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シンクロニシティ





それは寒い冬の季節。
あるところに、一人のお姫様が森で迷子になってしまいました。
幼いお姫様は、最初は探検気分で楽しく進んでいましたが、段々と歩いていくうちに心細くなり、やがて道の真ん中で座り込んでしまいました。

『おかあさま。おかあさま。どこにいるの
…?』

随分歩いたお姫様は、お腹が減り、喉もカラカラの状態です。ひとりぼっちのお姫様は、しくしくと泣き出してしまいました。
その時です。
お姫様の泣き声を、どこからともなく聞き付けた一人の王子様が、茂みの奥からやって来ました。

『こんなところに座り込んで、一体どうしたの?』

『うぅ…ひっく…みちにまよって、かえりみちがわからないの……』

王子様の問いに、お姫様は泣きながら答えます。
お姫様が迷子なのだと知った王子様は、こんな幼い少女をひとりぼっちにさせておくわけには行かないと、お姫様の手を握り、慰めてあげました。

『大丈夫。ぼくが君をお家に返してあげる。だから泣かないで?』

『ホントに…?』

『あぁ、ホントさ!』

王子様がニッコリと微笑むと、お姫様もそれにつられてニッコリと笑いました。

『わかったわ。わたし、あなたをしんじる!』

『よし。じゃあ行こう』

王子様は、お姫様を連れて歩き出しました。
―――そんな仲睦まじい二人を、遠くで見ている者が居ました。
それは、王国を追放され、森に住みついた悪い魔女です。
魔女は、王子様とお姫様を木の陰からじぃっと見つめています。

『偉大な私を追放した、あの忌々しい王と女王の血を受け継ぐ者め…こんなチャンスは滅多に無い。今こそ復讐してやるのだ!』

魔女はギリリッと爪を噛み、恐ろしい形相で、杖を二人に向かって構えました。

『永遠の眠りにつき、そして苦しめ!』


パリィィィンッ!!!


次の瞬間。杖から発せられた光りが王子様とお姫様を貫いてしまい、二人はその場に倒れ込んでしまいました。

『ヒッヒッヒッ!良い気味だ!私を追放した罰だよ!お前たちは、もう目覚めることは無い!』

悪い魔女は、手を取り合い眠りにつく二人を見て満足し、何処かへ消えていきました。
――――暫くして、眠りについた二人を見付け、王国へ連れて帰った王様と女王様は、ベッドで目を覚まさない二人を見て泣き崩れていました。

『何故、こんなにも幼い子供達が呪いを掛けられねばならなかったのだ…』

『あぁ、可愛そうな姫!私が貴女から目を離し、森に迷いこませてしまったからいけないのです…どうか、この母を許してください……』

もう、王子様の宝石のように紅い瞳を見ることも、お姫様の小鳥の囀りのような美しい声を聴くことも叶わない。
―――そんな風に嘆く二人を、旅の途中、たまたま王国で一休みしていた心の優しい魔女が見ていました。

『なんと酷いことを…王様。女王様。わたくしにお任せください』

心の優しい魔女は、眠る二人にゆっくりと近付き、白い杖を高く振りかざし、魔法をかけてあげました。
そして、心の優しい魔女は、王様と女王様にこう予言します。

『十六の歳になれば、この子達にかけられた呪いは解かれ、春の日差しと共に目を覚ますでしょう』

『そ、それは本当か!?』

『えぇ。しかし、完全に呪いを解くためには、二人が協力しあい、悪い魔女を倒さなくてはなりません』

『そんな…あの魔女は誰にも倒せないわ!だから暗い森へと追放したのに…』

『確かに、あの悪い魔女の闇の力は強大で、我々の光の力では敵いません。ですが、人一倍強い光を持ったこの子達なら、きっと魔女を倒すことが出来ますわ』

心の優しい魔女は笑顔でそう言って、王子様とお姫様に武器を与えました。

『あぁ、わたくしはもう行かなければ…どうか、この剣で悪い魔女を打ち砕き、世界に平和が訪れんことを願っています。』

その後、心の優しい魔女は再び旅立ってしまいました。
心の優しい魔女の予言を聞いた王様と女王様は、その言葉を信じ、時が過ぎ去るのを待ちました。
軈て二人に呪いがかけられ、幾度めかの春が訪れました。
心の優しい魔女の予言通り、十六になった二人は窓から入った春の日差しを受け、目を覚ましました。

『お母…様……?』

『父上……』

『あぁ、姫!目が覚めたのですね!?良かった…また貴女の声が聴けて…っ』

『此方を見てくれ。王子よ。ああ、こんな立派になって…』

ぼーっとするお姫様は、女王様の手を繋ぎながら呟きます。

『私、長い夢を見ていた気がするわ。愛する人と幸せに暮らしている夢よ…とっても幸せな気分だった』

『そうね…長い夢を見て、さぞかし疲れたでしょうね……』

『ホント。眠っていたのに疲れちゃうなんて、おかしいわよね』

お姫様はクスクスと笑いました。幼い頃となにも変わらず、純粋なお姫様を見て、女王様は、心をお姫様へのいとおしさと切なさでいっぱいにしながら、お姫様を抱き締めました。

『父上…僕らは、一体どうしたんでしょうか…?』

『そうだな。お前たちには、説明しなければならないことがたくさんある。だが、今だけはどうかお前を抱き締めさせておくれ…』

王様も、息子である王子様を抱き寄せ、優しく頭を撫でてやりました。
――――暫くして、王様と女王様は、心の優しい魔女から聞いた予言を、二人にも説明しました。

『そうだったのか……僕らにしか悪い魔女は倒せない。ならば、僕は命をかけて悪い魔女を滅ぼしましょう』

話を聞いた勇敢な心を持つ王子様は、心の優しい魔女から貰った剣を掲げ、早速悪い魔女を倒しに行こうとします。
そんな王子様を見て、お姫様も剣を持ちました。

『王子様、私も行きます』

『何を言うんだ!君は姫じゃないか。君のようなか弱い娘を戦いに出すわけにはいかないよ!』

『そうよ、姫…私達と一緒に待っていましょう?』


手を差し伸べる女王様。しかしお姫様はその手を掴もうとはしませんでした。お姫様は、王子様と共に行くのだと心に誓ったのです。


『お母様…私、この方をお守りしたいの。だから、絶対に私も参ります!』

『姫…』


強い眼差しに押し黙る女王様。すると、見かねた王様がこう言いました。


『…王子。姫の意思は固い。お前はどうだ?姫を必ず守ると誓えるか?』

『!…もちろんです。必ず…必ず守ります!』

『王子様…』


こうして悪い魔女を倒すべく、若き二人は武器を持ち、あの日迷った森へと行くのであった。






―――――その後の展開は、もう覚えていない。



おばあちゃんが話していた、おとぎ話。



私はいつも、終わりを聞くまでに眠ってしまっていたから。



おばあちゃんは、"お前に聞かせるには、まだ早かったね"と毎回笑っていた。



お姫様と王子様は、悪い魔女を倒すことが出来たのだろうか?



…今更気になったって、もうおばあちゃんは死んじゃったから、分からないのだけど。



だから、大きくなっておとぎ話のことを思い出しても、すぐに忘れていた。






――――でも、まさか。




まさか、私が。




あの時聞かされた、おとぎ話に出てきた呪いに掛かってしまうなんて。




全然、思いもしなかった。






(無くなったおとぎ話のエピローグ)
ページを破ったのは、誰?


***********



続かない。てへ。
何書いてんのさって話よね。
私もそう思う。





END
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