「浅倉、遅い、死刑」
現れた浅倉に対して、顔を見た瞬間にそう言い放った。
誰がって、もちろん杉原が。
「そんな簡単に人を殺すな、ちっちゃいの。大体今丁度集合じかんだろうが」
子供を相手するかのように頭を手でぽんぽんと軽く叩きながら浅倉はそう返す。「う〜…」と杉原は浅倉を睨み付けるが、さらりと回避して荷物を陣地に置きながら、
「西園寺は?」
と尋ねた。
「その辺で煙草」
ぶーっとすねながら杉原はきちんとそう答える。
「なるほど…あいつはいつも通りだな」
呟きながら、エフェクターのセッティングを黙々と始めた。
「神崎、リハが一番じゃないっていっても、あっという間だぞ。準備くらいすませとけよ」
「あ、うん」
確かに、気は抜けていた。いつもならトリで、今回はそうではない。たかが順番、ではないのだ。特にこのライブハウスでは、自分達は気に入られているという自負もあったし、自信もついていた。それが、今回のこれ。若干、鼻が折られた気分にもなったし、このライブについては投げやりになっていたところもある。
それでも、やはり人前に立つ分には、しっかりとした演奏をしなければと、今の浅倉の言葉で渚は目が覚めた。
エフェクターケースを開け、セッティングを始めようとしたその時、ステージの方がざわざわとした。
「今日のトリのバンドのギタリスト様が、まだ到着していないらしい。」
渚の横に腰かけるモーションの最中、独り言かそうでないのかわからないくらいの声量で西園寺が呟く。
「足音くらい立てようよ…西園寺…」
「ってか、うちらを差し置いてトリのくせに、遅刻ですと、そのバンドは。許すまじ…」
メラメラと、まさにメラメラと、杉原の目は燃えていた。
「代わりにボーカルがギターの音合わせるとか言い出してるらしく、それで、な。」
「なるほど、それはもめるか…」
渚はエフェクターのセッティングをしつつ、西園寺の呟きに受け答えをする。
「なーぎっさちゃんっ、今日も可愛いねぇ…」
いきなり後ろから抱きつかれた。が、渚は悲鳴はあげないし、むしろ若干のため息をつく。いつものこと、だからだ。
「抱き着き魔のオーナー、どしたんですか?」
「ま、聞こえてると思うけど、もめちゃってるんだよね。ってことで、リハ繰り上がりそうだけど、いいかな?」
5.手打ち料と色んな真実の序章‐2
to be continude...