ただ今授業中
一番後ろの窓側の席のコイツは隣の席の俺に毎度のように話しかけた



「ねー準太あ」



「なんだよ」



「どーしたら島崎さんは私を好きになるのかしら」



「知るか(笑)本人に聞け」



「やーん準太冷たい〜未玖ちゃん泣いちゃうぞ?」



「よく言うよ」



「大体本人に聞けたら今頃こんなに悩んでないって」




そう言って窓の外を見る
窓から見える広いグラウンド
そこには体育の授業中であろう慎吾さんの姿が見えた
今日は恐らく野球なのであろう
慎吾さんはバットを肩に担いで友達と話していた



「かっこいいなあ…」




「かっこよくても変態だぞ」



「そんなとこも好き」




「お前も大概変態だもんな」



「黙れ馬鹿準太。しばくぞ」



おい、それが17の女が言う台詞か?笑




「あ、慎吾さんこっち見た!」




未玖は嬉しそうに笑うと慎吾さんに向かって大きく手を振った




慎吾さんもそれを見て笑顔で手を振り返す




「きゃー!慎吾さんが手振り返してくれたよ準太!どうしよう!きゅんきゅんだよ!」




「あーうんよかったなあ。だけど未玖、横見てみ?」



「へ………?痛っー!!!!」


バシーン!!!
といい音をして叩かれた未玖の頭を見て


ああ
ただでさえ少ない脳細胞が……と心配になる俺だった



「し、ら、い、し〜?今は授業中なんだがなあ?」




「怒っちゃやだーっ先生愛してるvV」



わざとらしく言う未玖を見てクラスの皆が愉快そうに笑い声をあげる



「ったく………気をつけろよ?」



「はあい!」




ぴしっと手をあげると先生は納得したのか教壇へ戻って行った




それを見て席につく未玖に小声で「ばーか」と言ってやった



「うるへー。愛に困難は付き物よ!」




「はいはい…」



適当に流してグラウンドにもう一度目を向けると慎吾さんがまだこちらを見ていた




でも見ているのは俺じゃない
未玖だ。
黒板に集中し始めた未玖の横顔を慎吾さんは見つめている



「おい、未玖…」




「ん?なんだい準太くん」




「…………いや、……なんでも、ない……」




「?変な準太くん!」



そうやって笑う未玖を見て
胸が締め付けられた



慎吾さんが見てたことを教えてやれば
未玖はすごく喜ぶだろう
2人がうまくいく可能性もあがる



だけど
彼女の笑顔が他の男に向けられるなんて考えたくもなかった




強がりで意地っ張りで
純粋だけど変わってて
人一倍優しくて、友達思いだってことも
俺だけが知ってればいい



なあ
なんでお前は俺を見ない?
俺の気持ちに気付かない?
俺がいつも見れるのはお前の横顔だけ




もし俺が慎吾さんだったら
お前はどんな表情をする?


もし俺が慎吾さんだったら
今すぐお前を自分のものにして
誰にも触れさせないように抱きしめて離さないのに、




もしお前の好きな人が慎吾さんじゃなくて俺だったら
「好きだ」って甘く囁いてキスをして
誰よりも大切に守るのに




でもそれは所詮妄想
君の心は彼のもの
永遠に俺が触れられる距離にいない
友達という残酷な枠の関係





そ れ は 仮 定 と 言 う 名 の 願 い


(願いを叶える為ならば)
(全てを捨てたって構わないのに)