フォルとライニさんのお話です。
変身魔術を駆使するライニさんと、それを煽る黒髪フェチな堕天使を書きたかったのです←おい
*attention*
フォルとライニさんのお話です
シリアスなお話です
変身魔術を駆使するライニさん
黒髪フェチ疑惑な堕天使なので…
要らない煽りに割りと本気になるライニさんならいいなと←
そして懲りないフォルがすみません(^q^)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
爽やかな海風が吹き抜けていく。
秋の気配も強まった海辺は肌寒く、そこを歩いている亜麻色の髪の青年は少し体を震わせた。
「うぅう、やっぱりさむいなぁ」
そう呟いて彼……フォルは小さく息を吐く。
まだ息は白くならないものの、寒さに弱い彼にとっては大分辛いものとなりつつあった。
それなのに彼が海辺に散歩に来た理由。
それは、彼の恋人であるスターリンが自分の国に戻ってしまっていて暇だから。
本当はついていきたかったのだが、ついていったところで手伝えることもないし、何より要らぬちょっかいをかけてきたら帰りが遅くなると言われたから。
そんなことしないよ、ということもできなくて、彼はしょんぼりしつつおとなしく留守番することになったのだった。
「なるべく早く帰るとはいってたけどさぁ……」
それでも退屈だし寂しいよなぁ、とフォルは呟く。
その結果に何故海かと言えば、単に時間潰しと、人が少ないところならば多少魔力を解放しても平気ということで、悪魔の魔力を解放するため。
ずっと押し込めたままだと、やはり体調に変調をきたす。
と、そのとき。
「ん……?」
フォルは歩いてくる小さな影に気がついた。
街からも少し距離があるこの場所。
少し怪訝に思いつつ、姿を消して様子を窺った。
その影の方へ歩み寄っていく。
その姿がよく見えたところで……目を細めた。
歩いてきたのは、黒髪の少年だった。
綺麗な顔立ちの少年。
着ている服を見て、"軍人さんかな"と小さく呟く。
見た目的に、そしている場所的に、海軍だろう。
それを見たフォルはスッと目を細めて……その少年の前に姿を現した。
「こんな時間に見回り?」
そう声をかけられて、黒髪の少年は驚いた顔をした。
彼の反応にフォルは嬉しそうに笑う。
こういった反応をされるのが、一番面白い。
「忙しいんだね、海軍さんって」
そうでしょ?とフォルは声をかける。
すると少年はやや不機嫌そうに眉を寄せて、いった。
「仕事ではありませんよ」
ただの暇潰しです。
黒髪の彼はそう答えて、ぷいとそっぽを向いた。
その様子にフォルは少し驚いた顔をする。
見た目のわりにしっかりしたというか、冷たいというか……
「つれないねぇ」
フォルはそういって笑みを浮かべる。
然して気分を害したようでもない彼。
その様子に少年は苛立っているようだった。
フォルは彼の様子に楽しそうに笑う。
そして、小さく首を傾げながら、いった。
「でも、君みたいな子がこんな時間にふらふらしてたら危ないんじゃない?」
「ご心配なく、戦闘は得意ですから」
全く物怖じすることなく少年は言う。
ずいぶん肝が座った子だな、と考えはじめて……フォルは気づいた。
彼が纏う魔力。
そして、彼の雰囲気。
それが、よくよく知っている人間の一人と一致した。
「あぁ、なんだ……君、金髪の野獣様か」
そういって、フォルは笑みを浮かべる。
その言葉に眼前にいる少年は一度目を見開いた後、ふっと息を吐き出した。
「……流石堕天使ですね。気配や魔力の察知能力は高いという訳ですか」
「それだけと言わんばかりの言い方だね、失礼だなぁ」
そういってフォルは笑う。
そして彼の方へ歩みを進め、その瞳を覗き込むようにしながら、いった。
「変身魔術かな?金髪の野獣……否、今は金髪じゃないか」
ラインハルト・ハイドリヒ君?
そういってフォルは笑みを浮かべる。
それを聞いた彼は眉を寄せて、いった。
「この姿の時は"トリスタン"と言います」
お見知りおきを、別にこの姿でまた会いたいとは思いませんが。
ハイドリヒ……否、トリスタンはそういう。
彼の言葉に、フォルはクスクスと笑って、いった。
「僕は是非この姿で会いたいものだけどな?髪が短いのはちょっと勿体ないけど、これはこれで素敵だよ」
そういいながら、フォルはトリスタンの頬に触れる。
一瞬眉を寄せた彼は冷たくその手を払おうとしたが、その手をもう一方の手で封じられる。
「闇色の髪……その方が君に似合いなんじゃない?死神様?」
煽るようにそういうフォル。
トリスタンは面倒臭そうに眉を寄せるが、案外力が強いフォルの手をはずすことはできない。
半ば諦めたように溜め息を吐き出すと、彼はいった。
「余計なお世話です。この姿をとるのは海での任務の時だけですから」
それに好都合、ただそれだけです。
髪色にも髪型にもこだわりはないと彼は言う。
フォルはその言葉に笑みを浮かべつつ、いった。
「そう?じゃあ、このままでいればいいのに」
「貴方に指図される筋合いはありませんね」
「ほんとにつれないね。君の恋人は金髪好きなの?」
フォルの発言に、トリスタンの動きが一瞬とまった。
動揺したようすの彼を見て、フォルはサファイアの瞳を細めた。
「ふふ、図星?」
そういって、フォルは笑う。
トリスタンは眉を寄せつつ、いった。
「……節操なしの貴方に言われたくありませんね。
身の回りを黒髪の子達で固めているような貴方に」
彼……アネットは確かによく自分の髪を綺麗だと誉めるけれど、金髪なら誰でもいいなんて態度はとらない。
だって、自分がこの姿……トリスタンの姿をとっていようが、もうひとつの姿であるオイゲンの姿をとっていようが、彼は自分を慈しむ。
それは惚気でも自惚れでもなく、紛れもない事実だ。
トリスタンがそういうとフォルはへぇ、と笑った。
そして、意地悪く笑いつつ、首を傾げる。
「君が僕に手を出されたと知っても彼は平然としてられるかな?」
ねぇ?と言いつつフォルは彼の耳元に顔を近づける。
そんな堕天使の行動に不快そうに眉を寄せたトリスタンは一度強い力で彼を押して、距離をとった。
そして、素早く魔術を解いて、普段の……ハイドリヒの姿をとる。
「なぁんだ、残念」
そのままでいればよかったのに、とフォルは言う。
彼の言葉にハイドリヒは眉を寄せて"貴方という人は本当に……"と呟くようにいった。
フォルは彼の反応に肩を竦めつつ、いった。
「折角だから君を啼かせてみたかったのに。
そのままの君の姿彼に見せたらどうなっただろ?」
「噛み殺されるかもしれませんね」
さらり、とハイドリヒは答える。
本気で……それも自分に関することで怒ったアネットは本気で人を噛み殺しそうな勢いなのは、想像がつく。
ハイドリヒがそういうとフォルは笑いながら、いった。
「怒り狂った狂犬くらい簡単に殺せるよ。
でも怒ることも怒り方も簡単に出来るああいう子を怒らせるのは面白みに欠けるなぁ……逆に君みたいな冷静な子怒らせる方が楽しいし。
逆に、あの仔犬君を先に殺っちゃおうかな」
その方が面白いものが見れそう。
そういってフォルは笑う。
笑みを浮かべてはいるが一切笑ってなどいない表情にハイドリヒはスッと青い瞳を細める。
「そうしたら即刻報復に出ますがその覚悟はできていますね。
……誰が狙われるかわからないほど貴方が無能とは思いませんが」
冷たい声でそういうハイドリヒ。
フォルはその言葉に笑みを引っ込めた。
彼らしくもない表情。
そして彼は冷たい声で言う。
「書記長様を狙おうって言うんでしょ?想像くらい簡単だよ。
でも……それが出来るかな?」
「どういう意味ですか」
ハイドリヒは彼に問う。
フォルは冷たい笑みを浮かべつつ、いった。
「書記長様に負けたことあるんでしょ?なのに殺せるの?
……まあ僕が殺させないけどさぁ」
僕の恋人に手を出させるはずがないでしょ?
死神ごときが堕天使に勝てると思わないでほしいな、とフォルは言う。
ハイドリヒは彼の言葉に一瞬眉を寄せた。
そして……変身魔術を使う。
先程とは違う姿……空で戦う、オイゲンの姿をとる。
そんな彼を見てフォルは笑った。
「へぇ?そういう格好も出来るんだ。
でもやっぱり僕はさっきの姿が一番好みだな」
「貴方の好みは聞いていませんよ」
冷たくそう言い切ると同時に、彼は召喚術を使った。
刹那その場に召喚されるは、美しくも強大な力を持つ、空の魔獣……火竜で。
「随分おっかないもの喚ぶね」
「身の程知らずの堕天使を追い払うためですから」
そういうと同時に彼はひらりと火竜に跨がった。
フォルはその姿に笑みを浮かべると魔力を解放して空へと舞い上がる。
漆黒の翼を羽ばたかせ空に逃げた彼を、オイゲンは火竜で追った。
「ふふ。おいかけっこ?」
「そんな呑気なものに見えるようなら貴方は救いようのない馬鹿ですね」
そういいながらにこりともせず、オイゲンは火竜に指示を出す。
次々放たれる炎の弾を躱しながらフォルはいった。
「うわぁ、怖い怖い」
「おとなしくしていれば一瞬で終わるでしょう。
……もっとも、終わらせるつもりはありませんが」
そう言いつつ彼は的確に堕天使を狙う。
致命傷になりうる攻撃ではなくあくまで翼や足を狙う攻撃にフォルは目を細めた。
―― 金髪の野獣様も恋人に関してはただの人の子、かな?
彼の地雷は何処だったかな、単に苛立ちがマックスになっただけだろうか。
そんなことを呑気に考えながら、フォルは宙を飛び回っていたのだった。
―― 想うものは… ――
(好みなんて、知りません。
でも彼を危険に晒すつもりならば私はそれを許しはしません)
(人らしさを感じない冷酷さのなかに点る熱さ。
それがなんだかおかしいから、もっとからかいたくなるんだよ)