フィアアルメイン中編の第七話です。
ようやくフィアたちと合流。
どうにか十話以内で終わりそうでホッとしています。
かなり急展開ではありますが…
中編で終わらせるためにも、許してやってください…;;
父親の愛は偉大だな、
でもそれが間違った方向に進んだな、というのを感じていただけたら…幸いです。
では、追記からどうぞー!
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主に創作について語ります。 バトンをやったり、 親馬鹿トークを繰り広げたりします。 苦手な方は、どうぞ戻ってやってくださいませ! (私のサイト「Pure Rain Drop」) → http://id35.fm-p.jp/198/guardian727/
フィアアルメイン中編の第七話です。
ようやくフィアたちと合流。
どうにか十話以内で終わりそうでホッとしています。
かなり急展開ではありますが…
中編で終わらせるためにも、許してやってください…;;
父親の愛は偉大だな、
でもそれが間違った方向に進んだな、というのを感じていただけたら…幸いです。
では、追記からどうぞー!
たどり着いた屋敷。
フィアとジェイドはその前に立っていた銀髪の男性と合流した。
クオンは屋敷に一度視線を投げて、言う。
「……アルの魔力、感じるか」
「えぇ……確かに、中から」
「弱っている様子ではありませんが……近くに不穏な魔力も感じます。急ぎましょう」
珍しく先頭切ってかけだしたのは、緑髪の魔術医。
長い白衣が、緑髪が風に靡く。
余程、部下のことが心配なのだろう。
クオンとフィアも彼を慌てて追いかけた。
三人は広い屋敷を駆け抜ける。
次第に強くなるアルの魔力に三人の足も次第に速まっていく。
ある一室の傍まで来るとジェイドは足を止めた。
中から、声が聞こえてくる。
それは低い男の声と、よく知った男にしては高い声。
三人は顔を見合わせる。
目で合図を交わし、三人はドアを開けた。
「アル!」
部屋に飛び込み、白髪の彼の名を呼ぶ。
白髪の彼……アルは確かに部屋に立っていた。
ひとりの、男と白いベッドの傍に。
ベッドに横たわっているのは色の白い少女。
アル同様に白髪の少女。
そして、アルの傍にたっていた男性は、異様な雰囲気を放っている。
その足元は軽く、すけていて……
―― 人間ではない。
それは、一瞬で見抜くことができた。
挙句彼はアルの首に向かって手を伸ばしかけていて……
「アルに触れるなッ!」
そう言うが早いか、フィアは剣を抜いていた。
そのまま男に斬りかかる。
驚いたクオンとジェイドが止める間もなく、フィアは男に切りかかって……
***
Side アル
「待って!ダメだよフィア!」
僕は、フィアを止めた。
剣を振り上げたフィアは今にも彼に切りかかりそうだったから。
その攻撃が彼に当たるか否かは別として……
僕の言葉にフィアは止まる。
フィアは驚いた顔をして僕の方を見た。
何故、そう言いたげなサファイアの瞳が僕を見つめる。
僕は、二人の前にたって両手を広げた。
彼らを庇うように。
「アル、お前何をして……」
「この人たちは、悪い人じゃないの……!
僕に術をかけたのも、僕を此処に連れてきたのも、
全部全部……ジュリ様を助けたかったから……!」
そう、彼と話しているあいだに全部思い出した。
僕に魔術をかけて此処に連れてきたのは、僕が昔診断したことがある男性。
末期の病で、助けることができなかった……患者さん。
僕が忘れていたのも無理はない。
僕がまだ、この騎士団の医療部隊の人間として生き始めたばかりの頃、
診察し、最期を看取った人だから……
この屋敷の周辺では昔からある病が流行っていた。
この地域に生息する魔獣の一種がもたらす病だとか
この地域にしか存在しない植物の毒の所為だとか……
色々と言われているけれど、詳しいことはわからない。
その病に、彼も犯された。
僕らは精一杯治療したけれど、原因が分からぬ以上できることは少なくて……
結局、彼はなくなった。
幼い、ジュリ様をのこして。
そのあとジュリ様は親戚の家に引き取られたらしいけれど、
そこで不当な扱いを受けていたらしい。
挙句、病になって……
見ていられなくなった彼の魂は彼女をその家から連れ出し、
この屋敷まで連れてくるという離れ業をしてのけた。
……それもこれも、生前彼が強い魔力を持つ魔術師だったからだろう。
あとは父親の愛情。
その思いの強さが、彼に力を与えた。
そして、彼がとった道……
それは、人並み以上に癒しの間力を持つ僕を呼ぶこと。
しかし、僕はディアロ城騎士団に所属している騎士。
持ち場……基、城を長期間はなれるわけにはいかない。
それも、助からないとわかった人間の傍にずっと付き続けることは……きっと許されない。
挙句"死人"である彼が僕を正当に城から連れ出すことは出来なかっただろう。
それ故に、誘拐に近い形で僕をここに連れてきた。
僕は、彼を見つめていう。
「申し訳ありません。ジュリ様の病は……僕にはもう、治せません。
診察していて、わかってしまった……
もう、手の施しようがないのです。
人並み外れた癒しの力を有する僕でも……」
彼は小さく息を吐きだして"そうか"と呟いただけだった。
おそらく、彼もわかっていたんだろう。
もう、彼女が助からないということを。
それでも僕を連れてきたのはきっと……
「ジュリ様が、僕に懐いていたから……ですよね」
僕が彼の診察をしていた頃、彼女は僕に良く懐いていた。
父親が死んでも寂しくないと言っていたのは僕が傍にいたからだって。
……だから、せめて"最期"は、僕が傍にいられるように。
彼女が寂しくないように。
そのために僕を操って此処に連れてきた。
そして、きっと彼としては……
「あわよくば、僕もこの土地の風土病にかかれば……
そう、思っていたんでしょう?」
僕の言葉にフィアとジェイド様、クオン様が驚いた顔をする。
そして、僕の目の前の彼は顔を伏せた。
事実、なのだろう。
もし僕が死ねば、彼女……ジュリ様も、一人にならずに済む。
これは直感だけど僕は多分、病気にはならない。
この土地に長く住んだ人間でないと、影響は受けないんだろう。
もしもこの土地に少しでもいた人間全てが病に罹るなら、
今頃国中でその病が蔓延していることだろう。
だから、ジュリ様には何もしてあげられない。
其れが酷く歯がゆいけれど……
「アル君……」
不意に聞こえた声に僕は振り返る。
そこには、ふらふらしながらも立っている彼女の姿。
「ジュリ様……」
「私、平気だよ……パパのところに、行くだけだもん」
嬉しそうに彼女は笑う。
ジュリ様は"パパ"の方を見て、穏やかに笑った。
「パパ、ありがとう……私、怖くないよ。
パパともママとも、一緒にいられるもんね」
僕の方に歩み寄ってくると、そのまま僕に倒れ掛かる。
「ありがとう、アル君……パパのお願い、聞いてくれて……」
「……ごめんなさい」
僕が言えるのは、それだけ。
ごめんなさい。
貴方に何もすることができなくて。
せっかく僕を呼んでくれた彼の願いに応えられなくて。
彼女の体を支えたまま、僕は目を閉じる。
ごめんね。僕は泣き虫だから。
つ、と伝い落ちた涙があの子の服に落ちて雫を作った。
重く、冷たくなっていく体。
それを感じるのは一体何度目だろう。
でも、こんなにも穏やかな気持ちで誰かの命の終わりを看取るのは、
今まで医療部隊の騎士として生きてきた中で初めてかもしれない。
いつの間にか、彼の姿も消えていた。
きっとジュリ様を連れて"いって"しまったのだろう。
僕は冷たくなった彼女の体をベッドに横たえた。
あとからちゃんとした病院に連絡して、
彼女の両親と同じ墓に入れてもらえばいいだろう。
僕は彼女の頬に一度軽く唇を寄せて、言った。
「……どうぞ、次の世では幸せに……」
Fairy of healing ― 妖精が連れ出された理由 ―
(それは優しい父親の愛
少し間違った方向に進んでしまったけれどそれは確かに愛だった)