キョン×ハルヒにはそれほどこない(こないわけではない)のに、ポケモン映画のサトシとシェイミにはやたら好感が持てたのは何故だろう?ちなみに俺が愛する最高の2次元キャラはサトシです。そしてカスミ(ツンデレ)はサトシ(ツンデレ)の嫁(何言ってんの)
 
割とハイな長門vsハルヒ?あと保護者なキョン
 
【放課後のちょっとしたわがまま】
 
将来のためなどと言われても、所詮大学の入試でしか役に立つことはないとしか思えない授業が終了し、のんびりと部室に向かう。
 
ノックして我(ら)が麗しき天使たる朝比奈さんの返事がないことを確認し、扉を開く。俺の目に驚愕の光景が映った。
 
長門が窓際に立ち外を見ている。それ自体はいつも読書している姿に見慣れているので、ああこんなこともあるだろうと思わなくもない。
 
しかし、長門の体…いや全身が、まるで透明人間になろうとしているかのごとく透けている。
 
脳裏に情報統合思念体の長門への『処分』の2文字が浮かぶ。俺はとっさに長門の肩を掴み、「長門!」と叫ぶ。
 
頭が一瞬真っ白になっていたのか、気が付くと長門の姿がいつも通りに戻っていた。振り向いた長門は、やはりいつも通りの淡白な声で「何?」と返してきた。
 
「何ってお前、今消されようとしていたんじゃないのか?」
 
あまりにいつも通りな長門の反応に、余計に俺の混乱が深まる。何だったんだよ今のは?
 
「自宅に向かおうとしていた」
 
「……は?」
 
何しに?何で?何か事件でも起きたのか?俺が矢継ぎ早に問いただすと、長門の表情に僅かな…焦燥…?が浮かぶ。まるで隠そうとした悪戯を1番知られたくない相手にバレかかっている子供のような。
 
「……あなたが危惧しているような問題が発生しているわけではない。情報連結を解除されていたのでもない。ただ……」
 
「ならとりあえずはいいんだが…俺には言えないことなのか?」
 
消されているわけでないと知り、一応安心する。しかし事件でもないのに何だというのか。
 
「……あなたには、言いにくい……」
 
「どうしてだ?」
 
「…私が行っていたことをあなたに話せば、高確率であなたが不快になると予想される…」
 
俺の予想は当たっていたようだ。怒らないから言ってみろ。
 
「…………………カレー……」
 
非常に溜め込んだ末に出た台詞は僅か3文字。えっと……意味がわからないんだが。
 
「昨夜、あなたと作ったカレーを……」
 
ああ、そういや夕べもカレー作ったな。いい出来だったし。
 
「食べに帰りたかったのか?だったら普通に帰ればよかったんじゃないのか?」
 
しかし長門は首をほんの少しだけ横に振り、
 
「涼宮ハルヒには何も伝えていない。それにこの理由では彼女の機嫌を著しく損ねる可能性がある」
 
まあ長門相手ならハルヒも少々大人しいが、確かに無断欠席はマズいか。
 
「だから……一旦帰宅して、ここで食しようと……」
 
それで超高速移動というか、瞬間移動をしようとしてたのか?
 
「……(コク…)」
 
頷かれた。しかも気まずそうだよ。確かに長門が超宇宙的な力をホイホイと使うのは、俺としてはあまり喜べるもんじゃないが、俺が不快になったのは『使おうとした』ことそのものじゃない。
 
「長門、力を使おうとしたことは怒らない。お前にしてみりゃ使えるものを使おうとしただけだもんな」
 
そもそもインチキ扱いしたのは俺だ。別に長門が俺に従わなければいけないわけもない。長門の顔に若干の安堵が浮かぶ。しかし、律儀に俺の言葉に大抵は従う(言っとくが卑猥な意味は全くないぞ)長門だからこそ、人間的な意味での長門の保護者たる俺は(俺が勝手に自負しているだけだが)、キチンと言わなければならない。
 
「ただな、『隠れて』使おうとしたことはいただけないぞ。『バレなければ構わないだろう』とか考えたんじゃないのか?」
 
「……………」
 
黙りになる長門。やっぱりな。反省はしているようだからこれ以上の追及はいいだろう。
 
「そう落ち込むな。人は誰しもお前みたいなことをするさ。俺だっていつもいつでも正直素直に生きてるわけじゃない、後ろめたいこともある。ただ、後ろめたいことをし続けるのに慣れたら、将来によくないんだ。自分で悪いこととわかっていてそれをして、誰かにそれを指摘された時、言わなきゃいけないことがあるのはわかるだろ?」
 
「………ごめんなさい」
 
「よく出来ました。次からはとりあえず言ってみろ。俺だってなんでもかんでもお前に枷をはめるつもりはないからな」
 
小さく頷く長門。よろしい。しかしそんなにカレー食いたかったのか?我慢した後の方がより喜びは大きいもんだぞ?
 
「……そう考えて今まで我慢していた。朝食にも昼食にもせず、夕食にしようと楽しみにしていた。しかし朝に食べなかったせいで予想以上にエラーが蓄積した……」
 
うわ、もの凄く泣きそうだ。あの夏休みを耐えきった割に……いや、このことは触れないでおこう。
 
「……仕方ないな。今回は許してやる。そのかわり、次また隠れてこんなことしたら、暫くカレーは一緒に作らないぞ」
 
長門の瞳が夜空に映える満月のように輝く。「わかった」と呟いたかと思うと、一瞬で姿を消した。早っ。
 
なんだかんだ甘い俺も俺だな…俺にもし将来子供ができたら、親馬鹿になるんだろうか。悲しいぜ…
 
 
 
 
 
何故だろうか。彼と共に協力して調理したカレーは、いつも私が摂取している食事に比べ、食べられなければ高確率でエラーが蓄積する。
 
そもそも厳密に言えば、食事という行為は我々インターフェースには絶対的な必然性が存在しない。しかし食事をすることにより、エラーが僅かながらも解消されることも事実。そして彼のカレー…彼と作ったカレーは、私にとってエラーの解消能力が群を抜いている。しかし同時に、食べられないことへの私の忍耐力が著しく低下する。夏休みのループと比較すればあまりにも短い時間にもかかわらず、私には耐えられない。もし彼に『食べるな』と真面目に言われれば、なんとしても耐えてみせるが。
 
 
彼は私が、有事でない時に地球人が有しない能力を使用するのを忌避する傾向がある。確かに地球人からすれば私の能力はインチキだろう、割とフェアに生きる彼からすれば問題が起きないのに力を使うのは、それこそ問題なのかもしれない。私の人間への憧れを知っており、それを想ってくれている彼だからこそ、嫌な思いはさせたくない。
 
 
彼を不快にさせたくない、しかしカレーを食べたい。ならば知られないうちに行動すればいい。しかし、実行に移す段階で彼にバレてしまった。
 
 
怒られると思い言い出せずにいたが、彼は力を行使することに怒りはしなかった。安堵。
 
けれど彼は、私が『隠れて』行使しようとしていたことを指摘した。私の考えが見透かされており、何も言えなくなる。彼は私を怒らず、叱った。日常生活において後ろめたいことを『隠れて』行うことは、今後に悪影響を及ぼす。彼の言葉は理にかなっており、素直に謝罪する。彼は許してくれた。
 
理由を尋ねられ、正直に答えたところ、彼は能力の行使の許可をくれた。ただし、むやみに行使し続ければ彼との料理が行えなくなる。自重すべき。
 
やはり彼の懐の広さが私は好きだ。彼が父親になれば、子供に優しくも叱るべき時は叱るいい父親になるだろう。将来彼と子供を支える母親にならなければ……エラー発生エラー発生、思考が飛びすぎる。少し自重すべき。
 
どうも彼は私を彼の妹もしくは娘のように接しているきらいがある。彼の妹もしくは娘……そのシチュエーションもおいし…エラー発生エラー発生。悪くはないのだが、やはり将来的には涼宮ハルヒと同等のポジションに立ち、そして勝ちたい。任務が終わった際に彼から離れなければいけなくなるというのなら、彼女の力の一部を使って思念体とのリンクを切る。
 
 
キッチンにて夕食用も残し、カレーライスを盛る。部室にはまだ彼だけ。もう一度空間転移。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
長門は帰ってきてから黙々とカレー(俺目線で2、3人分)を食っている。毎回カレーは数人分は作るのだが、間食でこれだけ食べる長門は何食であれを食いきるのか。
 
部室にやってきた朝比奈さん―カレータワー経験者―や古泉も長門の様子に好奇の視線を向けている。
 
「やっぱり長門さんですね」
 
朝比奈さんが苦笑を零し、
 
「美味しいのですか?」
 
古泉が尋ね、
 
「………………」
 
長門がカレーに…じゃなくてカレーを食べるため華麗にスルーする。
 
こんだけ美味そうに食ってくれてるのは、素直に嬉しいもんだ。一緒に作るようになってから俺も長門も料理(高確率でカレー)のスキルが上がってるし、悪いもんじゃねえな。
 
 
 
「おっ待たせ―――!!」
 
ハルヒが扉をGO―KAIに開けて登場する。別に待ってないが、下手に口を出すとまたやかましくなるのは火を見るより明らかだ。
 
「ハルヒ、元気なのはかまわんが、少しは扉を気遣ってやれ」
 
この程度に留めておく。
 
「いいわよ!いざとなったら買い直せばいいんだから!」
 
ここの部費は本来長門が本とかを買うためのもんだぞ。
 
「うっさいわね、文芸部の部室の扉なんだから文芸部の部費で買えなきゃ詐欺じゃない、そうよね有希!……あら?」
 
ハルヒが長門のカレーに気付く。まあハルヒじゃなくても気になるだろう。
 
 
「有希ってカレー好きだったの?ちょっとちょうだい!」        
そう言って指でルーをひとすくいして舐める。行儀悪いぞ。あと長門の表情が微妙に動く。何だろうか。
 
「うわ、美味しい!市販のルーを混ぜてるのかしら、有希の手作りでしょ?」
 
長門は相変わらず規則的な動きでカレーを食べ進める。
 
「さすが有希ね!」
 
長門だけが作ったわけじゃないが、別に言う必要もない。それにハルヒの舌も唸らせたんだ。ちょっと得意になっていた。
 
 
……これからちょっと修羅場るのも知らず。
 
 
「半分当たりで半分外れ」
 
「え、何が?」
 
「このルーは市販のカレールーを数種類混ぜたもの。それが当たり」
 
……何かヤバい……
 
「じゃあ、有希の手作りじゃないってこと?」
 
「……正確には、私1人で作ったのではない」
 
「え、誰誰!?みくるちゃんとか?」
 
長門は小さく首を振る。そして
 
「彼」
 
俺を指差す。こらー長門ー人に指向けちゃダメだぞー
 
「……!!?」
 
ハルヒが固まり古泉が固まり朝比奈さんが固まり長門がとどめを刺す。
 
「ついでに言えばルーを混ぜる案を出したのも彼。私にはなかった発想。そしてこの味は私と彼でしか出せない」
 
最後の一口を食べてごちそうさまをする。そして
 
「また……一緒に」
 
ああわかってるさー美味しいからなー俺とお前のカレーまた作ろうぜー
 
「何よそれ!あんたらっいつからっ……っ!?」
 
「ゲーム作り(※PS2戸惑)の頃から研究し続けていた」
 
「うえ!?」
 
おーおーハルヒがうろたえとるー珍しー
 
「キョ、キョン!」
 
「な、何だ!?」
 
ただいま現実。
 
「あ、あたし達も今晩カレーを作るわよ!」
 
「え、でも……」
 
「無理」
 
「何でよ有希!?」
 
「彼は言っていた。『これ以上に美味いカレーはプロじゃなきゃ作れないな』」
 
「おかわりをして『しばらくカレーはいいかな』とも」
 
「そして『俺とお前だから出せた味だよ』と」
 
ハルヒに口を挟ませる隙も与えず、ニヤリと笑顔(の雰囲気)で言い放つ。

「あなたとではこれ以上のカレーは作れない」
 
 
この台詞が起爆剤になりハルヒが何かして俺は意識を失った。『長門さんは僕に恨みでもあるんですかぁ!?』と、古泉の泣きそうな声と走り去る音が聞こえた気がする…
 
 
 
 
 
 
 
彼は気を失っている。私のせいだ。ごめんなさい。それにしても涼宮ハルヒ、いくら彼の懐が広いからと、軽率な暴力行為は控えるべき。原因たる私の台詞ではないか。
 
「ん……」
 
彼が目を覚ましたようだ。頬を指で突いてみる。
 
「ん……?」
 
「起きた?」
 
「長門?」
 
「そう」
 
「……なんで長門の顔が俺の前に?」
 
「膝枕」
 
彼は「そうか」と言って起き上がる。顔が赤い。何故?
 
「ごめんなさい。私が涼宮ハルヒを挑発したから、あなたに迷惑をかけてしまった」
 
「ん…いやいいぞ。痛みも残ってないし、何かしてくれたんだろ?それにお前の膝枕の代償だと思えば…安いもんだ」
 
私を庇う彼。でもそれに甘えきるのはダメ。
 
「それは本心?」
 
「う。……正直勘弁してほしいな。気を失うのはこりごりだ」
 
「……本当に、ごめんなさい」
 
「いや、気にするな。ハルヒが俺をど突くのが悪いのかもな。お前のハルヒへの反抗期だと思えば、ある意味それは人間的な成長だよ」
 
やはり彼は優しい。いけないとわかっていても甘えてしまう。
 
「さ、帰ろうぜ。皆帰っちまってるようだし、外も暗い。送ってやるよ」
 
彼が差し出してくれた手をとり、歩き出す。
 
 
 
 
 
彼の自転車の荷台に座り、彼の上着の裾を掴む。不安定。しかし問題ない。彼は許してくれたが、彼に迷惑をかけたのは事実。裾を引き、彼に尋ねる。
 
「……私は何をすればいい?」
 
「何がだ?」
 
「私はあなたに迷惑をかけた。その償いをしたい」
 
「へ?いいぞ。さっきも言ったが、後の看病で十分だったぜ」
 
「あれは当然の行為。それだけじゃ私の気が済まない」
 
事実。
 
「…ふふっ。やっぱお前変わったな。その成長で十分だ」
 
「あなたのおかげ」
 
「……そうか」
 
そのまま会話が途切れ、自転車のチェーンの音だけが残る。
 
 
 
 
 
そろそろ私のマンションに着く頃、
 
「……好ましい案を思いついた」
 
「ん?さっきの話か?」
 
「そう。私があなたにしてあげたくて、あなたも喜んでくれること」
 
「何だそれ?」
 
 
 
 
 
「あなたが望んだ時に、いつでも膝枕をあなたにする」
 
「………へ?ぅおわぁぁぁあぁあ!!?」
 
彼がひどく狼狽し自転車がひどい蛇行運転。
 
スリル満点だった。満足。
 


 
無駄に長ぇぇぇぇ!!orz
 
もっとまとまんないと… 
 
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