何故か唐突に書きたくなったカナリスさんとノアールのSSです。
ノアールとカナリスさんの黒髪ペア…何となくやってみたくて←
主に似て、面白いと思った人間には近づく人です、ノアは(ぇ)
*attention*
・カナリスさんとノアールさんのSS
・面白そうだなと思って、絡ませていただきました←
・彼はあれでもたまに笑います。
・黒髪美人さん同士で話して欲しかった(おい)
・少々短めです
・勝手にやらかしてすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞー!
静かな風が吹き抜けるある日の午後。
カナリスはいつものように部屋で書類を片付けていた。
部屋はとても静かで、ペンが紙の上を走る音だけが響く。
諜報任務以外にもこういう仕事も少なくない。
と、その時。
不意に後ろに現れる何者かの気配。
だいぶ、その気配には慣れてきていた。
はじめこそその気配に気づかずに驚かされたが、
最近では慣れてきてすぐに察知出来るようになっていた。
おそらくいつも自分に声をかけにくる堕天使……
フォルだろうと思ってほうっておいたのだが……
ふと、カナリスは手を止めた。
―― 違う。
反射的にそう感じた。
気配から瞬時に読み取った感情。
それは、殺気にも似た警戒心。
明らかに、"彼"のものではなかった。
カナリスは背後に感じた気配に反射的に拳銃を抜いていた。
それを相手に突きつけると同時、相手も同じようにカナリスに銃を突きつけていた。
思わず金の瞳を見開く。
「!貴方は……?」
そこに立っていたのはいつも此処に姿を見せる亜麻色の髪の堕天使ではなかった。
漆黒の髪に漆黒の瞳。
身に付ける服までも闇に溶けそうな黒色一色。
鋭い漆黒の瞳がカナリスを見据える。
陽の光を反射して相手と彼自身の黒い銃がきらり、と光った。
静かで低い声で彼はカナリスに訊ねる。
「……貴様がヴィルヘルム・カナリスか」
低い声は、彼に確認するように問いかける。
突きつけられた銃は下ろされない。
引き金にかけられた指は軽く曲げられており、
下手な返事をすればすぐにでも引き金を引ける、と言わんばかり。
その表情はただただ冷たい。
カナリスは金色の瞳を目の前の黒衣の彼に向けて、静かに答えた。
「……そうですが」
貴方は?という怪訝そうな視線をカナリスも投げ返す。
相手は即座に撃とうとしている様子ではないが、
やはり理由もわからぬままに武器を突きつけられるのはいい気がしない。
少し警戒と威嚇との意味を込めて拳銃を握る力を強くしてみせる。
目の前の黒衣の男はまっすぐにカナリスを見つめたまま、静かに息を吐いた。
そして、静かな声で名乗る。
「申し遅れたな……俺はノアール」
「ノアール……」
その名には、聞き覚えがあった。
最近良く自分の部屋に遊びに来る"彼"が時折零していた名前だ。
カナリスはノアールから視線を外さぬままに訊ねた。
「フォルさんに、何か関係が?」
「……やはり我が主と面識があったか」
カナリスの問には答えず、ノアールは小さく息を吐く。
握っていた銃を腰のホルダーに戻す彼を見て、カナリスも銃を下ろした。
一体何故唐突に武器を突きつけてきたのだろうか。
「フォルさんのことに関して僕に何か用事があったのですか?」
カナリスはノアールと名乗った黒衣の男に重ねて訊ねる。
また答えなければもう反応しなくていいか、と思ったが……
ノアールはその言葉に顔をあげて、淡々と言い放った。
「否、特に用事というわけではない……
我が主が関わっているという人間がどんなものか、と思ってな。
……もし万が一にも貴様が主に害を為すような人間であれば、
この場で処分するつもりだったんだ」
物騒な話だが、彼がフォルのことを"主"と呼んでいる辺り、
彼らは主従の関係なのだろう。
従者が主を、主が関わる人間を警戒するのは至極最もだな、と思った。
「僕は彼に何をするつもりもありませんよ」
寧ろ、彼から自分に近づいてきただけだ。
そっけなくカナリスがそう答えると、ノアールは"だろうな"とだけ言う。
「お前の様子を見ていればなんとなくだが、わかる。
それに以前主はおっしゃっていた……
彼はほかの騎士とは違う気がするんだ、と」
自分の知らぬところで交友を広げていく自分の主。
彼はそれを心配しているらしい、ということをカナリスは彼の表情から読み取る。
もっとも、彼はかなり無表情。
読み取る表情もなにもあったものではないが。
ノアールはホルダーに戻した拳銃をそっと撫でつつ、小さく息を吐いた。
「……貴様は何故主や俺のことをこの騎士団の騎士に話さないんだ?」
カナリスはその問いかけに顔を上げる。
そして、ふっと小さく笑った。
「全く同じことを言うんですね。貴方とフォルさんは」
「何……?」
ノアールは少し驚いた顔をしてカナリスを見た。
漆黒の瞳が瞬きをする。
この部屋に現れてからずっと冷たいままだった表情が変わっていた。
ごくごく僅かではあるけれど……
カナリスはそんな彼を見つめたまま以前彼に言ったのと同じことを口にする。
「貴方やフォルさんに僕が直接被害を被ったわけではありませんからね……」
訴え出る必要は皆無です、とカナリスは言う。
ノアールはその返答を聞いて……くっと笑みを漏らした。
「ふ……主の言葉通り、面白い奴だな」
カナリスは少し驚いた顔をした。
少し見た限り、そして気配を感じた限り、彼は笑いそうもない。
そんな彼の笑みは思うより柔らかくて……
「……なんだ。何を驚いた顔をしている」
「あ、いえ……」
カナリスは小さく首を振った。
ノアールはそれを見て"そうか?"と首を傾げると、彼に背を向けた。
「俺も時々お前に会いに来ることにしようか……
主が心配でもあるし、何より……俺自身も、お前に興味がある」
"じゃあな"と言ってノアールは空間移動術で姿を消した。
先刻まで彼がいた空間に目をやりつつ、
変わった人たちに好かれたものだ、とカナリスは苦笑する。
さてもう一度仕事に戻るか、と彼は書類に視線を戻した。
―― Poker face ――
(思わずそれが崩れるくらい彼奴は今まで見た人間と違っていた
面白い。それが純粋な感想で…?)
2013-4-14 23:10