堕天使悪魔コラボのお話です。
ナハトさんと話してたノリで浮かんだネタでした…
うちの堕天使が悪趣味ですみません←
*attention*
堕天使悪魔コラボのお話です
シリアスなお話です
天使らしくない(堕)天使フォルと、悪魔らしくなれない悪魔のヒトラーさん
フォルが色々悪趣味です←
魔力が変えられないならって思うヒトラーさんを書きたくて…
フォルの意味ありげな発言や行動に振り回される美人さんに萌えます、すみません←おい
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKと言うかたは追記からどうぞ!
ディアロ城の中庭を抜けた先。
そこにあるのは、広大な薔薇園。
この国の紋章にも使われるその植物は歴代の国主が好きなのだという。
赤、白、桃色……
色とりどりの薔薇の花が咲き誇っていた。
そんな夜……
長い黒髪の少年……ヒトラーはその場所にたっていた。
明るい月が、輝いている。
その眩しさに負けたように黒髪の少年は目を細めた。
一歩踏み出す度、ふらりと足がふらつく。
視界も歪んだ。
「どうしてこんなところにいるの?」
不意に聞こえた声にヒトラーは顔をあげる。
そこには何もないように見えたが……
ヒトラーは空色の瞳を細めて、そこをじっと見つめた。
そうしていると、そこの空気が揺れた。
そこに現れる、亜麻色の髪の堕天使。
彼……フォルは、微笑みながらヒトラーに微笑みかけて、言う。
「薔薇は君にとって毒と同じじゃない?
どうしてこんなところにいるの、悪魔様?」
フォルの問いかけにヒトラーは顔をしかめた。
そしてふいっと、目を逸らす。
そう。
彼の不調の原因……
それはこの空間……薔薇園に満ちる、薔薇の香り。
それは、ヒトラーにとっては毒薬も同じである。
その事は、ヒトラー自身が誰より良く知っていることのはずだった。
ヒトラーはそんな彼を軽く睨み付けると、"貴様には関係ないだろう"といった。
その鋭い表情と口調に動じた様子もなく、フォルは肩を竦めた。
怖い怖い、と口では言うが、一切そんなことを思っている様子は、ない。
そんな堕天使はスッとサファイアの瞳を細めて、ヒトラーを見る。
そして小さく首をかしげながら、囁くような声でいった。
「何度此処に来たって、結果は変わらないよ?」
そういいながらヒトラーを見据える青い瞳。
ヒトラーはそれを一瞥すると溜め息を吐き出して、呟くようにいった。
「……わかっている。私が私である以上、此処にはとどまれない」
自分は悪魔だから。
自分は、"アドルフ・ヒトラー"だから。
だから、薔薇園にはとどまれない。
ヒトラーはそういう。
フォルはくすりと笑うと、ヒトラーの前にたった。
そして彼の目を見据えつつ、言う。
「わかっているのに来るのは、どうして?」
楽しむように、遊ぶように、彼は言う。
ヒトラーはそれを睨んだ。
彼の空色の瞳に紅色が点る。
「……貴様も、わかっているだろう」
「ふふ……君自身がそれを否定したいから……かな?」
小さく首をかしげる堕天使は無邪気に笑った。
ヒトラーは肯定も否定もせずに、俯く。
そう。
否定、出来なかった。
自分が此処に来てみるのは、それでも大丈夫だったと言える日が来てほしいから。
薔薇の花に触れても、薔薇の香りに包まれていても平然としていれば、
それは自分が罪から解放された証のように感じられると思ったから。
しかし……
あいにくそれは、叶いそうになかった。
今も、体がふらつく。
見つめている堕天使の姿も時折霞んだ。
フォルはそんな彼を見つめて、目を細め、嗤う。
そして歌うようにいった。
「おかしいね?
君なんかより僕の方がずっとずっと罪深いだろうに……」
「その自覚はあるんだな……」
自分が罪深い存在であるという意識。
それはあるのかとヒトラーが問えば、フォルはあっさりと頷いた。
「あるよ。だって親殺しは最大の禁忌だし」
他にも色々やったしね、と悪びれた様子なく、フォルは言う。
ヒトラーはそんな彼を見つめ、呟くよにいった。
「いっそのこと……お前のような気質なら、良かった」
切実に、そう思う。
ヒトラーはそういいながら目を伏せた。
悪魔らしくない悪魔。
フォルはヒトラーのことをそう表した。
悪魔なのに人を殺めたり傷つけたりすることを恐れ、拒む。
寧ろ、守りたいと願う。
それこそまるで、天使のように。
それは滑稽だと、堕天使は時折いった。
けれどそれでもいい、守りたい、そうねが居続けているのがヒトラーだ。
しかし……
なかなかそういかないのも、事実で。
恐れていても、暴走すれば危険にしかならない、悪魔の力。
守りたいと願えども、傷つけてしまうことは多々あって……
その度に、ヒトラーは思った。
持つ魔力が変えられないと言うのなら、せめて性格でも変われば良かった。
今目の前にいる堕天使のように、人を傷つけることにも愉悦を感じるような気質なら、
きっとこんなにも苦しむことはなかっただろうに……――
「皮肉だよね」
フォルはそういって、小さく笑った。
それと同時に魔力を解放して、背に大きな翼を持つ、堕天使本来の姿をとる。
大きな大きな、黒い翼。
それを羽ばたかせながら、フォルはいった。
「僕はこれでも天使だもの。
堕天使ではあるけれど……悪魔ではないからね」
わざとそういうフォルに、ヒトラーは顔を歪める。
フォルの魔力に当てられてか、彼の魔力も溢れ出して、彼の瞳は紅色になっていた。
ばさり、と開く翼。
それと同時にひらりと舞った羽を見て、ヒトラーは目を見開いた。
「な……」
舞った羽。
それは、純白の羽だった。
そうだったら良かったのにと願った、天使の羽……――
フォルは固まるヒトラーを見て、笑いながら魔術を解いた。
舞い散る羽は、再び漆黒に染まる。
幻影だったのだと、ヒトラーも理解した。
「いくら染めても変わらないよ。
僕がそうしたように白を黒に染めることはできても、
黒を白に染め直すことは、できないに決まってる」
色が強すぎるんだもの。
フォルはそういいながら笑った。
ヒトラーはそんな彼をぎっとにらむ。
しかし体が大きくふらついて言うことを聞かなかった。
そのまま倒れそうになったヒトラーを抱き止めて、微笑んだ。
「本当に、君が天使なら良かったのにね」
悪魔の心を、魔力を有する天使は笑いながらそういう。
白い翼を望む黒衣の悪魔は、ぐっと唇を噛み締めた。
「うる、さい……」
「事実じゃない?
悪魔様がほしかったのは、君が今持ってる翼じゃない。
元が白かった僕の翼でもない……
フィアや、医療棟の天使様みたいな真っ白い翼に憧れたんでしょう?」
―― 叶うはずないのにね。
そんなフォルの言葉に反撃しようとすると同時、ヒトラーの意識が大きく揺れた。
どうやら、此処にいるのはもう限界らしい。
フォルにもそれがわかったと見えて彼は小さく笑った。
そして、ヒトラーの耳元で言う。
「どうする?出ていく?
それとも、此処で薔薇に抱かれて終わりになりたい?」
望むならそうしてあげるよ、とフォルは言う。
ヒトラーはそんな彼を無言で睨み付けた。
離せと視線で訴えれば、彼はあっさり離した。
そして近くに咲いていた白い薔薇の花を一輪折った。
ヒトラーは殊更苦手なその花から視線を逸らす。
フォルはそれを指先で撫でながら、いった。
「白を染めることは、幾らでも可能なのにね」
そういいながらフォルは小さく呪文を呟く。
刹那、薔薇の花は鮮やかな青色に染まった。
フォルはそれを指先で弄りながら、言う。
「不可能だって可能に出来る。だって僕は、堕天使だもん」
―― イレギュラーだからね。
そういったフォルは青い薔薇を、ヒトラーの髪に絡めた。
「君を天使に変える方法がない訳じゃないよ。
でも……
そのために仲間の命を危険に晒すことは、"優しい"君は出来ないだろうから」
いずれにせよ、無理だね。
そういうと、フォルはぐっと伸びをした、
そしてすでに意識が朦朧としている様子のヒトラーを見つめ、微笑んだ。
「早く帰りなよ悪魔様。此処は君がいる場所じゃない」
そんな彼の言葉にヒトラーは"わかっている"と返して歩き出す。
それを見つめたフォルは楽しそうに笑って、
"白い翼を望む悪魔様、か"と呟いたのだった。
―― 望む色は… ――
(幾ら望んでも叶わないと知っている
けれど望まずにはいられないんだ、漆黒の翼を持つ私は)
(それが叶わないならせめて性格だけでも悪魔らしくありたかった
そうすればきっと、こんなに苦しまずにすんだのに)