お医者様コンビでほのぼのめ…
こういう話もたまにやりたくなりますね←
意固地になっちゃうメンゲレさんを書きたかった(ぇ)
*attention*
・お医者様コンビSS
・今回はほのぼの
・メンゲレさんは頑張り屋さんだからこう言う我侭アリかな、って
・ジェイドは大概メンゲレさんを溺愛してます
・シリアスの反動か妙に甘くなっちゃった
・ジェイドはこう言うときもちょっと意地悪しちゃいます
・相変わらずの妄想クオリティ
・ナハトさん、本当にすみませんでした!
以上がOKという方は追記からどうぞー!
ペンの音だけが響く、静かな研究室。
黒髪の少年……メンゲレは小さな欠伸を噛み殺した。
先程からやっていた書類に埋めた文字が小さく揺らいでいる。
自身の仕事ではなく、彼の敬愛する統率官の書類なのだが、
如何せん多忙な彼の仕事の手伝いをしたくて、彼は此処に留まっていた。
時計に目をやれば、既に深夜を示している。
いつの間にやらその時間か、とメンゲレは苦笑する。
ジェイドはそんな彼の様子を見て小さく笑った。
「眠いですよね、メンゲレ」
「!い、いえ……平気ですよ。あ、これ終わりました」
うまく隠したつもりでいたのだが、欠伸をしていたのをジェイドは見ていたらしい。
それがなんとなく気恥ずかしくて、
メンゲレはジェイドに完成した書類を手渡して誤魔化す。
ジェイドはそれを受け取って穏やかに微笑んだ。
「ありがとうございます、メンゲレ。
もう部屋に戻って大丈夫ですよ」
ジェイドはそう言ってメンゲレの頭を撫でた。
メンゲレは彼の机の上に積んだままの書類に目をやって、首を傾げる。
「ジェイドさんは……?」
「まだやらなければ行けない仕事があるので、もう暫く起きていますよ」
にこり、と笑いながらジェイドは歩いて机に戻ろうとする。
彼の"もう少し"は間違いなく徹夜だろう。
メンゲレは"それなら……"と彼に声をかける。
「僕もまだ、お手伝いしますよ」
「いえ、大丈夫ですよ。
もう遅いですし……早く帰って休んだほうがいいですよ」
ジェイドはやんわりと彼の申し出を断って、自分の仕事に戻ろうとした。
あくまでも、一人で大丈夫だと言いたいらしい。
「ジェイドさんはまだやるのでしょう?」
メンゲレはジェイドの白衣を軽く掴んでいる。
まだ自分も手伝うから、と言わんばかりの彼の表情を見て、
ジェイドは微笑みつつゆっくりと首を振った。
「眠そうな貴方に仕事を頼むほど僕は酷ではありませんよ?」
「平気ですよ。僕も、子供じゃないのですから……」
彼の言葉に、ジェイドは可笑しそうに笑った。
ぽんぽん、と子供にするように彼の頭を撫でながら言う。
「僕からしてみれば十分子供ですよ。
気持ちは嬉しいですが、そんなに意固地になっていなくていいですから」
確かに、ジェイドとメンゲレとは七歳の差がある。
そうでなくとも大人びているジェイドにとっては、
メンゲレも子供のようなものなのだろう。
帰りなさい、とジェイドは穏やかな笑みを浮かべて彼に言う。
メンゲレはむぅ、と頬を膨らませた。
意固地というわけではないです、と小さく反論するメンゲレ。
ジェイドはそんな彼を見てくすくすと笑った。
「やれやれ……親を手伝おうと必死になる子供のようです」
「子供扱いしないでくださいよ……」
「ほら、そう言う反応もそれっぽいのです」
ジェイドはそう言って、相変わらずの笑みを浮かべる。
どんな言葉を使っても、彼の前では無力。
綺麗に受け流されてしまう。
暫し反撃を続けていたメンゲレだがやがてそれも諦めた。
むくれたままで黙り込んでしまった彼を見て、
ジェイドは相変わらずに笑いながら小さく首を傾げる。
「メンゲレ?ごめんなさい、からかいすぎましたかね……?」
ちょこり、と首を傾げるジェイドを一瞥すると、
メンゲレはぷい、とそっぽを向いてしまった。
「もう知りません!」
「……おやおや」
完全に拗ねてしまったらしく、彼は振り向こうとしない。
ジェイドが何度名前を呼んでも、メンゲレは反応しない。
"ジェイドさんが頷いてくださるまで此処を動きませんからね"と小さく宣言。
我侭に違いはないのだが、それがジェイドのための我侭なのだから彼らしい。
―― そう言う態度が子供っぽいのですが……
ジェイドは密かに、そう思う。
しかし、そんな彼の様子が何だか可愛い。
愛しい彼が自分のために意地をはる。
挙句、そのさまは酷く愛らしい……
それ故に少々からかいが過ぎてしまったという自覚はあるのだけれど。
ジェイドは彼を暫し見つめていたが、やがて小さく息を吐いた。
「やれやれ……触らぬ天使に祟りなし、ですかね?」
す、と立ち上がるとジェイドはそのまま部屋を出ていこうとした。
彼からそっぽを向いていたメンゲレはその気配に振り向く。
ジェイドは躊躇いなしに部屋を出ていこうとしていた。
「僕は図書館に資料を取りに行ってきます。
そこに居たいならずっとそうしていなさいな」
距離をおこうとするように、出ていこうとするジェイド。
その言葉は妙にそっけない。
その証拠にメンゲレには目もくれず、そのまま部屋を出ていこうとしている。
思わずメンゲレは彼の後ろ姿に視線を投げた。
メンゲレは別に、この部屋に居たいのではない。
ただ、彼の傍に居たいだけ。
彼の手伝いをして、彼の力になりたいだけ。
彼がいない部屋に閉じこもったところでなんの意味もないではないか。
そう思っていたら、反射的にジェイドの服を掴んでいた。
驚いた顔で、ジェイドは振り返る。
「あ……」
「……全く、可愛い人だ」
ジェイドは思わず吹き出すと、笑みを浮かべながら言った。
「僕にはまだまだ勝てそうもありませんね……?」
ジェイドはそう言ってメンゲレを抱きしめる。
決まり悪そうに視線をそらすメンゲレの顔を上向かせて微笑んだ。
「まだ僕から目を逸らすのですか……?」
少しトーンを下げたその声に思わず体がはねる。
ジェイドは小さく笑って、彼の唇を塞ぐ。
軽く舌を絡ませあって、小さなリップ音とともにそれを開放すると、
ジェイドは優しく、少し妖艶な笑みを浮かべて言った。
「……仕事を手伝う、と意固地にいうなら……
僕も仕事するのをやめて、貴方が眠るまでずっとこうしていますが……?」
「っ!そ、れじゃあ……ジェイドさんが明日大変に……」
「ふふ、大丈夫ですよ。そこまでたくさんあるわけではないですし……
かえって……そのほうが、いいですかねぇ」
ジェイドはそんなことを言いながらメンゲレを抱き上げてベッドに運ぶ。
ぼす、と白いシーツに沈むメンゲレの体。
ジェイドもその隣に体を滑り込ませて、彼の体をしっかりと抱き寄せる。
メンゲレの黒髪が柔らかく広がり、ジェイドは愛しげにそれを漉いた。
柔らかく包み込む彼のぬくもりに、メンゲレは目を閉じる。
眠気に抗えない自分はやはり子供かもしれないな、とメンゲレは思う。
―― 揺らいでいく意識の中で聞こえたのは、彼の優しい"おやすみ"という声。
ジェイドは静かな寝息を立て始める愛しい彼に柔らかくキスを落としてみせた。
―― 貴方が愛しいからこそ… ――
(好きな子ほど虐めたくなる、なんて。子供なのは僕の方ですかね?)
(彼の笑と言葉にはきっと一生勝てないのでしょうね)
2013-4-17 20:21