ナハトさんへの企画小説「A champion of justice」の別バージョン。
要するに…フォルスタです。
ナハトさんにGOサインいただいたので、かいちゃいました←
*attention*
・フォルスタSS
・サイトにある「A champion of justice」の別バージョン
・堕天使がおとなしく見てるはずないな、って。
・自分の趣味を詰め込みました
・相変わらずのグダグダクオリティ
・白と黒の対比って美しいよね!
・ナハトさん、本当にすみませんでした。でも楽しかったです←
以上がOKという方は追記からどうぞー!
続く、続く、ダンスパーティ。
純白のドレスが揺れる、揺れる。
スターリンは思わず息を吐いた。
無論なれるはずのないこのような格好にも、
慣れない女としてのダンスにも疲れてきていて……
フィアはそんなスターリンを気遣いつつ、ダンスを続ける。
「少し休むか、スターリン?」
「いや、平気……」
平気だ、と彼がそう答えようとしたその刹那。
不意に会場に響いたのは、ガラスが砕け散る音。
幸い、人のいないところのステンドグラスが砕けたようで、
怪我人はいないようだが……
「な、なんだ?」
ざわめく、会場。
―― 敵か?魔獣か?
そう思い、騎士二人の表情が険しくなる。
外でも騎士が護衛についているはず。それなのに……
と、フィアとスターリンの前に、誰かが立った。
黒いタキシード。
短い、フィアによく似た色合いの髪。
その顔は、仮面舞踏会で付けるような仮面で隠されていて、
表情を読み解くことはできない。
招待客含め、その場に居合わせた人間は皆、その人物に目を奪われた。
スターリンは思わず呟く。
「か、仮面……?」
招待客に仮面をつけたものなどいない。
フィアはキッと表情を険しくして、剣に手をかける。
サファイアの瞳が不意に現れた仮面の男に向けられた。
「貴様、何者だ……!」
「安心してくれて構わないよ。
用事があるのは、一人だけだから。
パーティを台無しにするつもりはないんだ」
に、と仮面の下で笑みを浮かべたらしい彼が示した"一人"とは。
「うわ!?」
フィアの隣にいたスターリン。
仮面の男は彼を軽々と抱き上げる。
普段ならばこのような隙は晒さないだろうが、
今の彼は普段の格好ではない。
それが災いして、武器を抜くタイミングを逃したらしい。
きっちりとスターリンを姫抱きしたその人物は、満足そうに笑った。
「本当は正々堂々、この場に参加させてもらいたかったんだけどね」
"それは無理だから"と、笑いながら言う。
白いドレス姿のスターリンを抱き上げたその瞬間、
仮面の男の背に広がる、大きな黒い翼。
驚きの声が周りで上がる。
無論、一番驚いているのはスターリンで。
「しっかりつかまってないと、落っこちるよ?」
抱き上げたスターリンに囁く、男にしては少々高い声。
落っこちる、とは……
これから起きるであろう事態を予測して、スターリンは目を見開いた。
「離せ……っ」
「残念。こうゆっくりしてる時間はなさそうだからね。
ちょっと、このお嬢さんをお借りしていくよ?」
じゃあね、とその場にいた皆に言って、男は大きな翼を羽ばたかせる。
ぶわっと風が巻き起こり、思わず皆目を閉じた。
「今のうち、かな」
スターリンには聞こえた。
楽しそうに笑う、男の声。
その刹那、ふわりと体が浮く感覚。
「な……っ」
「しっかりつかまっててよ?落っこちちゃう」
くすくす、と笑う男。
言われずとも、しがみつかざるを得なくて……
スターリンは自分を抱き上げている"謎の人物"にしっかりと抱きついた。
それを合図にしたように、より一層強く羽ばたいて……
スターリンを連れた仮面の男は窓から外へと、飛び立った。
パーティ会場に残された客たちはどうやら今の光景を
パフォーマンスの一環と勘違いしているようで盛り上がっているが、
主催者サイドのフィアは、そうはいかない。
「くそ……何が、目的でスターリンを……」
"借りていく"というその言葉を思い出しながら、
床に残る黒い羽を拾い上げて、きつく握った。
***
―― こちらは、城の外。
相変わらずに空を浮遊する、仮面の男。
スターリンも気が気ではない。
高いところはそもそも好まない。
「っ!降ろせ……っ」
「今は無理だよ。空飛んでるんだもの。
怖いなら目をつぶってて。
大丈夫、君を落としたりはしないから」
ね?と優しく囁く声に、安心するのは何故だろう。
仮面の下の表情が穏やかなものであることは、容易に推測がつく。
そして、仮面の男はスターリンを抱いたままに城の傍の森に着地した。
「っ!下ろせっ!何が目的なのだよ!?」
"見知らぬ"男に抱き上げられているという不安感と、
不意に連れ去られたということに対する戸惑い、
そして羞恥からスターリンは怒鳴る。
くすくす、と笑った彼は小さく首をかしげた。
「何が目的って……君が目的に決まってるじゃないか」
「は……?」
「仮面取らなきゃわかんない?……僕だよ、書記長様?」
スターリンを抱いたまま、彼はつけていた仮面を外す。
外された仮面の下にあったのは、
悪戯っぽく細められる、サファイアブルーの瞳。
スターリンはその顔を見て、目を見開いた。
「な、フォル……!?なん、で……」
「なんで、って……
君が僕以外の誰かと踊るのが嫌だったからに決まってるでしょ。
いくら実の妹でも、それは許せなくてね」
そういう、堕天使。
ゆらゆら、と指先でつまんだ仮面を揺らすフォルをスターリンは見つめる。
確かに、声は聞き覚えがあると思った。
黒い翼を見たときにもしかしたら、とも思った。
だけど、まさかまさか、彼があの場に姿を現すとは思っていなくて。
だって、フォルは封じられた"はず"の存在。
本来、人間の前に姿をあらわしてはいけないのだ。
しかも、よりによってフィアの……実の妹の前に姿を現すなんて。
大胆、どころのさわぎじゃない。
未だ驚いた顔をしているスターリンを地面にたたせながら、フォルは笑う。
「おとなしく待ってろ、って君には言われたけどさ……
聞いてないよ?そんな格好して、挙句フィアと踊るなんて」
"普通の護衛だと思ってたのに"と恨みがましそうに言う、フォル。
スターリンは顔を顰めて、彼に反論した。
「俺だってしたくてしているわけじゃないのだよ。
これは、ルカが……」
直前にルカから聞かされた、任務内容。
しかし、スターリンは口を噤む。
下手なことを言うと、目の前の堕天使は彼に手を出しかねない。
しかしフォルは不服そうに口を尖らせただけだった。
「ふーん、あの騎士様が、ね……フィアと組めって?」
「あ、あぁ……」
あっそ、とフォルは言って鼻を鳴らす。
"まぁ、ほかの男とよりはましか"などと呟きつつ、フォルはスターリンを見た。
じ、と見つめるその視線に、スターリンは顔を赤くする。
「な、何だよ!見るな」
「綺麗だな、って思ってさ。白いドレス、似合うね?」
「嬉しくないのだよ!」
「だろうね。でも、本当に可愛いよ?書記長様」
そう言いながら、フォルはスターリンを抱き寄せた。
彼の唇に軽くキスを落として、微笑む。
「元々君は綺麗だからね……
気づかなかった?ほかの男も、君を気にしていたことに」
そう言いながら、フォルはスターリンの長い髪をすく。
アップにした浅緑の髪はさらさらと揺れ、
白いドレスは月明かりを反射して、清らに光る。
フォルはそれを見つめ愛しげに目を細めた。
「ね、書記長様……相手なら、僕が務めるよ」
そう言いながら、フォルはスターリンの前に跪く。
そして、白い手袋をはめたスターリンの手の甲に、キスを落とした。
"いいでしょう?"と囁く堕天使に、スターリンは呆れた顔を見せる。
「……あとで、騒ぎになっても俺は誤魔化しきれないからな」
「わかってる。大丈夫だよ、きっとどうにかなる」
「その自信はどこから……」
「君がほかの誰かとダンスを続けるくらいなら、
僕は見つかってしまったほうがましだと思うんだよね」
くすり、と笑って、フォルは首を傾げる。
「それとも、僕が相手じゃ不満?」
スターリンはそんな彼をまじまじと見つめると、小さく溜息を吐いた。
フォルはそれを見て、嬉しそうな笑みを浮かべ、
スターリンの耳元で、そっと囁く。
―― 君は、僕だけのお姫様でいてくれればいいんだよ?
穏やかに笑うサファイアブルーの瞳が星のように煌めいた。
―― Shall we dance? ――
(俺を攫った仮面の男の正体は見慣れた堕天使。
不覚にも、黒いタキシードと黒い翼が似合っていると思ってしまった)
(白いドレス姿の君はあまりに美しくて。
攫わずにはいられなかったんだ。ごめんね?)
2013-3-15 15:43