フィアとシストのSS第七弾です!
今回はちょっとシリアス?
フィア嬢を泣かせたかっただけ。
"何でもこーい!"な方は追記からどうぞー!
あ、フィア視点です。
ログイン |
主に創作について語ります。 バトンをやったり、 親馬鹿トークを繰り広げたりします。 苦手な方は、どうぞ戻ってやってくださいませ! (私のサイト「Pure Rain Drop」) → http://id35.fm-p.jp/198/guardian727/
フィアとシストのSS第七弾です!
今回はちょっとシリアス?
フィア嬢を泣かせたかっただけ。
"何でもこーい!"な方は追記からどうぞー!
あ、フィア視点です。
Side フィア
―― 任務内容を聞いた時から、恐れていた。
こうなってしまうことを。
茫然として、目の前に広がる光景を、見つめる。
目の前に広がっているのは、冷たい氷の彫像。
生きたままに氷づけにされたその魔獣は、俺が最も苦手とする、憎む生き物で。
本来、凍りつくはずのない炎の使い手である魔獣の爪にこびりついた血。
それは、俺のパートナーのモノで。
嗚呼、俺は……
―― 俺ハ、何ヲシシテイル……?
自らの、両手を見た。
冷たい。冷気を発している、両手。
人の体温ではない。
「あぁ……あぁぁ……っ!」
耳に飛び込む悲鳴に近い声が自分のそれだと気付くのに、少しかかった。
悲鳴を上げながら、俺は自分の手を押さえつける。
ほとばしる魔力は、止まらなくて。
このままでは、国を滅ぼしてしまうかもしれない。
何を馬鹿な、と笑うやつもいるかもしれないが、俺にはそれができてしまう。
―― 天使の力を持っているのだから。
こうなってしまった原因は、今回俺たちが向かうことになった任務。
内容、火竜の討伐。
俺が最も苦手とする魔獣の討伐。シストもルカも止めようとした。
でも、俺が意地を通した。
だから、こんなことになった……
俺とシストは、竜の討伐に向かった。
2人で、いつものように連携して、竜を追い詰めてた。
それなのに。
一瞬。
ほんの一瞬、竜が吐きだした炎に恐怖心が煽られた。
足が震え、吐き気が襲う。
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ!!
炎は怖い。すべてを焼き尽くす赤色が怖い。
怯えて、視界が一瞬暗くなった。
これじゃいけない。そう思って剣を握りなおせば。
「フィア!」
不意に名前を呼ばれて、振り返るのと同時に。
シストに、突き飛ばされて。
振り向きざまに見えたのは、竜の爪を受けるシストで。
―― 嗚呼、シストもこんな気持ちだったのかもしれない。
彼のパートナーが死んだ、というときと同じ構図。
目の前に立っているシストを、守るすべを俺は知らない。
どうしよう、どうしたらいい。
コマ送りで見えたシストの背中を、突き飛ばしたかった。
竜の首を切り裂いてその腕の勢いを止めたかった。
でも、スローモーションに見えるのは、気のせいで。
本当は、ほんの一瞬の出来事で。
―― 止めることなんて、できるはずない。
「シストォッ!!」
思い切り、その名を叫ぶ。
シストの身体が、竜の逞しい腕で弾き飛ばされるのを、見た。
その爪についた、血も。
その瞬間、俺の中で何かが切れた。
思い切り竜を睨みつけた俺の瞳は、どれだけ冷たかっただろう?
反射的にアルのブレスレッドを外していた。
これだけは、壊したくない。
俺の膨大な魔力を押さえつけてくれる、唯一の強い強い抑制機。
それを外した俺に、自分の魔力を止める術は……ない。
ぱきん、とブレスレッド以外の抑制機が砕け散る音が聞こえた。
暴走した、んだと思う。
"思う"といったのは、それが俺の中に確信としてないからだ。
暴走するという感覚がどんなものなのかもわからないし、むろん止め方もわからない。
だけど、気が付いたら全魔力を使って、目の前の竜を倒そうとしていた。
炎を扱う竜を氷漬けにするなんて、きいたことない。
だけど、俺の魔力はそれができてしまう。
竜はおそらくもう死んだだろう。
でも、怒りが、悲しみが収まらなくて、俺は魔力を放ち続けた。
どうしよう。どうしよう。
そう思うのに、自分の魔力は止まらなくて。
涙で滲んだ視界で、俺は魔力を放ち続ける。
俺の所為で、俺の所為でシストは……!
「おい、フィアもういいから」
不意に聞こえた声と、俺の手をつかむ、誰かの手。
声は、手は、酷く、覚えがあるもので。
「止めろ、フィア」
今度は少しきつい声で窘められた。
俺の手をつかむその手も、冷たく凍っていくのに。
俺の手をつかむ、紫の髪の少年は、静かに俺を見つめていた。
「シス……」
「よかった……意識はあるんだな?」
そういって笑っているのは、まぎれもなく俺のパートナーで。
「シス、ト……」
力が、抜けた。
魔力がしぼむようにおさまっていく。
シストは溜息を一つつくと、"ちょっとごめんな"と言って、
俺の騎士服のポケットにしまったのブレスレッドを強引に引っ張り出して、俺の右腕にはめた。
すぅ、っと体があったかくなっていく。
「……落ち着いたか?」
そう尋ねられて初めて、はっとした。
何で、なんで。
「シスト……お前……」
大丈夫か。無事なのか。どうして俺を止めて……
訊ねるより先に、シストの腹のあたりを染める鮮血に気付いて、目を見開いた。
「あ……ぁ」
声が出ない、どうしよう。
謝りたい。大丈夫かと尋ねたい。
だけど、俺の口から零れるのは声にならない声と、呼吸ばかり。
その場にへたり込めば、慌てるシスト。
そんなに急に座ったら、傷に響くだろう、馬鹿者。
「お、おい、落ち着けって、大丈夫だから」
何故か、俺の方がパニックになっている。情けない。
頬を伝いおちていく冷たい雫。
―― 怖かった。
失う恐怖は、俺も知っている。
怖い。大切な人間ほど、目の前からいなくなるのは、恐怖だ。
涙を止めることができない俺を見て、シストは困ったように笑った。
―― 生きてんだろ、泣くな。 ――
「そのまま泣いたら涙凍るぞ」
冗談めかして言うシスト。
俺の目元を指先で拭って、笑う。
「お前無駄に睫毛長いんだから、凍ったら折れるんじゃないか?」
さっきから、俺を笑わせようとしてるのか。
それとも、怒らせて、いつもの調子に戻そうとしてくれてるのか。
シストのそんな優しさが、少し痛かった。
泣くなと言われたって。
怖かったんだ。
お前が、死んだかと思った。
怖かった。憎かった。お前を、"殺した"竜が。
そうおもったら。
自分を抑えることが、できなくなっていて。
「ちょっと痛かったけど、ちゃんと急所はずらしたよ……さすがに死にたくはないからな」
そういって、シストは俺を励ますみたいに笑った。
そして、冷たくなった俺の手を握る。
「まったく……自分の魔力暴走させてどうすんだよ。手ェこんなに冷たくして」
ぶつくさ言いながら、俺の手を握るシストの手は、暖かい。
と、何かに気付いたようにシストが手を離した。
「っと……悪い!」
傷を抑えてたからだろう。少し、血が付いた。
「大丈夫、だ……ごめん、情けないところ見せて」
一つ息を吸ってから、立ち上がる。
そして、シストを見下ろして、言った。
「帰ろう。傷を、診てもらわないと」
出来るだけそっけなく、どうってことないように言おうと思ったのに、
情けないことにまだ声は震えていて。
「ああ、そうだな」
シストは小さく笑って、俺の手を取って立ち上がった。
「……そんなに怖かったか?」
歩く途中、シストが俺に尋ねた。
俺が"もう大丈夫だから手を離してくれ"というと、ようやく離してくれた手。
あの時ついたシストの血が、うっすら残っている。
それを見て、俺は溜息をついた。
「答えは、お前が一番よく知っているはずだが」
「ははっまぁ、そうだな……心配かけて、ごめん」
違う。
なんでお前が謝るんだよ。
「……馬鹿」
「うん、ごめん」
「謝るなって言ってるんだ。馬鹿」
「はいはい」
軽い調子で返事をするシストを恨みがましく睨んでやった。
涼しい顔をするシスト。
「……もう、危ないことはしないでくれ。俺は丈夫だから、多少の怪我は……」
「そういう問題じゃねぇの。相棒に傷を負わせんのは嫌だ」
"平気だ"と言おうとしたのにあっさり返されてしまって。
苦笑する。
でもこれが、俺の相棒だからな……
そう思いながら見上げた空はもうすでに夕焼け色に染まっていた。
― 優しい掌 Fin ―
性 別 | 女性 |
年 齢 | 29 |
誕生日 | 7月27日 |
地 域 | 静岡県 |
系 統 | おとなしめ系 |
職 業 | サービス |
血液型 | AB型 |