珍しいペアで書いてみよう、ということでアルとアネットです。
珍しい、って言ったって本当はこの二人、パートナー的関係なのですがね。
アネットのキャラをつかみなおすためにも、書いてみましたが…
アネットは如何せん、ただの戦闘馬鹿のようです(笑)
アルはすごく頑張り屋さんなので、彼に合わせて戦えますが、
並大抵の子じゃ無理だろうなぁ、なんて思いつつ。
さてさて、そんなお話ですが、OKという方は追記からどうぞー!
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主に創作について語ります。 バトンをやったり、 親馬鹿トークを繰り広げたりします。 苦手な方は、どうぞ戻ってやってくださいませ! (私のサイト「Pure Rain Drop」) → http://id35.fm-p.jp/198/guardian727/
珍しいペアで書いてみよう、ということでアルとアネットです。
珍しい、って言ったって本当はこの二人、パートナー的関係なのですがね。
アネットのキャラをつかみなおすためにも、書いてみましたが…
アネットは如何せん、ただの戦闘馬鹿のようです(笑)
アルはすごく頑張り屋さんなので、彼に合わせて戦えますが、
並大抵の子じゃ無理だろうなぁ、なんて思いつつ。
さてさて、そんなお話ですが、OKという方は追記からどうぞー!
アルはいつになく緊張していた。
幾度も時間を確認しては、身につけたものを確認する。
―― 気を付けて、行ってきなさい。
やや心配そうな、統率官の表情が頭を過る。
親友も不安げに自分を見つめていた。
任務に向かう直前に、此処まで緊張したのは初めてだった。
と、言うのも……
今回の任務は、簡単な任務ではない。
炎豹の騎士との、合同任務。
しかも、弱い魔獣相手ではない。
幾度か共に任務に赴いたことがある彼でも戦ったことのない、
強い魔獣なのだと、アルは聞いていた。
油断すれば、命を落とす。
自分だけでなく、パートナーも。
だから、こんなにも緊張しているのだった。
と、その時。ドアがノックされる。
「アルー!任務行くぞ!」
「あ、はい!」
白衣を整えなおし、アルは部屋を出る。
そこに立っていたのは赤髪の青年。
剣を携えた彼も、いつも以上に引き締まった表情をしている。
「さぁて……行くか!」
「はいっ!」
力強く返事をして、走り出したアネットを追いかける。
アネットは普段よりペースを落としているようだが、
走るのが苦手なアルにとって、アネットについていくのは大変な作業。
しかしアルは、泣き言を言ってはいられないと必死に、ついて行った。
***
たどり着いたのは、森の奥。
滝の音が聞こえる。水辺によく現れるという、巨大な鹿の魔獣なのだという。
「植物食性の魔獣なのに、凶暴なのですか」
準巣に疑問に思ったことをアネットに訊ねれば、苦笑気味な返事が返ってくる。
「鹿っていっても肉食だよ。だから、厄介なんだ」
「あぁ、なるほど……」
見た目が草食獣であれば、襲われはしないだろうと間違いかねない。
やや不安そうな顔になったアルを見て、アネットはにっと笑う。
ぽんぽん、と頭を軽くたたきながら、言った。
「大丈夫だって。俺が守ってやるさ」
「有難うございます。頼もしいです」
にこりとアルは笑みを浮かべた。
静かな、森の奥。
滝が流れ落ちる音だけが、響く。
「これだけなら、穏やかな場所なのに……」
「あぁ、そうだな」
思わずつぶやいたアルの言葉に、アネットは頷く。
「そういう、平穏な場所を守るのが、俺たちの仕事だよな」
確かめるようにつぶやいたアネットの目は、真剣だった。
目の見えない妹が、将来美しい世界を見られるように。
怖いものを見て、"目が見えないままの方がよかった"と思わせないために。
アネットは、戦っている。
と、不意にアネットは剣に手をかけ、表情を険しくした。
「足音が……アル、油断するな。来るぞ」
「はい」
アルも、手に魔力を集める。
その刹那。
草むらが大きく動き、二人に巨大な影が飛び掛かってきた。
「そら、来たっ」
アネットはにっと笑って、剣を振るう。
鹿は唸るような音を立てつつ、巨大な角でアネットの剣を防いだ。
アルはアネットに加勢するように風を吹かせる。
「さんきゅ、アル」
「はい」
アネットがアルに笑みを向ける。
それを見て、補助(サポート)役の存在に気づいたのだろう。
鹿は弱そうなアルに目を向ける。
白い被毛に覆われた身体が、太陽の光を反射して鋭く光る。
アネットは焦った顔をして、アルの方を見る。
「アルっ」
「平気ですよっ!アネットさん、隙を見て斬りかかってくださいっ」
アルはぎりぎりまで魔獣を引き付ける。
アネットは一瞬焦った顔をしたが、すぐに頷く。
アルに駆け寄るのをやめ、隙を窺った。
―― 今だ!
アルはタイミングを図ると、素早く障壁を張る。
強化ガラスの如きそれに直撃し、魔獣は悲鳴を上げた。
凶悪な角がぶつかった衝撃で、アルの表情も歪む。
強い障壁を保つのには、膨大な魔力を消費する。
アネットが後ろから魔獣に斬りかかるのを見た。
しかし……標的は素早く身を躱す。
ちっと、アネットが舌打ちをした。
「やっぱそう簡単に狩らせてはくれねぇかよ……面白い」
にかっと笑うアネットは、赤い瞳に闘志の光を灯している。
魔獣に向ける視線は、いつもの人懐っこいそれとは違う。
討伐の想いだけを灯した、鋭く、残忍な色さえ宿す、光。
アルはその瞳の色もアネットの我を忘れたような戦い方も、
正直あまり好きではなかった。
しかし、今はそうもいっていられない。
と、不意にアネットがアルを呼んだ。
なんでしょう、というように振り向いたアルに、アネットは言う。
「アル、俺今から魔術使う」
「え」
「広範囲に、強いのを放つ……森や、お前自身に被害がいかねぇように、
うまく障壁張ってろ、いいな!」
言うが早いか、アネットは鹿に向き直った。
にやっと、笑う。
アルは慌てて障壁を張った。
その瞬間、巨大な炎が辺り一面を覆う。
炎で悪くなった視界。
アルは必死にアネットの姿を探す。
「アネットさんっ!」
炎の勢いが強すぎて、周りが見えない。
鹿の魔獣も、アネット自身も。
その中で戦うのは、アネットだって大変なはずなのに。
全てを焼き尽くすなんて、簡単なことではないのに。
むちゃくちゃな戦い方だ。
「アネットさんっ!!」
アルはパートナーの名を何度も、呼んだ。
障壁を解除するわけにはいかない。
だから、必死にそれを保ちつつ、叫んだ。
炎の勢いは、弱まらない。
「……っ!もうっ!」
魔獣が強いのだけが問題なのではないと、アルは理解した。
魔獣が強ければ強いほど、それと戦うアネットも本気になる。
本気になった彼が自分に制御をかけられないことも、アルは知っていた。
「無茶しないでくださいよ……!」
どうしたものか、そう思いながら視線を移した先にあるのは……滝。
アルは少し悩んでから、小さく呟いた。
"やるしかない"
「アネットさんの、馬鹿……!
我を忘れて戦って、死んでは意味がないでしょう……!」
少しだけ、障壁の強度をさげる。
熱に襲われ、一瞬息が詰まったが、すぐに持ち直して。
意識を、水に持っていく。
植物を操るアルにとっては、水も近しい存在。
ほんの少しであれば……操ることが出来る。
「せめて、火を弱めるためにでも……!」
水を、燃え盛る炎の方へ、差し向けた。
あっという間に蒸発し、消える水。
しかし、確かに炎の勢いは削がれて……
水蒸気が消えると、アルは彼の姿を探す。
「いた!」
魔獣に剣を突き立てる、アネットの姿が見えた。
炎が消えると、アルは障壁を解除し、アネットに駆け寄る。
「アネットさんっ」
「おぉ、アル。お疲れ」
へらり、と笑うアネットの頬や腕には無数の切り傷と火傷。
切り傷は恐らく、魔獣の角でついたもの。
しかし、火傷はどう考えても……自分の魔術の所為だろう。
アルはキッとアネットを睨んで……
パンッと、鋭い音がした。
腕を振り抜いたアルが、荒い息を吐く。
アネットはきょとんとして、それを見つめていた。
「無茶な戦い方ばっかりしないでくださいッ!」
アルにしては珍しい、怒鳴り声だった。
「僕が、どれだけ心配したかわかりますか!?
貴方が、そういう派手な戦い方を好むのは知っています。
しかし、せめてパートナーには、その意志を伝えてください!
貴方の姿が見えない中、補助も出来ず、
無事を祈ることしかできないなんて……あんまりですッ!」
はぁはぁ、と荒く息を吐いて、アルはアネットを睨み付ける。
アネットはそれを暫し見つめてから……謝った。
「ごめん。ちょっと、焦り過ぎたんだ」
"予想以上に、魔獣が強かったから"
アネットはそう言って、アルの頭に手を置く。
くしゃり、と髪を撫でるのと同時にアルの大きな眼から涙が溢れ出した。
大粒の涙が、ぼろぼろと落ちる。
「アネットさんの……馬鹿」
アルは小さく呟いて……アネットの腕の中に倒れこんだ。
アネットは目を丸くして、叫ぶ。
「あ、おい!アル?アル!」
すぅすぅ、と小さな寝息が聞こえた。
凡そ、精神的な疲労と魔力の過剰消費だろう。
普段自分が扱わない属性のものを操るのは、疲れるのだ。
アネットはすまなそうな顔をしつつ、アルを抱き上げた。
「あとで、アレク様にもジェイド様にも叱られるな、こりゃ……」
パートナー放置でむちゃくちゃな戦い方をしたこと。
アルを酷く心配させて疲れさせたこと。
その両方で、両部隊の部隊長から叱られるであろうことを思い、
アネットは小さく苦笑する。
しかし、それも当然のことだと思った。
反省しなくてはいけないな、とも。
「さんきゅーな、アル」
眠る白髪の医師に、アネットは言う。
柔らかな白髪を撫でて、思った。
―― 大切なこと、思い出させてくれてありがとう。
―― 一人で戦っているんじゃない ――
(二人で連携して戦っていた。心配してくれる相手がいた。
それを忘れていた俺は大馬鹿だな)