ノアールの心情SSです。
こういうシリアス目なお話を書きたくなりまして…
愛したいし愛されたいけどその方法がわからない、と言うノアールが書きたくて…(^q^)
もういっそ諦めた方が良いんじゃないか、と思い始めるのがノアールだったりします。
フォルとノアールは確かに似てるのに相違点ここだよなぁ、と思ったり…←
ともあれ、久しぶりの彼をかけて楽しかったです…
不憫境遇のノアールが好きです
慰めさせたかったけどバスシーンだったので諦めました(^q^)←
ともあれ追記からお話ですー!
ザーッと響く水音。
シャワーの湯が肌に当たる。
黒髪の彼……ノアールはふっと息を吐き出した。
色の白い肌に浮かぶ無数の痣と傷。
それは彼が幼い頃に負ったものだ。
シャワールームの鏡に映るその姿を見て、ノアールは少し顔をしかめた。
消えない傷。
消えない痣。
それは、彼の両親が負わせたもの。
魔術を使って刻まれたものは殊更消えず、彼の肌に色濃く虐待の痕を残していた。
シャワーのコックを捻って湯を止めると、ノアールはバスタブに体を沈める。
自分の前に入った小さな操り人形が気をつかって湯を沸かし直してくれたらしく、
綺麗でちょうど良い水温のお湯が溜まっていた。
「ふぅ……」
ノアールは小さく息を吐き出す。
そして軽く腕を伸ばした。
そこにも、傷が残っている。
いつも黒いスーツとグレーのシャツで隠れているそこは日に焼けてもいなくて、
彼の髪や瞳とは対照的な真っ白い肌をたもっている。
―― 不気味だわ。
自分の母親にぶつけられた言葉を、思い出す。
漆黒の髪。
漆黒の瞳。
それは両親のどちらとも異なっていた。
街の人たちの噂によれば、彼は夫婦の間の子供ではないとか言われたほどに。
しかしその実彼は二人の子で……
その時には少しほっと、したのかもしれない。
けれど、正しく二人の子供だったところで、両親の彼への扱いは変わらなかった。
そもそもの話、彼の住んでいた街では彼の容姿そのものが不吉とされていた。
漆黒の髪と瞳。
それは悪魔の子と言われていたから。
挙げ句、ノアールは本当に悪魔の魔力を持っていた。
だからなおのこと、冷たく扱われた。
両親は悪魔の親と言われることを恐れ、容姿はどうしようもなくとも、
彼自身が"良い子"であることを周囲にアピールしようとした。
彼自身が良い子であると言うことはつまり、
親の教育が行き届いていると言うことだから。
だから、ノアールは体こそ傷だらけでも、あらゆることに精通していた。
勉強は出来たし、中流貴族の家に生まれた彼であったから社交界への出入りもあって、ダンスや歌、音楽も得意。
それを教え込むときにも、教育といって彼を必要以上に殴ったり傷つけたりした。
ノアールが悲鳴をあげたり泣いたりしないのを良いことに、
日頃の鬱憤の捌け口として自分の子供を使ったのだ。
逃げ出したかった。
そう、確かに思っていた。
事実逃げたこともある。
でもすぐに見つかって、捕まって、連れ戻されればもっと酷い目に遭う。
それに逃げたところで一人で生き延びることが出来ないのも、
頭が良いノアールはよくよく知っていた。
だから、どれだけ傷つけられようともおとなしく従い、耐えていた。
そのなかで彼が失ったものはあまりに大きい。
否、最初から与えられなかったものと言うのが正解か。
愛情など知らない。
求めても与えてくれる人はいなかった。
愛しかたも愛されかたもわからない。
そういう存在が出来た今も……――
扱いがわからない。
傷つけたくなくて、守りたくて、それでも傷つけてしまう。
それが、苦しくて、怖くて、手放した方が良いと何度も思って……
「主は、凄い……な」
ノアールはそう一人ごちた。
自分と同じような境遇にあったはずの彼。
でも彼は、上手な愛しかたを知っている。
それが羨ましく、妬ましくさえあった。
ノアールは静かに目を閉じる。
そのまま湯に沈んで、息を吐き出した。
呼吸が泡になって立ち上る。
どうしたら上手に人を愛せるだろう。
否、いっそそれを諦めて、愛しいと思う人を手放した方が良いだろうか?
そんなことを思いながら、ノアールは暫し湯に沈んでいたのだった。
―― Love ――
(その意味を俺は知らない
愛することも、愛されることもわからない)
(俺を愛してくれる人などいない。
そう思っている自分が心の何処かにいるから)
2014-9-8 21:07