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And he became a hero.(<成長6年>金吾+兵太夫+三治郎)
「ねぇ、お願い金吾!」
パンッと両手を合わせて懇願してくるクラスメイト二人に、金吾は困ったように後ろ頭を掻いた。
視線をゆっくりとその二人から目前の部屋へと移して、細く溜め息を吐き出す。
それから、今一番気になっている事を冷静に尋ねてみた。
「・・・・・何で、俺なんだ?」
「きり丸はバイトだし、しんべヱは壊れた壁修復中だし、団蔵は用事で出かけちゃってるし、庄左ヱ門は先生に質問があって訊きに行ってて、伊助も虎ちゃんも委員会、喜三太は忍務で風魔。」
「ってなると、もう金吾しかいないんだよね。」
金吾の問いに、わざわざ丁寧にクラスメイト一人ずつの今の状況説明をくれた三治郎と、それに続く兵太夫が答える。
が、その中に何となく引っ掛かる部分があって金吾は問いを重ねた。
「ちょっと待て、乱太郎は?」
「乱太郎は・・・・・ねぇ、三ちゃん?」
「ねぇ、兵ちゃん?」
困っているようで、しかしどこか楽しそうに笑みを浮かべて、絡繰りコンビは声を揃える。
「「だって、頼まなくたって引っ掛かるでしょ?」」
これを聞いて、何も否定する術がなく金吾は心中で乱太郎に謝罪する。
しかし、尤もなのだからどうしようもない。
金吾は、もう一度今度は大きめの溜め息を洩らすと、キッと視線を強めて言った。
「いくら他の奴らが用事でいなくて俺だけ残ってるからって・・・・・新作だらけの絡繰り部屋に入るのは御免だ!!」
きっぱりとした、断固拒否の言葉。
そう、先程から金吾は一体何を頼まれているのかというと。
兵太夫と三治郎がここ数日で作成した、新作絡繰りが多く張り巡らされている彼らの部屋に試しに入ってほしいらしいのだ。
普段こういった役目は、予算会議等でターゲットにされる会計委員長が受けているし(勿論本人は嫌がっている)のだが、今回はその彼がいない。
彼どころか、他のクラスメイトが皆用事持ちなので、たまたま委員会も鍛錬も早めに切り上げた金吾に白羽の矢が立ったようだ。
「そんなに嫌がらなくても大丈夫だって。金吾だったら避けられる、全部大丈夫、あっという間に戻ってこれるよ!って事で、行ってらっしゃい♪」
明るく声で言ったかと思うと、兵太夫はトン、と実に軽く金吾の背中を押したのである。
となれば、不意に作動した力のせいで、金吾はよろめく訳で。
「う、おっ!?」
奇妙な声を上げつつ、何とか浮かせてしまった片足をどこかに付こうとするが、その先にあるのは兵太夫と三治郎の絡繰り部屋。
ここだけは避けたい、頭でそう訴えても、先程まで部屋に向かっていた足はいきなり進路変更出来るはずがない。
何とか片足だけで立とうと粘るが、元々バランスが崩れている為長く続く事もなく。
「じゃあ、絡繰りの旅に」
「いってらっしゃ〜い!」
「ちょっ、待っ・・・・・おま、えら―――――」
笑顔で見送る絡繰りコンビに何かを言いかけるが、しかし。
その瞬間、哀れ金吾の足は絡繰り部屋に一歩踏み入ってしまった。
「・・・・・・・・・・・あ。」
直後、金吾の悲鳴が忍たま長屋中に響いたそうな。
(それでも何とか抜け出してくるのは流石だね。)
お題提供元様:空は青かった
二階から黄色い花びら(<成長6年>団蔵+兵太夫)
ひらり、と。
不意に真上から降ってきた何かに、団蔵は目を瞬いた。
ゆっくりと緩やかに落ちてくるのは、一枚の黄色い花びら。
何となく無意識に右手を前に出し、それを手のひらで受け取る。
「・・・・・・何だ?」
受け取ったはいいものの、何故これが降ってきたのか謎である。
周りには黄色い花を咲かせるような木はないはずだが・・・と、不思議に思いながら上を見やる。
すると、その彼の目に、二階の窓からこちらを見下ろしているクラスメイトが映った。
「兵太夫・・・・?」
団蔵がポツリとそのクラスメイトの名を呟くと、彼・・・・兵太夫はニコと笑った。
普段から絡繰りや罠に引っ掛かっているからか、何となくその笑みに疑問を持ちつつも、団蔵は兵太夫に問いかける。
「この花、どうしたんだ?」
「今度の絡繰りに使おうと思ってねー。」
窓の縁に肘をついている彼の答えに、団蔵は手中の花びらを見る。
どこにでもありそうな花びらで、別段おかしなところも見受けられない。
「珍しいな、お前がこんな人畜無害そうな絡繰り作るなんて・・・・。」
団蔵がそう言うのも無理はないだろう。
何せ彼は、物を落とされたり床穴から落とされたりどこかへ飛ばされたりと、絡繰りに引っ掛かる確率が不運で有名な保健委員の次に多いのである。
まあ、予算会議の際に作法委員から総攻撃を受けるからかもしれないが。
なので、花を使うという可愛らしい絡繰りが、随分珍しく思えてしまったのだ。
が、しかし。
言われた兵太夫は、その涼やかな眼をきょとんとさせた。
「え、そう?それ、痺れ薬の材料なんだけど。」
「へー、痺れ薬のねぇ。これが―――――・・・・って、あ?痺れ、薬・・・・?」
一度は兵太夫の言葉に納得したものの、引っ掛かる部分があって団蔵は単語を反芻する。
その意味を頭で理解するまでにほんの数秒かかり、おかしいと確信してとっさに声を上げた。
「はぁ!?痺れ薬だぁ!?」
「そう。三ちゃんに痺れ効果のある草花教えてもらって、乱太郎に調合してもらって・・・・。」
と、花びらで作る痺れ薬とやらの説明を笑顔で語る兵太夫。
だが、団蔵の耳には殆んど彼の話など入ってきていない。
山伏として修行を積んで山の草花に詳しい三治郎と、薬品の製作・調合にかけては天下一品の乱太郎の手を借りているという事は、よほど本気で薬を作るらしい。
とてつもなく嫌な予感がして、団蔵は顔を引きつらせる。
その不安を何とか拭い去るべく、意を決して兵太夫に声をかけた。
「へ・・・・兵太夫さん・・・?」
「ん?なーに?」
「その、痺れ薬を使った絡繰り・・・・まさか・・・・。」
恐る恐るといった風な団蔵の心情を読んだのか、彼が全て訊き終える前に兵太夫はニッコリ微笑って答えた。
「あ、安心してよ。人畜無害だから、今度の予算会議にどんどん使うね。」
「いやいやいや、ちょっと待て!痺れ薬はどう考えても人畜有害だろうが!」
「無害って言ったの団蔵じゃないか。」
「そりゃこの花が痺れ薬なんかの材料だなんて知らなかったから言ったんだっつーの!!」
大声でツッコミを入れているせいか、ついつい手に力が篭る団蔵。
持っている花びらを今にも握り潰してしまいそうである。
それを二階から見逃さなかった兵太夫、団蔵の右手を指差すと、
「それ、あんまり強く握ると潰れて痺れちゃうよ。」
「え。」
とたんにパッと手の力を緩めれば、その拍子にヒラヒラと花びらが地上へ落ちた。
「・・・・なーんてね。麻痺性の毒は花の蜜からしか出ないよ。」
あははは、と軽い笑い声を上げると、硬直している団蔵は置き去りにして兵太夫は室内へと戻っていってしまった。
彼が窓縁から姿を消して数秒後、ばっと団蔵が顔を上げてもすでに人影は見当たらない訳で。
からかわれた怒りが今更フツフツと沸き上がってきて、ギュッと両拳を強く握り締める。
そして、引きつらせていた目元をきっと吊り上げると、団蔵は叫んだ。
「兵太夫ぅぅぅぅ待てコラァァ!!」
その怒鳴り声は、学園の端まで響き渡りそうであった。
(・・・・・・兵太夫、そんなトコ隠れて何してるの?)
(・・・・・・鬼と隠れん坊してんの。)
お題提供元様:空は青かった
走り続けて着いた場所(体育委員会)
走って、走って、上手く呼吸が出来ないくらい必死に走って。
前で、少し先を走る先輩の背中を追い、ただ足を動かす。
委員長は、辛うじて後ろ姿が見えるくらい先を走っている。
・・・・が、その委員長の足が、ピタリと止まった。
それに続く他の先輩達も、同じ場所までたどり着くと立ち止まる。
先輩が立ち止まった事を不思議に思い、殆んど無意識に駆けながら、金吾はやっと皆の処へ到着する。
足を止めて最初の呼吸音は、ひゅう、と風のような音だった。
バクバクと騒がしく速い鼓動と、自分の乱れた息が嫌にうるさく聞こえる。
額から滴り落ちる汗を拭っていると、二番目に到着していた四年生の滝夜叉丸が、委員長に尋ねた。
「・・・・七松先輩、どうなさったんですか?」
もう呼吸が整ってきている辺り、流石体育委員会の中でも上級生である。
滝夜叉丸に問われた委員長・・・小平太は、後輩達の方を向いてにかっと笑う。
それから、真っすぐ前方に向き直って、その先を指差した。
「・・・・・ほら、見てみろ!」
言われて、後輩達は委員長の指先に沿って前を見やる。
その彼らの目に映ったのは、一面に広がる花畑。
黄色や赤、橙色と様々な種類の花が所々に咲いている。
「うぉぉぉ・・・っ!」
花畑を見てすぐに、三年生の三之助が歓声を上げた。
二年生の四郎兵衛も、驚きに普段から大きい目を丸々と見開いている。
この場所は、いつもランニング等で使っているルートから少々離れた位置にあるので、あまり訪れない。
なので、崖から見下ろせるこんなに大きな花畑があるという事に今まで気が付かなかった。
「これは・・・・?」
「この前、一人でランニングしている時に見つけたんだ。お前達に見せたくてな!」
滝夜叉丸の言葉に応えるように、再び太陽のような笑顔を向けてくる小平太。
彼の笑顔を見て、自然と後輩達の表情も綻ぶ。
「また、見にこような!」
「はい!!」
「それじゃ、学園に戻るぞ!」
「はい!・・・・・・・・・・・・・・・って、え?」
ノリで元気良く答えたものの、「学園に戻る」という一言に、思わず素っ頓狂な声を発してしまう後輩一同。
「え、もう帰るんですか?」
四郎兵衛の問いも、当然といえば当然である。
まだこの花畑が見える崖に到着して数分と経っていない。
にも拘らず、もう帰ってしまうのは多少勿体ない気がするのだ。
それに、ここに来るまでには物凄い距離を走ってきた。
その、行きと同じ距離の道のりを帰るにはもう少し休憩が必要・・・・というのが、後輩達の本音だった。
しかし、後輩達の心中を知ってか知らずか、小平太はあっけらかんと言う。
「モタモタしてたら晩飯がなくなるぞ!」
「それもそうですけど・・・・・。」
「さぁ、帰るぞー!いけいけどんどーん!!」
「って、七松先輩ぃ!!」
後輩の呼び止める声など耳に入っていないのか、さっさと地を蹴って駆け出す委員長。
残された後輩達が呆然と立ちつくしている間にも、彼の背中はどんどん遠ざかる。
それを見て、はっと逸早く我に返ったのは滝夜叉丸で。
「い・・・いかん!お前達!私達も早く後に続くぞ!!」
「そうしないと、置いていかれる!」と必死の顔で付け足して、自分も走り出す。
となれば、他の三人も「はい!」と頷いて後に続く訳で。
こうして、体育委員は綺麗な花畑を数分と眺めもせずに学園に戻っていくのであった・・・・。
(何とか晩御飯までに帰れました。)
お題提供元様:空は青かった
壊れた、直せない。(<成長6年>しんべヱ+平太)
「・・・・・友達と、喧嘩してしまったんです。」
傍から見てもわかるようにしょんぼりと落ち込んでいる同委員会後輩の一年生を見て、しんべヱは苦笑した。
直し途中の桶を下に置き、トンカチと釘をその横に並べる。
俯き加減の一年生の前に、同じ目線の高さになるようにしゃがみ込んで問いかけた。
「どうして、喧嘩しちゃったの?」
「大切にしてた小物入れを貸したら・・・・あいつが落として、壊れちゃって・・・・。」
今にも泣き出してしまいそうな震える声で説明する一年生。
ギュッと装束の裾を掴むその姿を見つめて、しんべヱは大人しく続きを聞く。
「・・・・あれ、母ちゃんから預かってる大事なもの、で・・・・それで・・・・つい、『大っ嫌いだ!』って・・・・。」
それだけで大体の経緯が把握出来たしんべヱは、再び微苦笑を浮かべる。
それから内心で溜め息をついて、ポンと一年生の頭に優しく手を乗せた。
突然の事に目を瞬く後輩を前にして、しんべヱは今度は穏やかに笑う。
「・・・・・あのね?形がある物は、よっぽど滅茶苦茶にならない限り直せるけど・・・・友達との関係は、たった少し壊れただけで直らなくなっちゃう事もあるんだ。」
「!」
「時間が過ぎれば過ぎるほど、元に戻れなくなっちゃうよ?それでもいいの?」
柔らかな声音と、全てを包み込んでくれるような微笑み。
先輩の言葉に、一年生の肩がピクリと動いて、ゆっくりと顔が上がる。
問いかける形で小首を傾げて答えを待つと、一年生はフルフルと小さく首を横に振った。
そして、への字に曲がっていた口から呟かれる一言。
「・・・・・よく、ない・・・・です・・・!」
それはとても細い声だったが、目前のしんべヱにはしっかり届いていた。
しんべヱは、一層笑みを柔らかくするとこう言ってやる。
「じゃあ、今すぐ仲直りしておいで。」
「え?でも、この桶の修理の手伝い・・・・!」
「これは僕だけで充分だから。君は、早く友達の処へ。ね?」
そう言われてしまっては、ここに無理に留まる術はない。
一年生は、一瞬躊躇うように目線を彷徨わせたが、すぐに決めたのか、
「福富先輩、ありがとうございますっ!」
可愛らしい声で礼を述べペコリと頭を下げると、そのまま身を翻して忍たま長屋の方へ走っていってしまった。
小さくなる後輩の背中を見送りつつ、再び桶の修理に取り掛かろうとトンカチを持ったところで、
「しんべヱ、後輩の面倒を見るのが凄く上手くなったよね。」
と、横からの静かな声。
驚く事もせずしんべヱが声の方を見やれば。そこには同委員会の平太の姿。
「何だぁ、平太見てたの?」
「途中からね。」
小さく笑う平太に同じく笑い返し、釘を木の板に当てて打ち始める。
カン、カン、とかすかな金属音が響く中、しんべヱが呟いた。
「・・・・・・・・・・ずっと、壊さないでほしいよね。」
「え?」
「ここでの生活は、友達の支えも必要だから。」
「・・・・・・そうだね。」
しんべヱの言葉に同意するように、瞳を閉じて平太は頷いた。
(僕達も、みんながいたからここまで来れたのだから。)
因みに、今回登場した一年生クンの設定なぞを。^q^
一年は組在籍、日倉小太郎(ひくらこたろう)。
お母さんっコの泣き虫クン。感情が昂ると混乱してキツイ事も言っちゃうのでよく落ち込む。
でも、根は物凄く良い子で友達思い。
なーんて設定、またいつか使えたらいいのにな。(どこで
お題提供元様:空は青かった
性 別 | 女性 |
誕生日 | 2月16日 |
地 域 | 神奈川県 |
職 業 | 大学生 |
血液型 | O型 |