2013-8-28 21:13
3本で終わると言いながら、追記画面に入りきらなそうなんで、分けました。
すいませんm(__)m
4本目が出来たら、後編として無理矢理一本にすると思います。
(8/29)と思ってましたが、まあまあキリがいいとこで続いてる気がするんで、4本にします(^-^;
すいませんm(__)m
なら、さっさと載せときゃ良かった…orz
今回も乱馬表記で全部女らんまです。
らんあ苦手な方は、閲覧をお止めくださいm(__)m
「――――わかんねーんだろ?色んな事が。」
確めるように、ゆっくりと乱馬が口を開く。
「……どうして、それ……を?」
「おめーずっと、おれ以外のやつに会うと困った顔してた。」
「…………。」
「おれのことは?」
「……わかるわ……多分、乱馬のことだけ……。」
「そうか…。なら、おれがおと……いや、なんでもねー。」
…おと……?
何を……言いかけたの?
「……あたし…どうなるのかな?…あんたのこと以外の記憶がどんどん無くなって行くのっ………!なんでっ!?」
叫ぶあたしを、乱馬がふわっと抱き寄せる。
「この世界なら、こんなに簡単なのに………。」
えっ……?
なに………?
顔に当たるおさげがくすぐったい。
乱馬に触れてるところ全部が、柔らかくて気持ち良くて………。
あたし………このままで…………。
「――いっそ、このままの方が…いいのかもな………。」
うん………。
「おめーを傷付けずに………誰にも邪魔されずに………。おれがこのままでいれば………。」
サラ………サラ………
また、砂が流れ出した。
乱馬に触れてると、止まるんだと思ってたのにな。
もし、
もしも…………
この記憶の砂が全て落ちたら………
あたしは、
乱馬を覚えてるんだろうか?
―――ゾクッとした。
周りは蒸し暑いのに、自分の身体を伝う汗が異様に冷たい。
「ねぇ…あたしは………乱馬のこと……ちゃんとわかってる?」
「…ん?どーゆー意味だよ、それ?」
そうよっ………今、あたしが覚えてる乱馬は……本当に彼女の全てなんだろうか?
サラサラと溢れた中に、ほんの少しでも乱馬の記憶は無かったのかと問われたら、あたしはそれを否定できないっ………。
「あかね……?あかねっ…!?」
口に当てた手が小刻みに震える。
怖い………。
記憶を失うことも。
自分を信用できないことも。
「あかねっ、来い!」
あたしの腕を掴んで、乱馬は突然翔ぶように走り出した。
「ちょ、ちょっと、どこへ!?」
あたしの問いには答えず、乱馬は人混みの中をすり抜け、お社への長い階段を難なく掛け上がって行く。
絡まるからと浴衣の裾はとっくに捲り上げられて、白いしなやかな足は太股まで露になっていた。
可愛いくせに、ちっとも周りの目を気にしないんだから。
ほんっと、まるで男の子みたい…。
――――!?
今、あたし…なんて……?
凄く大事なことを思わなかった?
「あかねっ、着いたぞ!」
えっ?
ここ?
「見ろよ、ほら!」
顔を上げるとそこには、お社の屋根を優に越える程の大笹が、キラキラと優しい光を放ちながら立っていた。
不思議なことに、笹の葉一枚一枚が色とりどりに発光しているみたいだ。
「……綺麗…。これが願いを叶える笹?」
「だろうな。看板にもそう書いてあるし。」
確かに笹の足元には『恋愛成就の大笹〜あなたの願い叶えます!〜』と書かれた看板が掛けられていた。
大笹は神秘的で綺麗なのに、その看板は正反対に下品とも思えるほど、真っ赤な字で書かれていて、折角のご利益が嘘っぽく感じる程のアンバランスぶりなのだ。
「ホントに願い事叶うのかな?」
あれ…?
あたし、前にもそんなこと思ったような……?
『大笹ノ葉ガ欲シイ方ハ此方デース。』
突如、妙なイントネーションの甲高い声
のアナウンスが、ガチャ、ガチャと雑音混じりに拡声器から、耳に飛び込んで来た。
驚きながら音の方を向くと、声よりももっと奇妙な姿がそこにあった。
なに…あれ?
鳥の着ぐるみ…なのかな?
多分これが「鵲さん」という変な鳥なんだろう。
ただの鳥の着ぐるみであれば、何の違和感もないのだけれど、その人物らしき者は、ワイシャツにスーツのズボン、その上に祭の法被という格好で、しかも服から出ている首や手足は全て本物の鳥のように見えるのだ。
「なんだありゃ?鳥か?人か?」
「鵲…でしょ?」
「かささぎぃ?なんだそれ?」
「鳥の名前よ。」
「鳥?あーだから、あんなオウムみたいなしゃべり方かー?」
オウム…?
言われてみれば、確かに似てる。
拡声器のせいで、あんなつぶれたような声なのかと思ってたけど……ん?
「オウムみたいって…それじゃあ、まるであの人が鳥みたいじゃない?」
「へ?だから、鳥だろ?」
う……確かに、鳥だけど………。
「とりあえず、あいつが笹の葉くれるみてーだし、行こうぜ。」
乱馬はまた私の手を引いて歩き出した。
あれ?
そーいえば、またあの音止まってる………どうしてだろ…?
『此方デ引換券ヲ貰ッテ下サイ。引換券ハ一人一枚デス。』
小さな人だかりが出来ている方へ向かいながら、真剣な目で乱馬はあたしを振り向く。
「当たりの笹の葉に願掛けすれば、おめーの記憶も元に戻るかもしれねーだろ?」
「でも、そんなこと…。第一当たるかなんて…。」
「やってみなきゃ、わかんねーだろっ。それとも――――。」
そこで言葉を切って、乱馬はあたしの目を覗き込んだ。
まるで何かを探すみたいに、奥の奥まで何一つ逃すまいと……。
けれど、それでいてどこか不安そうに。
「あかねは…やっぱ、このまんまの方がいいのか?」
やっぱ…?
その言葉に引っ掛かりを覚えながらも、あたしは首を振る。
「記憶を戻したい。このまま何もかもわからなくなるなんて、嫌だもの。」
「なら、決まりだな。おめー、くじ運良いし、絶対また当たるって。」
―――――――また?
「ハイ、引換券ヲドウゾ。」
少し並んで、乱馬の手に渡されたのは、白い鳥の羽。
「まさか…これ、おめーの羽?」
「ヤダナ。コンナニ抜イタラ、僕裸にナッチャウヨ。コレ持ッテ、大笹カラ目当テノ笹ノ葉ヲ見付ケタラ、ソノ羽ガ取ッテ来テクレルカラネ。」
「おめー…やっぱ鳥なんだな…?」
「ハイ、次ノ人ドウ……ン?オット、君ハ駄目ダヨー。」
渡し掛けた引換券をぱっと引っ込めて、鵲さんがあたしの顔を見て首を振った。
えっ……なんでっ!?
「一人一回ッテイウ、決マリニナッテルカラネ。オ嬢サンニハモウ渡シタヨ。」
鳥の顔なのに、なぜか困った表情に見えるから不思議だ。
「あたし、初めてですよ?」
「駄目駄目、君ハ二回目ッ。僕ハチャント覚エテルンダヨ。シカモ、君ハ当タリヲ選ンデ、モウオ願イ事モ叶エタハズダヨ。」
あたしが……願い事を叶えた…?
この人、何を言ってるの?
「お願い事なんて、そんなのしてません。」
「ソウカ、覚エテナインダネ。仕方無イカ。君ハ約束ヲ破ッタカラ、歪ミヲ起コシテシマッテルンダナ。」
歪み……?
約束………?
なんのこと………?
「君ハ昼間ニモココニ来テ、当タリノ笹ノ葉ヲ選ンダンダ。ソシテ、願イ事ハ叶ッタ。ソノ証拠ニ、ホラ。」
鵲さんはバサッと羽で、あたしのすぐ後ろを差した。
証拠って……?
――――――乱馬?!
あたしの願い事が、乱馬……?
乱馬は手渡された羽をきつく握り締めて、睨むように大笹を見上げていた。
「笹ノ葉ハ君ノ願イヲ叶エタ。ダカラ、彼ハ女ニナッタ。」
彼……?
彼って……乱馬のこと?
この人…何を言ってるの?
「乱馬は…男じゃない…わ…よ?」
何故か声が震える。
「君ガ願ッタンダヨ。女ノママデイレバイイノニッテ。」
女のまま―――――?
「………乱馬……いったい…何のこと?」
乱馬はゆっくりとあたしへ振り向く。
切なそうに細められた瞳が、若草色に染まって揺れた。
「あかね……わりぃ。おれ、男なんだ。」
――――――え?
目の前がパッと白く弾ける。
次の瞬間、あたしの頭の中に一気に流れ込んで来たのは、ある記憶だった―――――
続きますm(__)m