シュペーアさんとペルのお話です。
さいきんシリアス続いてたのでちょっと口直しに?癒し系を←
このペアも好きです(笑)
*attention*
シュペーアさんとペルのお話です。
ほのぼのなお話です。
ブランとシャムも出してみました(笑)
ペルの武器に関して言及してなかったな、てのと
ブランにもなつかれるシュペーアさんを書きたくて…←
ペルもお子ちゃまなのでこういうことも起きます(笑)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKというかたは追記からどうぞ!
静かで暗い、森のなか。
そこを歩いているのは、二人の少年。
銀髪の少年……シュペーアは隣にいる黒髪の彼、ペルに声をかけた。
「本当に良いの?僕が、ペルさんの住んでるところに行って……」
そう。
彼らが目指しているのはペルのすんでいる場所。
ペルは隣を歩くシュペーアを見上げて、こくりと頷いた。
彼をそこにつれていくと言い出したのは、ペルだ。
何やら見せたいものがあるという。
シュペーアも仕事はなかったし、良いよといってついてきたのだけれど……
昼間のわりに薄暗いこの森。
そこを歩いていくのは、少し不気味な気もする。
それに、昨夜降った雨の所為で、足場が悪い。
気を付けた方が良いよ、とシュペーアが言おうとした、その時。
不意にペルが顔をあげた。
それと同時、ぐいっとシュペーアの腕を引っ張った。
そんな動き予想もしていなかったシュペーアは驚いて大きく目を見開く。
「わ……っ」
背が低く、華奢なペルにしては強い力で引かれた。
それと同時、ペルは服の内側から何かを引っ張り出して、ある方向へ投げる。
躍りかかってきた影。
その影から悲鳴があがった。
そしてがさがさっと茂みを掻き分けて逃げていくような音が聞こえる。
どうやら、そこに魔獣が潜んでいたらしい。
シュペーアは少し驚いたようにペルを見た。
魔獣がいた場所は、彼らから離れていたはず。
それなのにペルはそれに気がついて、先制攻撃を仕掛けたらしい。
ペルは手に持っているそれ……ナイフを服の内側にしまう。
それが彼の武器らしい。
力がない彼にはちょうど良い武器だと思ったが……物騒だ。
ペルはシュペーアに"大丈夫?"と問いかけた。
シュペーアはそれにこくりと頷く。
ペルは良かった、というように頷きながら、いった。
「この辺、ご主人が作った合成魔獣いっぱい、いる。危ない」
「あ、危ないって……
というか、ペルさんは大丈夫?怪我はなかった?」
君の方がよほど至近距離だったとおもんだけど、といった。
ペルは彼の言葉に小さく頷いた。
「大丈夫……慣れてる」
「そっか、ならよかった……というか、戦えた、んだね?」
シュペーアはそういう。
何となく、ペルが戦っているイメージがなかった。
普段シュペーアが見ている彼は、幼くか弱い少年だから。
もっとも、思い出すに……
かつてはイリュジアの騎士たちと戦っていたというのだから、戦えるのだろう。
さっきのナイフ使いは、騎士たちと遜色なかった。
ペルはシュペーアにこっくりと頷いて、いった。
「僕、これでも戦える……戦えないと、生き残れない」
生きてないけど、と付け足したのは彼なりのジョークのつもりだろうか。
シュペーアがそう思いながら苦笑すると同時、ペルがぴたりと足を止めた。
いつの間にか、彼の住処についていたらしい。
ペルはドアを開ける。
「ついた、よ」
「あ、ありがとう……」
開かれたドアに、シュペーアは近づく。
ペルはふと思い付いたように彼に問いかけた。
「中に入るのは初めて、だよね?」
「うん。外までは来たことあるけど……」
中まで入ったことはないね、とシュペーアが言うと、ペルは頷いた。
そして、大きくドアを開いた。
「入って……多分、御主人とノアールは、いない」
出掛けてるから、とペルは言う。
どうやら、年長組はいないらしい。
シュペーアは少し緊張しつつ、ドアを潜った。
「お、お邪魔します」
そうしてなかに入ると同時、ぱたぱたっと小さな足音が近づいてきた。
それは、ペルよりもさらに小柄な少年のもの。
グレーの帽子を被った彼は、ドアを潜って入ってきた客人を見て、
丸い目をさらに見開く。
「あれ?人間じゃん。ペル、それ誰?」
「シュペーア」
後からドアを潜ったペルが短く答えた。
それを聞いて帽子の少年は納得したように頷いた。
「あー、前にペルがいってた建築家かー」
なるほどなるほど、と彼は頷く。
そして、リビングの方へペルとシュペーアと一緒に歩きながら、人懐っこく笑った。
「僕はブランシュ。ブランって呼ばれてる。
シャム、は知ってるみたいだな」
リビングにつき、ブランと名乗った少年は、
ソファに寝そべる大柄な少年を見ていった。
彼はシュペーアの方を見ると、ひらりと手を振って、言う。
「おー、久しぶり」
「久しぶりです」
お邪魔してます、と丁寧に挨拶をするシュペーアを見て苦笑すると、大柄な彼……
シャムは読んでいた雑誌に視線を戻した。
ブランは珍しい客人に顔を輝かせて、シュペーアに色々せっついている。
アンタも騎士なのかとか、銀髪の騎士を知っているかとか、
どんな仕事をしているのかとか……色々。
シュペーアはそんな幼い少年に律儀に一つ一つ答えてやっていたが……
そのうち、ペルにくいと腕を引っ張られた。
「?どうしたの、ペルさん?」
「……シュペーア、僕の部屋、こっち」
くいくいっと袖を引っ張られて、シュペーアは少し驚いたようにまばたきをした。
「え?あ、うん」
戸惑いつつ頷いて、シュペーアはペルにつれられるままに歩いていく。
そんな二人の後ろ姿を見送って、ブランはぱちぱちとまばたきをした。
「いきなり何なんだ?ペルのやつ」
「ヤキモチ妬いてんだよ」
それくらい察しろ、とシャムが言う。
彼の言葉に、ブランは大きく目を見開いた。
「え?!」
「お前もノアールに誰かがべたべたしてたら嫌だろ」
少し体を起こして、シャムはブランに訊ねる。
ブランはノアールのことを心から尊敬し、敬愛し、慕っている。
それを引き合いに出すと彼は即行でむくれつつ、いった。
「そりゃ嫌に決まってるでしょ!
って、そうじゃなくて……ペルが?嫉妬?」
「そう」
シャムが頷くと、ブランはほぅっと息を吐き出した。
そして、小さく呟く。
「へぇ……変わったね」
昔は無感情だったのに、とブランは言う。
嫉妬どころか笑うことも泣くことも、怒る……ことは少しあったけれど、
あんな風に"人間らしく"振る舞うことは稀だったから。
シャムはそんなブランを見て、呟く。
「そうだな……お前も大概だけど」
シャムはそう思う。
ブランも変わった。
昔は、人間なんて嫌いで、近づいただけで逃げていた。
幾らペルがなついている人間だからといって、
昔の彼ならああも話しかけはしなかっただろう。
―― 色々変わってるんだろうな、俺たち。
そんなことを考えながら、シャムは小さく息を吐き出したのだった。
***
そして、シュペーアはペルの部屋に案内されていた。
廊下の隅の部屋。
そこのドアを開けて、ペルは言う。
「此処だよ」
どうぞ、と言うペル。
シュペーアはそれに軽く頭を下げてなかに入った。
彼の部屋らしい、質素な感じだ。
机の上には筆記用具と紙切れが散らばっている。
恐らく、字の練習をしていたのだろう。
以前に比べて、彼は格段に文字を書くのがうまくなっていた。
「一人ひとつ部屋があるの?」
シュペーアが訊ねると、ペルはこっくりと頷く。
「うん。広いから、あるの」
「なるほど……あ、これ……」
そこでシュペーアが目を止めたのは、机の上にあった小さな何か。
模型、というには少し不格好な、ログハウスのような形の工作作品だった。
ペルはそれを示しながら、シュペーアに言う。
「これ、シュペーアに、見せたかった……上手には、作れないけど」
作ったんだ、とペルは言う。
そして少し照れ臭そうに、言葉をつけたした。
「シュペーア、建築家……設計、できる。模型も、作る、でしょ?」
「え?うん」
作るねとシュペーアは頷く。
それをヒトラーと一緒に見たりするのも、彼にとって楽しみのひとつだ。
ペルはそんな彼を見つめた後、不格好なそれを指先でつついて、いった。
「真似、したの。木は、拾ってきた」
いっぱいあるし、とペルは言う。
確かに形はお世辞にも良いとは言えないが、
それでも彼が一生懸命作ったのはわかる。
シュペーアはペルの頭を撫でながら、いった。
「そっか。上手だよ、器用だね、ペルさん」
彼の言葉にペルは少し頬を染めた。
そしてぼそぼそと呟くように言う。
「……器用じゃ、ないよ。頑張って、これくらい……
シュペーアは、もっと上手でしょ?」
「それは、僕の場合本職だしね」
シュペーアはそういって苦笑する。
本職なのに苦手、では笑えない。
と、その時。
ぎゅっとペルが抱きついてきた。
無言で、唐突に。
「わ、何?」
「……何でもない」
そういいながらペルはシュペーアに抱きつく。
ちょっと、甘えるように。
ブランと話していたシュペーアに、ペルは自分から声をかけられなかった。
だから、ああして無理に引き剥がしたのである。
―― それは、不器用な嫉妬。
何となくそれを感じたシュペーアは微笑んで、
優しく彼の頭を撫でてやったのだった。
―― 不器用な… ――
(僕の関心を向けようと一生懸命な彼。
その姿はやっぱりすごく子供っぽくて)
(何となく、ゲッベルスの気持ちがわかったかもしれない
ブランに、とられたくないって思ったんだ)