主人公コラボでシリアスちっくなお話を…
フィアフォル和解後設定です。
ヒトラーさんにはフィアもちゃんと話せるんじゃないかな、とか
ヒトラーさんに慰めていただきたいな、という星蘭の妄想です、すみませんでした←こら
*attention*
主人公コラボ
シリアスチックです
フィアフォル和解後設定でヒトラーさんにフィアがその事を暴露?します←
ルカ以外でフィアが一番信頼してる統率官はヒトラーさんだろうから、と(おい)
謎なシリアステンションですみません;;
泣いてるフィアをヒトラーさんに慰めていただきたいな、という星蘭の妄想←
ナハトさん、本当にすみませんでした!
以上がOKというかたは追記からどうぞ!
静かな夜の図書館……
そこに響くのは、ブーツの靴音。
長い黒髪を靡かせて、彼……ヒトラーは数多くの本が並ぶ棚の間を歩いていた。
本を探す、というよりは誰かをさがしているように。
頼りになるのは手に持った小さなランプ。
ぼんやりと辺りを照らす橙色の光に、ヒトラーは空色の瞳を細めた。
「ヒトラー様?」
不意に聞こえた声に思わずランプを落としそうになった。
しかし持ち直して、ヒトラーは声の主を見る。
すみません、と謝ったのは亜麻色の髪の騎士……フィアで。
彼は手に重そうな本を持ったまま、首をかしげる。
「ヒトラー様、本を探しに?」
「あ、あぁ。フィアは?」
「俺は頼まれていた書物の整理を。
昼のうちに終わらすつもりだったのですが、任務が入って出来なかったのです」
苦笑気味にそういって、フィアは積み重ねた書物を指差す。
それを棚に整頓して置く作業をしているのだという。
ヒトラーはその言葉を聞いて小さく頷くと、積み重なった書物に手を伸ばした。
「私も手伝おう」
「え?!い、いえ、ヒトラー様の手を煩わせる訳には」
「そんなに多くもないだろう?」
二人でやった方が早いから、とヒトラーは書物を棚におさめていく。
何より、元々ヒトラーの探し人はフィア。
此処にいることはわかっていたため、もとから手伝うつもりでいたのだが。
フィアは"すみません、ありがとうございます"というと、自身も作業に戻った。
ヒトラーはちら、とそんな彼の様子を見る。
あまり親しくない人間には、いつも通りと映るであろう彼の様子。
しかし、ヒトラーにはそうは映らなくて。
―― やはり……
感じた、異変。
ほんの些細なものだった。
ともすれば、見逃してしまいそうな……
しかし人一倍他人思いで仲間思いなヒトラーは、気づく。
フィアが、何処かいつもより元気がないことに。
「……何かあったのか」
ヒトラーは書棚に手を伸ばしていたフィアに声をかけた。
フィアは振り向かずに"なんのことです?"といった。
「何だか、元気がないようだから……」
「!」
一瞬、フィアに瞳がゆれた、のを気配で感じる。
しかしすぐに平静を装って、いうフィア。
「俺は、至っていつも通りですが」
「そうか?私には、そうは見えないのだが」
ヒトラーの言葉にフィアは手を止めた。
そして、ヒトラーの方を振り向く。
彼の方を見つつ小さく首をかしげる、サファイアの瞳の彼。
いったい何が言いたいのですか、といわんばかりの顔をするフィアを見て、
ヒトラーは少し躊躇ってから口を開く。
「何か、悩んでいるようだから。
例えば……お前の、兄のこととか……」
「!……どうして」
フィアが心底驚いた顔をしたのがわかっ
た。
揺らぐ、サファイアの瞳。
切り出しかたを間違えたか、と思いつつヒトラーは空色の瞳を泳がせた。
フィアは暫し怪訝そうな顔をしたが……
すぐになにかを思い出したような表情に変わる。
「……ヒトラー様は、心が読めるんでしたね」
"誤魔化せるはずがなかった"と呟いて、フィアは苦笑する。
諦めの表情にもにている彼の顔。
ヒトラーは素直に彼の言葉を認め、頷いた。
「すまない。本人の許可なく見るのは……」
他人の心を読む魔術を使える人間は少ない。
ヒトラーはその一人だった。
基本的に、仲間には使いたくない。
しかも、無許可では。
しかし、今回は状況元そうせざるを得なくて……
そうして彼の心を知ったはよいが、うまい切り出しかたは浮かばなかった。
遠回しにすればするほど伝わらない。
そうなるくらいならば、とストレートに口に出したのである。
フィアはヒトラーの言葉にゆっくりと首を振った。
「いえ、おきになさらず。
……ルカ辺りに、頼まれたのでしょう?」
ヒトラーは小さく頷く。
フィアの言う通り、ルカに頼まれてフィアの心情を少し読んだのだった。
それと同時、ヒトラー自身もフィアの元気がないことには気づいていた。
元気のない仲間を、友人を、放っておけるほどヒトラーは薄情ではない。
そんなわけでフィアの心情を読み取ってみたヒトラー。
細かいところまでは流石にわからなかったが、
フィアが思い悩んでいるのは彼の兄とのことで。
……直接話をしたのだということ、それを誰にも話せていないこと。
それがフィアの表情を曇らせているのだということに、ヒトラーは気づいた。
ツッコミをいれないことも、一瞬考えた。
彼にとって、家族間での問題はかなりデリケートなことだと知っていたから。
両親を殺めた兄のことをフィアは激しく憎んでいた。
その相手と話したことがどれだけフィアに大きな勇気を使わせたかはよくわかる。
けれど……なにも言わずに済ますことはできなかった。
フィアが誰かにその事を話したがっていることにも、気づいたから。
フィアは持っていた書物を棚に戻しながらいう。
「彼奴……フォルと、直接話をしたんです。
ある程度、和解という形をとるために。
彼奴の気配を感じつつ、何も話さず見て見ぬフリをするのは限界だった」
書物に集中し、何でもないことのように話しているフィアだが、
その手が微かに震えていることにヒトラーは気づいていた。
それでも、なにも言わずに話を聞く。
「……スターリンには話しました。
俺が彼奴と話をしたこと。
当事者、ですしね……奴が面倒をかけてなければ良いのですが」
当事者、という言い方にはどんな意味が含まれているやら。
フィアが何処まで知っているのかは、ヒトラーにも図りかねた。
「必要以上に他人にこの事を話さない……
それが、奴と俺の間での停戦条件です。
互いが互いに、互いの仲間に危害を加えない限りは目をつぶる、と」
だからルカや他の騎士には話していません、とフィアは言う。
それが"兄(フォル)"との約束だから、と。
「俺がその事を騎士団の仲間に……
ルカやシストに明かせば、彼らはきっと俺のために怒るでしょう。
幾ら俺たちが譲歩しあったと話しても、きっと彼らは彼奴を許さない。
彼奴はルカたちが俺の話を聞かずに攻撃してくるのを避けるために、
そんな条件をつけたのだと思います」
そこまでいって、フィアは言葉を切った。
フィアの言葉にヒトラーは"確かにな"と同意の意を示す。
恐らく、ルカはフォルに斬りかかるだろうな、と、ヒトラーも理解していた。
小さく息を吐き出して、フィアは書物を置いた。
「……正直、今も俺はこの決断が正解であったか、わかりません」
ぽつり、とフィアはいった。
声が震えている。
ヒトラーは口を挟まずに、それを聞いていた。
フィアを見つめる、空色の瞳。
「彼奴(フォル)の裏をかいてでも親の敵をとるべきかとも、思いました。
でも、それはなにか違う気がして出来なかった……
どうするのが正解であったのか、わからないこと、
そして俺がこういう決断をしたことを一番大切な家族に告げられぬこと……
俺がいつもと様子が違うと思われるならば、多分原因はそれでしょう」
フィアはそういって、息を吐いた。
暗がりでも、フィアの頬を涙が伝い落ちたのがよくわかった。
「どれだけ考えても、殺めることが正解とは、思えなかった……
フォルは憎い。彼奴は俺の育ての親も、産みの親も殺した。
でも実際に話してみたら、憎むだけではいられなかった……
彼奴は、変わっていた。明らかに、なにかが違っていた。
だから許さざるを、得なかった。それが間違いかもと思いつつも。
でも、誰にその正誤を問えば良い?誰にも話すことさえできない……
それが、何より辛くて……っ」
フィアはそこまでいうと泣き出した。
普段の、冷静なフィアからは想像もつかない子供のような、泣き顔。
ヒトラーは躊躇いつつフィアの頭に手を置いた。
ああ、前にも一度泣きじゃくるフィアを慰めるために、
こうして彼の頭を撫でたことがあった、と思い出す。
目の前で泣かれるとどうして良いかわからなくなる。
けれど、どうにか口を開いて告げた。
「……フィアは、間違っていないとおもう」
無責任かもしれないけれど、とヒトラーはいう。
彼の言葉は、きっと正しいと。
殺めることは間違っている、と感じたフィアはきっと間違っていないと。
復讐に走らないことはきっと、間違っていないと。
……間違っていないと、思いたいのかもしれない。
ヒトラーたち……フラグメントはどちらかと言えば、復讐される側だ。
過去の罪を咎められ、復讐される側。
罪は罪だと仲間であるフィアが言わなかったことに安心したのかもしれない。
自分達の罪はしっかり償うつもりではいるけれど、
過去は過去、今は今だと、そう思ってほしいという思いがあったのかもしれない。
ヒトラーはそう思って、苦笑に近い笑みを浮かべた。
子供のように泣きじゃくるフィアの頭を撫でてやりながら。
***
フィアはすぐに泣き止んだ。
決まり悪そうな顔をして涙をぬぐうと、"誰にも、言わないでください"という。
彼のプライド上、泣き顔を他人に晒すことは嫌なのだろう。
ヒトラーは小さく笑って、頷いた。
するとフィアは微笑んで、いう。
「ありがとう、ございます。ヒトラー様。
俺の、話をきいてくださって」
「私が礼を言われるようなじゃあ……」
ヒトラーは慌てて首を振る。
しかしフィアは微笑んで、いった。
「いえ。話を聞いてもらえないことが何より苦痛だったので……
すみません。ややこしいことに、巻き込んでしまって」
"俺が話したこともどうかご内密に"と笑うフィアはいつも通りだった。
ヒトラーはその表情を見て、少し安心したようにうなずく。
彼の力になれたならばよかった、と。
いつもはこうして誰かに慰めてもらう立場にいるのが自分だから。
迷惑ばかりかけている、という負い目があったから。
こうして誰かを支えられてよかったと、純粋に嬉しかった。
フィアは残っていた本を棚に入れ直すと、埃まみれの服を払った。
「……さ、帰りましょう。ヒトラー様のお陰で、随分早く片付きました」
フィアはそういうと、ゆっくり書棚の間からでる。
ヒトラーもそれに続いた。
そのまま、一度微笑みあって、明かりが点っている方へ、
仲間たちがいる騎士の棟へ向かって二人はあるきだしたのだった。
―― 過去は過去、今は今と… ――
(許せというのは簡単なことではないけれど…
きっと、お前の考えは間違っていないから)
(話せぬ苦痛から解き放ってくれたのは優しい彼で。
間違っていない。貴方の言葉を胸に俺は歩みましょう)