大佐殿とペルのお話です。
このペアでのシリアスも好きなので…
多分おそらく、続きます←
*attention*
大佐殿とペルのお話です
メインはペルです
シリアスなお話です
ペルはもともといろいろやらかしてる子なので…←
過去を意識させられる夢を見て怯えるペルを書きたくて…
大佐殿にはやっぱりしばらく言えないんじゃないかなと
もしかしたら続きます(^q^)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
静かな、暗闇のなか。
自分を責める声が聞こえる。
殺人者。
犯罪者の癖に。
自分たちは未来を絶たれたのに。
それなのにお前は、明るい未来を歩むのか。
そんなことは、許さない。
許されて良いはずがない。
そんな声が響く中、黒髪の少年は必死に首を振った。
違う、違う、と。
否定したかった。
自分は、犯罪者なんかじゃない、と。
しかし、否定できないことは知っていた。
だって、その"声"は事実だったから……――
それが、相手もわかっているのだろう。
嘲笑うような声が、言う。
―― 違うというなら、自分の手を見てみろ。
そんな声。
それを聞いて、視線を自分の手に移す。
そして彼は、大きく目を見開いた。
赤い、アカイ、掌。
血に染まった、それ。
小さな手。
血に染まった手。
それはいったい幾つの命を奪った?
ペルが動揺するのを見ているかのように、"声"は嗤う。
そして、彼に言うのだ。
そんな血に濡れた手で"彼ら"の手を握るのか。
"光"へ導く、彼らの手を。
いやだ、とペルは呟いた。
自分の手を握ってくれる、優しい手を思い出しながら。
いやだ。
違う。
だって、自分は……!
そう思うのと同時、意識がふわり、浮上した。
***
「っ……」
はっとして、体を起こす。
呼吸が荒く乱れていて、息が苦しかった。
周囲を見渡す。
何かに怯えるように。
何かを、探すように。
しかしそこはいつも通りの、シュタウフェンベルク家の部屋。
隣では、クラウスが眠っている。
飛び起きた時に起こしてしまったのではないかとやや不安になったが、どうやら深く寝入っているようだ。
一人で寝るのは心細くて、ペルはいつもクラウスと一緒に寝ている。
それは、ディアロ城にいるときでも、この屋敷にいるときでも同じだった。
一緒に眠ってさえいれば、落ち着いて眠ることが出来るから。
そうだ、今日は此処に泊まりに来ていたんだった。
そう思いながらペルは小さく息を吐き出す。
「っは……はぁ……」
荒くなった呼吸。
それを必死に整えながら、ペルはぎゅっと布団を握りしめる。
それから、恐る恐る自分の手を見た。
夢の中で真っ赤に染まっていた手。
しかし無論その手は、綺麗なままだ。
ペルはそれを見て、ほっとした顔をする。
しかし何だか落ち着かなくて、ベッドから降りた。
部屋に備え付けの、洗面台。
そこにゆっくりと歩いていく。
そして、同じ部屋で寝ているクラウスを起こさない程度の音で水を流す。
つめたい水で、手を洗う。
ごしごしと、見えない何かを洗い流すように。
―― あの夢……
酷くリアルな声。
酷くリアルな夢。
苦しくて、痛くて、怖い夢。
胸が苦しい。
先程の光景が、声が、頭に響いて。
流れる水。
その冷たさに手が痛くなってきても、ペルは手を洗うのをやめなかった。
消えない気がする、夢の中の血。
あれは夢だとわかっているのだけれど……
洗い流したい。
出来るっ事ならば、自分の過去さえも。
そう思いながら、ペルは自分の小さな手を水で洗っていた。
「ペル?」
不意に聞こえた声。
それにペルはびくっと体を跳ねさせた。
恐る恐る振り向けば、そこにはいつの間にか起きてしまったらしいクラウスが立っていた。
「どうしたんだ、ペル……手なんかあらって」
不思議そうにそう訊ねるクラウス。
それは、当然だろう。
真夜中に弟がいきなり起き上がって手を洗っていたら驚くに決まっている。
しかし……
ペルは目を伏せながら、言った。
「ううん……何でも、ないよ」
ちょっと、トイレ行ってただけ。
ペルはそういいながら、少し微笑む。
大丈夫だよ、といいながら。
そんな彼を見て、クラウスは少し不思議そうに首を傾げた。
"それなら良いのだけれど"と言いながら、彼はそっとペルの手を握る。
そして、少し顔を顰めた。
「すごく赤くなってるじゃないか……」
「あ……うん、ちょっと、寝ぼけて……」
長く洗っちゃってたかも、とペルはいう。
クラウスはその言葉に苦笑すると、そっとペルの頭を撫でる。
その手のぬくもりに、ペルはびくっと身体を跳ねさせた。
驚いたのではない。
そうして触れられたことに、体が反応した。
触れて、ほしくない。
大好きな、兄だからこそ。
先程の夢の中で思い知らされた、自分の罪。
それを背負う自分に、優しく暖かい手で、触れてほしくなかった。
「?ペル?」
身を竦める彼に、クラウスは驚いた顔をする。
一体どうしたのか、と。
ペルはその言葉にはっとした顔をする。
そして小さく首を振った。
「あ……ううん、何でも、ない。
クラウス兄さん、ごめん、ね……起こして」
そういうペル。
彼はひやりとした手をひっこめて、ベッドに戻る。
クラウスはそんな彼の様子に眉を寄せた。
―― いったい、どうしたのだろう?
様子が、明らかにおかしい。
けれど何が原因なのか、よくわからない。
本当に寝ぼけているのだろうか?
ペルはさっさとベッドに戻っている。
それは、いつも通りの様子だ。
「ペル?」
同じベッドに戻りながら、どうしたんだ、とクラウスは彼に問いかける。
しかしペルはゆっくりと首を振る。
何でもないよ、という彼の声はとても静かで……
眠い、のだろう。
そう思いながら、クラウスはそんな彼の頭を優しく撫でる。
おやすみ、と言えば静かに"おやすみなさい"と返ってくる。
そんな彼の様子に目を進めつつ、クラウスは目を閉じた。
ペルは目を閉じる兄を見て、ふっと息を吐き出した。
もう、眠れそうにないな……
そう思いながら、少し寝返りをうって、窓の方を見る。
少し開いたカーテン。
そこから見える月の明かりに、彼は目を細めたのだった……――
―― 血に濡れた手と、隠す感情と… ――
(あまりに幸福だから忘れていた。
僕のこの両手が、殺めた人々の血で染まっていること)
(でもそれは、その感情は晒したくない。
"兄さん"には、いつも通りでいてほしかったから…
嗚呼、それは我儘なのかな?それを望むのは、いけないことかな…)