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それは過ちに似ていた





室内に通されて、まず目に入ったのはなだれを起こしかけている箱や袋の山だった。
色とりどりの包装を施されたそれらは机の上に無造作に置かれ、殺風景な部屋の中でその一角だけが浮彫りになって見える。
部屋の主にしては珍しいその有様に軽く目を見張っていると、困ったような笑い声が聞こえた。


「見苦しくてすまない。片付けてる暇がなかったんだ」

「いや、どうってことねぇけどよ……これ、どうしたんだ?」


山積みなったものを指差して問えば、眉尻をさげてフレンはユーリを見つめた。それが捨てられた子犬のようだと内心で思いつつ、ユーリは目前に広がる包みの一つを手に取った。
僅かに漂う甘い香りからして、中身は菓子類であることが分かる。そこでユーリは一瞬、顔を顰めた。普段なら好ましい匂いな筈なのに、何か違和感を感じた。


「僕宛てに送られてきたものなんだ。贈り物の類はいつもだったらソディアが管理してくれてたんだが、彼女は今、城を離れてるからね」


言いながら真似るようにフレンも手近にあった袋を手に取った。普段身に着けている鎧は脱いでいる為に、戦う者にしては繊細な手が露になっている。
細かに動く白い指先をユーリはぼんやりと眺めていた。だが、フレンが包みを開こうとした瞬間、思い出したように直ぐさまそれを取り上げる。そして、まるで汚い物でも扱うかのように机に放り投げた。
突如起こしたユーリの行動に、フレンは最初はただ驚いていたが、次第に己の私物を無造作に扱われたことに眉を寄せる。


「急になにするんだユーリ」

「差出人の控はあるのか?」

「えっ…?」

「だから、これ持ってきた奴の名前とかメモってあんのかって聞いてんだよ」


暗に問われた内容に戸惑ったが、理解すると同時に緩慢な動作で頷いた。それを見たユーリが、贈り物を運ぶのに近くに置いてあった大きな袋を手に取る。
何をするのかとフレンは訝し気にユーリを見つめていた。そして、山を成している机に向かうユーリの背中をただ眺めていた瞳が、瞬く間に瞠若の色を拵える。
用意した袋の中にそこにあった全てのプレゼントを、乱暴な手付きで収め始めたからだ。
突拍子もないユーリの行いにフレンはただ呆然としていた。何の脈絡もないユーリの言動はしょっちゅう見てきたが、そこには必ずユーリなりの理由なり意図なりがあった。だから、これにも何か訳があることは想像できるが、如何せ不可解すぎる。
フレンの視線に気付いたのか、ユーリは振り返った。既に机上に置かれた荷の全ては、大きく膨らんだ袋の中にある。


「他にはないのか?」

「ない、けど……」


それをどうするつもりなんだ、と言おうとした所でユーリは窓に向かい走り出した。小脇には先程の袋が当たり前のように抱えられている。


「ユーリっ!!」


勢いよく窓の外へと飛び出したユーリを止める間もなかった。ガサガサと木から木へと跳び移る音を耳に、フレンは慌てて窓枠へと駆け寄る。
だが、もうそこにユーリの姿はない。それに小さく舌打ちをするなり、周囲を確認してから、フレンも窓枠へと足をかけた。
こんな所が騎士達に見つかれば、団長としての威厳がなくなってしまう。只でさえ、未だ成り上がりのくせにと囁かれることも少なくないのだ。
だけど、それ以上にユーリが何をしようとしているのか確かめなければいけない気がした。
フレンは一度大きく深呼吸をしてから、太い枝へと飛んでいった。












地面へと降りてすぐの城壁を左に曲がると、目的の人物はすぐに見つかった。
フレンは乱れた呼吸を整えながら、ユーリが足早に進んで行く先を見て驚愕する。赤い炎を揺らめかせるそれは、城の不用物を焼き払う焼却炉があるのだ。ここまでくれば、この後の展開は嫌でも分かる。
流石にこれは止めなければと思い、フレンは駆け寄るが、僅かにユーリの方が早かった。


「待て、ユーリ!!」


フレンの叫び声と同時に、ユーリは持っていた袋を焼却炉へと放り込んだ。
一瞬にして炎に包まれたそれは、もくもくと黒い煙を噴きながら、嫌な臭を発する。ツンと鼻をつく刺激臭にフレンは思わず手で口元を覆った。
対してユーリは無感動にそれを眺めていた。だが、瞳は険しいもので、赤黒く燃えていく贈り物たちを睨み付けるように見つめている。

一体全体、彼は何がしたいのだろうか。
自分の私物、ましてや好意で贈られた物を燃やされたのだ。意味などないとは言わせない。本来なら怒るのも当然のことなのだから。


「ユーリ、なんで…」

「嫌な臭をだしやがる…」

「は…?」

「流石はそれなりに強烈なもんを使ってるってことか」


ぱちぱちと燃え盛るそれを見つめていた瞳がゆっくりと向き直り、フレンを捕らえる。
向けられた視線があまりにも厳しいもので、フレンは肩を竦めた。炎の赤が、ユーリの顔を照らしている。


「優秀な副官に感謝するんだな。じゃなきゃお前、今頃ここにはいないぜ」


紡がれた言葉の真意が読めない。何故いきなり今ここにいない人の話題が上がるのか。
フレンの心情を察したのか、ユーリは眉を寄せる。はっきりしない態度は彼にしては珍しいな、などとフレンは思った。


「毒薬が入ってる」


ただ一言告げられたそれに、フレンは目を見開く。
今、言われたことな筈なのに、頭の中にはまるで入っていかない。


「それって…」

「お前を狙ってたんだろうな。まぁ、全部が全部って訳じゃないだろうが、用心するに超したことはない」


誰かが何を思ってのことかは到底知りえないが、お人好しのフレンが贈り物の類を無下にする訳がないと予想してのこと。つまり、善意ではなく、確かな悪意を担った進物が、フレンのもとに届けられていたのだ。
そして、ユーリはそれを見切っていた。杞憂ではなく、真実だということは、漂う臭気で分かる。
まだ騎士に成りたての頃、演習の一環として嗅いだことがあった。それも同じように、鼻を刺すような臭を放っていた。

人の良心に付け込むようなやり方が許せない。だが、何よりも気がつかなかった自分がフレンは情けなかった。
自分の身もろくに守れない己の不甲斐なさを悔やむと同時に、じわじわと哀しみが広がっていく。
こうしてユーリは誰かを守るのだ。自分がどんなに悪く思われようとも、それを厭わないで。
だけど、誰かを守る為に自分の手を汚すというのは、決して辛くない筈がない。
ユーリがそんな思いをしなくてもいいように、一人で罪を背負わなくてもいいように、夕日照らす空の下で約束したのに。剣を交えたあの日、心に誓ったのに。


「ごめん、ごめんね……ユーリ、ごめ…っ」

「バーカ、された側のお前がなんで謝ってんだよ」


おどけた調子で笑うユーリに、フレンはとうとう目も合わせることが出来なくなった。
ユーリが言うように、あの贈り物の中の全てが毒物だった訳じゃない。親切心だったり、敬いだったり、あるいは敬愛だったり。
それらの気持ちも一緒に火の中へと放り込む時、ユーリは何を思ったのだろう。そう考えれば考えるほど、やるせない想いが募っていく。
嘆きも泣きもしない姿は、強く気高い。その様が切ないのだと言ったら、彼はなんて言うのだろうか。

じわりと滲んでいく視界が黒に包まれ、背中に温もりが触れた。ユーリの腕の中にいるのだと気付いた時にはもう、焼却炉の中身は燃え尽きていた。


「オレはお前を守りたいだけなんだよ」


一言ぽつりと零された言葉は、フレンの心に鋭く突き刺さり、そして溶けていった。


お前を守る為なのなら、
(非情にも、非道にもなれる)

例えそれでお前が泣いたとしても




それは過ちに似ていた




それは君だけの特権【碧斗さまより】


【-空色うさぎ-】碧斗さまより


『それは君だけの特権』


凛々の明星の面々は、依頼完了報告のためダングレストに来ていた。
相変わらずの夕暮れ時のような風景はどこか哀愁をさそうとユーリは何とはなしに思っていた。
そこでふと違和感に気づく。いつもより人が多いことに。しかもよく見れば騎士団の人間もチラホラと確認できる。
何事かとユーリ達が訝しんでいると背後から聞き覚えのある呑気な声が聞こえた。

「ジュディスちゃんとその他じゃないの〜」

いつの間に近づいていたのか背後にいたのはレイヴンだった。

「あら、お久しぶりね」
「相変わらずだなおっさんは」
「それよりレイヴン、どうしたのこの状況?何かあったの?」

ジュディスはいつもの笑顔で、ユーリは呆れたように返し、カロルは街の異様な雰囲気を聞く。
そしてその返答は一同を驚かせるには十分だった。

「あー、今ヨーデル殿下が来てんのよねー」
「えぇっ!?」

これには全員が驚いた。皇帝自らがギルドの本拠地に来るだなんて誰が想像するだろう。
理由を聞けば帝国とギルド間で新しい条約が締結されている最中だという事だった。

「しっかしよくもまぁ殿下直々に出向けたもんだ。命だって危ねーだろうに」

とはユーリの言。 するとすかさずジュディスが含み笑いを浮かべて続ける。

「そこはほら、天然殿下には優秀な右腕がいるじゃない?」
「あ!そっか!フレンがいるもんね!!」

そう言ってカロルが笑った。

「そーゆー事。実際うちの首領が動く方が危ないのよ」
「あ?そっちにはおっさんがいるじゃねぇか」

元帝国騎士団の隊長であり、ギルドの幹部でもあったレイヴンの実力はユーリもよく知っている。そう思っての発言だったのだが、レイヴンは眉根を寄せた。

「いや、おっさん一人じゃ、ね」

そしてギルド側が自分で帝国側にフレンという事になっているのだと説明してくれた。
ちなみに今レイヴンがここにいるのはいわゆるお使いらしい。

「あと場所がこっちなのは帝国側のフレンちゃん自身がギルドと帝国の全面戦争止めた一件からダングレスト内でも一目置かれてるから街の人からの反発ってのも少ないのよ」

そう言われてユーリに一つ思い当たる事があった。

「逆に帝都では貴族達がうるさいってか?」
「そゆこと」
「…笑えねぇな」

世界が変わりつつある今でも貴族達は相変わらずらしい。
苦々しげにユーリが呟いた。

「まぁ、ね。ま、でも殿下やフレンちゃん達が頑張ってくれてるからね。これでも昔よりはずっとマシなのよ?」

そう言ってレイヴンは笑っていた。実際帝都でも下町への扱いなど昔より格段によくなったと思う。
これもフレンや天然殿下、エステル達が頑張ってくれてるからなのだとユーリも思っていた。
そしてその手伝いをするのが自分達の仕事だとも。
ただ唯一そのせいでフレンに会えないのは癪だったが。

「ま、とゆーわけでおっさんはそろそろ愛しのフレンちゃん所に戻るんで」

ユーリがフレンたちへと想いを馳せている間にさっさとユニオン本部へとユーリにとって聞き捨てならない台詞を残して去ろうとするレイヴンをユーリは当然逃さなかった。

「ちょっと待て」
「わー青年目が怖い!怖いって!!」

先ほどの発言の影響もあってかユーリの目は完全に据わっている。
そんな鋭い瞳に肝を冷やしていたレイヴンへと残りの二人からも声がかかる。

「そうね、私も久しぶりにフレンに会いたいわ」
「僕も!」
「「え?」」二人の発言に驚いたのはレイヴンだけでなくユーリもだった。
二人して目をぱちくりさせている。

「あら、だってずっと会ってないもの。私だって癒されたいわ」
「僕もフレンに会いたい!レイヴンばっかりずるいよ!」

そう言って二人は拗ねたようにレイヴンに言いよる。

「ずるいって…おたくらだってフレンちゃんに会えてるでしょ?特に青年は」

そう言ってユーリを見る。
が、ユーリは明らかに不機嫌さがわかる表情でレイヴンを見ていた。
その表情でレイブンは悟る。

「……マジ?」
「…というわけで連れてってくれるよな、おっさん?」

真っ黒なオーラを漂わせたユーリに肩を叩かれたレイヴンには顔をひきつらせながら了承するしかなかった。

「ユーリ・ローウェル…!!」

ギルドユニオン本部にて一行を出迎えたのはフレンの副官、ソディアだった。
彼女はユーリを見るなりギッと彼を睨む。
彼女とユーリは一度は和解したものの、やはりフレンが絡むと納得できない事が多いらしい。
ユーリに会うたび鋭い視線を送っている。
もっとも、当のユーリは気にも留めていないのだが。

「レイヴン殿、これは…!!」

ソディアはその勢いのままユーリ一行というよりユーリを連れてきたレイヴンに詰め寄る。
だがレイヴンはいつもの調子で飄々と経緯を話す。
そんな彼らにソディアの怒りは増していく。

「今は大事な協議の最中なのですよ?!それなのに部外者を…」

言ってなおもユーリを睨みつけるソディアの背後からそれとは対照的な穏やかな声が聞こえた。

「ソディア?どうかしたのかい?」

ソディアの後ろから表れたのは美しい金髪に空色の瞳を持った帝国の現騎士団長。

「フレン!」
「フレンちゃん!」
「隊長!」

口々にフレンを呼ぶ面々にフレンは驚きながらもその中にユーリがいるのを見てとり、顔を綻ばせた。

「ユーリ!」
「フレン!元気そうだな」
「君こそ、相変わらずだね」

そうやって二人の世界状態な会話を続けてしまう。

「ちょ、フレンちゃんおっさん無視〜?」
「私達だって久しぶりに会うのにひどいわ」
「そうだよ〜!」
「隊長!」

そんな二人に口々に不満を漏らす面々を、フレンは申し訳なさそうに見、ユーリは二人の再会を邪魔された事で睨んでいた。

「す、すまないジュディス、カロル、久しぶり。元気だったかい?」
「ええ。元気よ」
「僕もだよ」
「良かった」

そう言ってフレンが笑えばその場は一気に和やかムードに一変する。
これもフレンの大きな魅力の一つだと一同は同時に思った。

「そういえば、どうしてここに…?」
「ああ、たまたま依頼でこっちに来ててな」
「そうだったのか」
「それより会議は?」
「ああ、丁度今終わって…」
「お久しぶりです皆さん」

フレンが言い終わる前にユニオン本部のドアが開き、そこから出てきたのは金髪の少年。
現皇帝ヨーデルその人だった。

「久しぶりだな」

皇帝になったヨーデル相手といえど相変わらずな態度のユーリをフレンが咎めるように見るが、ヨーデルもユーリも気にした様子は無かった。
ヨーデルはジュディスとカロルにも挨拶する。
それがすんだ途端ヨーデルは何かを思い出したかのようにフレンに向き合う。

「フレン、あなたにお願いがあるのですが」
「何でしょう、ヨーデル殿下?」

皇帝ともあろう人間がその部下である騎士団長にお願いとはなんとも不思議な話だと一同が思ったが、この二人なら有り得ると妙に納得してしまうのだった。

「あなたの料理が食べたいのです。作っていただけませんか?」「えぇぇぇぇぇ?!?!?!ヨーデル殿下本気ぃぃぃぃ?!?!?!」

とっさに反応したのは以前ギルドと帝国の料理対決の際、フレンの料理でひどい目に会ったカロルだった。
それに苦笑し、ヨーデルは首を振る。

「僕が食べたいのはこのレシピ通りに作ったフレンの料理です」
「このレシピ通りの料理…ですか?」
「ええ、お願いできますか?」
「はい、もちろんです」
「良かった。実はもう材料などは手配してあるのです」

以前料理対決で使った会場に材料などは全て手配しているとヨーデルは付け足した。
会場へ行く道中、レシピを見ながら集中して歩いているフレンの横で一同は小声で会話する。

(レシピ通りのフレンの料理はプロ顔負けだとエステリーゼに聞いて以来ずっと食べてみたいと思っていたのです)
(あー、確かにレシピ通りならあいつの料理は完璧だな)
(僕、それなら食べたい!)
(た、隊長の手料理…)
(私は両方興味があるのだけれど…)
(おっさんもフレンちゃんが作ってくれるのなら…と言いたいけれどカロル少年の様子からレシピ通りを希望)
(おっさんは黙ってろ)
(それ以前にこれは僕とフレンとの個人的な話なのですが?)
(……)
(ユーリ!殿下相手に睨み効かせないで…!!)
(あら、殿下は全く怯んでないわよ?)

こそこそと話し合っているうちに険悪になっていく一行の横でひたすら黙々とレシピと向き合っていたフレンが急に申し訳なさそうにヨーデルに声をかけた。

「ヨーデル殿下、殿下さえよろしければユーリ達にも食べてもらいたいと思うのですがよろしいでしょうか…?」

そう言って小首を傾げる様子はこう言ってはなんだが可愛らしくとても年上の男性とは思えないとヨーデルは思いつつ、そしてそんな彼の要望を断れるわけも無かった。

「いいですよ。あなたならそう言うと思ってましたし」
「ありがとうございます…!!」

そう言って満面の笑みを浮かべるフレンに一同は癒されていた。
会場に着くなり料理を始めるフレン。
料理がし辛いからと鎧を外した上から付けたエプロン姿が眩しいと一同が癒されながら思う。
当の本人はそんな事思われているとは露ほども思っていなかったが。

「いやーまさかフレンちゃんの手料理が食べられるなんておっさん幸せだわ〜」
「楽しみだね!」
「隊長の手料理…」
「どんなのが出てくるのかしら?」
「僕も楽しみです」

皆がフレンの(食べられる)手料理を心待ちにしている間、ユーリの不機嫌メーターはどんどんと上昇の一途をたどっていた。
自分の恋人の手料理を喜んで他人に食わせたがる奴なんていない。
自分の恋人の手料理を喜んで他人に食わせたがる奴なんていない。
当然ユーリもそんな人間の一人で。知らず机を指でトントンとせわしなく叩いていた。
そんなユーリを料理が出来るまでの間、皆で”落ち着きが無い”だの”男の嫉妬は見苦しい”だの散々言い倒していた。
そうこうしている内に完成し並べられた料理は見事なもので、見た目は当然のことながら、レシピ通り作られていた為味も完璧以上のものだった。

「ご馳走様です。とても美味しかったです」
「殿下にお褒め頂いて光栄です」
「美味しかったわ。ご馳走様、フレン」
「ありがとう、ジュディス」
「美味しかったよ!フレン!」
「カロルもありがとう」
「流石隊長!完璧です…!!隊長の右に出る者はいませんっ!!」
「ソディア、それは褒めすぎだよ…」

そう言って口々に賛辞を述べる。
それにフレンは笑顔で応答し、和やかな雰囲気で食事会の幕は下りるかと思えた。
が、異変は既に起こっていたのだ。

「ホントに!おっさんもこれなら毎日食べたいわ〜。いっその事お嫁に来ない?」
「あ、あの…」

そう言ってレイヴンがフレンを褒めちぎり、フレンが困る。いつもならユーリの強烈な蹴りか拳が飛んでくる場面だ。
が、何も起こらない。フレン以外の人間が不審に思いユーリを見ると彼は机の上に突っ伏していた。

「ユーリ?!」

慌てたフレンが駆け寄る。
そんなフレンにユーリが唸るような声で確認するかのように問いかけた。
―お前これレシピ通りに作ったんだよな…?―
と。
だがフレンは困ったように首を振る。やっぱり、と苦しげながらもどこか嬉しそうにユーリが呟いた。
そして一同は顔を見合わせていた。
その様子を見たフレンは慌てて訂正を入れる。

「あ、殿下達にお出ししたのはご注文どおりレシピ通りだったのです」

その一言に一番安堵していたのはカロルだった。そしてフレンは続ける。

「ただ…ユーリが何だか不機嫌だったから、少しでも機嫌なおして欲しくて君のだけちょっと張り切っちゃった…かな?」

フレンは料理を作っている最中、不機嫌そうに机を突くユーリが気になっていたらしい。
そう言って照れくさそうに笑うフレンにもユーリはノックアウトされていた。
ユーリには当然一口目でその料理がレシピ通りでない事くらいわかった。
そして周囲の反応からその料理を出されたのが自分だけだという事も。
フレンが対人兵器料理を出すときは張り切ったリ相手に喜んで貰おうと頑張った時。
それを長年一緒に居て知っているユーリにはフレンの気持ちが伝わり、それが何より嬉しく、一気に自分の中から不機嫌さは消えていった。
しかし体は当然違う。いくら長年慣れた対人兵器料理とはいえ無傷というわけには行かない。
それでもフレンがアレンジをきかせたお手製の対人兵器な手料理をユーリが完食していた事は言うまでも無い。
当然原因を言わないまま机に突っ伏しているユーリと、それを心配そうに介抱するフレンに一同は呆れたり、負けるものかと闘志を燃やしたりと様々な反応を示していた。
そしてその後もユーリだけが3日間寝込む羽目になり、尚且つその原因であるフレンに(当然理由は言えないまま)体調が悪いと付きっきりで看病させたとか。









○感謝文○

なんとなんと!リク内容が『ユリフレ前提のフレン争奪戦』という面倒なものにも関わらず、本当に書いていただちゃいました!!
しかも完成度が高すぎます…!色んなキャラをだしてるのに、一人一人がちゃんと目立ってるんですよ〜!その上、いい感じにバカップルなユリフレも加えてくださっているから、フレンが誰が一番好きなのかも分かるという…(感動)
料理ネタは私も好きなのでほんとにツボりました♪

碧斗さま、こんなに素敵な小説を本当にありがとうございました!大切に大切にさせていただきますvv
これからもよろしくお願いします!!

碧斗さまの素敵サイトにはこちらから↓↓
-空色うさぎ-





拍手レス 〜3.19




この度もたくさんの拍手ありがとうございます!近日中にはまたお礼文の入れ替えをします。
予定としてはユリフレ、ユリゼロフレ、ジェイガイで…(^^)3種類のせますよ!
以下はコメントのお返事です♪












帽さま

┗帽さま初めまして!お返事が遅くなって申し訳ないです(汗)
小説を見てくれただけでなく、コメントまで…!ほんと有り難いです!
私もユリフレの他に、アレフレも好きなんですよ^^なんだか鬼畜な匂いがプンプンしますよね(笑)またアレフレ書いてみようと思ってます。
ジェイガイもいいですよね!!私自身、帽さまのサイトにはちょくちょくお邪魔していましたが、その度に素敵な小説に悶えてました〜。

リンクの件なのですが、僣越ながら私も帽さまのサイトを貼らしていただきました!
勝手に相互リンクだ〜とかって喜んでます←←
近々、帽さまのサイトにて改めて挨拶しに伺いますね♪
それでは拍手ありがとうございました!





まさかのマイソロなユリフレ←ゼロの続編で〜…の方

┗はい、まさかの続編ですvvうっかり調子にのりました。後悔なんかしてませんよ〜!!
ユリフレって安定してるというか、もう既に熟年夫婦って感じで何かハプニングがない限り、お互いの気持ちに気付かなさそうなイメージがあるんですよね。
なので、そのハプニングはゼロスにしょってもらいました(笑)
続きを書いていくつもりなので、これからも生暖かい目で見守ってやってください♪
拍手ありがとうございました!!





碧斗さま

┗わわわっ!あんな無駄に長い文章を受け取っていただけただけでも嬉しいのに、感想までいただけるなんて…!
献上した側の私が嬉しくなっちゃっいましたよ〜♪これでまた調子こいて、小説作りが捗りそうです←←
ifの話もこれから続いていかせる予定なので、また覗いてやっていただければ幸いです。

リク小説はいつでも大丈夫ですよ^^私こそ自分から言っておいて長々と待たせてしまって申し訳ないです(汗)
ゆっくりまったりお暇な時に書いていただけると嬉しいですvv
またサイトの方にも遊びに行きますね!この度は拍手ありがとうございました!!





ふわさま

┗ふわさまは初めまして♪
あんな私の趣味丸出しなユリフレでよければ、書いていきますね!短文に纏まれば拍手にも使いたいと思ってます(^^)なので、出来上がった際には読んでいただけると嬉しいです♪こういう感想を貰えると、本当に作る意欲がでてきますよ〜!

ふわさまは熊本からなんですか!?遠い所からいらっしゃるんですね!なんだか行く勇気がでてきました!!
内心、遠出をするのにビクビクしてましたが、ふわさまも行くなら私も行きたいですー!
もし、行ったらよろしくお願いしますvv
それではコメントありがとうございました!





ユリフレ最高です〜…の方

┗おぉっ!なんだか気が合いましたね(嬉)
ユリフレはやっぱり最高ですよね♪あんな素敵カップルはそうそうない気がします!
幼馴染みであり、親友であり、ライバルであり、夫婦であり(?)のユリフレはもう最高ですよ!
小説にもそんなユリフレが表れるように頑張りますので、また是非いらしてください^^
拍手ありがとうございました!





お散歩日より




ぽかぽか暖かい気候になってきたにも関わらず、昼の12時まで寝てたという不摂生な生活まるだしのゆぅです。
もう体内時計の感覚は狂いまくりvv


毎度の事ながら、かなりお久し振りの日記になりました。
そこでっ!ずっと夢見てた、皆様も知っている大大大ッイベントがありますよね…!!
言わずともがな、ユリフレオンリーの下町へようこそ!ようこそようこそ──…(エコー)

はい、すみません。テンション上がりまくりです。
こんな素敵イベントを企画してくれてありがとうございます!!
ああ行きたいな、行きたいな〜。
東京発の夜行バスに乗って行けば大阪まで往復で1万ぐらいで行けるんですよね。。。行きたいなぁ・・・。


待て!道中、一人やん!

うーわ、めっちゃ心配すぎるわ!私、夜行バスとか使ったことないよ!
もっと言うなら、一人で千葉県内から出たことすらない!!
こんな私が大阪まで一人で行ったら確実に迷いますよね、そーですよね〜。


どうしよう…。誰か一緒に行ってくれないか頼み込んでみようかな・・・。
でも、いきなりそんなの厚かましいですよね;;しかもまだ予定とか分からないという(泣)

よしっ!行けるように頑張ってみよう!




話は変わってやっぱりヴェスペリア。ああもう、フレンが愛しすぎりZE☆←アホ
なんであんなに可愛いのかしら。ゆぅは金髪碧眼が大好きなんだね〜。

しかし、まぁ書けるか書けないかは別として、ほんとネタが尽きない尽きない。沸いてくる妄想の塊を文章にしていきたいです。
日常の些細なことまでユリフレ。
バイト中だってユリフレ。
ケーキとかチョコでもユリフレ。
買い物してたってユリフレ。
etc、etc…。

ゆぅの脳内はきっとショッキングピンクですよ?
↑たぶんこんな色


とりあえず私のカオスな脳内から生まれた妄想の中で、書いてみたいネタを挙げてみます。
はい、ただの恥曝しですねー。
興味ある方だけ見ていただければと…!(ビクビク)





○ゆぅのユリフレ妄想劇場○

*学パロで卒業式なユリフレ
*同じく入学式なユリフレ
*騎士団員に告られるフレンを見つけるユーリ
*レディマイ2でゼロスに迫られて断われずに関係を持ってしまうフレン(まだユーリとは恋人同士ではない)
*それを知ったユーリが怒ってフレンに詰め寄る
*んでもって何も言わないフレンにユーリは怒りが爆発して無理矢理抱いちゃうとか
*その後、ギクシャクしちゃうユーリとフレンを端から諦観するゼロス
*裏路地を歩いてる時に男媚に間違われて食べられそうになるフレン(危ないとこにローウェルさん華麗に参上)
*ユーリがとある貴族の陰謀でフレンのことを嫌いになる(薬や術とかで)


あれ…?なんか雲行きの怪しいユリフレばかりですね。
しかも、半分はフレンが可哀相な人。





これも愛なんですよ!






渚のように攫いましょう




相互お礼☆
【-空色うさぎ-】碧斗さまへ





太陽の光が照り付ける。小鳥の鳴き声を目覚まし変わりに、フレンはゆっくりと閉じていた瞼を開いた。
もぞもぞと布団の中で寝返りをうち、枕元の時計に目をやればそれは6時前を指していた。最近、目も回るぐらい忙しくて、ろくに睡眠時間を確保できていない為に、眠気が抜けない。
だが、二度寝なんかできる状況ではないのだ。今日もまた積もりに積もった、報告書やら始末書やらの書類に目を通さなければならない。近々行われる騎士団の演習の準備もしなくては。街の復興だってある。
フレンは今日一日のスケジュールを頭の中で組み立てていると、時計の短針と長身が直線になっていた。
ああ、もう支度をしなくてはとベッドから起き上がると、早朝特有の薄白い光の中、異様なほど目立つものが視界に入った。


「よお」


片手を軽く上げて飄々とした態度で挨拶する人物に、フレンはまだ夢の中なのだろうかと本気で考えた。だが、流石に肌寒さも感じるような夢なんかあるわけないと思い直す。
だとしたら、目の前にいる見慣れた人物は、


「どーしたフレン?寝ぼけてんのか?」

「……な、ッ」

「な?」

「なん、でっ、ユーリがいるんだ!?」


寝起きの為に中々声が出し辛かったが、フレンは構わず声帯を震わせる。
何故、と言われた本人に至っては別に気にするでもなく、ベッドへと近付いてくるものだから、フレンは余計に混乱した。
普段は回転がいいと褒められる頭も今日ばかりは働いてくれず(起きて間もないのだから当たり前なのだが)、そうこうしているうちに、ユーリがベッドに乗り上がってきていて、余計にフレンは驚愕する。
反射的に後ろへとずり下がるが、狭いベッドの上では直ぐに追い詰められてしまう。フレンの背中が壁にぶつかったのを見計らって、ユーリは壁に手をつき、腕の中へとフレンを閉じ込める。
日中は鎧に隠れている為に焼けることのない鎖骨へと口付けると、細い身体は大袈裟なほど跳ね上がった。


「…ユーリ、んっ…ぁ!」


思わず上がってしまった己の甘い声に、フレンは頬をさぁっと赤く染めあげる。
その敏感すぎるぐらいの反応に、ユーリはくつくつと喉の奥で笑うと、最後に薄紅色した唇に軽いキスを落として離れた。
急に離れた体温が少しだけ名残惜しい。フレンは不思議そうにぱちぱちと瞬きを繰り返し、ユーリを見つめる。見上げてくる透明な碧の双眸にユーリは苦笑すると、顎で外を指す。


「ほら、目ぇ覚めたんならさっさと支度しちまえよ」

「あ、うん…」


フレンは小さく返事をすると、時計に目を向ける。6時15分。そろそろ準備をしないと朝の演習に間に合わなくなる。
乱れたベッドを正し、いつもの騎士服に着替えようとした所で、刺すような視線に気付く。ちらっと視線をずらせば、ユーリが笑いながらフレンの方を眺めていた。


「あの、ユーリ…」

「ん?」

「見られてると着替えにくいんだけど」

「んなの今更だろ?なんだったら手伝ってやってもいいぜ?」

「……そこで大人しくしててくれ…」


どこまでも我が道を行く幼馴染みに、フレンはがくりと項垂れる。確かにユーリの言う通り、今更恥ずかしがるような仲ではないが、少しぐらい気を遣ってくれてもいいだろうに。内心でぶちぶちと文句を言うが、どうせ聞いてもらえる訳ないのだと諦めた。
熱視線に耐えながら手早く着替えを済ませ、備え付けの簡易な洗面所へと向かう。
顔を洗いながら、ふとフレンはとあることに気付く。ここ最近、ユーリは城にはおろか、下町にすら顔を見せていない。ギルドの仕事が忙しい為だと以前にうんざりと、それでも存外楽しそうに話していた。
そんな彼が何故、ここにいるのか。しかも、こんな朝早くに。
フレンが身仕度を終えても、ユーリは部屋にいた。それに少しの安堵を覚えつつも、フレンはユーリに尋ねる。


「ユーリ、何か僕に用事があったんじゃないのか?」

「まぁ、な。仕度は終わったのか?」

「ああ。だから、何かあったなら聞くけど……」


言い終わらぬうちにガシッと手首を掴まれる。フレンは驚いてユーリを見やれば、何とも含みのある笑みを浮かべた彼と目が合った。
こういう笑顔を見せる時のユーリは碌なことを考えていない。そして、大概それは自分に何かしら事を及ぼすものだということも、長年の経験から熟知している。


「うっし!それじゃあ行きますか!!」


気合いの入った言葉が今は耳に痛い。手首を掴まれたまま、窓の方へと向かうユーリにフレンは半ば引き摺られるようにして連れて行かれた。
頭の中で警鐘が鳴るが、もう時既に遅し。
ぐいっと腕を引っ張られたかと思うと、フレンはユーリと向かい合わせになるように抱えられた。急な浮遊感に不安になり振り返ると、綺麗なまでの青空が広がっている。
慌てて下を見れば、ユーリが窓枠に足をかけていた。
これは、まさか。もしかして、


「えっ…、なに、ちょっとユーリ!降ろしてくれ!!」

「いいかー、しっかり掴まってろよ」

「待って、ゆ───」

「じゃあ行くぞ、フレン!!」


必死の制止も虚しく、ユーリはフレンを器用に片手で抱えたまま、窓から飛び降りる。
ガクンと落ちる感覚。その間、フレンは無我夢中に目の前の幼馴染みにしがみついていた。














「信じられない!!あんなことして怪我でもしたらどうするんだ!」

「怪我しなかっただろ?ならいいじゃねえか」

「そういう問題じゃないよ!!」


あの後、フレンは目を瞑りながらくるだろう衝撃に構えていたが、ユーリは持ち前の運動神経の良さと太い木の枝を生かして見事に着地し、案外あっさりと地上に降ろされた。
確かにそこまで高くはなくとも、成人した男一人背負って落ちたのだ。いくらフレンが身長の割に軽いと言っても、危ないことには変わりない。
だが、それをいくら咎めても、ユーリは素知らぬ顔で流していた。


「大体っ!こんなとこで油売ってたら演習に間に合わなくなるじゃないか!」

「それは心配いらねぇよ」


にやり。口端を上げながらユーリは笑う。その笑みに何か良くないものを感じたフレンは一歩下がろうとするが、ユーリが腰に腕を回してきた為にそれも叶わなくなる。
引き離そうとしても、やたらと力強いユーリの腕を引き剥がすのは不可能だった。仕方なく抱かれたまま、大人しく見上げる。
いつもなら同じ目線であるのに。


「どういう意味だい…?」

「そのまんま。お前は今日から3日間休みだから」

「なっ…!!そんな勝手なこと出来る訳ないじゃないか!」


予想外の言葉に直ぐさま反論するが、ユーリは全く聞いていないようで、フレンの手を引っ張りながらそのまま歩いて行ってしまう。
自然と後ろについて行く羽目になったフレンが尚も抗議の声を上げようとした所で、間延びした穏やかな声音が遮った。


「頼まれたんだよ」


何を言っているのか分からない。それを察したユーリが再び、「頼まれたんだ、お前の部下に」と付け加えた。
その一言でフレンは全ての合点がいく。途端、顰めていた表情が柔らかく綻んだ。
いつもより強引な彼のこの態度は、自分を想ってのことだっただなんて。


「…いつから凛々の明星は人攫いまでやるようになったんだ?」

「バーカ、これはオレ個人のビジネスだっての」

「ユーリの気持ちってこと?」

「さてな。つか、なに締まりのないツラしてんだよ」

「ひどいな、嬉しかったのに」


照れたような笑いを隠しもせずに浮かべるフレンは、いつもの凜とした表情とは違い、酷く幼く見える。だが、ユーリはこのあどけない表情が好きだった。
星触みを討ってから、フレンは昔以上に仕事に追われるようになった。正式な騎士団長という位を授かったというのもあるが、魔導機を失ったということが人々にとってかなりのダメージとなったようで、混乱の渦は瞬く間に広がっていった。
それらを一つ一つ迅速かつ的確に解決していくというのは、生半可な者では出来ない。上に立つ人間の手腕によっては国ごと潰れてしまう。
そんな緊迫した状況の中でも、フレンはしゃんと真直ぐに前を見ていた。どんな困難があっても決して諦めなかったし、弱音も吐かなかった。
その結果、少しずつではあるが世界は変わり始めている。

全てのことをフレン一人でやってのけた訳ではない。フレン自身、一人で全部できると自惚れてもいない。
だけど、今ここにある平和な時を作るために最も尽力し、また皆の幸せを願い続けたのは他の誰でもない、フレン・シーフォという一人の人間だった。
だからこそ、ユーリは思うのだ。走ってばかりの幼馴染みを立ち止まらせるのは自分の役目だ。彼を守るのは自分だけだ、と。


「上司思いの部下もったじゃねえか」

「そうだね…。あと、素直じゃない親友も」

「ははっ、優しいコイビト、だろ?」

「否定はしないけど…なんだか釈然としないな。
それよりも……、」


言葉と共にフレンは急に立ち止まる。不思議に思ってユーリも歩みを止め、振り返ってフレンの姿を確認しようとした。
だが、何故かさっきまですぐ後ろにいた金色が見当たらない。代わりに、視界に飛び込んできたのは澄んだ碧だった。


「ありがとう、ユーリ」


言い終わると同時に触れた唇への温もり。柔らかな感触は少しの体温をユーリに分けて、すぐに離れた。
それが何なのか確かめるまでもない。
目の前で真っ赤な顔をして俯くフレンを見れば、一目瞭然なのだから。
ああ、なんて可愛らしい!


「たくっ…、癒すつもりが癒されちまったな」

「ユーリ…?」

「なんでもねえ。それより、ほら」


ひらひらと手を揺らす。それが何を示してるのか分からなかいほど、フレンは初でもなかったが、素直にその手をとれるほど子供でもなかった。
だが、心地良い温かさを知っている身体が、その甘い誘惑に逆らえる訳もない。自然と体の動くままにフレンは差し延べられていた手を強く握りしめた。
ユーリは眩しそうに目を細める。


「3日間、エスコートよろしくね?」

「任せとけ!」


徐々に高くなる太陽の光を身体一杯に浴びながら、二人は笑いあった。早朝に比べて、随分と寒さも和らいでいる。
でも、きっと温かいのは、身体だけじゃない。

きゅっ、と互いの手を握れば、何よりも安らぎ、どんなものよりも優しい温もりが、二人の掌に伝わった。










○オマケ○

門番をしていた騎士に、ソディアは簡素な手紙を受け取った。
何となく嫌な予感がしつつも、その手紙を開く。そういえば今朝の演習に、団長の姿を見なかったな、とぼんやり考える。
しかし、それも束の間で終わった。代わりに、手紙を破かんばかりの勢いで握りしめる。
確かに、自分は団長に休ませるようにと言った。できれば纏まった休暇をとるように言った。
言ったのだが……、


「誘拐しろとは頼んでいないッ!!」


ソディアの怒声に門番の騎士は驚いて、持っていた槍を落とした。
その日、般若の顔をした彼女はフレンとその誘拐犯を探しに行こうとしたところで、たまたま通りかかった天然殿下に止められたのはまた別の話。








○後書き○

ひゃ〜…無駄に長い…!書き直したりしたのに、グダグダなのは何故!?
リク内容が『任務で忙しいフレンを休憩(デート)させるユーリ』でしたが…沿えてますか…?
何はともあれ、この小説は空色うさぎの碧斗さまに捧げます♪返品や書き直しはいくらでもしますので!
碧斗さま、相互&リクエストありがとうございました〜!!