*はじめに*
登場人物紹介などは、『オリジナル小説『純血の殺し屋-完結・後編-』紹介』と表記されている日記をクリックした次のページに書いてみました。
小説は、小説と言うより脚本のように誰が何を喋っているのかが分かるようになっています。
単に、作者自身が混乱しないようにというために。←
誤字や内容の綴りにおかしな点がありましたら、すみません。
最後に言うのも変ですが、興味があったら読んでみてください。
あ。
この作品は、ミステリーサスペンスです。
あと、キャラクターの設定が少年漫画風になっています。
あと『♪』……お許しください人( ̄ω ̄;)
次から、『純血の殺し屋』の完結・後編です⇒
story.29:『消えない』
19年前------------『廃倉庫未成年少女誘拐殺人事件』が発生した"あの日"。
舘巻哲也からの要請を受け、現場の廃墟の倉庫へ急行した沢田透真は、その光景に一瞬だけ硬直してしまう。
血だらけになって倒れている少年少女たちと、警察官2人の間で立ち尽くす、福崎善の姿。
寄り添って身を震わせている若月里沙と葉隠真紀、双子姉妹。
そして彼女たちの後ろで服を乱され、素手で首を絞められて殺された山村若菜------------。
後に、山村若菜は少年少女たちによって殺されたことが分かった。
そしてこの時点で、福崎が少年少女たちを拳銃で撃ち抜いたことも想像に付いた。
だが、後に福崎は無実だということが警察内部で報告され、代わりに阿岐名が冤罪を懸けられる形で、この事件は幕を閉じる。
当時、まだ新人だった沢田は詳しいことをろくに教えてもらえなかった。
それでももう一つ、確かなことがこの時はっきりしていた。
沢田:「阿岐名…!?」
血だらけになって倒れている中に知り合いがいた。
阿岐名葉月------------沢田は、彼を知っている。
舘巻:「…知り合いだったか?」
福崎:「ふッ…」
沢田:「あ、はい…」
泣き崩れた福崎を介抱しながら、舘巻がそう聞いてくると、沢田は言った。
沢田:「居酒屋で、たまに会うんですけど…」
沢田はそうなんとか口にした。
驚いた。普段プライベートで会う時に互いの職業を話すことなどなかったから。
ましてや自分が警察官だなんて、普通の警察官なら隠す。
そう、沢田は知らなかった。
阿岐名が警察官だったなんて。
沢田:(酒が入るとプライベートなことを話すことはある…けど、な……)
それでも阿岐名が警察官だったなんて、目の前に突き付けられても信じられない。
いや、まだ信じられないことはある。
沢田:「何で、撃たれたんだ?」
状況がまるで分からない。
すると、少年少女たちを介抱していた警察官の一人がハッと気が付いた。
警察官:「コレ、まさか…!?」
沢田:「?」
沢田と舘巻たちから隠すように上司たちが何かを確認していた。
この時は分からなかったが、今思えば、上司たちが見付けたそれは、石塚紀章が紛失した拳銃だったんだと思う。
これは19年経った現在でも公にされていないが、上司たちも真実を隠したのかもしれない。
警察官が紛失した拳銃が事件で使われた、という事実を。
だが、この時の沢田は何も分からなかった。
それよりも今は被害者たちを助けることが先決だった。
5分後、何台もの救急車が到着し、被害に遭った少年少女たちから順番に運ばれた。
意識があった少年少女たちを先に救急車で運び、意識がなかった水嶋律と阿岐名葉月を後から救急車まで運んだのだ。
上司:「沢田、病院まで阿岐名巡査に付き添ったら、石塚に県警に来るように連絡を取れ。いいな?」
沢田:「は、はい」
上司からのそんな命令に返事をしてから、沢田は阿岐名と一緒に救急車へ乗り込んだ。
沢田は、救急車へ乗り込む際に見た焦ったような上司の顔が忘れられなかった。
状況が分からないまま、救急車に乗り込んだ沢田が座席に座った時、救急車は病院へ向かって発車した------------その時だった。
?:「り…つ…ッ……」
沢田:「!阿岐名…!?」
突然、阿岐名が声を出し、うっすらと瞼を開いた。
意識を失っていたと思っていた阿岐名が反応を示し、沢田は身を乗り出しながら阿岐名に話し掛けた。
沢田:「阿岐名!俺だよ!
"居酒屋とんちゃん"でよく隣の席になる沢田だ!分かるか?」
阿岐名:「さ…わ、だ……?」
沢田:「そうだ!今、病院へ向かってるから気をしっかり持てよ!
死ぬんじゃないぞ!」
阿岐名:「…ぁ……っ」
痛みに堪えながら、阿岐名は不安げな表情でこう言ってきた。
阿岐名:「律……律は、大丈夫か…?」
沢田:「"律"?」
沢田は一瞬だけ考えた。
"律"……どこかで聞いたことがある名前。
でもすぐに阿岐名が言う。
阿岐名:「拳銃の、音が…し、て………っ……律、撃たれて、ない、よ…な…?」
沢田:「………………。」
ひょっとして、阿岐名は先ほど彼の隣で血だらけになって倒れていた警察官のことを言っているのか…?
沢田は一瞬だけ過った疑問を捨てた。
沢田:「…大丈夫だ。救急車で運ばれたが、命に別状は無い。」
沢田は、嘘を付いた。
本当は何も知らない。
水嶋が無事かどうかなんて、知らない------------だが、今は阿岐名を安心させるべきだと考えた。
阿岐名は、沢田の言葉を信用したのだろう。
阿岐名:「…良かっ…た……」
安心したように微笑む阿岐名。
阿岐名:「早く、会いた…ぃ……な……。律に、……会い…た------------」
その時、救急車の内部で命の危機を報せるセンサーが鳴る。
沢田:「阿岐名…!!」
隊員:「下がってくださいっ!」
------------その後のことは、言わずとも分かるかな。
救急隊員の懸命な処置が行われたが、阿岐名は病院へ到着する前に今度こそ息を引き取った。
沢田も初めてだった。
同じ警察官の殉職を目の前で知ったのだ。
その後、他の警察官の調べで里沙と真紀が、阿岐名の有罪を証言したことで、阿岐名の存在は葬られた。
だが、これも後に嘘だったことが発覚する。
沢田も分からなくなっていた。
警察官とは、何なのか。
正しいとは。守るとは?
20年近くの歳月を越え、ようやく真実に辿り着き、解決に向かっているあの事件------------。
でも一生消えることはないだろう。阿岐名の冤罪は消えても、息子が汚された阿岐名の両親の傷は消えない。
山村若菜を失った人たちの悲しみも、槐事件も、消えない…。
消えないのだ。
------------To be Continued...