凄まじく腕が落ちてました(当然だ)的に当たんねーよ…
 
【得意なこと】
 
「キョン!あんたは何か特殊な属性はないの!?」
 
…いきなり何を言うんだお前は…
 
「我がSOS団のメンバーたるもの、何か突出した能力があってしかるべきだわ!私が素晴らしい超団長なのは言うまでもないとして、有希は無口な読書キャラながら我が団きっての万能選手。みくるちゃんはこの学校でも最高峰の萌キャラ。古泉くんは謎の転校生で、ありとあらゆる方面に広い顔を持つ優秀な副団長。皆すごいわ!で、あんたは一体どんな属性持ちなのかしら?」
 
俺はどこにでもいるごく普通の高校生だよ。宇宙人に殺されかけたり、時間を跳躍したりしたように、有り得ない非日常に巻き込まれる確率の高さじゃ多分ぶっちぎりで金メダルだろうがな。それは秘密だしな。というわけで俺は一般ピープルだ。
 
まあ勿論ハルヒが納得などするわけもなく、
 
「いいから、何かないの!?あんたにしかできないこととか!」
 
そんなもんあるか…?どーしたもんかね…部室を見回すと、微妙に腹の立つニヤケ面した古泉、甲斐甲斐しく給仕に勤しむ朝比奈さん、指定席で読書に夢中の長門が目に入る。俺にできて此処にいる誰にもできない、もしくは俺が1番得意なこと…そんなもんねえよ…
 
と思っていたが、あ。あるじゃねえか。確かに俺が得意だと言えることが。
 
「あら、それは何かしら?言っとくけど、私はあんたより劣るものは持ってないって自負してるわよ」
 
そう言って得意気にこちらを笑みで見下ろすハルヒ。だがな、これだけはお前にも負けん自信はあるぞ。
 
「へえ、言ってみなさい。くだらないことだったらぶっ飛ばすわよ」
 
わかってるよ。それはな、
 
 
 
「無表情キャラの長門の表情を読み取ることだ」
 
俺がそう言うと、何故か長門以外の空気が凍り付いた。おい、どうした?
 
「ふ、ふ〜ん…有希のねぇ〜…そんなの私にだってできるわ!」
 
どこか引きつった顔で断言するハルヒ。そりゃ俺にしかできないとまでは言わないが、少なくともお前よりは得意だぞ。
 
「なっ、何よ!わかったわ!そこまで言うなら勝負よ!あんたなんかに私が負けるわけないわ!有希、いいわよね!」
 
長門は俺が長門の名前を出してから俺達の方を向いていた。ハルヒの呼びかけに顔を向けるも、返事も首肯もしない、が、あの表情は…
 
「有希も文句ないわね!さあキョン、勝負よ!」
 
返事もしてないのに勝手に話を進めるハルヒ。おいおい!
 
「1人で話を進めるな。長門も迷惑してるぞ」
 
「何ですって!?有希は迷惑してるっていうの!?」
 
だから落ち着けって…長門も少しは主張しろ。
 
「(コクリ)……正直に言うと、乗り気ではない。今小説がヤマ場を迎えているところ。早く読みたい」
 
「えっ…!?ウソ…!?」
 
ほらな、長門の邪魔はしないでおこうぜ。しかしハルヒはまだ懲りないのか、
 
「〜〜〜っ!い、今のはたまたまよ!団長命令!有希は我慢しなさい!勝負はこれからよ!」
 
と叫ぶ。はぁ……こうなったらハルヒは止まらないな。スマンな、長門。今度の不思議探索で1日中図書館に行けるよう情報操作を許可してやるさ。
 
 
 
で、俺とハルヒの『長門の表情読み取りバトル』が始まった。形式は、朝比奈さんが長門に『〜な表情』のお題を俺達にわからないように出し、長門の表情からそれを当てるというものだ。
 
 
で、結果からいえば、俺はほぼパーフェクト、ハルヒは5割前後。俺の勝ちは揺るぎないものだったが、ハルヒはそうとう悔しかったようだ。
 
「キョンなんかに…キョンなんかに〜〜!」
 
と呟きつつ帰ってしまった。やれやれ、そんなに俺に負けるのが嫌なのかね…
 
 
帰り道で長門に、もう少し表情をわかりやすくできないか?と言ってみた。しかし長門は、
 
「……あなたがいつでもわかってくれるから、いい…」
 
と呟き、帰っていった。……ヤバい、物凄く可愛い。
 
 
 
で、翌日から団活中ずっと長門の顔を凝視するハルヒがいた。長門は本から目を逸らさないが、表情はこう言っていた。
 
 
 
「少し、何とかしてほしい」、と。
 
 
 
 
 
 
 
古泉の本音

はぁ…彼には長門さんの表情読み取りと同じくらい涼宮さんの胸中に気付いてほしいものです。むしろこちらの方が簡単でしょうに……涼宮さんのあの質問には、「あんたにできないことはあたしがやってあげるから、あたしと一緒にいなさい!」と暗に言っていたのですよ……
 
―――――
 
むしろキョンの特技はこれだけな気がする。
 
.