両国の親善の宴での演能。幽玄華麗な薪能です。
両国の首脳や重臣はじめ、絢爛たる装束艶やかな貴婦人たちの桟敷も完備。
そこで元就様が指名した演目は、なんと『泰山府君』。
内容が内容だけに、驚く長宗我部家中、慌てる毛利家中。
しかし、元就様は頓着せず開演を命じます。
妄執に堕したかつての老賢者の亡霊が、美しき姫宮を激しく打ち据える場面になると、身悶える姫の艶めかしい演技が繰り広げられます。
倒錯した艶めかしさに、固唾をのんで見入る者、いたたまれず目を逸らす者、打擲される姫の痛ましさに顔を背ける婦人も。信親あたりは顔を真っ赤にして俯いちゃってますし、妙玖夫人は夫の趣向に眉をひそめてます。

そんな中、元親も元就の意を図りかねてますが、演目の内容から
「…誘ってる…てなわけじゃねえよなぁ……」
とか、もしそうなら嬉しいが…いやしかし、毛利ともあろう男がそんな誘惑を手間暇かけてするはずが……なんて、悶々としてます。

唯一、平然と鑑賞しているのは元就様だけ。

終演後、凝った空気をほぐすように狂言が演じられている間、元親はたまらず元就様に質問。


「……おい、ありゃあ、あんたからのお誘いか」
「三宝の捨て者…呆れてものも言えぬ。あれは警告ぞ」
「警告?」
「行い澄ましたはずの賢聖ですら、ささいな欲望によって無限の渇望に突き落とされ、世にも浅ましき鬼となり果てる。そして、無知なる姫は貴なるがゆえ、知らず知らず己の美質を以て己を利する。無垢なる面を変ずることなく、だ。八幡の真似事など止めよ、国を滅ぼしたいか」




とりあえず、仕事の中身と瀬戸内が融合した、素晴らしい夢でした。
よくやった、我が脳内よ!