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積雪の想いは溶ける事を知らない


※現代パロです。



「あ、」


ぼんやりとしながら窓の外を見れば、白の欠片が舞っていた。


懐かしいな、と思った。

あれは確か、大学受験間近で、同じく雪が降っていた日のことだった気がする。






授業が終わり、未だガヤガヤしている予備校の教室を出て外に一歩踏み出せば、辺り一面が白一色だった。


綺麗だ、と思った。

入試まであと一週間もなく、暗記カードに釘付けで周りなどちゃんと見てはいなかったのだ。
だからだろうか。毎日通っていたはずのこの道がこんなにも新鮮に感じられるのは。
驚き、というより、感動に近いかもしれない。
自分が常日頃から「自然」と呼ばれるものの中を生きてきた、とかちょっとクサいけど大人っぽいことを思った。
大人。自分も「大人」になれるのだろうか。


ふとそんなとき思い浮かんだのは、ヒュウガの顔だった。

いつもはへらへらしているくせに、真剣なときは「大人」そのもので、憧れる。惹かれる。しかしその一方で、ヒュウガと自分の格の差を思い知らされる。

以前そのことを話したら、そんなことは気にするな、と言われたが意識しなくても自然と感ぜられてしまう訳で。


本当に、自分でいいのだろうか、と。


そんなことを考えていたら、はしゃいでいた心も失せ、歩む速さはどんどん遅くなった。



沈んだ気分のままに街路脇に目をやれば、今も降っている雪がもう積もり始めていた。


雪がまだ止む気配がないところを見ると、明日の朝は雪かきが大変なことだろう。




「雪…か」

呟いて、歩みを止める。



今日積もった雪は、明日の昼頃には溶けて消えてしまうだろう。


そんな風に、自分の中で降り積もった想いもまたいつか消えてしまうのだろうか。それが、「自然」なのだろうか。
ヒュウガもまた、自分のことを、忘れてしまうのだろうか。




…無意識の内に、駆け出していた。無意識なのだから、自分の足の向かう先はわからない。ただ、自分の足が動くままに走り続けた。




走って。走って。走って。
はぁ、と息を荒くしながらたどり着いたその場所は、ヒュウガが住むマンションの部屋の前だった。



インターホンに手を伸ばして、しかし、何のために、と思い止まる。

何故、自分の足は此処へ向かったのか。どうして。

悩んでも、答えは出てこない。ただ、今すぐヒュウガに会って言わなければならないことがあるような、そんな気がしてならなかったのだ。


ピンポーン、という軽快な音は、ぐるぐると思考を巡らしショート寸前なコナツの耳に届いてはいなかった。


ガチャリ、とドアが開き、見上げるほど背の高い男が出てきた。


「どなた?」

「あ、」


目的の男が前に現れて、しかし、コナツの口は薄く開いたまま止まってしまった。

待っている間に考えていたのに、ここぞ、という時に、自分が言おうとしていたことを忘れた。というか、ぐるぐる回っていたはずの思考が、急に止まって真っ白になった。








自分がこの後、何を口走ったかは今となっては覚えていない。


ただ、彼はこの時のことを話すと腹を抱えて笑い始めるくせに、決まって最後に改まって、優しく微笑みながら言うのだ。






好きだよ、と。



*****


完全燃焼しきれませんがそれはいつものことなので ←
現代パロ、しかもコナツが過去を振り返る形で。
雪の話なんだからもっとムード出せよって感じですが私ムード出すの苦手なんです(おま
なんか久しぶりにヒュウコナ更新した気がする…(-_-;
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