぼれたら相当冷たい目にあうだろう。
思いの外重たい如雨露にヒムラーは"落とさないと気を付けなくては……"と呟く。
そしてしっかりと如雨露を持ち直して、歩き出した。
水をこぼさないように気を付けつつ、ゆっくりと歩みを進めていく。
これだけ寒いと外に出ている騎士は決して多くない。
……と、その時。
彼の後ろから声をかけてきた者があった。
「ハインリヒ?何してんだ?」
聞こえた声はヒムラーもよく聞きなれた声だ。
黒髪にルビーの瞳の少年……ルカ。
どこいくんだよ如雨露なんか持って、とルカは怪訝そうな顔をする。
「あ、ルカさん!」
ヒムラーは笑顔で振り向いた。
と、たっぷり入っていたらしい水がばしゃっとこぼれる。
ルカは反射的に驚いた顔をして飛び退いた。
「うぉ!?」
「うわわっ、ごめんなさい……っ!」
ヒムラーは慌てふためいた顔をして頭を下げた。
水がぽたぽたと如雨露から落ちる。
ルカはひらひらと手を振った。
苦笑気味ではあるが、彼には水がかかっていないようだ。
「いや、平気だけど……
あーあー、お前が濡れてるじゃねぇかよ。大丈夫か?」
寒くねぇ?とルカは彼に訊ねる。
その時ちょうど風が吹いてきて、ヒムラーは小さく声をあげた。
濡れた服に冷たい風があたれば、当然寒い。
「さ、寒いですね……」
ヒムラーは素直にそう答えた。
此処で痩せ我慢したって良いことはない。
ルカはそれを見て苦笑した。
「まぁ、見るからに大丈夫じゃなさそうだな……
ほら、部屋に一旦戻れよ」
とりあえず着替えろ、とルカは笑う。
そのまま彼の手から如雨露を取った。
ヒムラーは驚いたようにまばたきを繰り返す。
「え?」
「俺が水汲み直してくるから部屋もどって着替えとけ。
水汲んだら俺もお前のとこいくから」
服を着替えてもう一度水を汲みにいく、というのも面倒だろう。
どうせ自分も暇だから手伝うよ、とルカはいう。
ルカは既に如雨露を手に持って歩き出しかけていた。
ヒムラーは慌てて彼を呼び止める。
「すみません……
あ、あと水は僕の部屋じゃなくて外に持っていこうとしてて……」
その言葉にルカ振り向いて首をかしげる。
部屋じゃない、というのが疑問なのだろう。
「?じゃあ、そこまで持ってくけど……何処に?」
「え、っと……草鹿の温室に、お願いしてもいいですか?」
「え、温室?うん、わかった」
彼と温室の繋がりがわからず、不思議そうな顔をするルカ。
とはいえ、彼がそこにというのだからそうすればわかる話だろう、と思う。
了解したよ、とルカはヒムラーに笑いかける。
「ごめんなさい、お願いします」
ヒムラーはぺこりとルカに頭を下げると、急いで自分の部屋に向かった。
***
そんなこんなでヒムラーは先に部屋に戻って服を替えた。
流石にルカを待たせる訳にはいかないから、と急いで温室の方へ向かう。
ルカはもうすでにきていて駆けてくるヒムラーの姿を見るとひらりと手を振った。
走るのがあまり得意ではないヒムラーは息をあげつつ、彼に駆け寄った。
そしてすっかりあがってしまった呼吸を整えつつ、ルカに謝る。
「ご、ごめんなさい、ルカさん……遅くなっちゃって……」
「いやいや、構わねぇって。俺が好きで手伝うっていったんだし。
……でも、何でだ?お前と草鹿の薬草温室って……」
"繋がりがわからねぇんだけど"とルカは温室のドアを開けるヒムラーに訊ねる。
ヒムラーは微笑んで、"こっちです"とルカを案内した。
ルカは物珍しげに周囲を見渡す。
緑色が広がるその場所にルカはほぉっと息を吐いた。
「あんまり俺、此処来たことねぇや……」
「そうなんですか?僕はこの前草鹿の子達のお手伝いした時に来ましたよー」
ヒムラーはそういいつつ、植わっている植物を見る。
先日の彼の指導の結果もあってか、薬草の育ちがよくなったと、
草鹿の騎士たちは喜んでいた。
そんな彼らの様子を見て、役に立ててよかったとヒムラーも喜んでいたのだけれど。
そんな温室のなかには様々な薬草が植えられている。
そんなスペースをすり抜けて、ヒムラーはまっすぐに何処かへ向かっていった。
「此処ですよー。
あ、如雨露持たせっぱなしにしてしまってすみません……!」
「大丈夫だよ……でも此処?」
何で?とルカは首をかしげる。
彼がつれていったのは、小さなスペース。
そこにある棚に小さなプランターのようなものが並んでいる。
ヒムラーは微笑みつつ、ルカの手から如雨露を受け取った。
「この前お手伝いをしていた時に、ジェイドさんにお借りしたんです。
これだけ広い場所ですから、どうしても使わない場所もある、と。
それで、空いているスペースがあると言うのでお借りしているんですよ」
そういいつつ、ヒムラーは少し腰を屈めて、如雨露を傾けた。
プランターに植わっている植物の根本にそっと水をかけていく。
ルカはそんな彼の言葉になるほどな、という顔をした。
確かに植物を部屋で育てるのは一苦労だろう。
日当たりや風通し、水はけなどが重要なことくらいはルカも辛うじて知っている。
こういった場所ならば水や空気の調整も出来るだろう。
「へぇ……ハインリヒ、こういうの好きそうだもんな。
でも……これ、何だ?薬草……じゃないよな」
他のと違うし、とルカは呟く。
種類が違う、ということ位はわかるらしいのだが、
植物や農学になんて少しも精通していない彼にはなにもわからないようで。
ヒムラーは少し考える顔をして、ルカに答えた。
「薬草、というのとは違うかもしれませんが……ハーブですよ」
「あぁ、なるほど……」
ハーブか、といってルカは顔をそれに近づけた。
確かに、薬草とは違う独特の香りがする。
細かいハーブの種類まではわからないけれど。
「わざわざ育ててるのか?なんのために?」
「プレゼント用ですよ。ある程度育ったらこの箱にいれるんです。
普通に見ていたり匂いを嗅ぐのでもリラックス効果はありますし、
ポプリやお茶にも使えますし、ハーブって良いですよねぇ」
そういって彼は足元に積んである箱を示した。
そこに積み重なっているのは綺麗な装飾のついた木箱。
そこにハーブの小さな鉢をいれるのだろう。
相変わらず物知りなヒムラーにルカは感心したように頷いた。
「へぇ……何て言うか、マメだよな、ハインリヒは。
俺、絶対こういうのマネ出来ねぇ」
"枯らすのがオチだ"といって、ルカは苦笑気味に肩を竦めた。
そんな彼にヒムラーはくすくすと笑う。
「ふふ……こういうこと、好きなのですよ」
そういいながらヒムラーは植わっているハーブに水をやる。
その表情は楽しそうなものだ。
元々植物や動物に触れあい、こうして過ごすのが好きなヒムラー。
こういった作業をするのも本当に好きなのだろうな、と表情を見ていれば感じられる。
"大分大きく育ちましたねぇ"といって、ヒムラーは微笑む。
穏やかに、楽しそうに。
上手く育っていくのが嬉しいのだろう。
そしてそれをプレゼントに、と考えるのも彼らしい。
そんなヒムラーの様子を見て、ルカも穏やかに表情を緩めていた。
―― Gardening ――
(楽しそうにハーブに水をやる彼。
その表情と優しさがとても暖かくて……)
(吹き抜ける風の冷たさにも負けないそんな暖かさ。
それを見守るのは心が暖まるよ)