公開するのを忘れていた四日目。
決して三日坊主とは言わせない。←
では、どうぞ!!
【リアル恋愛ゲーム】
蒼井 優里
《アオイ ユウリ》
┗乙女、ギャル、BL等々、様々な恋愛ゲームを攻略しているオタク少女。男兄弟の中で育ったせいか、あまり女らしさは無く、常に「どんと来い」という心構えでいる。器がデカい。所謂男前な性格。でも運動オンチなんだからそこがまたギャップ萌えで可愛いとかなんとか。
天風 大翔
《アマカゼ ヒロト》
┗典型的なワンコキャラ。優里からしてみれば「お前の方が攻略キャラじゃ」というが、本人はあくまでもオトす専門。一ヶ月に三十人の女子にフラれるという記録を持っており、恋愛ゲームにハマったきっかけでもある。つまりは現実逃避。ただいま優里に弟子入り中。
〜先生、それギャルゲーじゃないです〜
どうも、こんにちは。
外は晴れ。夏のうだるような暑さにやられながらも、インドア派の私は今日も何とか生きています。
さて………早速ですが、まずは私の事から説明していきたいと思います。
私の名前は蒼井優里。齢は17。女らしさは母のお腹の中に忘れてきました。ちなみに趣味はゲーム。雑食の私は乙女、ギャル、BL等々、全てのジャンルの恋愛ゲームを攻略しています。
まぁ、そんなわけで、現在進行形で、ジャージ姿で座椅子に座り、部屋で扇風機に当たりながらゲームをしている私ですが。
先程、あり得ない出来事が起こってしまいました。
――バンッ!
「うぉっ!?」
「師匠!ギャルゲー買ってきました!!」
………それはこの、ノックも無しに、勢いよく部屋のドアを開けた子。弟のお友達の、天風大翔くんがひっじょーに関係していたりするのです。
それは、数分前に遡る―――。
************
「優里さん…俺を、貴女の弟子にしてください!!」
「………はい?」
ゲームを中断し、リビングで休憩をしていた私に、優里くんはいきなり話し掛けてきた。
「えーっと、ちょっと待って?弟子って…何の?」
「そんなの決まってるじゃないッスか!」
大翔くんは、ズイッと整った顔を私に近付け、力説してくる。
「優太から聞きました。お姉さん、恋愛ゲームめっちゃくちゃプロいんですよね?俺、どーしてもギャルゲーを極めたいんです!」
「はぁ……」
器がデカい等と褒められる私でも、さすがにこれは受け止められなかった。いや、姉の私が言うのもなんだが、弟のお友達はみんなリア充だ。私のやっているゲームには無関心、むしろ引く奴等の方が多いというのに。なのにこの子は、それを極めたいと言った。
もしかして、私をからかっているのか?いや、でも友達の姉からかってなにが楽しいんだ。時間の無駄も良いとこだろ。
じゃあ、この子はマジで私に弟子入りしようとしてるってか。いやいやいや、ナイナイ。ありえない。第一、ただ恋愛ゲームを趣味としている私に弟子入りする事自体間違っている。
「…大翔くん、悪いけど、私そんなに極めてるわけじゃないから……」
「またまたぁ、謙遜しなくても良いですって!」
いや、謙遜も何も私師匠と呼ばれるような技能は持ち合わせていないんですって。
当然ながら、私は優里くんの弟子入り志願を断った。
しかし、優里くんは一歩も引くような雰囲気は見られない。何故そこまで頑ななんだ。たかがゲームだろ?
「別に良いじゃん、教えてやれば?」
「優太……」
すると、不意に私達の話をソファーに座って聴いていた弟の優太が、私に話し掛けてきた。
「いや、アンタ軽い気持ちで言うけどさ、私なんかに弟子入りしても何も得られるようなことなんてないからね?時間の無駄だって」
「どうしてもダメですか…!?」
「お前もそんな絶望的な顔するような事じゃないだろ」
男の癖に泣きそうになる大翔くんに、優太はため息をつく。
「優里、ちょっと」
「え?」
そして、どういうわけか、私を手招きして呼び寄せた。
私は訳が分からず、とりあえず優太に近付いて耳を貸す。
「あのなぁ…大翔の奴、この一ヶ月で三十人連続で女子にフラれてんだよ…」
「は…?」
一ヶ月で三十人…ザッと計算して一日ペースってことか。
「だから、せめてもの慰めで、優里の部屋にあった絶対に付き合える恋愛ゲームをちょっと勧めたら、これ極めるとか言い出してさ……」
「つまり、大翔くんは現実逃避がしたいが為に、ギャルゲーを攻略したいと……?」
「そういうこと。ウジウジされんのも鬱陶しいし、適当にやらせといてくんねェ?」
相変わらずドライな弟だ。まぁでも、大翔くんがあそこまで必死になる理由は分かったような気がする。
仕方無い。このまま断って引き摺られても後味悪いし、ここは大人しく協力してやろう。
「……あー、と…大翔くん」
「はい!」
私が声をかけると、大翔くんは元気良く返事をした。
「普通に恋愛ゲームやりたいっていうなら、別にやらせてあげてもいいよ?」
「マ、マジッスか!?」
「うん。同志が増えるのは悪いことでは無いし」
「オイ、ちゃっかり大翔のことオタク色に染め上げようと企んでねーかぁ?」
「黙れ愚弟。姉である私がお前の友達を慰めてやるんだから感謝しろ」
「……」
若干、優里に頼んだことを後悔する優太。フンッ、今更遅いわ。
「じゃあ大翔くん、今私が持ってるゲームソフト出すから、選んでもらって、そこからやっていこうか?」
「あ、いえ!教えてもらえるのでもありがたいのに、ソフトまで優里さんのお世話になるわけにはいきません!!それはちゃんと自分で用意します!」
「え?良いよそんな変な気ィ使わなくて。どうせクリアしてるやつなんだし……」
「ダメですよ!それじゃ師匠が楽しくないです!」
うん、気ィ使ってくれるのは嬉しいけど、師匠になる気はないからね。
しかし、どうやら私が止めても大翔くんは引き下がる気はないようだ。ノンストップだな大翔くん。
「俺、ちょっと近くのゲームショップで買ってきますね!」
「あー…そう?じゃあ私、部屋で待ってるから…」
「ウッス!チャリンコマッハでこいで五分で戻ります!!」
事故る気かお前は。どう考えてもうちからゲームショップまで二十分かかるからね。
…………って、もう居ないし。
「大丈夫かな…?あの子……」
「バカだから大丈夫だろ、アイツなら」
何だその基準……。
――――と、まぁ、こんな訳で、私は成り行きで新井 大翔くんの恋愛ゲームの指導をすることとなったのです。
で、冒頭に戻る。
「お、お帰り大翔くん…出来ればノックをして入室願いたかったわ」
「あれ、ビックリさせちゃいました?すいません……あ、でもソフトは買ってきたんで!ほら!」
そう言うと大翔くんは、嬉しそうな顔で私にシールで留められたビニール袋を差し出してきた。
「どれどれ…?」
私は封を開け、中のゲームを取り出す。
……そして、絶句した。
「俺、あんまゲームやらないんスけど、カセットって色んなのがあるんですねー?よく分かんないから適当に選んできちゃいました」
「……」
無意識に震える手。確かに彼は"ギャルゲー"を買ってきたと言っていた。だが、中に入っていたゲームは、どう見ても明らかに…………、
「…あー…ゴホンッ、大翔くん?ちなみに君、ギャルゲーの表紙を見た事は?」
「いいえ?あ、でもそのカセットってショートヘアの子多いッスよねー。最近のって、そういうマニアに向けたシリーズもあるんスね」
あぁ、まぁ、うん。確かにみんなショートヘアだね。………っていうか、ショートヘアじゃないとおかしいもんね。
だってこれ……………
BLゲームなんだもの。しかも見事に18禁。良く買えたな15歳で。
「……大翔くん、非常に言いづらいことなんだが、これはギャルゲーではありません」
「え!?で、でもそれ、恋愛ゲームの棚に置いてありましたよ!?」
「うん、確かに恋愛ゲームではあるんだ。でも君が考えてるのとは少し趣向が違うというかさ…」
「違う…??」
さてはて、どうしたものか。恋愛ゲームは恋愛ゲームでも、男同士のラブを画いたゲームなんぞ、きっと大翔くんは求めていない。
「……」
けど、せっかく初めて買った恋愛ゲーム。記念すべきソフトをこのままお蔵入りしてしまうのも惜しい。
「うーん……まぁ、別にこれでもいっか」
「へ?」
「大翔くん、始めに恋愛ゲームの鉄則を教えておこう」
「な、何でしょう師匠!?」
「起動したら投げ出さず、責任をもって最後までやり遂げ、ハッピーエンドを見ることだ。良いな?」
「はい!」
何だかんだでノってきている私。さて、純粋な青少年に恋愛ゲームの洗礼といきますか。
私はやっていたゲームの電源を切ると、大翔くんが買ってきた恋愛ゲームを、ゲーム機に入れ、起動させた。
(次の瞬間、テレビの画面から眩い光が放たれた)
(あれ、何だか急に意識が……?)
――――――――
はい、珍しく一話完結した小説になります。
そういえば、この小説の番外編みたいなものを日記で上げたような気がする。確か。
主人公は気に入ってたんですけどね。やっぱり続きが書けなくてボツになっちゃいました。
ではでは。5日目でまた会えることを願います....。
END