「恭介……、つかれた」
そう言って甘えてくる冬也は誰より可愛いと思う
普段クールで弱い所なんて他人に見せない彼は俺の前でだけ素を見せる
たまに見せるほころんだ笑顔も俺だけが見れる特権なんだ
「冬也、右頬赤い…また女か?」
「…ああ。あっちが勝手に彼女面してきてうざかったからシカト決め込んでたら殴ってきやがった」
「なるほどな…笑」
「……俺、やっぱお前といる時が一番落ち着く」
わかってる。
だって気まぐれな君が
唯一俺の場所にだけ帰ってくるから
「女ってマジめんどくせえ…」
きゅ、と胸元の服を握り締めて抱き着く君の髪を撫でてやると頬を微かに擦り寄せた
「なぁ…恭介は好きなヤツいねえの?…」
「いるよ」
「……え?」
冬也の目が驚きに開かれる
いないって言うと思ってたんだろうね
でも俺はそんな優しくないよ
「入学した時からずっと俺の心はたった一人のモノだよ」
「そんなん………知らなかったし」
あ、少し寂しそうな顔してる
本当に可愛いなあ
「は、……んなら俺とセックスなんてしていいわけ?」
自嘲気味に笑うその仕種
いつも皆に見せる冷たい笑顔
壊れそうな笑顔
「…じゃあ冬也こそなんでそんなに女との繋がりを求めてるの?」
「…どうだって良いだろ。俺の勝手だ」
「母親に捨てられたから?」
「………っ!」
猫目の目が見開かれる
端正な顔立ちの中に、明らかな絶望の色が見えた
「だから女の愛情や温もりを求めてるんだろ?」
「ちが、…っちがう!!」
「だけど愛されたいけど愛し方がわからない。優しくする方法を知らない…だから捨てるんだろ?憎しみしか残らないから体だけの関係で満足なんだろ?」
「うっ……るさい!!だまれよ!!」
「ほんとは女を怨んでるんだろ?愛してくれても苛立ちしか感じないほどに。」
「だまれ………っん?!」
掴みかかろうとした冬也の腕を掴んで壁に押し付けて唇を塞ぐ
「ん、ぅ……っん」
転がる舌を絡めれば鼻がかった甘い声を漏らした
抵抗なんて許さない程に力強く抱き込めば、微かに足掻くものの逃げられはしなかった
「んんん……っ!」
唇を微かに放せば、潤んだ瞳にずくりと欲望が膨らむ
「なあ、もう俺でいいじゃん」
「…なに、がだよ……っ」
「俺が冬也を愛するから。だから俺だけのものになってよ」
「―――な、」
「冬也……愛してる。初めて見た時から逃がさないって心に決めてた」
出会って友達になって
俺から誘って一緒に住むようになって
男の体なんて知る余地もなかった冬也に半ば流すようにセックスを誘って
それでもまだ足らない
やっぱり君のすべてが欲しいんだよ
誰より綺麗な君だから、檻の中に閉じ込めて誰にも触れさせることなくしてしまいたいんだよ
「冬也は俺の全てだよ。お前がいなきゃ俺死んじゃうよ」
「恭介……」
―ピリリリッ
そこでタイミング悪く冬也の携帯が鳴る
ディスプレイには「結菜」と表示されていた
あの最近親密になった年下の可愛い子か…
確か冬也と彼女は今日夜会う約束をしていたんだっけ
「でないの?」
「え、ぁ……」
「出てもいいよ。良い機会だし今この場で俺とその子、どっちか取ってよ」
意地悪く笑って見せる
だから言ったろう?俺は性格が悪いんだ
君を待ってやる程お人よしじゃないんだよ
冬也は最初戸惑ったように俺を見上げてふ、と視線を落とすと携帯の電源を切ってそれをベット際に放り投げた
そして俺の首に腕を回して抱き着いてきた
「……冬也、いいの?」
「女かお前選べって言われたらお前取るに決まってるだろ…」
お前は他の女なんかと比べ物になんかならないんだから
「冬也……後悔しないでね。もう他の奴のとこになんか行かせない。俺が一生かけて愛でてあげる」
「お前といることに後悔なんてしねぇよばぁか…」
愛しくてたまらない
僕の宝物は紛れもなく君なんだよ
君以外を愛する身体なんてもってないんだよ
君の他に優先すべきことなんてないんだよ
俺は君を抱きしめる為に生まれてきたんだよ
愛を欲しがる君を
俺が満たしてあげるから
まずは優しいキスをしようか
それから紅く染まる頬に唇を寄せて
たくさんの愛の言葉を囁いてあげる
リリックの恋歌
(お前の隣以上に安心する場所なんてない)
(この居場所を誰にも譲りたくないんだ)
(お前がいなかったら生きていけないのは俺も一緒なんだよ)