久しぶりのお医者様コンビのお話です。
師であるフェアシューアーさんを慕うメンゲレさんを書きたくて…
こういうやり取り好きです←おい
*attention*
お医者様コンビのお話です
ほのぼのなお話です
フェアシューアーさんを慕うメンゲレさんを書きたくて…
こういう発言をしててくれたらなという妄想でした
ジェイドにとってはカルセがそういう立場の人なので…
弟子同士のこういう会話も素敵だと思います(^q^)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKというかたは追記からどうぞ!
爽やかな秋風が吹き抜ける、国の中心地。
白衣の裾を靡かせて、ディアロ城の医療棟の長い廊下を歩いていく黒髪の少年の姿があった。
すれ違う幼い騎士たちに微笑んで会釈を返しつつ、
彼……メンゲレが向かうのは自分の上官であるジェイドの部屋。
仕上げた書類を手に辿り着いた彼の部屋のドアを軽くノックした。
「ジェイドさん、メンゲレです」
入ってもよろしいですか?と声をかけると、すぐにどうぞと声がかえってくる。
メンゲレはドアを開けて、部屋のなかに入った。
机に向かっている長い緑の髪の男性……ジェイドは振り向いて、微笑む。
メンゲレは彼に歩み寄って、仕上げてきた書類を渡した。
「これ、お仕事の書類です」
確認お願いしますといって微笑むメンゲレ。
ジェイドは彼に微笑みかけつつ書類に視線を落とした。
メンゲレは彼が書類を確認している間に周囲に視線を巡らせてみた。
通いなれた、上官の……恋人の、部屋。
消毒液と紅茶の香りがよく似合うこの部屋は、メンゲレにとっても見慣れたものとなっていた。
たくさんの本。
たくさんの書類。
これを見せてもらうことも多い。
ふと視線が向いたのはジェイドの机。
ジェイドの机の上には幾らか書類が散らばっている。
それは仕事の書類ではなく、彼自身の研究資料のようだった。
ジェイドは薬品学の研究をしているのだっけ。
この国の王女ディナに研究を託されるくらいの実力を持つ研究者。
メンゲレも時々その手伝いをしたりもしている。
色々な化学式。
魔術による反応。
薬の作用、副作用。
それらを細かにメモした書類に刻まれている文字は、
普段ジェイドが提出書類の文字より少し崩れていて、なんだか新鮮だ。
「メンゲレ?」
聞こえた声に、メンゲレは顔をあげる。
どうやら書類のチェックが終わったらしい。
彼はにこりと微笑むと、いった。
「書類、ありがとうございます。
メンゲレは仕事も早いし丁寧だからとても助かりますよ」
いつもすみません、とジェイドは少しすまなそうにいう。
どうにも多忙で、どうしても一人で書類が捌ききれないとき、
メンゲレにこうして手伝ってもらうことも多いのだ。
すまなそうな顔をしているジェイドを見て、メンゲレは笑顔で首を振る。
「いえいえ、僕でお役にたてるなら何でも……」
大丈夫ですよ、とメンゲレはいう。
そしてジェイドの机の上の研究書類を見ながら、微笑んでいった。
「ジェイドさんの、研究の書類ですか?」
「え?えぇ、そうですよ」
なかなか進みませんけどね、と苦笑しつつ、ジェイドは書類を撫でる。
仕事の傍らというのは、やはりなかなかうまくいかないものだ。
ジェイドはメンゲレの方を見ながら首をかしげて、いう。
「メンゲレも、自分の研究などあればして良いのですよ?」
貴方も元々どちらかと言えばそっちの仕事をしていたのですし、とジェイドはいう。
メンゲレは彼の言葉に微笑んで、いった。
「僕の一番の研究成果は、あの子たちですよ」
そういいながらメンゲレが視線を向けるのは窓の方。
中庭で遊ぶ金髪の双子の姿があった。
ジェイドはそれを見て、翡翠の瞳を細める。
「ふふ、それもそうでしたね」
もう十分な成果は出ていましたね、といって笑うジェイド。
それを見て、メンゲレは微笑んだ。
双子が大好きな彼。
その愛情ゆえに、国の研究設備や知識、文献、
そして当人の魔術を用いて生まれたのが彼ら……アントレとソルティだ。
その研究成果は十分すぎるといってもいい。
けれど、とメンゲレは口を開く。
ジェイドは小さく首をかしげて、彼の方を見た。
「でも、研究に終わりはない、ですからね」
メンゲレは微笑みながらそういう。
ジェイドは彼の言葉に幾度か翡翠の瞳を瞬かせた後、ふわりと笑っていった。
「おや、良い言葉ですね」
研究者としての心得というやつですか、とジェイドはいう。
メンゲレは彼の言葉にふわりと笑って、頷いた。
「ふふ、先生がそう仰ってたから……
僕もそう思っているんですよ」
先生の受け売りなんですけれどね、とメンゲレは微笑む。
その表情は穏やかで、暖かなものだった。
彼が慕う、先生……フェアシューアー。
優生学を専門とする彼。
ディアロ城に移ってからは会う機会も減ってしまっていたけれど、
最近では時々アントレやソルティ、メンゲレの様子を見るために、来てくれる。
そうしてあったときはいつも、昔のことを思い出すのだった。
ジェイドはそんな彼を見つめて、目を細める。
そしてくすっと小さな笑みを漏らしつつ、いった。
「ふふ……貴方は本当に彼のことが好きなのですね」
「え?」
彼の言葉にメンゲレはキョトンとした顔をした。
彼はいきなりどうしたのだろう?と。
ジェイドはそれを見つめて微笑みながら、いった。
「彼の……フェアシューアーのことが、ですよ。
彼のことを話すときの表情は、やっぱり少し違うから……」
見ていてもわかる。
メンゲレが昔を話すとき、自分の研究について話すとき、
よく登場するのは彼の師である"彼"の名前だ。
それもとても楽しそうに、嬉しそうに話すものだから……
「ちょっぴり、妬けますね?」
そういって、ジェイドは小さく笑う。
そんな彼を見て大きく目を見開いたメンゲレは、慌てたように首を振った。
「ち、違いますからね!
先生のことは、尊敬しているというか、慕っているというか、
そういうので……!」
彼の気分を害していたらどうしようという思いが働いてか、メンゲレは必死にそういう。
ジェイドは彼の反応を見ておかしそうに笑いながら、いった。
「必死にならなくて良いんですよ、わかってますから。
私が先生……カルセ様を慕うのと同じでしょう?」
師を慕う弟子の気持ちはよくわかる。
ジェイドはそういってメンゲレを落ち着かせた。
もっとも、自分が自分の師であるカルセを慕うよりもなお、
メンゲレはフェアシューアーのことを慕っているように思えたけれど。
ジェイドの言葉に幾分落ち着いたメンゲレはふっと微笑みつつ、いった。
「何だか、新鮮です。ジェイドさんがカルセさんのことそう呼ぶの」
いつもは"先生"と呼んでいるでしょう?とメンゲレはいう。
ジェイドは彼の言葉に頷きながら、いった。
「一応そう呼んでいたときもありましたよ。
いまはもっぱら、"先生"とお呼びしていますが……
やはりそれが一番しっくり来るのですよね」
昔から、カルセはジェイドにとって"先生"だ。
だからこそその呼び方がしっくりくるのだろう。
そういうジェイドに、メンゲレは賛同するように頷いた。
彼のいうことは、よくわかる。
「いつまでも、変わらないんですよねぇ……
僕ももう、こんなに大きくなったのに」
相変わらず"ベッポちゃん"なんて呼ばれますし、といってメンゲレは苦笑する。
ジェイドはそんな彼を見て穏やかな表情のままいった。
「先生方からしてみれば、僕たちはいつまでも子供のようにみえるのでしょう。
多分、僕もアルのことはずっといまのように扱っていきますしね」
「ふふ、やっぱりそういうものなのでしょうね……
でも、いまもこうして可愛がってもらえるのは嬉しいものです」
メンゲレはそういいながら軽く髪をかきあげて、微笑んだ。
今度フェアシューアーが遊びに来てくれるときにはお菓子を作ろう。
彼は喜んでくれるだろうか?
そんなことを思いながら……――
―― いつまでも… ――
(僕があの人を慕う感情も変わらない
あの人が僕を可愛がってくれるのが変わらないように)
(師弟なんてきっとそんなものなのでしょう
いままでも、そしてきっとこれからも)