久しぶりにアズルとダリューゲさんのお話です。
ちょうどアズルの誕生日なので…こういうネタで。
ちょっとシリアスチックになったのは趣味です←おい
*attention*
ダリューゲさんとアズルのお話です
ほのぼの時々うすらにシリアス
アズルの誕生日ネタなお話
アズルはお酒に弱いです(笑)
ダリューゲさんの姿は変身魔術で保っているものらしいのでこういう会話を…
アズルはダリューゲさんに傍にいてほしいて強く思ってそうなので…
甘えん坊の国王がお世話かけますダリューゲさん←おい
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
大きな城の一室。
そこに通された、長い三つ編みの少年……ダリューゲは、
部屋の主が帰ってくるのを静かに待っていた。
この部屋の主……アズル・フィオーレはこの国、ミラジェリオ王国の国王。
挙げ句今日は彼の誕生日。
城でも、城下町でも、大変な騒ぎで、今日はその護衛の為に、
ダリューゲが駆り出されていたのだった。
しかしもう外に出る用事はないし、少ししたら自分も自室に帰るから。
護衛は多分、もう必要ないよ。
そんな言葉を受けて、ダリューゲは帰ろうとした。
しかし、それを彼が呼び止めたのだ。
―― もう少し、時間あるかな?
君と少し話したかったんだよ、とアズルは彼にいった。
ダリューゲはこの国の騎士ではない。
けれど、今は別段急ぎで任されている用事もないし……
―― 構わないよ。
そう、彼に返したのだった。
そして至る現在。
アズル不在の彼の部屋にいるわけである。
彼の護衛を務めるようになってから、時々訪ねるようになったこの部屋。
広くて、でもあまり余計なもののない部屋。
読書好きの彼らしく、本棚が部屋の中の家具のほとんどだ。
そんなことをダリューゲが思っていたとき、ドアが開いた。
アズルが帰ってきたのだろう、そう思って振り向いたダリューゲは目を丸くする。
「アズル?どうしたの?」
なんだか、様子がおかしい。
ふらふらしているというか、なんというか。
一瞬毒でも盛られたのか、あるいは体調不良かと焦ったが……
なんのことはないと、すぐに気がついた。
ぱたり、とベッドの上に伏せるアズル。
溜め息をひとつ吐き出した後、ダリューゲは彼に歩み寄った。
「アズル、酔っぱらってるの?」
そう。
感じたのは、甘いアルコールの香り。
どうやら彼は酔っぱらっているらしい。
アズルはダリューゲの声に顔をあげた。
そして、こくりと小さく頷く。
「ちょっと、話の流れで飲むことになっちゃって……」
飲んできた、とアズルは答える。
彼の顔は赤く、呼吸からはやはりアルコールの匂いがする。
ダリューゲは苦笑しつつ、彼にいった。
「あーあー……何飲んだの?」
「ワイン軽く一杯だけ……」
そう返答するアズル。
たったそれだけでここまでへろへろになるとは……
「弱いんだね、アズル」
「そうなんだよ……弱いことはわかりきってたんだけど」
断りきれなかった、といってアズルはベッドに潰れる。
ダリューゲはそんな彼をみて苦笑すると、"お水もらってこようか?"と訊ねた。
この場合さっさと水を飲んで寝るのが得策だろう、と。
しかしそういって歩き出しかけたダリューゲの手を、アズルが握った。
ダリューゲは驚いて、彼の方をみる。
「いいよ……大丈夫」
「大丈夫ってアズル……もう」
溜め息を吐き出したダリューゲは部屋を出ていくのを諦めた。
素面の時より幾らか力が強いアズル。
彼の手を振り払ってまで水を取りに行かなければならなさそうではない。
ダリューゲはアズルの方へ身を屈めた。
そして軽く髪を撫で付けつつ、言う。
「お誕生日おめでとうございます、国王様」
「その言い方は、やめてほしいなー……」
聞きあきたよ、とアズルは苦笑する。
それと同時に少し寂しげな声でもあった。
国王であると言う立場。
それゆえ、"友人"と呼べる存在はいなかった。
周囲は自分を国のトップとしか見てくれない。
名で呼ぶときも、呼び捨てではなく様付け……
その距離が悲しいと、彼はよくいっていた。
ダリューゲはそれをみて微笑むと言い直す。
「お誕生日おめでと、アズル」
しっかりと、ダリューゲは言う。
アズルはそれを聞いて嬉しそうな顔をした。
「うん……ありがと、ダリューゲ」
そういって嬉しそうに微笑んだかと思うと同時……
「わ……っ!?」
ダリューゲが小さな悲鳴をあげた。
というのも、彼の腕を掴んでいたアズルがその手に力を込め、
自分の方に向かって引っ張り寄せたからだ。
子供の姿をとっているダリューゲ。
彼の小さな体では、突然の行動に耐えきることは出来ず、
アズルの寝ているベッドの上に転がる形となったのだった。
「ちょ、っと?アズル?」
いきなり何?とダリューゲはアズルに問いかける。
そして彼の顔をみて、ダリューゲは緑色の瞳を見開いた。
間近でダリューゲを見つめている、アズルの瞳。
深い緑の瞳はアルコールの所為か、少し潤んでいた。
何だか変に色っぽい表情で、ダリューゲは困ったように視線を彷徨わせる。
と、その時。
アズルがそっとダリューゲの額に手を伸ばした。
そして彼の額にかかった前髪を柔らかく払う。
「君は、さ……」
ふわふわと、寝ぼけたような声。
アズルのその声に、ダリューゲは小さく笑いつつ、"何?"と答える。
すると、アズルは暫し間を空けた後、いった。
「君は……ずっとその姿でいることも、出来るんだろうね……」
「え?」
彼の言葉に、ダリューゲは目を見開く。
そうして幾度か瞬いた彼の瞳を見つめつつ、アズルはいった。
「僕が年をとっても、それこそ……死んだとしても、
君はそのまま、変わらない姿でいることも可能なんだろうね……」
変身魔術で姿を変えているダリューゲ。
大人の姿でいるよりも、今とっている子供の姿でいる方が、
任務をこなす上で好都合だからと、そうしている。
だから、確かにアズルの言う通りだ。
その姿を保ち続けようと思えば、可能。
事実、実際の年齢は恐らくアズルとさして変わらないはずだ。
でも、どうしていきなり彼はそんなことを?
「どうしたの?アズル?」
いきなりそんなこと訊いて、とダリューゲはアズルに問いかける。
アズルは自分のすぐ傍に寝転がる形になっているダリューゲをじっと見つめた。
そしてそのまま、ぎゅっとダリューゲのことを抱き寄せる。
「……それでも、傍に居てくれる……?」
自分が年をとって姿が変わっていっても。
君自身が変わらなかったとしても。
それでも傍に居てくれるかと、アズルはダリューゲに問いかける。
その言葉にダリューゲは驚いたように何度もまばたきをした。
そして、小さく息を吐き出して……こくりと頷いた。
「アズルが傍にいるようにっていうのなら、ね。
それに、必要とあれば、僕が姿を変えて大人の姿になるし」
「それは、必要ないよ……僕、君のその姿が好きだからね」
かわいいし、といってアズルは笑う。
それからすぐに聞こえてきたのは、静かな寝息。
どうやら、アルコールの影響もあって眠ってしまったらしい。
ダリューゲはそんな彼をみて苦笑を浮かべる。
"困った国王様だなぁ"と呟いた。
彼の腕はしっかりとダリューゲを抱き締めている。
これをはずして帰るとなると、結構大変そうだし、
何より、アズルを起こしてしまうかもしれない。
それに……
こうして自分を抱き締めていると言うのは、
無意識に帰らないでほしいといっているのだろう。
「仕方ないなぁ……」
ちゃんと傍にいるか、とダリューゲは呟く。
そして少しだけ体を動かして、彼の顔をみた。
眠っているアズル。
それをみて目を細めると、ダリューゲはいった。
「……逆に、だよアズル」
―― この僕を、傍においといてくれる?
自分の体を武器に変えられる。
姿も自由に変えられる。
そんな自分と、一緒に居てくれるだろうか?
眠っているアズルは答えない。
けれど、今こうして抱き締めてくれているこの腕が答えであるような気がして、
ダリューゲはふっと笑うと、静かに目を閉じた。
"おやすみ、アズル"ともう一度、彼の名前を呼びながら。
―― さきのこと ――
(誕生日であるこの日に考えたのは、これから先のこと。
ねぇ、君はこれからも僕の傍に、居てくれるのかな)
(特殊な力を持つ僕。それに傍にいてほしいと言う君。
それは、これから先も叶え続けていける願いだろうか?)