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待つとしきかば今かえりこむー@ー

二次創作です。わからないという方はお戻り下さいm(__)m





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〜許嫁の行方〜

「らんまーーっ……!!」

「乱ちゃーんっ……!」


少女達のよく響く声が林の中にこだましていた。

「あかねちゃーんっ。」
「右京っ、そっちどうだった?」
「あかんっ、手懸かりすらないわぁ…。」

息を切らせながら、二人は辺りを見回した。

「おじさまはこの辺りではぐれたって言ってたけど、もう少し範囲を拡げてみる?」
「せやなぁ…。まったく、おっちゃんときたらサッサと帰ってしまいよって、ほんまに無責任やなっ。」
「乱馬のことだもん。一人で何とか出来ると思ってるのよ、きっと。」
「けどなぁ…もう2週間やでっ?!」
「…そうね…いくら乱馬でもちょっと
おかしい……。」


ザザァーと木々がざわめく。
それにはっとして、あかねと右京はまた辺りを見回した。

「乱馬…どこ行っちゃったの…?」


立ち竦む二人の少女を嘲笑うかのように、一陣の風が駆け抜けていった。





事の起こりは3週間程前に遡る。

ある日、毎度ながら突然山での修行を思い立った早乙女親子は、「1週間程で帰る」と告げて天道家を後にしていった。

それから5日後、帰って来たのは玄馬一人。
聞けば、「修行中に乱馬とはぐれた」と言う。

「なぁに、心配いらんよ。乱馬のことだ、すぐフラッと帰って来るさ。」
と笑う玄馬の言葉を、あかねも天道家の面々も鵜呑みにしていた。

しかし、1週間経ち10日経っても乱馬は帰ってこない。
電話や手紙どころか何の音沙汰もない。

痺れを切らしたあかねが、「探しに行く」と言い出したのが3日前。
そこに話を聞いた右京も加わり、玄馬と護身の為と付いてきた良牙とムースの5人で乱馬を探して、今日に至る訳だ。

現在は早々に玄馬が離脱して、4人になってしまったが。





「そういえば、良牙君とムースは?」

「…ん?どうせまた迷子やろ?ほっとき、そのうち戻って来るやろ。…ってか、なんやのあの二人はっ!?女ばかりは物騒だとか言うて付いて来といて、方向音痴にど近眼なんて全然役に立たへんねんからっ。こんなことなら、シャンプーの方がマシやったわっ!」

「シャンプーはお婆さんと組合の旅行でしょ?仕方無い…わ………ん?」

あかねがふと周りの異変に気付いて言葉を切った。

「ねぇっ右京、霧が出てきたみたい。今日はもうテントへ戻らない?」

あかねの言葉に、右京も周りの景色が変わり出したことに気付く。

「なんや急に…嫌な感じやね…。急いで戻ろかっ。」

いつの間にか二人の周りは、霧で真っ白になっていた。しっとりと湿気を含んだ空気が少女達の体にまとわり着く。
右京はあかねの手を取ると、早足でテントへ向かって駆け出す。

「あかねちゃん、はぐれんようにしっかり手ぇ繋いどいてなっ!」





「……おかしいなぁ…テント…この辺やったはずやのに…。」
「…霧で方向間違ったのかもしれないわ…こう真っ白じゃあ…景色なんて見えないし…。」


あれから1時間余り、未だに二人は霧の中をさ迷っていた。
手を繋いでいるはずなのに、お互いの顔すらハッキリとは見えない程の視界の悪さと、陽が傾き始め夜までにはテントに辿り着きたいという焦りの中での捜索は、少女達の体力と気力を急速に奪っていった。


「…しぃーっ、あかねちゃんっ……!」

右京が何かの気配を感じたのか、体を強張らせてあかねを制した。
瞬時にあかねも右京の感じた気配を察し、そちらへ体を向けて身構えた。

ザザッザザッと草を分けながら、前方から何かが近付いてくる。
向こうも二人に気付いたのか、一旦ピタッと動きを停め暫く様子を伺っていたが、またこちらへ向けて先程よりも速度を上げて進み出した。

「…来るで。合図したら、同時に…ええな?」
「わかったわ。」

右京が愛用のフライ返しを握る手に力を込める。

「…3…2…1……行くでっ!」

あかねより一瞬早く、右京が何者かに向かってフライ返しを振り上げた。
と、同時に――

「う、右京っ待てっ!俺だっ!」
「その声っ!?良牙かっ!?」

ガキッーーーガシャンッ…

右京の攻撃が良牙に当たる瞬間、良牙の後方から飛んできた無数の鎖がフライ返しを弾き飛ばした。

「相変わらず、物騒なおなごじゃな。」

良牙の背後から、鎖を手に白いチャイナ服の男が姿を見せた。

「すまないムース、助かったぜ。」

慌てて右京が良牙に駆け寄る。それにあかねも続く。

「堪忍なっ良牙、大丈夫か!?」
「気にするな。俺がもっと早く声を掛けるべきだったんだ。」

「良牙君っ、ムース!?」
「あかねさんっ無事で良かった。霧で心配してたんですっ。」

「まったく、随分と探しただ。せっかく付いてきてやったのに、はぐれてどうするだ?」
「アホかっ!迷子はあんたらの方やろっ!?」

「ちょぉっとーっケンカしてる場合じゃないでしょ!?これからどうするか考えないと………きゃぁっ!」

グォォッーー!

突然の強風が、辺りの砂や木の葉を巻き上げながら四人を囲むように吹き過ぎた。

「あかねさんっ!」

瞬間、良牙はあかねを自身の内側に引き寄せる。
思わず誰もが目をつぶり、両腕で顔を庇っていた。

「なんやっ、この風!?」

風が治まったのを見計らい、四人は慎重に瞳を開けた。

「おいっ、霧が……。」
「何故じゃ、急に薄くなっただ…。」

先程まであんなに真っ白だった霧が晴れて、今は朝霧程には辺りが見渡せるまでになっていた。

「…ねぇっ…あれっ見てっ!」

いきなりあかねが、何かに向かって指を指した。
三人がそちらに顔を向ける。

そこには――
うっすらと掛かる霧の中、白亜の洋館が佇んでいた。


「なっ、なんやっあれっ…!」
「あんなところに…家なんて…?」


4人はただ茫然とその洋館を見つめていた。
先に我に返り口を開いたのは、ムースだった。

「のう…あの家に行ってみんか?」
「ずっとここに居(お)るわけにもいかへんしな…。」
「そうね、何か手懸かりがあるかもしれないし…行ってみましょう!」


4人は吸い込まれるかのように、館への道をひたすら進んだ。

「不思議だ…。思いきり怪しいはずなのに、悪い気は一つも感じない…何故か懐かしい感じがする…。」

良牙の呟きに、他の3人それぞれが頷く。


「…あれは…薔薇?」

あかねの足が止まる。

洋館の足元には、赤い絨毯かのように一面に渡り、真紅のバラが咲き誇っていた。
霧のせいでしっとりと水分を含んだ花弁が、艶やかに光っている。
その整然とした美しさが、誰か人の手に寄るものだということは明らかであった。

「見事じゃな…。」
「あぁ…すげぇな…。」

4人はバラに見とれながらも、ゆっくりと歩を進めた。
気付くと館の門前に到着していた。


あかねが門に手を伸ばしたその時、バラの中で何かが動いた。
どうやら誰かがしゃがみこんで、バラの手入れをしているようだ。

「誰かいる…。」

よく見ると、和服の女性のようだ。
こちらに背を向けている為顔はわからないが、淡い藍の着物に乳白色の帯を結んでいる。

「…あ、あのっ…。」

あかねの右手が門の鉄柵に触れる。
カシャンと小さな音をたてて門が揺れた。

音に気付いてか、和服の女はバラを腕に抱きすっと立ち上がった。
その拍子に、彼女の肩から一本のおさげがその背へと流れ落ちた。

あかねは目を見開くと、勢いよく両手で門を掴んだ。


「ら…乱馬ぁーーー!!」


その声に和服の女は、悠然と振り返る。
まるで映画の一場面のように、たおやかにゆったりとした動作で、女がこちらに顔を向けた。

「乱ちゃん、なんか…?」

右京の問いに、誰もあかねですらすぐに肯定の言葉が出てこない。
女の顔も姿も間違いなく、早乙女乱馬が水をかぶった後のものだ。
だが、彼女が纏う空気や雰囲気があまりにもかの少年とは違っていた。



4人を認めると、女は軽く小首を傾げフワッと微笑み、口を開いた。

「おかえり。」


女の口から出た言葉――その声も口調も寸分違わず、彼らがよく知る少年のそれであった。






Aへ続きます。
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変身体質の有効活用例ー其の@

二次創作です。ご注意下さい。

未来のお話です。
苦手な方は閲覧をお控え下さいm(__)m



―――――――――――――――――――――

〜潔白の証明〜


「ただいまー。」

少し目立つようになったお腹を支えながら、あかねは玄関に腰を下ろしてサンダルのボタンに手をかけた。

「お帰りなさい、あかねちゃん。暑かったでしょう?」

奥から出てきたのどかが、あかねの横に膝をつきながら、すっと人差し指を口許に当てた。

「お義母さん、ただいま帰りました。…あっ、寝かし付けてるとこなの?」

のどかの仕草の意図に気付いて、あかねはすぐに声を潜めた。

「ちょうど今、うとうとしてきたとこなの。さっきまでグズッて大変だったのよ。まだまだ機嫌が悪い時は、お母さんじゃないとダメみたいね。」

「じゃあ、急いで交替しなきゃっ。」

慌てて立ち上がったあかねに、のどかは笑顔で首を振る。

「大丈夫よ。たまには乱馬に任せなさいな。お昼御飯出来てるから、荷物置いてきてね。」

昨年長女かすみが嫁いでからは、天道家の家事はのどかが担っている。
三人姉妹の末娘ではあるが、一番先に人妻となったあかねは、当初出来る限りの家事をこなすつもりでいたが、のどかに『暫くは、育児に専念してね。」と言い渡された。
なので、現在は目下その言葉に甘える日々である。

「皆は食べたの?」
「これからなのよ。一緒にゆっくり食べましょうね。」
「じゃあ、すぐに降りてきます。」

少し早足で自室へ向かうあかねを見ながら、
(本当に可愛いお嫁さんで、乱馬は幸せ者ね。)
とのどかは微笑んだ。
自分の唯一の娘となり、孫の顔まで見せてくれた彼女がいとおしくて仕方なかった。


二階への階段を昇る途中、あかねはそおっと居間を覗き込んだ。
居間では、夫が小さな布団に我が子を寝かせようと屈んだところだった。
拳法の達人である彼は、すぐ気配に気付き顔をあかねに向けた。

「おかえり。」

声には出さず唇だけ動かすと、乱馬は少しホッとしたように目を細めた。

「ただいま。」

あかねも同じように唇だけ動かす。

子供の顔を見たい衝動に駆られたがそれを抑えて、あかねは足音を立てないようにそおっと階段を登って行った。



ドアを開けると、中から微かな花の香が彼女を包む。
窓際に目を向けたあかねは、そこに出掛ける前はなかった小さな花瓶を見つけた。

(そういえば、今朝…。)

家を出る間際、庭で咲かせた花をのどかが摘んで、乱馬に手渡していたのを思い出した。

花を飾るなどとは全く無縁な夫が、どんな風にこれを活けたのだろう。
無造作に挿されたそれが、彼の性格を現しているようであかねはクスッと笑った。

途端、ガチャッとドアが開いて、
「あかね、どっちだった?」
と、その当の本人が顔を覗かせた。

あかねは笑ったことを誤魔化すように、然り気無くサイドボードに鞄を置いて、ベッドに腰を下ろす。
花を見て笑ったことが乱馬に知れたら、少年っぽさが抜けない彼は照れて拗ねるだろうから。

「もう絶対やんねーからなっ。」
なんて、台詞を聞くのは少し勿体ないから。


あかねのそんな様子に気付かず、乱馬は彼女の足下の床に胡座をかいて嬉しいそうに顔を覗き込んだ。

「判ったんだろ?どっちだよっ。」

「…えへへ、内緒。」

「なっ…なんでっ!?教えろよ!」

思わず立ち上がった拍子に、たまたま床に転がっていた子供のガラガラを踏んで、乱馬はバランスを崩す。

「うわぁっっっ…とっ!」
「きゃあっ…。」
危うくあかねの上に倒れそうになったのを、寸でのところで両腕を着いて持ち堪えた。

「わっわりぃ…大丈夫か?」
「…うん。」

至近距離で驚いたように頷くあかねと目が合う。
見ればベッドに彼女を組敷いて、覆い被さっていた。

「ごっ、ごめんっ…!」

かぁっと顔を真っ赤にさせると、乱馬は慌ててベッドの端の壁まで飛び退いた。

(…ん?何、その反応?)
許嫁だったあの頃ならいざ知らず、今更照れる程のことではないはずだ。
もしくは、あかねが怒るとでも思って逃げたのか?

あかねは訝しげに、眉を寄せて乱馬を見る。
(そう言えば、この頃…妊娠してからかな?乱馬変かも…?)

思い起こしてみると、最近の乱馬の行動には違和感を感じることが多々あった。
必要でない限り、あかねに触れて来なくなったのだ。
それどころかつい二日前には、呼び止めようと腕を掴んだあかねの手を、「わっ」と叫んでに振りほどいた。

(何か、おかしい…。…まさかっ…!)
あかねの脳裏に、数日前にチラッと見たワイドショーの浮気特集の映像が、稲妻のように浮かぶ。

『夫の態度が妙によそよそしい、急に優しくなりプレゼントを買ってくるなどがあれば要注意!』

あかねははっとして、先程の花に視線を走らせる。
(あの花ってそういう事っ!?…最近育児にも協力的だと思ったら、浮気を誤魔化す為だったって訳…!?)

握り締めた拳がワナワナと震える。
あかねの背後には怒りの妖気が渦巻いていた。

「おっ…おい、あかねっ!どうしたんだよっ…。」
「…相手は、誰…?」
「相手って?な、何の話だよ!?」

あかねは、カッとなって乱馬の襟元を掴み上げた。
「しらばっくれるつもりっ!?わかってるんだからっ…シャンプーっ?それとも右京なのっ!?」
「おめぇっ…なに言って…?…まさか…。俺が浮気してるとでも思ってんのかっ!?」
「惚けても無駄よっっ!!」
「ちょっと…待てってっ!なんでそーなるんだよっ!」
「問答無用っ!!」

あかねは側にあった竹刀を振り上げる。

「だぁ〜っ、落ち着けってっ!!」

降り下ろされた竹刀をギリギリでかわすと、乱馬はあかねの手首を掴む。

「俺が信じられねぇのかっ!?」
「信じるも何も、あんた最近あたしのこと避けてるじゃないっ!!」
「…そっそれは…。」

思わず口ごもった乱馬を見て、あかねは竹刀を持つ手に力を込めた。

「待てっ…だっだから、妊婦のおめぇに無理させちゃダメだから…我慢して近寄らないようにだな…。」
乱馬は顔を赤らめて俯き、上目遣いであかねの様子を伺いながら、ポツポツと話した。

「それで…?」
「それでって、なんだよ…?」
「…それで…我慢出来なくなって、他の女に手を出したんだ…。」

あかねの手の中で、竹刀がバキッと音を立てて折れる。

「…こぉの、女ったらしがぁっ!天誅ぅっ!」
「ぉわっ!あかねっ、やめろって!…たくっ仕方ねぇなっ…。」

あかねの竹刀を避けながら、乱馬はサイドボードに近づくとその上の花瓶をひょいっと掴むと、それを自分の頭上で逆さに向けた。

パシャッ
乱馬が水を被ると、同時に花瓶中の花が床に散らばる。

「…あっ…。」
あかねは呆然として床に座り込むと、そっと花を拾い上げた。

「これでいいだろ?」
あかねが見上げると、水を滴らせ見慣れた少女が真剣な目で彼女を見ていた。

「…はぁ?あんた何言ってんの?」
「だぁから、子供が産まれるまで女で過ごしてやるよ!」
「…何よ、それ?」
「わっかんねー女だなっ!お前が俺を信じねぇから、女でいてやるって言ってんだよ!?」
「…あんた、本気でそれが、浮気しない証明になるとでも思ってんの?」
「あったりめーだろっ!」

あかねは首を振りながら、「はぁーっ」とため息をついた。
(そんなの相手の所で男に戻ればいいだけじゃない…本当にバカなんだから……だけど…。)

手の中の花が目に留まる。
それを見てると、さっきまでの怒りがスッと消えていくような気がした。
(よく考えたら、別に証拠があるわけでもないのよね。第一、乱馬に浮気するような度胸なんて…。)

「このお花、乱馬が飾ってくれたんでしょ?」
「へっ?…花?あ、あぁ…そうだけど。」
「…また、お願いしてもいい?」

あかねの態度に拍子抜けして、口を開けたままらんまはこくんっと頷いた。
その様子にあかねはクスッと笑った。

「女の子よ、次は。」
「…へっ?女って?」
「もうっ、お腹の赤ちゃんのことよ!」
「本当なのかっ!?」
「嘘言ってどうすんのよっ。」

らんまは嬉しいそうに目をキラキラさせて、あかねを抱き上げた。
「あかねっ…おめぇっスゲェよっ!!」
「きゃぁっ!ちょっと、降ろしてよっ!」
「おぉっ、わりぃわりぃ。」

言って、らんまは優しくあかねをベッドへ降ろす。
その目はまだキラキラ輝いている。

「そっかぁー女かー…。」
「あんた、女の子欲しかったのよね?」
「おぅっ。だって、女は父親に似るんだろ?」
「確かに…そういうけど…。」

(…ってことは…この子が大きくなったらこんな感じ…?)
あかねは手を口許に当てて、らんまをマジマジと見つめた。
その視線に気付いたのか、らんまはあかねに目線を合わせると真剣な眼差しで呟く。

「顔はどっちに似てもいいよな?」
「えっ?」

(…そ、それってどういう意味…?)
ドキッとして、あかねは思わず顔を赤らめた。

「まぁでも、体は絶対俺じゃないとなっ!お前に似たんじゃ、寸胴間違いないもんなーっあははっ…は……」

「…寸胴で悪かったわねっ…!こぉのっ変態オカマ亭主がーーーっ!!」

この直後、天道家の遥か上空で何かがピカッと光ったのは言うまでもない。







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