ザイス=インクヴァルトさんとリトのお話です。
今回はシリアスで…
温くですが嘔吐描写ありなので注意です
*attention*
ザイス=インクヴァルトさんとリトのお話です
シリアスなお話です
久しぶりにシリアスやった気がする←
温くですが嘔吐描写ありです
傷をつけない自傷行為
離れなければならないけど離したくない、って矛盾した感情って萌えます
リトはわけもわからないままに慰めてそう←
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
静かな、空間。
そこで目を開けたザイス=インクヴァルトはゆっくりと瞬きをする。
此処は、何処だ。
そう冷静に考え始めると、あたりが明るくなり始める。
そうして、目に映った光景に、ザイス=インクヴァルトは目を見開いた。
そこに広がっていたのはかつて"自分"が見た景色。
今の景色とは違う、景色。
それは……自分のオリジナルが歩んだ、歴史だった。
他人事のように見ることなど出来るはずがない。
フラグメントは"オリジナル"の過去を背負う者。
オリジナルの罪は自分の罪なのだ。
辿っていく、その歴史。
積もっていく罪悪感、自分に対する嫌悪……
もうやめてくれと思っても、景色は止まってなどくれない。
まるで、本物の時間が過ぎているように。
少しずつ、少しずつ、辿っていく。
オリジナルがたどった道を。
そして、辿り着いた"終点"。
それは……処刑上で。
吊り下げられた、麻縄。
それがこれから自分の命を奪うものであることを、ザイス=インクヴァルトは知っている。
そこで、目が覚めた。
「…………っ」
勢いよく体を起こそうとして、慌てて止める。
隣で丸くなっている温もりに、気が付いたから。
あぁ、そうだ。
今日は、一人で寝ていたのではない。
それなのに、どうして……どうしてこんな夢を見たのだろう。
ザイス=インクヴァルトはそう思いながら息を吐き出した。
ぐっすりと眠っているリト。
彼の表情は穏やかそのもので、いつも通りの彼。
その表情にザイス=インクヴァルトは目を細めた。
金の瞳に点るのは……苦痛の色。
その理由は……自分の心に点った、自分への嫌悪故だった。
夢を見て追ううちに思い出す、自分の罪。
許せない、許されるべきでない……存在。
幸福を夢見ることなどあってはならないことなのに……
あぁ、それなのに。
自分は、彼を受け入れてしまった。
彼と……共に居ることを選んでしまった。
そう、思う。
彼は自分には釣り合わない。
彼は、自分と一緒に居るには……明るく、眩しすぎる。
彼は自分といる必要などない。
自分といるのをやめればきっと彼は……もっと幸せになれるのに。
それでも自分は……
彼を今更、手放そうとも思えなくて。
彼はゆっくりと息を吐き出すと、ベッドから降りた。
そのまま、ふらふらと歩いていく。
その先は、トイレだった。
べつに、もよおしたわけではない。
しかし……
そこに、用事があった。
彼の家の手洗いを借りるというのは、申し訳なさを感じたのだけれど耐えかねた。
ぺたり、とその場に座り込む。
そしてそのまま、彼は口の中深くに指を突っ込んだ。
反射を起こしてえづく。
それに怯まずに、彼はぐっと喉の奥を指で押した。
「っぐ……ぅ」
そのまま、彼は吐いた。
別段吐き気がして吐いたわけでもないのだから碌々吐くものもないのに。
一度吐いてしまえば、それがトリガーとなって、なかなか止まらなくなる。
視界が涙に滲んだ。
いい加減に吐く気力さえなくなってザイス=インクヴァルトぐったりと便器の前に蹲った。
げほ、と噎せる。
苦しい。
涙に滲む視界が揺れて、却って気分が悪くなりそうだった。
馬鹿馬鹿しいと、自嘲する。
こんな……遠回しな自傷行為なんて。
そう思いながらザイス=インクヴァルトは苦笑を漏らした。
吐くことにも体力は使うわけで、彼は立ち上がることさえ出来ずその場に蹲っていた。
少ししたら、口を濯いでベッドに戻ろう。
そう思っていた、その時。
「アルトゥール?」
不意に聞こえた彼の声。
それを聞いて、ザイス=インクヴァルトははっとする。
しかし、こんな状態を見られて顔を上げられるはずもなく彼は身動きが取れなかった。
「アルトゥール、どうした?!気分悪いのか……?」
リトは心配そうに駆け寄ってきて、そっと彼の肩に触れる。
ザイス=インクヴァルトはびくっと体を強張らせた。
彼もそれに驚いたのか、慌てて手を離す。
「ご、ごめん……まだ辛い?大丈夫か?」
顔色悪い、今は明確に。
リトはそういいながら心配そうにザイス=インクヴァルトの額に触れる。
「熱はないけど……なんか俺変なもん食わせちゃったか?俺、なんともないんだけど……」
どうしたんだろう、と声を上げるリト。
その心配そうな声色と、頭や背をなでる彼の手の優しさに先程とは違う涙で視界が滲んだ。
「っふ、……う……っくぅ……」
嗚咽を漏らして、泣き出す。
こんなみっともない姿見せたくはなかったがあの夢や、先程までの自分への嫌悪……色々なものがぐちゃぐちゃになって、涙しか出てこない。
リトは突然泣き出した彼に驚いた。
そしておろおろしながら、彼に声をかける。
「えっ、ちょ……どうした、アルトゥール……やっぱまだ気分悪いのか?!」
どうしよう、医者呼ぶか?
そう呟くリトに、ザイス=インクヴァルトは小さく首を振って見せる。
「っいい、です……だいじょうぶ……」
「大丈夫って顔じゃないよ……」
リトはそういいながらザイス=インクヴァルトの背を擦り、優しく頭を撫でてやる。
彼の手は優しく、温かい。
それが更に苦しさを煽った。
「アルトゥール……?」
リトも、なんとなく何かを感じたのだろう。
彼が此処にいたのも……おそらく吐いていたであろうことも、体調が悪かったからではないのではないか、と。
もしそうなら幾ら何でも自分が気づくし、今だってちゃんと言うだろう。
そうでないのは……
きっと、体調不良ではないからで。
しかし、理由がわからない。
リトは彼の頭をただ撫でながら、言う。
「……とりあえず、今はゆっくりしよう、アルトゥール……
俺、傍にいるから、大丈夫だから……」
よしよし、とリトは彼の頭を撫でる。
いつもは子供っぽいのはリトの方なのに、今日は逆で。
ザイス=インクヴァルトは苦しげに泣きながら、首を振る。
手放したい。
離れたい。
離れたくない。
彼と一緒に、いたい。
そんな矛盾した感情に、ザイス=インクヴァルトはただただ泣き続ける。
リトはそんな彼を抱き締めたままでいた……
―― Reason of crying ――
(お前の、涙の理由は?
どうしてそんなに苦しそうに泣いているのか、俺には理解出来なくて…)
(離れなければならない、離さなければならない。
そう思うのに、私は…あぁ、どうしてこんなにも醜いのでしょう)