久々にフィアとシストのSSです。
何故か此処二人で絡ませるとシストが意味ありげな発言をします。
特にそういうつもりはなかったんだけどな(ぇ)
シリアスからのほのぼのです、多分。
よくよく考えたらフィアとシストもよく似た境遇だったな、
なんて思い返しつつ…
ともあれ、追記からどうぞー!
ログイン |
主に創作について語ります。 バトンをやったり、 親馬鹿トークを繰り広げたりします。 苦手な方は、どうぞ戻ってやってくださいませ! (私のサイト「Pure Rain Drop」) → http://id35.fm-p.jp/198/guardian727/
久々にフィアとシストのSSです。
何故か此処二人で絡ませるとシストが意味ありげな発言をします。
特にそういうつもりはなかったんだけどな(ぇ)
シリアスからのほのぼのです、多分。
よくよく考えたらフィアとシストもよく似た境遇だったな、
なんて思い返しつつ…
ともあれ、追記からどうぞー!
静かに風が吹き抜けていく中庭。
その中心にある大きな木の根元に、亜麻色の髪の騎士は座っていた。
その手の中にあるのは一冊の本。
任務も訓練もない時間にこうして本を読むのは、
彼……フィアにとってリラックスできる時間であった。
ぱら、ぱら、とページをめくる音。
周りで聞こえるのは訓練をしているノトやアークの騎士たちの声。
親しげに笑い合う彼らの声に時折フィアは視線を上げる。
何も、不快の感情を宿したものではない。
ただ、微笑ましげに……或いは少し、羨望の色を滲ませて。
「何読んでるんだ?フィア」
と、不意に彼に声をかけてきた人物が一人。
聞きなれた声。フィアはそちらを見ることもせずに答える。
「小さい頃に読んだ本だ。この前部屋を掃除していたら出てきてな。
……シスト、お前はどうして此処にいる?」
「図書館の整理、終わったからさ。
暇で、散歩しに来たらお前が此処にいた」
フィアに声をかけてきたのは、彼のパートナーであるシスト。
彼のとなりに座って、フィアが開いている本を覗き込む。
そして、小さく笑った。
「これ、子供の頃に読む本か?」
「ふふ、対象年齢はもうすこし上だったかもな。
初めて読んだときは内容が半分くらいしか理解できなかった。
母さんが読んでいたものを借りて読んだだけだから」
「お母さんが?」
シストは少し驚いた顔をする。
フィアの口から"母さん"という言葉が出たことに驚いたのだった。
滅多に家族の話をしないフィアだから。
フィアはそっとその本の表紙をなでて、微笑んだ。
「母さんも、本を読むのが好きな人だった。
俺にもたくさん本を読んでくれたよ。
……本当の母娘(おやこ)じゃないのに、俺のことを本当に大切にしてくれた」
母を思い出してか、少し切なげな声色。
シストは少し眉を下げる。
やはりあまり、話したくないことなのだろうか。亡くなった家族のことは。
シストがそう思っていたとき。
フィアは"あ"と声を漏らした。
シストの方を見て、済まなそうな顔をする。
「……ごめん、シスト」
「え?」
「お前も、同じような境遇だったよな……」
本当の親を知らないという点ではお前も一緒なのに、
こんな発言をしてごめん、とフィアは言う。
シストは少し目を丸くしたあと、小さく首を振った。
「……あぁ。
でも俺もお前と同じでずっと父さんと母さんを本当の親だと思ってたから、
全然なんも思わねぇよ。
殊更、お前と違って本当の親の声さえも覚えちゃいないし」
シストは苦笑気味に言う。
ずっと、自分はそう思っていた。
エリシア夫妻の息子なのだと、何の疑いもなしに。
フィアはそっか、と声を漏らして微笑んだ。
そして、本を手に持ったまま座り方を変える。
膝をかかえて座ると、独り言のように言った。
「俺は、どうなんだろう。
ずっと、父さんたちのことを本当の親だと思っていたのかな。
……心のどこかで、自分は普通の人間じゃないって気づいてたんじゃないか。
最近、そう思うんだ」
フィアの声は少し憂いを帯びている。
シストはそんなフィアを少し心配そうに見た。
泣いているのではないかと、そう思って。
しかし、フィアは泣いていなかった。
ただ、昔を懐かしむような、微かな切なさをともしているサファイアの瞳。
「気づくような、きっかけがあったのか?」
シストはフィアにそう訊ねる。
シストの場合、自分が"本当の子供ではない"ことに気づいたきっかけは、
街の大人たちの噂話だった。
フィアはどうだったのだろうか、と思ったのである。
彼の問いかけに、フィアは少し悩むような顔をする。
そして、小さく息を吐くと、頷いた。
「……そうだな。本当はずっとわかってた。
何が、ってわけじゃない……少しずつ、色んな破片が合わさって、
俺は薄々感付いていたんだと思う」
「え?」
シストは彼の返答に怪訝そうな顔をする。
あまりに漠然とした返答だった。
フィアは遠くを見るような顔をした。
短い亜麻色の髪が揺れる。
そのままフィアは静かな声で言った。
「……俺の村の中にも、俺に近づこうとしない子がいた。
一部は親に言われて近づかなかった子のようだったが……
一部は、明らかに意志を持って俺を避けてた。
近づいたらいけない、って本能的にわかっているみたいに」
シストはフィアの言葉をただ静かに聞いていた。
フィアは普段、自分の過去を、幼少期を語ろうとしない。
その彼……否、彼女が自分のことを語っているのだ。
静かに、聞いてやりたい。そう思って。
フィアはシストに語るというよりは独りごちるように言葉を紡いでいた。
「……きっと、本能的に察していたんだろう。
俺が、普通の人間ではないことを。
何も、特別なことはしたことなかったけど……
子供というのは、いつでも純粋で、"真実"を見ることができる。
だから、気づいていたんだろう。
俺が、化物だってことにな」
その言葉に、シストは目を見開いた。
"化物"
その言葉が、引っかかって。
「化物って……そんな言い方ねぇだろ!」
シストは鋭い声をあげた。
フィアは少々驚いたようにパートナーを見る。
シストのアメジストの瞳には怒りの色が点っていた。
怒りの矛先はきっと、過去に……
フィアを"化物"と思っていた人間に向いている。
急に声を荒げたためか、シストは若干決まり悪そうな顔をしたが、
直ぐにぼそり、と呟くように言った。
「化物なんかじゃ、ねぇよ……
フィアは、天使なんだろ。天使は、化物じゃねぇ」
きっぱりと、シストは言い切る。
フィアはシストの反応を見てふっと笑う。
「……そう言ってくれるような仲間に会えたことに、感謝せざるを得ない。
もしも、あのまま俺があの村に居たとしたら……
いずれ、自分が持つこの魔力に食い殺されていたかもしれないからな」
フィアが持つのは、普通の人間の魔力ではない。
強すぎる魔力。それ故に苦しんでいた時期があったことも、聞いている。
一歩間違えば暴走し、辺りにあるものに影響を及ぼす魔力。
破壊力的に言えば悪魔の魔力も変わらないのだ、と言って苦笑していた。
「……こうして、傍で支えてくれる仲間がいるから、
俺は"俺"でいられるんだと思ってる」
フィアにしては、珍しい言動だった。
シストが紡ぐ言葉を探していると、フィアは冗談めかして、言った。
「……って、この本を読んでいたらそんなことを考えていた」
あくまでも本の所為だ、というように。
きっと、今の言葉は単なる照れ隠し。
多少本に影響されたのも事実ではあろうが、
おそらくずっと心に秘めていた"本心"がほとばしったのだろう。
シストはそう思って小さく笑う。
「……そうかよ。だったら、ずっと傍にいてやらねぇとな」
「は?」
「お前が、"お前"で居られるようにだよ」
ぽんぽん、とフィアの頭を撫でるシスト。
そしてにかっと笑うと、"これからも頼むぜ、相棒"と言って見せた。
フィアはそれをしばし驚いたように見つめていたが、
やがて明るい笑みを向け"あぁ"と短く答えたのだった。
―― 自分が"自分"でいられること ――
(それはきっと簡単なようで難しいこと。
俺のような魔力を持つ人間ならば、特に)
(お前が"化物"になることを恐れているというのなら
俺たちがそうならないように必ず支えてやるからさ…)
性 別 | 女性 |
年 齢 | 29 |
誕生日 | 7月27日 |
地 域 | 静岡県 |
系 統 | おとなしめ系 |
職 業 | サービス |
血液型 | AB型 |