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それでも告げていいですか




ジェイド*ガイ




身体を重ねた後、何気ない言葉を交わすこの時間がジェイドは好きだった。例えば赤毛の子供のことだったり、その日の夕食のことだったりと、本当に些細で取留めのない話ばかりだけど、ジェイドにとっては何よりも大切に思えた。
きっと愛しい相手だからこそ思えることだろう。気持ちを言葉にはしていないが、きっと伝わっている筈だと、ジェイドはそう信じている。
でなければ、男の自分に易々と身体を差し出す訳がない。

その日も変わらず身体を繋いだ後、服も着ないままベッドの中で他愛のない会話を繰り広げていた。


「それでさ、その時ルークが…」


嬉しそうに語る横顔を見ていると、自然と頬が緩んだ。
ベッドヘッドに寄り掛かりながら、金色の髪を梳くように撫でるとくすぐったそうに身を捩る。


「貴方は本当にルークの話が多いですねぇ」

「なんだよ、悪いか?」

「いえいえ。ただ、ちょっと妬けるなと思いまして」


好きな相手が他の誰かの話を夢中でしていれば誰でもそう思うだろう。それはジェイドにだって例外なく、ルークの話ばかりするガイに多少の寂しさのようなものを覚えていた。
この歳になって恥ずかしいものだと自嘲するが、決して不愉快な感じではない。
ジェイドの言葉を聞いたガイは驚いたように目を見開く。ああ、やっぱりらしくなかったかと、内心で考える。きっとガイは口ごもって、気まずそうにするだろう。
さてどんな言い訳をしようかと思案していると、予想に反してガイはいつもの快活な笑い声をあげた。
そして、何言ってるんだよジェイド、と楽しそうに言葉を続ける。


「ただのセフレにそんなこと言っても何もでないぜ?」


ジェイドは一瞬、自分の耳を疑った。ころころと笑いながら告げられた言葉。おかしそうに、当たり前のように彼の唇が紡いだ音。
自分との関係を何の疑いもなくセフレだと言い切ったガイを、静かに見やる。
見上げてくる双眸は晴れた日の空のようで、相変わらず綺麗だった。控え目な紅をひいたような唇だっていつもと同じく美しい。
ただ、その喉から発された言葉だけは妙に異質なものとしてジェイドの耳に届いた。


「……いつからそう思っていたのですか?」

「なにが?」

「私があなたと夜を共にするのは…性欲処理のためだと」


顎に手をあてて考える素振りをするガイを、ジェイドは黙って見つめていた。困ったような態度をとってはいるが、既にガイは答えをだしている。確かな根拠もないがそう確信した。
いつ何時から、彼はその行為の意味に結論をだしていたのだろうか。何の臆面もなく、一瞬の戸惑いもなく言い切ってしまえるほど、軽い関係だったのだろうか。
少なくとも、ジェイドにとっては違っていた。最初は純粋に興味の方が強かったかもしれないが、今、ガイに向けているのは確かに好意である。
誰彼構わず抱いたりするほど飢えてもいないし、考えなしでもない。その辺りのけじめはついている。
だからこそ、ジェイドはガイにそう思われているというのが衝撃的だったし、何より悲しかった。


「いつから、とかじゃないさ」


ふと、ぽつりと漏らされた言葉にジェイドは振り返る。眉を寄せて苦笑を浮かべた彼は、ともすれば泣き出してしまいそうに見えた。
だけど、その瞳から雫が零れ落ちることはなく、変わりに疲れたような溜息が吐き出される。


「いつだって何もなかった」

「ガイ…」

「この関係に最初からあったのは、ただの性欲処理のためだったろ?」


初めて身体を重ねた日、己の言動を振り返る。深く考えもせずに言ったことは、ずっとガイを捕えていた。そして、そこから下がることも進むこともできずに、終いには自分から求めることさえ諦めた。
流されるままでいれば、きっと傷付くことはないだろうから。
それがガイのだした答えであり、今の今まで気付かなかった自分にジェイドは知らず拳を握る。いつものような軽口なんて出てくる訳もなかった。


「……アンタは何も言ってくれないじゃないか…」


責めるでもなく、だけど許すでもない柔らかな口調をもってぽつりと呟かれた言葉。
それを最後にガイは口を閉ざし、ジェイドとは反対の方を向いて寝入る態勢になってしまった。しかし、すっかり冴えた頭には眠気なんて襲ってくる筈もなく、ただ瞼を閉じるだけに終わる。
何も言わずとも分かっているだろうと思っていた。それぐらい伝わっているだろうと思い込んでいた。
なんて勝手な考えだろう。自分から手を差し延べておいて、あとは知らぬ振りをしておいて。それは勘違いだ、誤解なんだ、なんて言える訳がない。
それでも、今あるこの気持ちは嘘じゃない。今更伝えようなんてしないから、受け止めてくれなんて言わないから、せめて。


「…あなたが好きです」


届いてほしいと願う愚かな自分を、許してほしかった。










○後書き○

なんだかジェイ→ガイ風味ですが、ジェイ→←ガイです。ジェイドは最初はガイに対して興味しかなかったのですが、いつしかそれが愛情になっていくんですよ。
それをガイも何となくは気付いているのですが、初めに『お互いの性欲処理として』と言われていたから、ジェイドに何も言えないんです。
そんなすれ違いなジェイガイが大好きvv(殴)

というか、補足いれなきゃ小説の内容が分からないなんて!




さぁ、キスから始めようか






恋を自覚するというのは、覚悟を決めるに等しい。たった一人の人間を思い、愛していくのは並大抵の気持ちじゃ出来ないのだから。
それに、その人物の全てを受け止めるだけの器がなければ進展しない。少し先の未来にもその人といたいと願うのならば、相手の本質を見つめていくことが必要だ。
そうして時が経つにつれ、それは段々と恋から愛へと形を変えていく。
そう、だからこれは愛を確かめる行為なのだと。愛し合う者たちにとっては至極、当たり前のことなのだと、フレンは必死に自分に言い聞かせた。


「…あのなぁ、」

「な、に…」

「そんなに固くなられっとやりにくいんだけど」


想いを打ち明け、互いが互いを好きだったと判明し、晴れて恋人となった。やはりというか、ユーリはフレンを傍から見ても分かるぐらい大切にし、またフレンもユーリのことを心から大事に思っていた。
そんなひたむきな愛を育てていき、いつもお互いの温もりを感じられることに喜びを抱くようになって、早一ヶ月が経とうとしていた。
忙しいのもあってか、それまで抱き締めたりキスしたりすることはあっても、その先へは未だ進んでいない。初なフレンとは違い、人並み以上には経験のあるユーリにとって、この一ヶ月というのは理性との闘いであった。
愛しい人がいるというのに己の手で慰めるのは虚しいし、ましてや他人を抱くなどは以ての外だ。だが、立派な成人男性が沸き起こる性欲を抑えるのも至難の技であって。
だからといって、フレンの意思を無視して無理矢理抱くのは気が引けた。むしろあってはならない。

そんなこんなで、ループのようにぐるぐると終わりのない思考の波に捕らわれて、とうとう我慢の限界が訪れたのが昨日。お前を抱きたい、と告白したのが3時間前で、それの意味が分からずにいたフレンに気落ちしながらも説明したのが2時間前。
やっと意味を理解したフレンが顔を真っ赤にして慌てふためいていたのが1時間前。そして、思い詰めた表情で意を決したように「よろしくお願いします」などと、色気も素っ気もない誘い文句をフレンから言われたのが30分前だ。
そのフレンは現在、ユーリの下で石のように固まっている。
アイスブルーの瞳は極度の緊張の為に涙で滲み、薄く開いた唇は僅かに震えていた。ユーリのこととなると、フレンはどんなことでも全力でぶつかってきた。
今回も例外はなく、散々悩んだものの返事はたったの一言で済ましている。正面から向き合い、視線を逸らさずに告げていた時、怯えに身体がわなないていたのを、フレンは知らない。
本当は怖いくせに、とユーリは内心で毒付く。現に今だって、掴んだ手首から絡めた足から僅かな振動が伝わってくる。
ユーリが大袈裟なほど溜息をつくと、押し倒したフレンの肩がビクッと跳ね上がった。それを見届けた後、ユーリはゆっくりとフレンの上から退く。温もりが離れることに多少の名残惜しさが残るが仕方ない。
ユーリが退いたことにより、動きの自由になったフレンは上体を起こした。驚きと困惑に瞠目する瞳には、確かな安堵が混じっている。
それを見て、ユーリは罰が悪そうに頭を掻いた。


「無理させて悪かった」

「えっ…?」

「お前が怖がってんの知りながら、セックスなんてできねぇよ」

「……っ」

「もうしないから安心し……ッてぇ!?」


言い終わらないうちに強く髪を引かれ、ユーリの首が曲がる。自然と引っ張られる方向に身体を向けることになった。
部屋にはユーリとフレンしかいないのだから、元凶が他の人物であるわけがない。身体を向き直そうとしたら、ぶつかるかの勢いでフレンが思い切り抱き付いてきた。あまりの衝撃に今度は背中が曲がり、ユーリは軽く呻き声を上げた。
流石のユーリも文句を言おうと口を開いたが、それは失敗に終わる。否、出来なかったのだ。

己の薄い唇に、柔らかく少しカサついた何かが触れ、そして離れた。それがフレンの唇だと理解する頃には、ユーリの目の前には泣きそうに顔を歪めたフレンの姿があった。


「おまっ、フレン」

「やめないで」

「なに言って…」

「お願いだから…、やめないでくれ」


そう言ってユーリに縋り付くフレンの身体はやはり強張っている。波のように揺れる瞳からも恐怖の色は消えていない。
それなのにフレンはユーリにやめないでほしいと切に願う。ユーリは意味が分からず、ただ目の前で不安気にしているフレンを見つめる。
ユーリの言いたいことが分かったのか、フレンはくしゃりと顔を綻ばせた。


「ほんとは怖いよ。だけど…」






「それ以上にユーリがほしいんだ」


言い終わるや否や、胸元へと顔を埋めてしまったフレンに、ユーリは破顔する。
なんだ、結局気持ちは同じなのだ。
それが分かれば、もう諦めることなどない。


「やめろって言っても聞かねぇからな」


その応えは笑顔で返される。ユーリは久し振りに見たそれに胸が熱くなるのをリアルに感じた。再び、ベッドへとフレンを倒せば細い身体はシーツの海へと沈む。
先程より心身が弛緩したのか、ゆっくりとユーリの背へとフレンの腕が回る。


「愛してる」

「…僕も」


それが合図のように二人は目を閉じ、唇を重ねあった。







さぁ、キスから始めようか




それは過ちに似ていた





室内に通されて、まず目に入ったのはなだれを起こしかけている箱や袋の山だった。
色とりどりの包装を施されたそれらは机の上に無造作に置かれ、殺風景な部屋の中でその一角だけが浮彫りになって見える。
部屋の主にしては珍しいその有様に軽く目を見張っていると、困ったような笑い声が聞こえた。


「見苦しくてすまない。片付けてる暇がなかったんだ」

「いや、どうってことねぇけどよ……これ、どうしたんだ?」


山積みなったものを指差して問えば、眉尻をさげてフレンはユーリを見つめた。それが捨てられた子犬のようだと内心で思いつつ、ユーリは目前に広がる包みの一つを手に取った。
僅かに漂う甘い香りからして、中身は菓子類であることが分かる。そこでユーリは一瞬、顔を顰めた。普段なら好ましい匂いな筈なのに、何か違和感を感じた。


「僕宛てに送られてきたものなんだ。贈り物の類はいつもだったらソディアが管理してくれてたんだが、彼女は今、城を離れてるからね」


言いながら真似るようにフレンも手近にあった袋を手に取った。普段身に着けている鎧は脱いでいる為に、戦う者にしては繊細な手が露になっている。
細かに動く白い指先をユーリはぼんやりと眺めていた。だが、フレンが包みを開こうとした瞬間、思い出したように直ぐさまそれを取り上げる。そして、まるで汚い物でも扱うかのように机に放り投げた。
突如起こしたユーリの行動に、フレンは最初はただ驚いていたが、次第に己の私物を無造作に扱われたことに眉を寄せる。


「急になにするんだユーリ」

「差出人の控はあるのか?」

「えっ…?」

「だから、これ持ってきた奴の名前とかメモってあんのかって聞いてんだよ」


暗に問われた内容に戸惑ったが、理解すると同時に緩慢な動作で頷いた。それを見たユーリが、贈り物を運ぶのに近くに置いてあった大きな袋を手に取る。
何をするのかとフレンは訝し気にユーリを見つめていた。そして、山を成している机に向かうユーリの背中をただ眺めていた瞳が、瞬く間に瞠若の色を拵える。
用意した袋の中にそこにあった全てのプレゼントを、乱暴な手付きで収め始めたからだ。
突拍子もないユーリの行いにフレンはただ呆然としていた。何の脈絡もないユーリの言動はしょっちゅう見てきたが、そこには必ずユーリなりの理由なり意図なりがあった。だから、これにも何か訳があることは想像できるが、如何せ不可解すぎる。
フレンの視線に気付いたのか、ユーリは振り返った。既に机上に置かれた荷の全ては、大きく膨らんだ袋の中にある。


「他にはないのか?」

「ない、けど……」


それをどうするつもりなんだ、と言おうとした所でユーリは窓に向かい走り出した。小脇には先程の袋が当たり前のように抱えられている。


「ユーリっ!!」


勢いよく窓の外へと飛び出したユーリを止める間もなかった。ガサガサと木から木へと跳び移る音を耳に、フレンは慌てて窓枠へと駆け寄る。
だが、もうそこにユーリの姿はない。それに小さく舌打ちをするなり、周囲を確認してから、フレンも窓枠へと足をかけた。
こんな所が騎士達に見つかれば、団長としての威厳がなくなってしまう。只でさえ、未だ成り上がりのくせにと囁かれることも少なくないのだ。
だけど、それ以上にユーリが何をしようとしているのか確かめなければいけない気がした。
フレンは一度大きく深呼吸をしてから、太い枝へと飛んでいった。












地面へと降りてすぐの城壁を左に曲がると、目的の人物はすぐに見つかった。
フレンは乱れた呼吸を整えながら、ユーリが足早に進んで行く先を見て驚愕する。赤い炎を揺らめかせるそれは、城の不用物を焼き払う焼却炉があるのだ。ここまでくれば、この後の展開は嫌でも分かる。
流石にこれは止めなければと思い、フレンは駆け寄るが、僅かにユーリの方が早かった。


「待て、ユーリ!!」


フレンの叫び声と同時に、ユーリは持っていた袋を焼却炉へと放り込んだ。
一瞬にして炎に包まれたそれは、もくもくと黒い煙を噴きながら、嫌な臭を発する。ツンと鼻をつく刺激臭にフレンは思わず手で口元を覆った。
対してユーリは無感動にそれを眺めていた。だが、瞳は険しいもので、赤黒く燃えていく贈り物たちを睨み付けるように見つめている。

一体全体、彼は何がしたいのだろうか。
自分の私物、ましてや好意で贈られた物を燃やされたのだ。意味などないとは言わせない。本来なら怒るのも当然のことなのだから。


「ユーリ、なんで…」

「嫌な臭をだしやがる…」

「は…?」

「流石はそれなりに強烈なもんを使ってるってことか」


ぱちぱちと燃え盛るそれを見つめていた瞳がゆっくりと向き直り、フレンを捕らえる。
向けられた視線があまりにも厳しいもので、フレンは肩を竦めた。炎の赤が、ユーリの顔を照らしている。


「優秀な副官に感謝するんだな。じゃなきゃお前、今頃ここにはいないぜ」


紡がれた言葉の真意が読めない。何故いきなり今ここにいない人の話題が上がるのか。
フレンの心情を察したのか、ユーリは眉を寄せる。はっきりしない態度は彼にしては珍しいな、などとフレンは思った。


「毒薬が入ってる」


ただ一言告げられたそれに、フレンは目を見開く。
今、言われたことな筈なのに、頭の中にはまるで入っていかない。


「それって…」

「お前を狙ってたんだろうな。まぁ、全部が全部って訳じゃないだろうが、用心するに超したことはない」


誰かが何を思ってのことかは到底知りえないが、お人好しのフレンが贈り物の類を無下にする訳がないと予想してのこと。つまり、善意ではなく、確かな悪意を担った進物が、フレンのもとに届けられていたのだ。
そして、ユーリはそれを見切っていた。杞憂ではなく、真実だということは、漂う臭気で分かる。
まだ騎士に成りたての頃、演習の一環として嗅いだことがあった。それも同じように、鼻を刺すような臭を放っていた。

人の良心に付け込むようなやり方が許せない。だが、何よりも気がつかなかった自分がフレンは情けなかった。
自分の身もろくに守れない己の不甲斐なさを悔やむと同時に、じわじわと哀しみが広がっていく。
こうしてユーリは誰かを守るのだ。自分がどんなに悪く思われようとも、それを厭わないで。
だけど、誰かを守る為に自分の手を汚すというのは、決して辛くない筈がない。
ユーリがそんな思いをしなくてもいいように、一人で罪を背負わなくてもいいように、夕日照らす空の下で約束したのに。剣を交えたあの日、心に誓ったのに。


「ごめん、ごめんね……ユーリ、ごめ…っ」

「バーカ、された側のお前がなんで謝ってんだよ」


おどけた調子で笑うユーリに、フレンはとうとう目も合わせることが出来なくなった。
ユーリが言うように、あの贈り物の中の全てが毒物だった訳じゃない。親切心だったり、敬いだったり、あるいは敬愛だったり。
それらの気持ちも一緒に火の中へと放り込む時、ユーリは何を思ったのだろう。そう考えれば考えるほど、やるせない想いが募っていく。
嘆きも泣きもしない姿は、強く気高い。その様が切ないのだと言ったら、彼はなんて言うのだろうか。

じわりと滲んでいく視界が黒に包まれ、背中に温もりが触れた。ユーリの腕の中にいるのだと気付いた時にはもう、焼却炉の中身は燃え尽きていた。


「オレはお前を守りたいだけなんだよ」


一言ぽつりと零された言葉は、フレンの心に鋭く突き刺さり、そして溶けていった。


お前を守る為なのなら、
(非情にも、非道にもなれる)

例えそれでお前が泣いたとしても




それは過ちに似ていた




ifの話5






ifの話5
〜マイソロ2にフレンがいたら〜








エステル「ユーリ!ちょっと本を運ぶのを手伝ってくれます?」

ユーリ「いいぜ、エステル」

アニー「ユーリさん、薬草の採取に同行しててくれませんか?」

ユーリ「アニー一人じゃ危ねぇしな」

リリス「あっ、ユーリさん!瓶の蓋が固くて開かないんですよー」

ユーリ「貸してみろ、リリス」









フレン「………」

ゼロス「どーしたのさ〜フレンちゃん、そんな顔しちゃってー」

フレン「そんな顔…?」

ゼロス「ありゃりゃ、自覚なしだったのね…。すんごく寂しそうな顔してた」

フレン「そうなんだ…」

ゼロス「ユーリのことでしょ?」

フレン「なっ…!ユーリは関係ないよ!」

ゼロス「そんな風に否定されてもね〜。顔、真っ赤よ?」

フレン「〜〜っ、でも、寂しくなんか……」

ゼロス「じゃあ俺様の勘違いか〜、さっきからユーリのこと見ては溜息ついてたのになぁ」

フレン「う、そ…」

ゼロス「あちゃー、それも無意識だったのね。んで、どーしたのよ?ユーリと何があったのさ?」

フレン「………」

ゼロス「……ユーリに構ってもらえなくて寂しいんでしょ?」

フレン「…っ、そんなこと…」

ゼロス「フレンちゃんは嘘が下手だねぇ……まっ、そこが可愛いんだけど、さ」

フレン「冗談はやめてくれ、ゼロス」

ゼロス「冗談じゃないってばよ〜!俺様、こう見えてけっこうマジなんだから」

フレン「本気なら男の僕に可愛いだなんて言わないよ」

ゼロス「分っかんないかな〜」

フレン「…なにが…?」

ゼロス「マジで好きだから、マジで可愛いと思うし、マジで抱き締めたくなるんだよ」

フレン「ななな、なに…っ!!」

ゼロス「んー、フレンちゃんは思った通り抱き心地がいいね〜。なんかイイ匂いもするし」

フレン「ちょ、離して、ゼロス!」

ゼロス「やーだ。ユーリが構ってくんなくて寂しかったんでしょ?」

フレン「だから、それは違うって……も、離して…」

ゼロス「だったら俺様のものになっちゃいなよ」

フレン「なに、いって…」

ゼロス「俺様なら、フレンちゃんに寂しい思いさせないよ?」

フレン「ゼロ、ス……顔が近い、から…」

ゼロス「俺のものになりなよ、フレン」

フレン「……っ、ゼロ…ス…」





ユーリ「牙狼撃ッ!!」

ゼロス「あでっ!!」

フレン「わぁっ!!」

ユーリ「てめぇ…なにフレン抱き締めてんだよ!」

ゼロス「なにって、フレンちゃんが寂しそうにしてたから俺様の腕の中で慰めてあげたんだけど」

ユーリ「お前の腕の中なんかにいるほうが可哀相だっての。いいからフレン離せ」

ゼロス「はいはい…。フレンちゃん、急に悪かったね」

フレン「えっ、と…ゼロスは僕を慰めてくれたんだよね?」

ゼロス「ん〜、まぁそんな感じかな」

フレン「やり方はちょっと驚いたけど、でも……ありがとう…」

ゼロス「…っ、やっぱフレンちゃんさいこ〜!!」

ユーリ「うわっ!離れろアホ巫女!!」

フレン「わっ…二人共…苦し、い…!」








エステル「ユーリとフレンは仲良しですね!」

アニー「本当に。フレンさん、あんなに素敵な人に愛されてて羨ましいです」

リリス「あーあ。いつか私もユーリさんみたいな人ゲットしたいな〜」










ユーリとフレンは公認の仲なんですよ。フレンは皆のワンコ(笑)
てか、ゼロスの口調が難しい…!




気がつけば、僕は、溺れていた


ジェイド*ガイ





厳しい旅の道中、ジェイドと床を共にすることは何度もあった。別段、互いに好きだの何だのと愛の言葉を囁きあった訳でもないし、いずれ時とともに終わるだろう曖昧な関係。それが良いか悪いかだなんて言わずとも知れているが、モラルを気にするには今更すぎたし、そこまで良い子ちゃんぶる気もなかった。
結果、ずるずると身体だけの付き合いが続いている。
たぶん、やめてくれと言えばジェイドは直ぐにでも身を引くだろう。これは憶測でも予想でもない。
現に、今だって嫌がって見せたらあっさりとジェイドはベッドから離れて行ったのだから。


「……ずいぶん潔いんだな」

「おや?続行してほしかったのですか?」

「…別に」


自ら拒んどいて、おかしな話だが、もう少し渋ってくれてもいいんじゃないかと思う。こんなのただの我が儘だと十分、分かっている。
そう、頭では理解しているんだ。嫌になるほどに。
だけど、身体は素直なもので、胸に走る痛みは消せそうにない。

立てた膝に顔を埋め腕で囲ってしまえば、もう何も見えなくなる。目も閉じれば一切の光は入らない。
こうして、ずっと何も映せない暗闇の世界にいれたらどんなに楽だったろう。ジェイドの何をも知ることなく、見ることがなければどんなに幸せだったろうか。
中途半端に見え隠れするから翻弄される。強いくせに、時々弱くなる背中が見えるから気になってしまう。
そうして、彼から目が離せなくなり、その視線の先を追ってしまうようになってから、もう幾日もたっていた。同じ目線で、同じ景色を見て、同じものを共有したいと思ってしまうこの心のなんと愚かなことか。
でも、願うのは止められず、かと言って求めることもできない。この感情が何と言うのかは、もうとっくに知っている。
知ってしまったんだ、ジェイド。他の誰でもない、アンタのおかげで。


「何を不安になっているのですか?」


不安?そんなもの幾らでもあるよ。
これ以上先に進めない、踏み込めない。だけど触れたいし、触れられたいと思うこの気持ちの矛盾。
自分だけを見て欲しいだなんて、そんな大それたことは言わない。でも、アンタの中で少しでも特別でいたいと思うのは、大切な存在でありたいと望んでしまうのは、どうやっても消し切れない気持ちなんだ。
ジェイドは鋭いから、いつかきっとこの想いに気付いてしまうだろう。その時まで、離れていくその瞬間まで、隣りにいられればいいから。
それだけで十分だから、


「……あなたは、いつになったら気付くのでしょうかね」


溜息混じりに落とされた言葉の真意はまだ分からないけど、それが自分の思い描いていたものであればいい。
嗚呼、なんて勝手な気持ちなんだろう。


そうしてアンタに溺れていくのも、たぶん悪くない。












何も言わずにスルーしてやって下さい…。
久し振りの文章がこんなんですみません!でも、ジェイガイ(?)書けて満足です!




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