*はじめに*
登場人物紹介などは、『オリジナル小説『純血の殺し屋4』紹介』と表記されている日記をクリックした次のページに書いてみました。
小説は、小説と言うより脚本のように誰が何を喋っているのかが分かるようになっています。
単に、作者自身が混乱しないようにというために。←
誤字や内容の綴りにおかしな点がありましたら、すみません。
最後に言うのも変ですが、興味があったら読んでみてください。
あ。
この作品は、ミステリーサスペンスです。
あと、キャラクターの設定が少年漫画風になっています。
あと『♪』……お許しください人( ̄ω ̄;)
次から、『純血の殺し屋』の第4章です⇒
story.32:『連鎖』
一ヶ月前、埼美代を保護した翌日な警察署・取調室。
埼は震えた声で『angel』というbarのオーナーで、槐事件の共犯者、シュウだった義兄・周平の過去を語り出した。
それは、想像以上に深刻で壮絶なものだった。
埼:「…私、父の入院のお見舞いに、周平が連れてきた"拓也"さんと出会いました。」
姫井:「"拓也"さん…、周平さんとは?」
埼:「恋人でした…。
周平を説得して、2人で病院まで一緒に来たんですよ」
案の定、父はまったく興味を持たず、知らん顔でしたが…と埼は続けてから少し間を置いた。
そして、急にこう口にした。
埼:「……一目惚れ、しました------------私が、拓也さんに。」
ポツリと出た言葉に姫井、高柳そして、水嶋と石塚も注目した。
埼は少し躊躇いながら、少しずつ話をした。
埼:「誠実で、純白で……。
すごく心の温かい人で、周平のこと…大事にしてる。…でも、私はそんな拓也さんを周平から奪おうとした。
あっちはニューハーフ。
偽の女より、私の方が良いに決まってるって…------------ばか、でした。」
埼はそう言いながら、ぎゅっと瞼を閉じて過去に起きた出来事を怖々と語った。
埼:「拓也さんは、周平が元男だって知った上で一緒にいたんです。
2人は一緒に暮らしてて……まるで新婚みたいに。
私はなんとか拓也さんを振り向かせたくって、しつこく2人のマンションに押し掛けました…………"あの日"も。」
高柳:「"あの日"……何があったんですか?」
高柳がそう聞くと、埼は身を震わせながら黙り込んでしまった。
水嶋はこの時、嫌な直感をしてしまった。
水嶋:「…拓也さんという人は、今どうされているんですか?」
埼:「っ…!」
水嶋の問い掛けに、埼はビクリと反応した。
埼の目の前にいた姫井や高柳、石塚も一つ理解した。
なぜ、シュウは義父でもなく、実姉を自殺に追い込んだ輩ではなく、ましてや実母でもない------------"埼(彼女)"を憎んだのか。
すると、埼は突然、机に強く拳を叩き付けて声を上げた。
埼:「拓也さんが悪いのよ!!
あの時、私たち家族と周平を再会させるきっかけを作った!
もしあのまま会わずにいたらこんなことにはならなかった…!!」
姫井:「埼さん……」
埼:「私は悪くないっ!
道端で、頭をぶつけてっ……それが、数時間後に電話で……拓也さんが…っ…!」
埼は涙を流しながら、大声でそう叫んだ。
埼:「でも私、拓也さんを殺してなんかないわ!!!!」
脳内出血死------------確かに、頭を打ってすぐに出る症状ではない。
埼と別れた後、拓也という男性は自宅で、シュウの目の前で頭痛を訴え、倒れて------------そのまま病院のベッドへ。
だが数日後、この拓也という人は実は"生きていた"という情報を得たのだ。
--------------------------…
警察病院・精神科病棟------------応接室にて。
シュウの過去を話した水嶋から、その恋人が生きていたことを聞かされて、真幸は一つ納得した。
真幸:「俺は、実父が義兄に虐待していたという過去があります」
真幸は改めて自身の過去を口にする。
真幸:「武長さんには、双子の姉を自殺に見せかけ殺されたという過去があります…」
武長はその事から、姉を殺した人間たちを憎み、この世から消したいと願った。
真幸:「一貴くんは、実の母親に同性である恋人と無理やり引き離された過去があります…」
水嶋:「あぁ…」
今、思い返せば姫井いわく、『angel』で初めて会った時。
シュウはとても一貴を気に掛けていた。
それは、自分も過去に家族だった埼によって恋人を奪われかけた過去を抱えていたから。
真幸:「今回の勇人さんは、"夢"を災害によって奪われました。
決して、他人のせいではなかったかもしれませんし…勇人さんも、殺したいほどではなかったでしょう。」
それでも、前に進むためにはかつての仲間の成功を妬むしかなかったのかもしれない、と言ってから真幸は俯いた。
そして、気が付いたように水嶋に問い掛けた。
真幸:「ところで、その拓也さんは今、どうされてるんですか?」
水嶋:「ああ…奇跡的に助かった、が。シュウのことで勘当していた両親が今度こそ引き離したそうだ。現在は両親も亡くなって、施設に入居して車椅子生活を送ってる。実は昨日、会ってきたんだよ拓也さんに…」
水嶋はそう言ってから、やりきれないといった様子で真幸から目線を逸らす。
真幸はそれを察して、さらに俯いた。
誰が信じると言うのだろう。
かつての恋人が殺人に加担して、しかも殺された…だなんて------------。
水嶋:「…そういや、真幸くんに聞きたいことがあるんだ」
真幸:「はい?」
突然、話題を変えようとした自分を見て真幸は特に気に障った様子はなく、すぐに返事をした。
水嶋は小さく頷いた後、こう尋ねた。
水嶋:「"アートロ"という名前に心当たり、あるか?実は、埼さんを保護しに向かった時にスタッフに扮して俺たちの前に現れたんだ。」
真幸:「"アートロ"…」
水嶋:「じゃなかったら、犬の仮面の男だ。あと茶色い癖っ毛の………覚え、ないか?」
水嶋がそう問い掛けると、真幸はゆっくりと瞼を閉じて思い出そうとする。
真っ暗な目の前に、ふと一つの光景が浮かび上がった。
そこには、武長、一貴、勇人…そして、"顔の見えない人たち"。
中央には、またしても顔の見えない"スーツを着た男性"。
その後ろには狐の仮面を被ったシュウこと、埼周平の他、猿と鳥、兎の仮面を被った連中もいた------------その中に"犬の仮面"を被った癖っ毛髪の男が!
真幸:「------------ハァ!ハァ…っハァ…!」
水嶋:「真幸くん!?」
真幸:「だ、大丈夫…です。
それより、犬の仮面の男ならいました!いやいや、知ってます…見たことがあります!」
真幸は思い出すなり、必死にこんなことを伝えてきた。
真幸:「あと猿に、鳥、兎の仮面を被った人たちも…!あと、あと、俺たち4人の他にも"何人"かが…!」
水嶋:「なに!?」
真幸はようやく、思い出すことが出来た一部の記憶を水嶋に訴えると、頭痛で頭を押さえた。
真幸:「うっ…」
沢田:「真幸くん…!」
ずっと黙って話を聞いていた水嶋の実姉、沢田医師が真幸を心配する。
そんな2人を見ながら、水嶋は気持ちで唖然としていた。
水嶋:(まだ、槐はいんのか…)
しかも真幸の話から1人や2人じゃない。
この事件の恐ろしさを改めて思い知らされることになることを、そしてこの先の自分の運命を、水嶋はまだ直感出来ずにいた。
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『第4の槐事件から、一ヶ月が経過しましたね。
勇人くんが期待以上の働きをしてくれて、私は大変満足していたところです。
1人、私の足を失ってしまった……それだけが心残りです。
--------次の 槐-エンジュ- は、貴方です。
貴方の恨み、晴らしませんか?』
?:「う゛わっ…!」
受信したそのメールを見た瞬間、高校3年生の男子生徒は小さな悲鳴を上げて、ケータイをベッドに投げた。
怯えた顔を見せた彼は壁に背もたれて、床にへたり座った。
そして、ガタガタと震えながら自身の両手を握ってこう口にした。
?:「い…嫌だ。人殺しなんか、なり…なりたくないっ!」
声を押し殺しながらそう言って、動揺する彼が両手で頭を抱えた時、一階の階段の下から飛んできた声が救ってくれる。
?:「悠一くん!ご飯、出来たからいつでもいらっしゃいね」
悠一:「!は、はいっ!」
悠一という少年は、母親の声に助けられてケータイから逃げるように部屋を飛び出した。
彼が部屋から出て行った後、部屋の窓が開けられて、犬の仮面の男こと、アートロが入って来るなり、彼のケータイを手に拾う。
アートロは彼のケータイからメールを消却すると、パチンッと端末を閉じた。
アートロ:「よしっ♪
ダメだよ、ちゃんと消さなきゃ------------って言ってもダメなのか。」
何せ、5人目の槐は上手くマインドコントロールされてくれない問題児だから。
アートロ:「それを見守ってフォローするのが、僕ちんの役目…ってか。」
------------まぁ、せいぜい頑張ってと思いながらアートロは少年の部屋を後にした。
ご丁寧に、ケータイを机の上に置いて。
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