最近書いてあげられてなかったシスちゃんのSSです。
エルド絡み、ですがエルドは出てきません(笑)
シストはいつまでもエルドの死を良くも悪くも忘れられずに、
心のどこかでエルのことを考えながら生きていくんだろうな、
なんて思いながら書きました。
グダグダな短時間クオリティですが、OKという方は追記からどうぞ!
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主に創作について語ります。 バトンをやったり、 親馬鹿トークを繰り広げたりします。 苦手な方は、どうぞ戻ってやってくださいませ! (私のサイト「Pure Rain Drop」) → http://id35.fm-p.jp/198/guardian727/
最近書いてあげられてなかったシスちゃんのSSです。
エルド絡み、ですがエルドは出てきません(笑)
シストはいつまでもエルドの死を良くも悪くも忘れられずに、
心のどこかでエルのことを考えながら生きていくんだろうな、
なんて思いながら書きました。
グダグダな短時間クオリティですが、OKという方は追記からどうぞ!
―― 奇跡、ってあるんだと思う。
俺は、しみじみとそんなことを考えた。
ただの偶然。
こんなこと、いくらでも起き得る。
でも、俺がそう感じなかったのは、やっぱり……――
***
Side シスト
賑やかな、パーティ会場。
俺はそこに、一人で佇んでいた。
手に持った、小さなワイングラス。
中に入った液体を軽く舐めて、溜息をつく。
さっきから、貴族のお嬢様方から声をかけられたり、
"アンニュイ"と囁かれたりしているのだけれど……
誰も、好きでこんなことをしているわけじゃない。
仕事、なんだよ。
潜入捜査の任務だった。
本来、風隼の仕事なのだけれど、
戦闘を含む恐れがあるため、ということで俺が行くことになった。
ただ、今のところ何も起きていない。
あと三十分して何も起きなければ帰ってこい、
ルカからそんな指示があって、二十五分経過。
そろそろ、帰ろう。
そう思って歩き出した、その瞬間。
「っと!」
腰のあたりに、何かがぶつかってきた。
俺はその人物を見て目を見開く。
そこには小さな子供が居た。
俺が驚いたのは、ぶつかってきたのが子供だったからじゃない。
黄緑色の、短い髪。
エメラルドグリーンの、丸い瞳。
その容姿は、あまりにも……
「エルド……?」
俺の、昔の、パートナーによく似ていた。
正式に言えば、俺のパートナーの幼少期に、だ。
俺たちは、ノトの頃から仲が良かった。
つまり、五、六歳の頃からあいつのことを知っている。
その姿に……生き写し、だった。
「お兄さん、誰?」
その子の怪訝そうな声で、俺はハッとした。
何馬鹿なこと考えてるんだ。
慌てて首を振り、"ごめんな"と謝る。
「エルド、って誰?」
耳が良いのか記憶力がいいのか。
俺が思わず漏らしていた名前を、しっかり聞き取っていた。
俺は苦笑して、答える。
「俺の、友達の名前だよ。君に、よく似ててね」
「そうなんだ」
納得した顔をして頷く彼は、それこそまだ十歳にもみたないだろう。
幼いその口調が、可愛らしかった。
……切なく、なった。
彼のことを、思い出して。
と、目の前の少年はじっと俺のことを見つめていた。
そして、にっと笑って、言う。
「……お兄さん、騎士でしょ?」
「え」
思わず、動揺してしまった。
何故、バレた。
今俺が着ているのは騎士服ではなく、パーティ用のスーツ。
それなのに、何故騎士とわかったのだろう?
さすがに、他の人間にばれるとまずいから彼の高さまでかがんで、訊ねる。
「何で、わかった?」
「ふふ、俺も騎士になりたいからさ!雰囲気とかそういうので分かった」
"研究中なんだ!"と誇らしげに言う、エメラルドの少年。
その笑顔に、やはり重なる"彼"の笑顔。
「何で、騎士になりたいんだ?」
その言葉を、かけていた。
彼は、笑顔で答える。
―― 恩返しだよ!
その言葉まで、綺麗にそっくりだった。
孤児院で世話になった人のためへの恩返し、とエルドは言っていた。
嗚呼、どうしよう。
泣きそうだ。こんな場所なのに。
「そ、っか……」
一言返すのが、限界だった。
その声すら、震えていた気がする。
「どうしたら騎士になれる?」
無垢な瞳が俺を見上げる。
エメラルド色がキラキラと、シャンデリアより綺麗な光を放っていた。
夢を見る、こどもの瞳。
その純粋な光が、俺には少し眩しい。
俺は微笑んで、答えた。
「頑張れば、いいんだ。自分ができることを、精一杯」
涙声にならないように、必死で平静を装って答える。
鼻の奥が、ツンとした。
「お兄さん、名前は?」
「え?」
「名前、教えてくれよ。騎士団に入ったら、お兄さんを探したいから」
そう言ったあと、彼はぴしっと気をつけの姿勢を取った。
そこからぎこちなく、騎士の礼をする。
おそらく、練習したんだろう。
「俺は、ラル・ウェロード。以後、お見知りおきを」
「ははは、頑張ったな。俺は、シスト・エリシア。
もし、お前が騎士団に入ったら、俺が鍛えてやるよ」
半分位は、冗談だったかもしれない。
でも、残りの半分は、本気だった。
もし彼が、ほんとに騎士になるのなら……
俺は、彼が立派な騎士になるところを、見守っていきたい。
―― 偶然と、思えないんだ。
偶然、本来風隼が行くような任務に行って。
偶然、子供がぶつかってきて。
偶然……その子が、俺の死んだパートナーに似てる、なんて。
偶然にしては、出来過ぎてる気がしたんだ。
運命論者なんかじゃないけれど、信じてみたい運命だって、ある。
「じゃあな、ラル」
「うん、じゃあな、シスト上官」
びしっと気をつけの姿勢をとって、ラルは俺をそう見送ってくれた。
***
外に出た時、通信機が鳴り響く。
「ルカか」
『あぁ……無駄足だったな。すまん』
「いや?そうでもないよ」
『は?何か、あったのか?』
「違う……なぁ、ルカ」
『何だよ』
「俺、部下ができたわ」
それだけ言って、通信機を切った。
ここに来たばかりの時は耳障りなだけだったパーティの騒音が、
今は少し、心地よく聞こえるようになっていた。
―― Boy of emerald ――
(偶然の出会いであると分かっていても、
俺は、彼の未来を見守ってみたいと思った)