この小さな液晶の向こうで、いったいきみはどんな顔をしているんだろう。
携帯電話を弄っていたら、バイブが短く鳴ってメールの受信を知らせた。
それはサイトを介したメールで差出人を見ずとも、誰からかはすぐに解る。
サイトを開くと、つい先ほど投稿したタイムラインにコメントがあった。
我知らず、口許が弛んでしまう。
知り合ったのはたった三ヶ月前。
会ったのは、片手の指程度。
けれどいともたやすく、わたしは恋の入り口に落ちた。
いつからかなんて解らない。ただ気付いたら、彼が好きだった。
叶うとは思えないのに、ただ彼に構ってもらえただけで心がふわふわと浮かれてしまう。
「水族館、行けるかな」
ぽそりと呟いた。
彼のことを何とも思っていなかった時、タイムラインにマンボウの習性を書き綴ってみたことがある。
彼は反応してくれて、わたしはマンボウが見たくて、彼に遊び半分で水族館に連れていってくれと頼んだ。
彼は行こうねと答えてくれたが、わたしは社交辞令だと思っていたから特に何も思わなかった。
誰かに構ってもらえただけで、安心したから。
けれど数時間後には、彼はマンボウのいる水族館を見つけてきて、わたしは本当に感動したし、驚いた。
もしかしたら、あのときにわたしは落ちてしまったのかもしれない。
彼の純粋な友達としての行為に。
ばかだと思った。
つくづくわたしはばかだと。
届きもしないのにすきになっても仕方ない。
けれど、彼からの言葉をもらえただけでこのうえなく心が弾んだ。
会えば、彼の大きな手に触れたくてたまらなくなった。
この衝動を恋と呼ばずに、なんと名前をつければよいのか、わたしには解らなかった。
すきだと告げる気は一つもない。
人間として誇れるものもなく、女として魅せられるようなものもないわたしが彼をいかに好いたとしても、迷惑でしかない。
だから告げないし、時おり言葉を交わせたらそれでいい。
何もいらない。それだけで幸せだ。
次はいつ会えるだろう。
いつ、会えなくなるのだろう。
心はふわふわと浮かれたまま、わたしはそっと小さく息をついた。