シュペーアさんとペルのお話です。
一度本気でキレるペルを書いてみたくて…←
*attention*
シュペーアさんとペルのお話です
シリアスめな?お話です
ペルが本気で怒ると結構怖いです
シュペーアさんのことが好きだからこそこれは怒るだろうなと…←
そしてシュペーアさんにストッパーになってほしいなと思った結果でした(^q^)
色々お世話かけます、シュペーアさん…
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
穏やかな日差しが降り注ぐ午後の騎士の棟。
その中庭のベンチに腰かけているのは、長い黒髪の少年。
艶やかな黒髪が、吹き抜けた風にさらさらと揺れる。
彼……ペルは一人、此処で時間潰しをしていた。
彼が親しくしている銀髪の彼、シュペーアの仕事が終わるまでの時間潰し。
普段は読書をしている彼なのだが、今日は図書館に人が多くて、
そこにいるのを断念して、こうして外に出てきたのだった。
ぼうっと、ただ座っているだけの彼。
それは傍から見れば置物のようにさえ見える。
昔の癖で気配や魔力を消してしまうらしく、存在感も薄い。
事実、彼の傍を通った騎士たちはうわっと驚いた声をあげたりした。
ペルはそれも気にした様子なく、一人で座っている。
表情は少しも変わらず、彼の感情を全く感じとれない人間からしてみたら、
少なからず不気味にさえ見えたことだろう。
早くシュペーアが帰ってこないかな。
今日は、帰ってきたら何処かに出掛けようか。
それとも、また文字を教えてもらおうか。
ペルは、内心ではそんなことを考えていた。
表情は変わらない。
感情も、他の人間に比べれば鈍い。
殊更、楽しいとか嬉しいと言う感情は。
それでも……少なからず、人間らしく戻りつつあった。
それはひとえに、彼の傍にいるシュペーアのお陰で……――
そんなことをぼんやりと考えていた時だった。
ペルはぐいっと後ろから強く、マフラーを引っ張られるのを感じた。
ぐっと、首が絞まる。
悲鳴こそあげなかったものの、彼は小さく声を漏らした。
「っ、痛い……」
そんな彼の声に、数人の少年の笑い声が重なる。
彼のマフラーを引っ張ったらしい少年たちはペルの前に出てきながら、いった。
「こんな真夏にマフラーして変なの」
そういいながら、彼らは再びマフラーを引っ張る。
確かに今は真夏。
普通に考えれば、ペルの格好は夏にはふさわしくない。
けれど、ペルにとってはこれで良かった。
別に暑いトも感じないし、この服の形はにている。
だから、構わないでと言うように、ペルは彼らから離れた。
そんな彼を見て、少年たちは顔を見合わせる。
そして、せせら笑いながら、まじまじと彼を見つめた。
この城のなかではいい印象を持たれていない、ペル。
それは彼自身も自覚しているから、出来ることならこの城の騎士と関わりたくない。
さりげなく視線をそらそうとしたが、それより前……
少年の一人が、ペルが胸に下げているものの存在に気がついた。
「って言うかこれ、ヒトラーさんたちの……どうしたんだよこれ?」
そういいながらその少年はペルが下げているペンダントに触れた。
それはシュペーアがペルにプレゼントしたものだった。
本当はこういうものを軽々しくあげちゃいけないんだけど、と苦笑しつつ、
彼はペルに、彼らの部隊のモチーフをくれた。
主のフォルや、仲間であるノアール以外になにかをもらったのがはじめてだった。
それはとても嬉しいことで、ペルはいつでもこのペンダントを下げていた。
しかしそんなことを知らない少年たちはペルがそれを持っていることを訝る。
そして、ぐっと力をいれて、そのペンダントを引っ張った。
首の後ろで引っ掛かる鎖の感覚。
それがなくなったと思ったら、大切なペンダントは少年たちの手のなかにあった。
どうやら、強引に鎖を引きちぎったらしい。
「騎士でも何でもないくせに、何でこんなもんつけてんだよ?」
生意気ー、といいながら少年たちは笑う。
ペルは彼らに手を伸ばした。
「返して……」
彼の表情は変わらない。
しかし、彼をよく知る人間が見たら一度で焦りと、怒りを感じ取ったことだろう。
しかしあいにく少年たちは気がつかない。
ペルの感情にも自分達がとったものの大切さにも。
「やーだよー」
とれるもんならとってみろ、と言いつつ、彼らは逃げる。
ペルは彼らを追ったが、その速度は遅い。
少年たちは彼のペンダントを見ながら、いった。
「流石に本物じゃないよな?」
「ただのレプリカだろ?どうしたんだよこれ」
そういいつつペンダントを揺らす、少年の一人。
彼らに追い付いたペルは手を差し出しつつ、いった。
「返して」
先程より少しだけ強い口調。
少年たちもそれを感じたのか、少しだけ怯む。
しかし、"やなこった"といった。
からかってやろうと思った。
ぼうっとしている、憎たらしい少年を。
かつてこの国の騎士たちをさんざん攻撃した少年を。
ペルはスッと漆黒の瞳を細める。
そしてもう一度、冷たい声でいった。
「それは、僕の……返して」
冷ややかな声色だった。
流石にまずいとも思ったけれど、少年たちも今さら引き下がれない。
"嫌だよ"と言いつつ、さらに遠くに逃げようとした。
―― しかし。
「返せ」
そんな冷たい声と同時に、強い悪魔の魔力を感じた。
それは他でもないペルから放たれているもので……
強い悪魔の魔力。
少年たちはそれに怯み、固まる。
普通の人間には強すぎる、その魔力。
ペルはそれを平然と彼らに向けていた。
「僕の、宝物……返して」
淡々とした、でも鋭さを感じる声。
少年たちはそれを感じて、身動きをとることも口を開くことも出来なくなる。
「返して」
返して。
返せ。
それだけを淡々と呟く彼は相変わらずの無表情で、
それでもたしかな怒りを感じさせる魔力は放出していて……――
「う……」
一人の少年が、膝をつく。
他の少年たちも次々にその場に崩れた。
ペルの強い悪魔の魔力に当てられたのだろう。
そんな彼らの様子を見ても、ペルは攻撃を緩めようとしない。
彼の長い髪が風もないのに広がった。
と、その時。
「駄目だよ、ペルさん」
そんな声と同時に、ペルの手首を誰かが掴んだ。
優しい、慣れた手。
少し冷たいそれは、氷属性魔術使いであることを示していた。
その瞬間に放出されていたペルの魔力は収まる。
どうやら、冷静に戻ったらしい。
そのまま彼は自分の手をつかんだ相手を見た。
それは、彼が一番なついている銀髪の彼……シュペーアで。
「あ……」
ペルは小さく声を漏らす。
シュペーアはそんな彼を見てほっと息を吐いた。
先ほどの、明らかにいつもと雰囲気の違うペル。
あれが、どうにか消えたから。
そうしてペルの魔力が落ち着くのと同時、彼のペンダントをとった少年たちは、
わぁっと声をあげて逃げ出していった。
彼のペンダントは地面に残したままに。
ペルはそれを見ると、ゆっくりとそれに歩み寄った。
そして拾い上げて、そっと小さな指先で撫でる。
シュペーアもそんな彼に歩み寄った。
「……ごめ、ん……なさい」
暴走、した。
ペルは小さく呟く。
そうみたいだね、とシュペーアも頷いた。
先刻の少年たちに向けられていた敵意。
あれは明らかにやりすぎだった。
危ないと思って、シュペーアは止めたのだから。
もっとも……止められる保証は、なかったけれど。
ペルはぎゅっとペンダントを握りしめる。
そして、呟くようにいった。
「僕、これ……とられて、嫌だった……
これ、僕の、大事なもの……
シュペーアが、くれた……大事な、宝物……
だから、……」
そう、呟くように言う彼。
シュペーアは口を挟まずに、そんな彼の言葉を聞いていた。
ペルは俯く。
そして、弱い声でいった。
「……ごめん、なさい。
でも、これだけは、許せなくて、嫌で……」
「そっか……その気持ちは、僕もわかるから」
大丈夫だよ。
シュペーアはペルにそういってやる。
事実、よくわかった。
彼が、どうして怒ったのか。
細かいことは、実際見ていなかったからわからなかったけれど、
ペルの剣幕と、あの少年たちがペルのペンダントを持っていたこと、
それを統合すれば、大体何が起きたかは想像がつく。
ペルはそっとペンダントを撫でながら、いった。
「ごめん、ね……シュペーア」
唐突な謝罪。
シュペーアはその言葉に幾度かまばたきをする。
そして、小さく首をかしげながら、いった。
「どうして謝るの?」
「壊れた、から……大事にするって、約束、したのに」
これ、といってペルはシュペーアにペンダントを差し出す。
それは、強引に奪われた所為で、鎖がちぎれていた。
シュペーアはそれを見て、微笑む。
「大丈夫、これくらいならすぐに直るから」
「ごめん、ね」
そう詫びる彼の声色は暗い。
シュペーアはそんな彼の頭に手をのせてやりつつ、いった。
「そんなに落ち込まなくて大丈夫だよ。ちゃんと直るから」
器用なシュペーアはアクセサリーを作ったりもする。
修繕だってお手のものだ。
しかしペルは彼の言葉に首を振る。
「そうじゃ、なくて」
「?どうしたの?」
それじゃあ、どうして?
シュペーアがそう問いかけると、ペルは暫し沈黙した。
その後、小さく呟くような声で言う。
「……他の人に、もう怪我させないって、いったのに……」
ああして、暴走して。
下手をしたら、殺してしまったかもしれない。
その事を、ペルは詫びているらしかった。
シュペーアはそれを聞いて、目を細める。
そして優しく彼の頭を撫でてやりながら、いった。
「あぁ……確かに、あれは良くなかったと思うけど……
でも、彼らも悪いことをしたんだから、ペルさんだけが気に病むことじゃないよ。
次から気を付ければ、大丈夫」
ね?といってシュペーアは微笑む。
ペルは暫しそんな彼を見つめた後、こくんと頷いた。
「……ん」
わかった、ありがとう。
ペルはそう言うと、ぎゅっとシュペーアに抱きつく。
シュペーアは彼の"宝物"を早く直してあげないとな、と思いながら、
小さな彼の体をしっかりと抱き止めてやっていたのだった。
―― 大切な宝物 ――
(彼にもらった、僕の宝物
とられることが許せなくて、ついつい力が暴走して…)
(ごめんなさい。素直に詫びる彼。
不謹慎かもしれないけれどあれだけ僕が贈ったものを大事にしてくれてるのは嬉しかったよ)