メイコの背中と足にルカの腕が回される。
予想以上に華奢な身体はすぐに持ち上がり、ルカはメイコを抱き上げた。
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妹や弟にあたるミク達の世話をする一方でお酒が好きなメイコには「さばさばした」「男勝り」「姐御肌」など、8割方見た目通りのイメージがついている。
もちろんそのイメージでほぼ間違いないと言えば間違いないのだが、この家のメイコにはもう1つ非常に女の子らしい一面もある。
メイコはカタログのあるページで手を止めた。
ふわふわ、ひらひら……そんな形容詞がしっくりくるような服ばかりが並んでいる。見出しには大きく、姫系という文字がでかでかと踊っていた。
(……似合うわけ、ないわよね。)
世間が抱いているメイコのイメージをしっかり理解している彼女は大きなため息をついた。
「意外ですね。」
不意に後ろから声をかけられ、メイコは慌ててページをめくろうとするが、それは長く白い指に阻止された。
「メイコさん、こんなのが好みなんですか?」
背後から覆いかぶさるような体勢でハスキーな声が耳元で響いた。
「……ルカ、居たの?」
真っ赤な顔を見られないように振り返らずに呟く。
「さっき帰ってきました。それより、メイコさんはお姫様に憧れてるんですか?」
「そ、そんなわけないでしょ?たまたま見てただけよ。」
「その割には結構な時間、見てましたね。」
さっきって言ったくせに、という言葉は飲み込んだ。
「……私には似合わないわよ。咲音ちゃんの方ならともかくね。」
ページの上に置かれたルカの指を退けて、荒々しくカタログを閉じた。
珍しく抵抗せずにルカはメイコから離れて、口元に手を当てて何かを考え始めた。
メイコがカタログを片付けようと席を立つと、ルカは「そんなことありませんよ。」と言って彼女を抱き上げた。
背中と足にルカの腕が回される、いわゆる「お姫様抱っこ」をされてメイコは更に慌てた。
「ちょ、ちょっと!ルカっ?」
下ろしなさい!と抗議をするがルカは笑顔をメイコに向けた。
「暴れると落ちちゃいます、危ないです。」
「い、いいからっ、早く下ろしなさい!」
いつも以上に涼しげな笑顔を浮かべるルカに対して、メイコはいつも以上に顔を真っ赤に染めていた。
一向に話を聞こうとしないルカに諦めて、おとなしくお姫様抱っこされることにした。
「……ルカって見かけによらず力持ちなのね。」
「メイコさんが軽いから平気なんですよ。それよりメイコさん……。」
抱かれているから互いの顔の距離が近くて、それを意識したメイコはまた顔を赤くした。
「なに?」
「メイコさんがお姫様なら、私は王子様ですか?騎士ですか?」
男らしいのか乙女なのか、ルカの思考がメイコにはまだまだ分からなかった。