フィアルカのSSです。
天空朱雀さんにいただいた素敵な小説から派生したお話です。
いただいた小説はPCが直り次第サイトの頂き物のコンテンツにアップします…!
恐らく未来編(フィアが髪を伸ばし始めた頃)です。
ほのぼのと言うか、甘めというか…
この二人はなかがよい家族であってほしいなぁ、と思いました←
ともあれ、追記からどうぞ!
Side Ruka
「うーん……」
思わず、小さく唸った。
周囲にいる女性たちが怪訝そうに俺を見た。
まぁ、奇妙だろうな。
男一人でこんなところ……ファンシーな雑貨屋なんかにいるのは。
俺は任務帰りに此処に寄った。
フィアのプレゼントを買うために。
別に誕生日とか、そういうのじゃあないけど……
前に、一緒に街を歩いたときにフィアがこういうの興味ありそうだったから。
男として生きているといっても、根っこは女。
たぶん、可愛いアクセサリーや人形に憧れたりもするのだろう。
でも、素直にそれをほしいといえないのが彼奴だからな……
そんなわけで此処に来たんだが、俺は元々装飾品を選ぶ趣味がない。
だから、どんなのが良いのか、全然わからないんだ。
どうしたものか、と悩んでいたとき。
「何かお探しですか?」
不意に声をかけられて、俺ははっとした。
笑顔を浮かべた店員が俺を見つめている。
そうか、聞けば早いか。
「いや、髪飾りを探してて……
こういうの滅多に選ばないもんだから、
どういうのがいいのかよくわかんなくてな」
「プレゼントですか?」
「あぁ」
俺が答えると、店員は俺が見ていた棚……
髪飾りがたくさん並んでいるコーナーに視線を移した。
「デザインはどんなものがよろしいでしょうか?」
「あー……花のモチーフで良いのがあればいいな、と。
あと、あんまり派手じゃない方がいい」
俺もだが、フィアもあまり派手なものは好まない。
なるべく、シンプルなデザインのものの方がいいと思う。
「その方の容姿を教えていただけませんか?
似合う色やデザインを選びたいので」
「えっと、髪の色は亜麻色、瞳はサファイアブルー……」
俺は、彼奴の……フィアの容姿を語る。
少し長くなった亜麻色の髪。
凛とした光を湛えたサファイア色の瞳。
肌は透き通るように白く、照れると淡い紅色に染まる頬……
昔から変わらない、美しい容姿。
天使の子、とはよくいったものだった。
まぁ、まさに彼奴は天使なのだけど。
と、店員の女性がくすくすと笑うのが聞こえた。
何だ?と言う顔をしてそちらを見ると、女性はほほえましげな表情を浮かべていて。
「いえ、すみません。
……大切な方なのですね?」
そういわれて、さっと頬が熱くなるのを感じた。
やばい。熱を入れて語りすぎた。
「彼女さんですか?」
「あ、いや、違って……!」
部下です、と答えようと思ったんだが、生憎俺は今騎士服。
原則騎士団に女性はいないと言うことになっているため、その返答はできない。
でも、妹だとも言えない。
俺とあまりに容姿が違いすぎる。
女性は未だくすくすと笑っているが"そうなのですか"といった。
あぁ、信じてないな。
「えっと、髪色が薄いのであれば……こういうのは如何でしょうか?」
そういって彼女が勧めてきたのは淡い水色の花飾りだった。
俺がいった通り、シンプルな作りで、可愛らしすぎない。
ある程度大人……フィアくらいの年の人間がつけても違和感ないようなデザイン。
「あ、これいいかも……」
フィアが髪につけている姿が浮かぶ。
その顔が笑っているか、照れ臭そうな顔をしているかはわからないけれど……
たぶん喜んでくれるだろう。
「じゃあ、これで……」
「畏まりました。ならば、こちらへどうぞ」
俺はレジへ向かう。
店員が綺麗にラッピングしてくれている間、
レジの傍に並べられた商品を見ていたのだけれど……
「あ……」
目に留まったのは、指輪だった。
あくまでも雑貨屋のレベルかと思っていたんだが、
案外ちゃんとしたアクセサリショップでもあるらしくて、
玩具じゃないアクセサリーもあった。
目に留まったのは美しいシルバーリング。
シンプルなデザインのそれに、小さな蒼い宝石がはまっている。
フィアが持っている彼奴の両親の指輪に少し似ていた。
「お相手の指のサイズはお分かりになりますか?」
声をかけられて、はっとする。
ラッピングが終わったらしく、彼女はにこにこと俺を見ていた。
またやらかしたよ、と思い苦笑しつつ首を振った。
「いや、見ていただけなんだ。
指のサイズなんかわからないし……
そ、そもそも指輪をプレゼントするような相手でもないし!」
最後に付け足したのは完全に墓穴だったかもしれない。
女性はくすくすと笑いながら"そうでしたか"といった。
「此方、商品になります」
「あぁ、ありがとう」
何だか決まり悪い。
完全に自爆だけどな。
店を出るときに"今度は彼女さんも是非一緒にいらしてください"といわれた。
それは、スルーしておこう……
***
店を出て、空を見上げる。
任務を終えてから此処に来たから、もう大分時間は遅くなっていて、
空は夕焼け色に染まりつつあった。
「早くかえらないとな」
統率官である俺があまり長く城をあけるわけにはいかない。
任務を終えた騎士たちもそろそろ城に戻ってくる頃だろう。
フィアも、そろそろ戻ってくるだろうか。
どのタイミングで渡そうか。
どうやって渡そうか。
少し悩んだのだけれど……
「ルカ?」
声をかけられて、驚いた。
聞きなれた声。
怪訝そうに俺を見ていたのは、他でもない……フィアで。
「あ、え、フィア……」
「?何だよ、おかしな奴だな」
更に怪訝そうな顔。
俺はどうしたものかと少し悩んだ。
……あぁ、もういい。
開き直って、俺はフィアにいう。
「……フィア、手出せ」
「は?」
「渡したいものがあるんだよ」
俺の言葉に首をかしげつつ、フィアは手を差し出した。
その掌にたった今買ってきたアクセサリーのはいった袋をのせる。
「何だ、これ。俺、今日誕生日じゃ……」
「誕生日とか、関係ねぇんだよ。
……気にくわなかったら、捨てるなりほかの奴にやるなりしてくれ」
リアクションを見たいような見たくないような、微妙な気分になって、
俺はフィアが袋を開け始めると同時に歩きだした。
「え、あ、ルカ?!」
「さ、先に帰ってる!」
俺はさっさと歩き出した。
しかし。
それからほどなくして、後ろからぐいっと服を引っ張られた。
振り向いてみれば、犯人は無論フィアで。
「……全く、何を考えているんだ。
俺は、男だといっているのに……」
フィアは呟くようにそういう。
その言葉は恐らく、"男である俺になぜ花飾りなどプレゼントするんだ"と言う意味だろう。
俺は照れ臭さでフィアを直視できないままに、いった。
「だから、気にくわなかったら……」
「……似合わん、だろう?」
訊ねるような口調に、俺は思わず顔をあげた。
フィアの髪には、俺が買った髪飾りがついている。
俺は幾度もまばたきをした。
「……似合う」
よく似合っていた。
長くなった亜麻色の髪にきらきらと光る、小さな花の髪飾り。
俺がそういうと、フィアの頬は赤く染まる。
―― ああ、照れていると思った。
けれどそれを指摘したらまたどうせ怒るのだろう。
帰るぞ、といって俺は再び歩みを進めた。
フィアもそれについてくる。
「……大事に、する」
小さな声で聞こえた声は、そんな言葉を紡いで。
俺は思わず、笑顔になった。
―― 素直じゃない君へ ――
(素直にありがとうが言えないのもお前だもんな
それもすべてわかった上での俺からのプレゼント)
(その笑顔が見られて、本当によかったよ)