*はじめに*
登場人物紹介などは、『オリジナル小説『純血の殺し屋-完結・後編-』紹介』と表記されている日記をクリックした次のページに書いてみました。
小説は、小説と言うより脚本のように誰が何を喋っているのかが分かるようになっています。
単に、作者自身が混乱しないようにというために。←
誤字や内容の綴りにおかしな点がありましたら、すみません。
最後に言うのも変ですが、興味があったら読んでみてください。
あ。
この作品は、ミステリーサスペンスです。
あと、キャラクターの設定が少年漫画風になっています。
あと『♪』……お許しください人( ̄ω ̄;)
次から、『純血の殺し屋』の完結・後編です⇒
story.28:『新幹線』
数日後、槐事件の黒幕・福崎善の証言の下、『廃倉庫未成年少女誘拐殺人事件』で殉職した阿岐名葉月に無実の罪を着せて、福崎善の罪を彼の父親と共に隠したとして、水嶋の理解者だった上司・石塚紀章が逮捕された。
犯人隠避罪------------石塚は自分が罪を犯した経緯を取り調べで証言した。
自分が、同僚で部下だった水嶋に好意を抱いていたこと。
阿岐名と水嶋がキスをしているかのような現場を目撃して、警察官を辞めたくなり、自ら拳銃を紛失したこと。
阿岐名が死んだと聞いて、福崎の罪を隠し、水嶋を昇格させて自分の傍らに置くことを思い付き、それを実行したこと。
だが、警察では石塚が供述した全ては報告しなかった。
水嶋を不正に昇格したことは、公表しなかったのだ。
だってあの昇格の裏の出来事は、水嶋自身は知らなかったし、正式なものとして扱っていたし、水嶋のこれまでの功績を考えたら、遅かれ早かれ、昇格していた。
要するに、警察はこれ以上、警察の失態を晒したくなかったのだ。
ただでさえ、槐事件の黒幕が警視局長だった福崎零一氏の一人息子というスキャンダルな内容なのに、過去の事件も公になり、亡き阿岐名の冤罪が公表され、石塚が逮捕され…。
この上、不正な昇格まで発覚したら警察の信用を取り戻すことは、もっと難しいだろう。
それでも廃倉庫の事件について公にしたのは、被害者である阿岐名の家族のためだった。
何の罪もない、被害者たちを命懸けで守った警察官を、一人の人間の私情で冤罪にしてしまった。
阿岐名に懸けられた冤罪を謝罪することで、少しでも警察の信用を得てもらおうと考えたのだ。
理由はともかく、阿岐名は17年の時を越えて無罪になった。
水嶋は、槐事件の容疑者である彼らへの警察による取り調べが終わった後、新幹線に乗り込んだ。
水嶋:「それにしても…」
水嶋は、ちらっと隣の座席に座る男を見た。
水嶋:「何でお前がついて来てるんだ、沢田?」
そう水嶋が聞くと、阿岐名の墓参りについて来た沢田透真が水嶋の方を向き、笑顔を見せる。
透真:「まぁまぁ、細かいことは気にすんな」
水嶋:「いや、気にするって。
お前そもそもアイツと面識ないだろう!」
水嶋がそう言うと、透真は待ってましたと言わんばかりに言う。
透真:「その話も含めて、お前に話しておきたかったんだよ」
透真が意味深に言うと、水嶋は怪訝っぽい表情で聞く。
水嶋:「何が?」
水嶋がそう言うと、透真はこう言ってきた。
透真:「俺、実は廃倉庫の事件の前にもたまに阿岐名とは会ったことがあったんだよ。」
水嶋:「そうだったのか?」
水嶋がそう言うと、透真は笑いながら言った。
透真:「名前は言わなかったけど、好きな人がいるって話を聞いたことがあってな。
それがまさか男で、今俺の目の前にいる奴だとは思わなかったけどよ!」
水嶋:「………………。」
そう言ってニヤニヤ笑う透真を、水嶋は微妙な心境で見る。
阿岐名という男は、自分の知らないところでもそんな話をしていたのか。
本当に、隠すということを知らない奴だと思いながら水嶋は透真に聞いた。水嶋:「阿岐名と最後に会ったのはいつだ?」
と、水嶋が聞くと。
透真:「廃倉庫の事件の時。」
と、透真は応えた。
透真は水嶋を見ながら言った。
透真:「本当なら、律にすぐに話すべきだったんだろうけど…。
お前、槐事件が起きる直前まで阿岐名の墓参り欠かさなかっただろう。
だからこそ、あまり触れたらダメかもなって思ったし、律が俺と親しくなってから阿岐名のことは、あの事件の間だけ心を通わせたみたいなことを言ってたから…。
思い出させて哀しませたら、阿岐名も辛いんじゃないかって思って言えなかった…」
水嶋:「沢田…」
そうだ。自分はあの日の阿岐名の告白が忘れられなかった。
『だから、好きなんだ……』
自分は、家族以外にあれほど想われたことがあったか…。
阿岐名が命を落としたことで余計に切なくなった。
内心では嬉しかったのかもしれない。
口では何とでも言えるけど、阿岐名に恋心を抱いてなかったことは事実なんだけど。
何かで聞いたことがある。
人は心の底から他人に"好き"だと言われると、好きになるものなんだと。
水嶋:(俺もそうだったのかな…)
でもそうじゃなかったら、自分は阿岐名の形見である猫を引き取らなかったかもしれない。
阿岐名のことは忘れてはいけないと思ったことも事実。
水嶋:「……大丈夫だ、沢田。
何を聞いても俺はそのまま受け止められる」
人の本音に触れることが恐いと思った時期があった。
透真:「……そっか」
でもそれは、阿岐名の熱すぎる本音を聞いてしまったからだ。
自分が知らない……あの後の阿岐名のことを知りたい。
葬儀はどうだったか。
最後に阿岐名はどんな表情をしていたか。
そう思っていた時、透真はこう話を切り出した。
透真:「俺は、舘巻さんからの要請ですぐに廃倉庫に向かった。
俺が駆け付けたら現場は地獄絵図だった…。
舘巻さんが福崎善に声を掛けている時に、血だらけになってるお前と阿岐名を見た。
お前を先に救急車に運んでから、俺は阿岐名に付き添って救急車に乗り込んだ時だった…------------阿岐名の意識が戻ったんだ」
水嶋:「えっ…」
その意外な言葉に、水嶋は驚いて話に食い付いた。
水嶋:「アイツ、死んでなかったのか!?」
水嶋のその問い掛けに、透真は頷いてから"あの日"の話をした。
透真:「ああ、俺も最初はそう思ってたよ------------…」
------------To be Continued...