ベルトルトお兄様と大佐殿のお話です。
Kalafinaさんの「君の銀の庭」をモチーフ?イメージBGMに…
如何せん愛が重いベルトルトお兄様とそれに染め上げられてる大佐殿書くの楽しいです←
*attention*
ベルトルトお兄様と大佐殿のお話デス
多分IFネタです
Kalafinaさんの「君の銀の庭」モチーフなお話です
シリアスなお話です
兄の愛情と狂気…的な←
ブラコンも行き過ぎると危険だね、って話になった感
でもお兄様は本当に大佐殿が大好きなんだよって話になってたらいいな…
そしてなんか心なしか大佐殿がイメージ幼くなった←
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
光が降り注ぐ、窓辺。
その傍の椅子に腰かける、隻眼の少年……シュタウフェンベルク。
彼はそっと、窓ガラスに触れた。
開くことの無い窓。
向こう側には鉄格子。
それが決して外れることがないことも、鍵が開くことがないことも、彼は理解していた。
そして、別にそれをおかしいとも思っていない。
これが、彼の日常だった。
窓は閉まっているが、室内は涼しい。
魔力で、部屋の中は快適に保たれていた。
ただ、一つ物足りない。
そう思いながらシュタウフェンベルクは小さく息を吐き出した。
と、その時。
がたん、とドアが開く音が聞こえた。
それを聞いてシュタウフェンベルクはぱっと顔を上げる。
その表情はまるで、飼い主が帰ってきた時の犬のようでさえあった。
近づいてくる気配と足音。
シュタウフェンベルクはドアの方へと視線を向ける。
がちゃ、と鍵が開く音が、幾つも響く。
そして、ドアが開いた。
「ただいま、クラウス」
ふわり、と微笑むその姿を見てシュタウフェンベルクも表情をほころばせる。
そして、嬉しそうな声色で言った。
「お帰り、ベルトルト兄さん」
そう。
部屋に入ってきたのは、シュタウフェンベルク……基、クラウスの兄であるベルトルト。
彼はにこりと微笑みながらもう一度"ただいま、クラウス"といった。
お帰りなさい。
シュタウフェンベルクはそういいながらすっと手を伸ばす。
ベルトルトはそんな彼を見て目を細めた。
ゆっくりとクラウスに歩み寄るベルトルト。
そして彼は片方しかない腕を伸ばしている弟をぎゅっと抱きしめた。
愛しそうに。
「っふ……ベルトルト兄さん……苦しい、よ」
小さく息を漏らしたクラウスがそう訴える。
それを聞いてはっとしたように顔を上げた。
そして心配そうにクラウスの方を見る。
「ご、ごめん、クラウス……クラウスがちゃんといるな、って思って」
ベルトルトはそういって微笑む。
それを聞いて、クラウスは一瞬きょとんとした顔をした。
それから、可笑しそうに笑って、言う。
「私は何所にも行かないよ、兄さん……
だって、此処にいるのが一番良い……」
そうだろう?兄さん。
そう問いかける、弟の純な瞳。
ベルトルトはそれを見つめた後、ふっと微笑んだ。
「あぁ、そうだね……そうだよ、クラウス」
そういいながら、ベルトルトはクラウスに軽く口づける。
額に、頬に……そして唇に。
軽く触れれば、もっとと強請るように背に回される腕。
ベルトルトは目を細め、その強請りに応じた。
―― この場所にクラウスを閉じ込めてからどれくらい経つだろう?
ふと、ベルトルトはそう思う。
時計もカレンダーもないこの部屋。
とっくにクラウスの時間感覚は狂ってしまっているだろうな……
そう思いながら、ベルトルトはキスを止めた。
は、と甘い息を吐き出す、愛しい弟。
自分しか見れない甘い表情。
自分しか知らない、甘い声……――
そんな彼がこの部屋に、あの窓辺に居る姿を見ると安堵する。
あぁ、彼は今日も逃げていなかった。
この"幸福な世界"は、壊れていなかった……と。
ベルトルトはこの部屋にクラウスを閉じ込めていた。
簡単に言ってしまえば、"監禁"だ。
そのことを、仲間たちは知らない。
知っている……否、感づいているのは双子の片割れであるアレクサンダーくらいだろう。
彼はいつも"クラウスは元気にしてるかな"と呟くように言う。
それに対してベルトルトは"きっと大丈夫だよ"と微笑んで返した。
その笑みを見る度にいつもアレクサンダーが何か言いたげな顔をしているのは知っていたけれど、全て無視した。
クラウスが唐突に姿を消したのは数か月前。
無論その時は大騒ぎになった。
彼の特殊な魔力を狙う者。
彼の容姿に目をつける者。
それは決して少なくはなかったから、何者かに連れ去られたかもしれないとの見解が強かった。
しかし、何一つ痕跡は見つからなかった。
"自分たち以外が出入りした痕跡"は見つからなかったのだ。
……バレるはずがなかった。
ベルトルトが、一つの部屋にクラウスを縛りつけていること。
そしてクラウスがそれを受容していること。
ベルトルトはクラウスにはいつもいっていた。
"僕はいつでもクラウスの幸せを願っている"と。
"クラウスは必ず僕が守る"と。
事実、そう思っていた。
どんなものからも彼を守り抜いて見せる、と。
それは初めはいたって普通の弟を想う兄の気持ちだっただろう。
特殊な魔力を持ち、不思議な魅力を持つ弟を心配する兄の想い……
しかしそれはいつしか変容していた。
兄が弟に向けるには大きすぎる、重過ぎる感情に。
愛しい弟。
彼を自分だけのものにしたかった。
誰にも渡したくない、見せたくさえなかった。
例え、同じ血を分けた弟にも。
愛しい弟自身が大切にしていた副官にも。
……何が正しいかなんてもうわからなかった。
正しさよりもほしいものを。
自分の想いが照らす方を選び取った。
そしてベルトルトがとった行動。
それは、クラウスをこの部屋に……アレクサンダーからもほかの騎士たちからも見つからない場所に閉じ込めるという行動だった。
無論、はじめ此処に彼を連れてきたときには困惑していた。
君を狙う人間がいる、危険だから、といって連れてきたというのに彼は他人の心配をし続けていた。
ヘフテンと仕事をしないといけないだとか、アレクサンダー兄さんやペルが心配するとか……
しかしそんな彼に、ベルトルトは優しく歌うように言った。
心配いらない。
クラウスを守りたいと思って僕は此処に君を連れてきただけなんだ。
"時が来れば"ちゃんと帰るよ。
此処にいれば、何も怖くはない。
自分が此処を守るから。
クラウスが誰かに傷つけられることはない。
寂しくなんかない。
自分がいつも来るから……
もしかしたら、無意識にその言葉に魔力がこもっていたのかもしれない。
次第にクラウスは彼の言葉を受容するようになった。
彼が関われるのは、自分一人。
必然彼は、自分に依存する。
そうしているうちに大人びていた彼は心なしか少し幼さを灯した気がした。
大人にならない、子供。
こうして外界と遮断していれば人間はそうなるのかもしれない。
ベルトルトはそう考えた。
けれど、それでいいと思った。
姿かたちは大人になれど、心は子供のままでいい。
それならば自分がずっと彼を守ってやることが出来る。
自分や、他の人間を守ろうとして彼が壊れてしまうことはないのだから……――
創り上げた、二人だけの世界。
それはまるで、秘密の箱庭のようだった。
誰にも見つかってはならない、秘密の場所……
「ベルトルト兄さん?」
自分を呼ぶクラウスの声で我にかえる。
彼の方を見ると、心配を灯した青の瞳とかち合った。
ベルトルトは首を振って、"何でもないよ"といって、優しく彼の頭を撫でる。
そして、彼と一緒に大きなベッドに腰掛けた。
擦り寄ってくる温もり。
疲れているのか、浴びていた陽射しが心地よかったのか、彼は小さく欠伸を漏らした。
ベルトルトはそんな彼に"眠っていてもいいよ"という。
クラウスはそれにこくりと頷くと、そっとベルトルトにすがった。
―― 嗚呼、心地よい。
すぐ傍にある温もりを感じてベルトルトは目を細める。
そしてふっと息を吐き出した。
これが、理想だった。
一番の願いで、理想で、夢で……
そう。
こんな形でしか叶わないものだった。
"現実"では、叶えられないものだった。
兄弟でそんなことおかしい。
それは異常だ。
狂っている。
そういわれるようなことをしている自覚はある。
彼を失って嘆いている人間がいるのも知っている。
今も尚必死にクラウスを探している人間がいるのも知っている。
しかしベルトルトはそれをも巧妙に隠した。
クラウスが幸福でいてくれればいい。
自分の傍で、幸せになってくれればいい。
そのためならば何を失くしたって良かった。
双子の片割れからの信頼も。
友人との絆も。
周囲との関わりも、何もかも。
この愛しい弟が傍にいてくれるなら。
自分だけの傍に、居てくれるなら……――
「ねぇ、クラウス……」
ベルトルトは眠っているクラウスを抱いたまま優しい声で呼ぶ。
静かに眠る彼は目を覚まさない。
それで、良い。
この眠りは自分が守る……
そう思いながらベルトルトはそっと弟の頬にキスを落とす……――
―― 秘密の箱庭 ――
(ずっと僕だけの傍にいて、愛しい僕の弟。
ねぇ、何処にもいかないで…ねぇ?)
(おかしいこと、狂っていること、何もかも理解してはいる。
それでも君を此処から出したくはない、閉じ込めて、僕だけのために笑っていてほしい)